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2019
06.17

歌って躍る黙示録!『アナと世界の終わり』感想。

Anna_and_the_Apocalypse
Anna and the Apocalypse / 2017年 アメリカ、イギリス / 監督:ジョン・マクフェール

あらすじ
クリスマスは阿鼻叫喚。



イギリスの田舎町リトル・ヘブンで父と二人で暮らす高校生のアナ。外の世界を夢みるアナは幼なじみのジョンとバイトする日々だったが、クリスマスの日に突然血まみれの男に襲われる。それは世界中で蔓延するウィルスにより生ける屍となった者たちだった……。ホラー×ミュージカルの青春ムービー。

ゾンビが蔓延る町で、生き残った高校生たちがサバイブするホラー映画、なんですが、驚くのはゾンビ映画にしてミュージカルだということ。これはチャレンジングだぞ。小さな町にうんざりしている高校生のアナは、世界を見るために既に進学が決まった大学に行かずオーストラリアへ旅したいと言い出して、クリスマス・イブだというのに二人暮らしの父トニーとケンカ(そりゃ怒られるだろう)。それでも前向きになろうとした翌日、世界が一変していることに気付く、というお話。ここではないどこかへ旅立ちたい、そんな青春のもやもやを表現するミュージカル・パートは歌もダンスもとてもイイ。そして未来に向かう高校生たちが乗り越える壁として追い込まれた極限状態、それがゾンビ!大変だ!ということで、ときにコミカルときにシリアス、80年代ポップス調の曲に乗せたハモりや掛け合いで聞かせつつ、ゾンビにギャー!なのが楽しいです。

キャストは有名どころはいないものの、親しみの沸く若手たちがフレッシュ。アナ役のエラ・ハントはタレ目がキュートな行動派で、ゾンビもガンガン倒します。そんなアナに密かに思いを寄せる幼なじみのジョン役のマルコム・カミングスは、ずーっとクリスマスのダサセーター着てるのが愉快。二人の友人であるクリストファー・レボーの演じる映像作家志望のクリス、マルリ・シウの演じるパーティーの歌姫リサのカップルも良い味。彼らと行動を共にするサラ・スワイヤーの演じるステフはレズビアンであることで孤独に苛まれ、ベン・ウィギンスの演じるニックはゾンビ殺しを楽しむクズ野郎。それに輪をかけてクズであるポール・ケイの演じるサヴェージ校長が、事態をさらに混乱させていきます。

ゾンビとミュージカルというのはアイデア優先という気もしますが、それを企画倒れに終わらせない楽曲と物語でもって、ホラー映画と青春映画を両立させています。若者の葛藤、サバイバルのなかでの別れ、共闘のなかでの成長。若干雑なところもありますが楽しかったです。

↓以下、ネタバレ含む。








正直、ミュージカルとゾンビというのは食い合わせはよくないと思うんですよ。歌いながら倒していくシーンもあるものの、基本的には襲われてるのに歌う余裕なんてないので。ニックたちがゾンビ倒しながら歌うシーンはまだ余裕があるからできるんだろうし、校長の罠でアナたちが襲われてるシーンでは校長が歌うことで繋いだりしますが(お前が歌うんかい、とは思う)、ぶっちゃけミュージカルシーンにより停滞してるように感じるところもあります。でも歌わないとミュージカルにならないし、ゾンビじゃないところで歌うことで上手くバランス取れてはいるんじゃないでしょうか。特に前半は将来への希望と現実とのギャップで悩む若者たちの姿がいい感じで出ており、ポップス調の曲とも相まって楽しい。食堂での映画のようなハッピーエンドなんてない、と歌うシーンはことさらゴージャスで良いです。なぜか食堂のおばちゃんまでポーズキメながら歌ってるんですけど。イヤあんた誰だよ。

ゾンビ描写はわりと雑。とりあえず何かウィルスが発生してゾンビ化した、くらいの設定しかないし、軍隊どころか警察も出てこないので被害の拡大具合もよくわからず(一応見下ろした街に火の手が上がってたりはする)、どれくらいヤバイ状況なのかが把握しづらいです。まあそこはアナたちもわからないことだからいいでしょう。ゾンビの後ろを通っても意外と見つからないし、ボーリング玉の代わりに首が出てくるとかギャグになってるシーンも多いので緊迫感はさほどないですね。ジャスティン・ビーバーはゾンビになってるけど、テイラー・スウィフトは絶対無事とか言い張るのが笑えます。あと四角いビニールプールみたいなのを被って移動するというのは、視認して襲ってくるゾンビ相手であればなかなか画期的なアイデアだな!と感心したんですが、地面を這うヤツがいるというのと、お婆ちゃんゾンビが放尿するというのはさすがに想定外です。

アナはわりとすぐにゾンビ殺しまくるようになるので一安心。と言うか強すぎるぞ。髪を後ろに結わえての臨戦態勢はイカすし、クリスマスのぶっといポールをブン回したり突き刺したりの攻防は容赦なくて頼もしい。ただ、大学に行かずに旅行すると言ってるのがちょっとどうなの?と思うし、ゾンビに遭遇してるのに「あり得ない」と言い張るのも柔軟性に欠けてたりで、いまいち応援したくなる感じにならないのは痛い。終盤に突然ニックとはとっくに肉体関係があったとか明かされるのもドン引き。ニックは酷いイジメ野郎のクズなのが急にイイ人みたいな感じになって、ゾンビに噛まれた父親に「正しいことをしろ」と言われて殺したとか言われても、イヤ散々楽しそうに殺ってただろ、と思っちゃう。生き残るならそれなりに納得させてほしいところですが、ジョンが殺られてニックを残すという展開は誰も望んでないよなあ。まあそこら辺は現実の厳しさや若いゆえの甘さも込みではあるんでしょう。

ジョンが「親友だよね」から巻き返すかと思いきや呆気なく餌食になるのツラいし、クリスとリサの食堂でむっちゃチューしまくるバカップルが本当に互いを思っているがゆえに戦線離脱する別れは悲しい。ステフがレズビアンである設定は微妙に活かされてない気もしますが、その立場ゆえに孤独なクリスマスを強いられる悲しさ、それでも皆を助けようと奮闘する姿は良かったです。クリスマスであることが活かされるシーンが多々あるのは上手いですね。ステージのデカい星で校長を叩き落とすのは伏線が効いているし、ずっと可笑しかったジョンの電飾付きのダサセーターがゾンビ化した後にチカチカ光っているのや、父への別れの言葉が「メリークリスマス」なのは何ともせつない。最後にゾンビに囲まれて、失われた未来を嘆く歌が歌われるのに合わせて死人化した友人たちが映されるのが泣けます。

新たな世界を求めたアナが遭遇した全く別の新たな世界は、人生の荒波を生き抜くための試練としての側面もあるのでしょう。そんな苦さをゾンビ・ミュージカルというチャレンジングな構成で成し、スリルもそれなりに実現して見せたのは良かったです。

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