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2019
06.24

偽りと命と自由。『アラジン』感想。

Aladdin
Aladdin / 2019年 アメリカ / 監督:ガイ・リッチー

あらすじ
ウィル・スミスが青い!



生きるために盗みを働く青年アラジンは、身分を隠して街に出ていたアグラバーの王女ジャスミンと出会う。ジャスミンに惹かれるアラジンだったが、そんな彼に目をつけた大臣のジャファーが神秘の洞窟から魔法のランプを持ち帰るようアラジンに依頼する……。ディズニー・アニメ『アラジン』の実写映画化。

『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』の一編である「アラジンと魔法のランプ」を元にした、1992年のディズニー・アニメ『アラジン』。盗人ながら真っ直ぐな青年アラジンが、手に入れた魔法のランプの助けを借りつつ愛する王女を守ろうとするお話で、滑らかなアニメーションの動き、神懸かった楽曲、ワクワクする冒険活劇、そしてロビン・ウィリアムズの演じたランプの精ジーニーのコミカルさで、ディズニー・アニメの中でも屈指の面白さを誇る作品です。これが満を持して、と言うか案の定実写映画化となったのが本作ですね。しかしこれが昨今のディズニー実写化シリーズの中ではダントツですっごい楽しい!元がアクションとしてもミュージカルとしてもラブストーリーとしても秀逸なんですが、監督が『シャーロック・ホームズ』『キング・アーサー』のガイ・リッチーということで、凝った映像とケレン味溢れた、予想を越える楽しい出来に。

アラジン役に大抜擢のメナ・マスード、クセの少なさが若干地味ながらちゃんと物語の中心にいる感じだし、動きや躍りのキレもいい。ジャスミン役である『パワーレンジャー』のピンクことナオミ・スコットは、目を見張る美しさに気品と強さを兼ね備えて魅力的。ジャファー役の『セブン・シスターズ』マーワン・ケンザリはアニメ版に比べると悪のインパクトには欠けるものの、その分人間味がありますね。そして作品のキモと言えるジーニー役に『スーサイド・スクワッド』『アフター・アース』のウィル・スミス。実写化で最も困難なのがこのジーニーだと思ってましたが、ウィル・スミスはやはりスゴかった!ロビン・ウィリアムズのジーニーに寄せつつも異なる、実写ならではの実在感があるからこその面白さが抜群。もう青いウィル・スミスが出てるだけで可笑しいし、それでいてシリアスな場面もこなすのがさすがです。

名曲が新たな映像美で甦るミュージカル・パートも素晴らしい。「ホール・ニュー・ワールド」などはエモーショナルな旋律と映像に涙が出ます。ガイ・リッチー味が漏れ出るアクションに、偽りの自分対止まらぬ野心のサスペンスなど、どのシーンも見応え抜群。めくるめくアラビアンな風景と美術の美しさにも陶酔。女性の権利を描く現代的アプローチまで取り込み、アニメ版に負けない面白さです。

↓以下、ネタバレ含む。








基本的にはアニメ版を踏襲しているんですが、それでも実写版ならではの独自性というのが様々な点で表れていて、それがことごとく上手くいっている、というのには驚きです。ワンカットで夜のアグラバーの街並みを見せるオープニング・シーケンスからして見応えあり。序盤のアラジンによる街中逃走シーンはジャッキー映画的な動きで、まんま『プロジェクトA』みたいなカットもあったりして楽しいです。アクションはカット割の速さとスローとを駆使したガイ・リッチーらしい緩急自在なスピード感が心地よくて、屋上などでは画面を広く使う画が気持ちがいいし、椅子に縛られたアラジンが塔から落とされるシーンはスローでピンチ感を煽ったりします。魔法の洞窟ではむっちゃお宝があって惑わされたり、ランプのある崖の高さ、それが崩れるスリルなどはエキサイティング。美術も良くて、城内の絢爛豪華なアラビア装飾や、ごちゃごちゃした街並みの雑多感など、ファンタジックでありながら生活感あります。アラジンの家に入る階段や引き上げると出てくる天幕などのガジェットも愉快。アニメ版をよりダイナミックにしつつ、実写ならではの美しさで描いています。

