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2019
07.03

不死鳥の絶望と異端者たちの想い。『X-MEN:ダーク・フェニックス』感想。

X-Men_Dark_Phoenix
Dark Phoenix / 2019年 アメリカ / 監督:サイモン・キンバーグ

あらすじ
ありがとう、X-MEN。



原因不明の事故に遭ったシャトルを救うため宇宙へと向かったX-MENの面々。しかしそこで謎の太陽フレアに巻き込まれたジーン・グレイがとつてもない能力に目覚めてしまう。何とかジーンの暴走を止めようとするプロフェッサーXたちだったが、やがて思いもかけない悲劇が訪れる……。『X-MEN』シリーズの最終章となるヒーロー・アクション。

2000年の1作目以来足掛け19年に渡って続いてきたマーベルコミック原作のヒーローシリーズ『X-MEN』、本作はスピンオフを除けば7作目(含めれば12作目)にして最後の物語となります。なぜ最後かと言えばディズニーが20世紀FOXを買収したからですね。X-MENのリーダー、プロフェッサーXの信頼も厚い優等生ジーン・グレイが、宇宙でのミッションで遭遇した太陽フレアにより自分を抑えきれずに暴走、「ダーク・フェニックス」化してしまいます。ダーク・フェニックス自体は『X-MEN:ファイナル・デシジョン』でも描かれましたが、20年近く触れてきたX-MENの最後がよりによってまたそれってツラそう、と思ってたら案の定ツラい展開。前作『X-MEN:アポカリプス』がいい感じで終わっただけに余計堪えます。でもそれ以上に、今までの積み上げ、関係性の変化、過ちと贖罪などが響くんですよ(そもそも『X-MEN』シリーズは鬱展開が多いけど)。アクションの見せ方や各キャラの活躍も観てて力が入ります。

プロフェッサーX/チャールズ役の『ミスター・ガラス』ジェームズ・マカヴォイ、マグニートー/エリック役の『エイリアン:コヴェナント』マイケル・ファスベンダー、ミスティーク/レイブン役の『レッド・スパロー』ジェニファー・ローレンス、ビースト/ハンク役の『女王陛下のお気に入り』ニコラス・ホルトといったファースト・ジェネレーション組は年を経ての貫禄とか滲み出る過去とか色々あったよねえという感じで、出てくるたびに感慨深い(今回もかなり色々あるんだけど)。サイクロプス/スコット役の『レディ・プレイヤー1』タイ・シェリダン、ストーム/オロロ役のアレクサンドラ・シップ、ナイトクローラー/カート役のコディ・スミット=マクフィー、クイックシルバー/ピーター役の『アメリカン・アニマルズ』エヴァン・ピーターズなど、若手たちもすっかり主戦力として活躍します。そしてジーン役の『ゲーム・オブ・スローンズ』ソフィー・ターナーが鬼気迫る圧。また『女神の見えざる手』ジェシカ・チャステインが謎の女として絡んできます。

監督は『X-MEN:アポカリプス』の製作・脚本や『デッドプール』『LOGAN ローガン』の製作などを務めてきたサイモン・キンバーグが長編初監督。アップの多さに心情を読み取らせようとするのは脚本家的なアプローチなんですかね。少しばかり性急さはあるし、敵役がちょっと浅いとかはあるんですが、コミック的なキメ画は多くあるし、チャールズの独りよがりやハンクの翻意などせつない場面も盛り込んでて、言われてるほど悪くないです。エリックとか超カッコいいし。こういう終わり方もありだとは思いますが、でももっとこのメンバーで観たかったよ……。

↓以下、ネタバレ含む。








20世紀FOXロゴのXだけ光るのもこれが見納めか……と思うと物悲しいなあ。『X-MEN』シリーズのヒーロー映画としての特徴は特にアッセンブルしなくても群像劇である、ということですが、今作では構造上ジーン・グレイが中心になります。大統領からの直々の救援要請を受けるまでになったX-MENですが、居場所を得ようと腐心するチャールズとは裏腹に、チャールズを人間に媚びていると感じ学園を去ることも考え始めるレイブン。そんなレイブンに誘われながらも彼女を引き留めようとするハンク。三人の微妙な関係性は、今のX-MENが危ういバランスの上に成り立っていることを示します。しかしそこで覚醒してしまったジーンにより、このバランスは一気に崩れ、かつ三人の立ち位置も反転するんですね。チャールズがよかれと思って封じたジーンの記憶は彼女をより狂暴にし、学園を離れようとしていたレイブンはジーンに「家族」として接しようとします。しかしまさかのレイブンの死という耐え難い悲劇。そしてハンクは決して見捨てなかったチャールズに文字通り牙を剥きます。

