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2019
07.18

殺し屋が守る「普通」。『ザ・ファブル』感想。

the_fable
2019年 日本 / 監督:江口カン

あらすじ
なんでーおれもやねーん。



人間離れした戦闘力で標的を始末する伝説の殺し屋ファブルは、ボスからの命令で一年間殺し屋を休業して普通の人間として生活することになる。相棒のヨウコと兄妹として大阪で暮らしはじめたファブルだったが、偶然知り合った女性ミサキがある事件に巻き込まれたことを知り……。南勝久の同名コミックを実写映画化したサスペンス・アクション。

殺しの天才であることからファブル(寓話)と呼ばれる殺し屋が、もし誰かを殺したらボスによって処分されてしまうという厳しい条件の中で、それでも世話になった女性ミサキを裏社会から救おうとする、というアクション・ムービー。何と言っても、アクション適性がズバ抜けて高い岡田准一が主演のアクション映画!というのが大きい。岡田准一と言えば『SP』シリーズや『図書館戦争』シリーズでのガチアクション、最近では『散り椿』で時代劇の殺陣もこなすなど、その身体能力に界隈ではもっとアクション映画やってほしいという願望が高まっていたわけですが、ついにきた!という感じですよ。銃撃も格闘もこなす殺し屋ファブルこと「佐藤アキラ」として、さぞかしヤクザ相手に大立回りをしてくれるだろう!と期待してたわけです。

が、うーん。どうもカット割が激しくて凄さが伝わりづらいのはもったいない。設定上仕方ないとはいえ殺せないというのもちょっとストレス。ただやってることは凄くて、実は速すぎてよくわからないというのも凄みがあり、アクション自体は高レベル。またヤクザドラマのシリアスさとファブルの普通対応のコミカルさも、若干の誇張がいい感じで楽しいです。小島役の『銀魂2 掟は破るためにこそある』柳楽優弥のドチンピラぶりがヤバさ全開だし、ミサキ役の『去年の冬、きみと別れ』山本美月がスクリーンいっぱいに変顔させられるというプレイもどうかしてて愉快。海老原役の『銀魂』安田顕はクレジットの最後を飾ってもいいくらい良かったです(ボス役の佐藤浩市が最後だったけど)。あと宮川大輔のジャッカル富岡が最高じゃないすか?そんなことない?

ほか相棒ヨウコ役を『居眠り磐音』木村文乃、殺し屋フード役に『BLEACH』福士蒼汰、コード役に『帝一の國』木村了、敵対ヤクザ砂川役に向井理、ミサキの上司役に佐藤二朗などなどが出演、監督はCM出身の江口カンですね。岡田准一のアクションはもっとじっくり見たかったし色々もったいないところもあるんですが、ある種のヒーローものとして作り上げたのは良かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤の日米入り乱れた悪党どもを壊滅させる無双っぷり、料亭という和テイストも相まって時代劇の殺陣のようにも思えるほど、圧倒的に速く強いファブルにはシビれます。速すぎる上にカット割が激しすぎて、何やってるかよくわかんなくなるんですけど。あとターゲットまでの距離だの風速だのを文字として表すのがスタイリッシュですが、これが何か仕掛けとして機能するのかな、と思ったら最初しか出てこないのも肩透かし。そこで思いっきりスローを使うのかーと思えば、ラストのフードとの決着はやけにあっさりだったり、全体的に惜しいと言うかもったいないと言うか、もっとケレン味を持たせてもよかったんじゃないか、とは思います。あと物語上やむを得ないんだけど、せっかく岡田准一本人がアクションしてるのに顔を隠さなきゃいけないのがもったいないとか、殺せないから敵が減らないというのが爽快感に欠けるというのもありますかね。それでも岡田准一がスタントなしで魅せる体技は圧巻。壁の間をスルスルと登るシーンなどは、ワイヤーは付けてるんでしょうが、そこまで登るのスゴいと思ったらさらに上に登るので超スゴい。劇場内のあちこちからも「スゴい……」と声が漏れ聞こえてきたくらいです。

登場人物のキャラ付けは上手くいってると思います。アキラは速さも強さも最上級なのに幼い頃から殺し屋稼業だったがために「普通」という感覚がわからず、色々と戸惑いながらそれでも普通でいようとするのが面白い。枝豆の皮もサンマの頭も鳥の骨もバリバリ食べるし、家では大体まっぱだし、普通にしようとするほど異質さが目立ちます。猫舌でのけぞるシーンはやりすぎな気もしますが、感覚を鋭くしてるためという理由がユニーク。この辺は原作準拠なのかな?ただボコってきた二人組にはどこかで見返すシーンはほしかった。そういうところが痛快さに繋がると思うんですけどね。また小島役の柳楽優弥の危なさ抜群の演技には震えます。海老原に可愛がられているとは言えただのチンピラだし、そこまで強いわけでもないんですが、チャリですれ違い様に刺すとか不意に見せるクレイジーさが極悪。海老原のヤスケンはコミカルさを封印してひたすらシリアスなのが良くて、弟分を自ら手にかけるせつなさなどは響きます。あとミサキちゃんの山本美月はなぜあそこまで変顔させられるのか。それをやってるヨウコこと木村文乃も変顔でまあ微笑ましいんですけど、ちょっと監督の性癖を感じます。

ただ、ヨウコの役割とか、実は強いという設定はもう少し見せてほしかったし、序盤のファブル討ち入りとヨウコのオリラジ藤森いじりが特に脈略なくカットバックして結局何もないというのも拍子抜け。なぜボスが殺し屋コンビを殺したのかもよくわからないし、そもそも組長の座を狙った砂川がお咎めなしで小島が死んで手打ちというのもよくわからない。エンディングに流れるのがレディガガの既存曲「Born This Way」なのはマッチしてるようでそうでもない微妙なライン。などなど気になるところは多々あるんですが、とは言えクライマックスのゴミ処理場は独特な構造や薄暗さなどロケーションとして実に良いし、そこを舞台に繰り広げる一対多の攻防戦にはいやがおうにもアガります。福士蒼汰とのバトルは実力が拮抗しているのがスリリングだし、上下に分かれて床を通しての銃撃戦というのも新鮮。

最後まで素性を明かさず謎のヒーローとして囚われた女の子を救うという構図はやはりカッコいいものです。散々殺しをさせておいて突然「普通」になれというボスの心理など描かれない部分も多いので、もう少し脚本は練ってほしかったところですが、佐藤二朗はいつも通り佐藤二朗で個人的には好きだし、ジャッカル富岡にはアキラと一緒に笑ってしまったし、何よりアクション全開の岡田准一が見れたので満足。アキラの「普通」への道は険しいですが、本人が上手くやれてると思っててわりと満足げなのも愉快です。

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