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2019
07.19

明日の来ない誕生日。『ハッピー・デス・デイ』感想。

Happy_Death_Day
Happy Death Day / 2017年 アメリカ / 監督:クリストファー・ランドン

あらすじ
死んで蘇れ!



女子大生のツリーは、誕生日の朝に見知らぬ男のベッドで目を覚ますような遊び人。そんなツリーが夜になってパーティに向かう途中、マスク姿の何者かに刺し殺されてしまう。しかし気がつくと、彼女は誕生日の朝に戻っていた……。殺される日が繰り返されるというループ・ホラー。

誕生日に殺された女性が再びその日の朝に戻って同じ日を繰り返すという、タイムループものとスラッシャーホラーを組合せた意欲作。SFやサスペンスではよく過去に戻って繰り返す系のものはありますが、同じ日や時間を繰り返すという本当の意味でのループものはそれほど多くないかもですね。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ミッション:8ミニッツ』とか、『バタフライ・エフェクト』『アバウト・タイム 愛おしい時間について』辺りは大変面白いし好きです。しかし本作はホラーでありながらそれらに匹敵するほど面白い!自分が殺される誕生日を何度も描きながらも、それをアイデア一発で終わらせず工夫を重ね丁寧に繰り返すことで、先の読めないワクワクとハラハラが止まりません。ループものの最高峰であり、本作でも下敷きにしてると思われる『恋はデ・ジャブ』にも負けない出来です。しかも『スクリーム』に張るホラーミステリーにもなっている。これは素晴らしい。

ツリー役のジェシカ・ロースは『ラ・ラ・ランド』にも出てらしいんですが、ちょっと思い当たらないほどのダメ女子大生ぶりで、殺されてもしょうがないとさえ思える超ビッチ主人公なんですが、そんな彼女が反復する一日で見せていく変化が良いんですよ。そしてツリーが目覚めて最初に会うカーター役のイズラエル・ブルサードは、穏やかながら頼りになる好青年ぶりが良いです。ほか、ツリーの寮仲間であるダニエル役のレイチェル・マシューズや、ロリ役のルビー・モディーンといった他の人物たちも何度も繰り返し出てくるので没入度が高いです。

殺される前に犯人の顔を見れば済むのでは、とも思うんですが、これがなかなか上手くいかないもどかしさもありつつ、様々な殺されバリエーションを経ながら徐々にツリーを応援したくなってくる流れがすごく自然で、とにかく感嘆。ベビーマスクを被った犯人が何者かというミステリーでもしっかり引っ張ります。ホラーの怖さはそこまでじゃないけどスリルは満点。本作には実は続編も既に存在します、と言うかもう観たんですが、そちらも超最高なのでこの1作目はマストですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭のユニバーサルロゴがループする時点でもう面白い予感がビシバシするんですが、主人公がいきなり印象最悪なのにも驚きます。『恋はデ・ジャブ』のビル・マーレイも最初は酷いヤツだったのでここから変わっていくのかな、とは思うんですが、散々周囲にビッチぶりを撒き散らすツリーが変わる姿が想像できないんですね。そもそもホラーでは最初に殺されるタイプなんですが、まあ実際最初に殺されるんですが、彼女が死ぬとまた最初からなので、必然的にファイナル・ガール、つまり最後まで生き残る者にもならなければいけない。さらには犯人が誰なのか、なぜ殺されるのかという謎も絡んでくる。ループ要素にサバイバル要素、ミステリー要素、家族愛に恋愛、成長物語など、多くの要素が含まれていて、しかもそのどれにも手抜きがない。これは凄いですよ。

始まりがベッドでの目覚め、そこから交わされる会話、聞こえてくる声、出会う人々が何度も繰り返され、目覚めるたびにツリーの反応や対応が変わるのも面白い。最初はデ・ジャヴ、二度めは錯乱、その後繰り返すたびに吹っ切れたりブチ切れたり。何度も同じ日を過ごし最後は死という絶望感、そして虚無感、それでも現状を打開しようとカーターたちを巻き込んでの犯人調査。これらがバラエティに富んでいるし、少しずつ事態が変わっていくので飽きません。何度も死にながら犯人を探ろうとするシーンでは、なぜか特殊部隊員化してそれでも殺られたり、どうせループするからと全裸を満喫したり、カーターの前で放屁もかますという、あえてコミカルにして変化をつけます。それでいて死の恐怖と混乱の間にきっちり他者との関係性を挟んでくる。相手は変わらないので、全てがツリーの変化による展開になってくることに説得力があります。超ビッチだったツリーが人の本心を知り自らも心を開いていくのと、観てる方もループしたときのガッカリ感が増していくのとで、ツリーへのシンクロ度も上がっていきます。あと戻るたびに弱っていく、という設定がタイムリミットのスリルも与えていて、同時に病院に行く理由にもなっていますね。

カーターはツリーの話を信じるというのが偉い。お持ち帰りしても手を出さなかったと聞いてちょっとキュンとしちゃうツリーのときめきもわかろうというもの。そんなカーターの協力もあって(毎回説明するの大変そうだけど)、ツリーが心を入れ替えた一日はまさに『恋はデ・ジャブ』のよう。すべての人に善意を、反省と改心を。署名し、枕を与え、ゲイのやつを励ます。ココアをけなさずダニエルにぶっかけ、寮前の娘にも挨拶。まさに『恋はデ・ジャブ』のよう。特に避け続けていた父親との会話シーンには泣けます。前半で母親と一緒にろうそくを消す動画にちょっと違和感がありましたが、その後死んだ母親と誕生日が同じだったからというのが明かされ、母の死がツリーに少なくない影を落としていたということがわかり、それが父との会話にも効いている、という情報の出し方が上手い。最初と比べてツリーの顔付きが全く違うのは大したものです。これで最後のループになりそうなところを、自分を守って死んだカーターを救うため自ら首を吊って対決に臨む、というのがまた熱い。対決に向けての準備シーンにはアガります。

なぜ殺人犯のトゥームスが犯人とわかったのかがハッキリしないのだけは微妙だったんですが(何か根拠あった?)、でも真犯人の意外性にはやられましたよ。カップケーキ捨てられてかわいそうとまで思ってたし、そのことが動機だとちょっと弱い、でも病院で働いている、秘密の彼氏がいる、としっかり伏線も張ってあるからスゴい。犯人が車に火をつけたときに持ってたロウソクがカップケーキのものと同じように思えたので一瞬怪しいと思ったんですけど、他にも怪しいのいっぱいいるのでね、その辺りのミスリードも上手いです。それにしても彼女はツリーが心から謝った日の夜も殺してるわけで、それだけ許せなかったというのが闇深いです。

カーターの部屋のドアに張ってあった「今日が人生最後の始まりの日」というステッカー、それはツリーにのしかかる運命であり、同時に過去の悲しみや己の愚かさと向き合うための試練の宣告でもあったわけですが、それを乗り越え自らケリをつけたツリーはついに新たな一日を始めることができます。最後にカーターのドッキリはあるものの、それ以上は思わせ振りなフリもなくキレイに終わるのがまた気持ちいい。いやあ面白かった。しかしエンドロール後には次作の予告が流れ、まさかの18日の月曜日が再来!?大丈夫なの?と心配になりますが、大丈夫、次作はさらに面白いぞ。

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