改変箇所として上手いと思ったのは、ジャスミンを序盤からアラジンと絡めて登場させるところですね。アラジンの名がジャスミンには明かされないまま話が進むアニメ版と異なり最初からジャスミンにアラジンのことを印象付けているし、自ら街に繰り出して人々の様子を見たいというジャスミンの積極性も際立ちます。女は国王になれないとか黙ってろみたいに言われる女性蔑視的な観点が現代的なアプローチで、ジャスミンがジャファーに逆らい強さを表現する際の実写版オリジナル曲では、周囲の男たちが砂となって消えていくことで自立する女性をも表しています。そこまでやらなくても十分ジャスミンらしさは出てるとは思いますが、抑圧された怒りという点をさらに強調するんですね。またアラジンとジャスミンの空飛ぶ絨毯での飛行シーン、最後が街で楽しそうに騒ぐ人々の場面であるというのが、国を思うジャスミンの思いともリンクしてて良いです。またジャファーに関して「二番目である」ということを随所で強調することで、ラストの一番になるという願いをさらに説得力あるものにしていますね。

楽曲はやはりどれも素晴らしい。特に「ホール・ニュー・ワールド」は『スーパーマン』の夜空のデートシーンのようにロマンティックで感動的です。アラジンが王子になってやってくるときのとんでもない豪華パレードも愉快で、ここだけで『ダンボ』のパレードシーンまでも凌駕してます。城でのダンスシーンは、最初のアラジンの操られてる感じ満載の動きが上手いし、バク転までかますやりすぎ感が面白い。もちろんジーニーの自己紹介ミュージカルも最高。というかジーニーが最高。カートゥーンならではのクレイジーとも言える動きや演出をしっかり実写で再現して、しかもそれが自然にさえ感じられるのは凄いですよ。何より青いウィル・スミスがいっぱい出てきて千変万化の姿を見せまくるのは爆笑もの。ジャスミンに言い寄る王子のゲヘゲヘいう笑い方が笑えるんですが、この王子を砂漠のど真ん中に連れてきたりするのも楽しい(多分あの人だよね?)。常にフワフワ揺れてるウィル・スミス、膨らんだり縮んだりするウィル・スミスと、ウィル・スミス祭りですよ。

あと空飛ぶ絨毯は『ドクター・ストレンジ』のマントなみにカワイイし、アブーは『レイダース』の猿を越える活躍(同じくらいピンチも招くけど)。あとトラのラジャーが実写だとマジでトラなので、カッコよさと恐怖感倍増(でもイイ子)。オウムのイアーゴはアニメ版と違って表情がないだけに極悪で無慈悲な感じが増してます。これらに比べるとアラジンは若干地味に感じますが、マジシャンなみのスリテクやキレキレのダンスなどそれなりに見せ場もあるので、影が薄いということはないんですよ。ベランダから落ちたと思ったら絨毯で上がってくるのには『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』だ!ってなりました。ちょっとね、アラジンが「王子のままでいい」とかジーニーの願いを「聞けない」とか言い出すのが少し唐突だし、その後すぐに「やっぱおれ底辺かな」みたいになるのも性急なんだけど、「僕を信じて」の台詞が持つ強さってのはよく出てたかと思います。あと王に従うと言っていた兵士長のハキームさんが、隷属ではなく正しさを選ぶのも地味に良いです。

冒頭のウィル・スミスがちゃんと伏線として活きているし、ジャスミンの侍女というオリジナルキャラも思いの外イイ存在感。王女と侍女との女子同士のツーカーみたいなのがたまらんですね。あと自由を願ったアラジンの言葉に対するジーニーの反応が実に良くて、「人間になりたい」というアニメ版にはなかった願いが家族をもたらすという、ジーニーの千年の孤独を癒すものであるのが素敵な捻り。「俺の魔法はうわべだけだ」と言っていたジーニーの魔法が、アラジンもジャスミンもジーニー自身をも幸福にするという結末がやはり気持ちがよいです。アクションとミュージカルとサスペンスとコメディのバランスもよく、アニメ版を踏襲しながら拡張の仕方もハイレベル、加えてこれ以上ない大団円。ディズニー実写化のなかでもトップクラスの楽しさです。

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