新シリーズの中心にいたレイブンの死は非常にショック。しかもそれが故意ではないにしろジーンによるものだという二重の衝撃に、物語は引き返せない境界を越えてしまいます。これがツラい。チャールズが妹のように思っていたレイブンと初めて出会ったときのことを語るのもせつないし、ハンクがチャールズを責め恋敵であるエリックを巻き込んでまで復讐を成そうとする止めようのない怒りもせつない。ジーンと恋仲だったスコットが彼女を元に戻したいと思うのも、オロロやカートがひたすら戸惑いながらも何とかしたいというのも伝わります。一方で父に捨てられチャールズに騙されていたと思い込んだジーンは苦しみながら徘徊、ジェシカ・チャステインの演じる謎の女らにパワーを奪われそうに。このエイリアンたちは本当の姿も見せないしポッと出感も強くて、一体何なの?という気もしますが、ジーンの闇を増幅させる役割だと考えるとまあわからなくもないですかね。彼女らに吹き込まれたネガティブな感情がジーンをより頑なにし、同時に乗り越えるべき壁となってラストに向かっていくわけです。

アクションはカット割も悪くないし、むしろキメ画は豊富で各々の見せ場もしっかり入れ込んでて良かったです。冒頭の宇宙シーンはカートのテレポートによるタイムリミット的なミッションがスリリング。ジーンの実家での激突ではカメラがグルリと回ってフィールドの広さを把握させ、クイックシルバーが駆け上っていく空間を使ったシーンなどは楽しいです(展開はツラいけど)。エリックのコミュニティでのヘリコ制御合戦はアクションではないんだけど、ファスベンダーの力み方が上手くて見てる方も力が入ります。エイリアンのアジト前での夜間の戦いは、エリック軍団+ハンクとチャールズたちの車列を縫っての攻防がスピーディで、チャールズがあっちこっちに念力でちょっかい出すのや、エリックが地下鉄を掘り出しちゃうという大技を披露するのがダイナミック。ラストの電車戦はジーンに至るまでの、中から外から一両ずつ進んでいく戦いのスリル、共闘したと思いきや散っていくエリック軍の悲しみなどこれまた力が入るシーンが多くて、電車アクションはやはり良いなあと思いますよ。スコットも今回は活躍するし、カートが電車の前に敵を置き去りにするときの悪魔的笑顔になどはスゴい。ナイトクローラーの本気が見られて震えます。そしてエリックの電車グシャッてやって後ろ向きにポイするのとか超クール!

今回はあまり一般人が描かれないので内ゲバ的な印象が強いのは否めないのはちょっと残念なところ。そういう点ではヒーローものというよりはあくまでX-MEN内部の話という感じではあるんですよね。クイックシルバーが途中退場してその後のフォローがないのも気になるし、前作のポストクレジットに出たウェポンXは?とか、サイロックはどこ行った?とかあるんですが、上手く入るところがなかったということなんでしょう。そういった気になる点はありつつも、チャールズが自らの過ちを認めそれでもジーンを守ろうとする姿とか、ジーンに寄り添おうとするスコットとそれを傷付けまいとするジーンであるとか、一線を越えてしまったジーンの悲しみであるとか、ここまでのシリーズの積み重ねがあってこそのせつなさがあるのです。ジーンがその力を発揮して『インフィニティ・ウォー』のようなサラサラを自力で行うのに度胆を抜かれ、でも最期は自ら散るしかないというのも悲しい。宙を舞うフェニックスに、もっとどうにかできなかったのかとさえ思います。

チャールズが引退し、学園は名前を「ジーン・グレイ学園」に変えるというやるせない結末がまたツラいですが、身を引いたチャールズの前にエリックが現れてくれるのが何とも言い難い暖かさ。その時にエリックがチャールズに言う「old friend」は前作では別れの言葉だっただけに、最後にチェスをするチャールズとエリックには親友だった二人が戻ってきた嬉しさがあります。それだけにこれで終わりというのは本当に残念。X-MENは5年後くらいにMCUに合流するかもという噂もあって、個人的には合流はあまり望んではいないんだけど合流したらしたでテンション上がるのは間違いない、というくらい自分は『X-MEN』が好きだったなあと思うのです。あとやはり『LOGAN ローガン』で退場したウルヴァリンがいないのも寂しい。となると次回作は仕切り直しになる可能性もありますね。ファースト・クラス組は好きだっただけに複雑ではありますが、今のメンバーがそのまま年を取って再びスクリーンに現れてくれたら嬉しいなあ。重い話ではありましたがファンとしては十分満足。いつかまた会える日を楽しみに待ちます。

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