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2019
05.27

戦場の先にある恐怖。『オーヴァーロード』感想。

Overlord
Overlord / 2018年 アメリカ / 監督:ジュリアス・エイバリー

あらすじ
マジで敵だらけ。



第2次世界大戦時、ノルマンディー上陸作戦開始と同時に、作戦の鍵を握る重要な任務のためナチス占領下のフランスの小村に送り込まれたアメリカ兵たち。激しい攻撃を潜り抜けて生き残った兵士たちは作戦を遂行しようとするものの、ターゲットである教会の塔で思いがけない敵と相対する……という戦争サバイバル・アクション。

『スター・ウォーズ フォースの覚醒』J・J・エイブラムスが製作を務めた戦争映画なんですが、これが予想を超えた方向に展開する異色のサバイバル映画。1944年6月の第2次大戦下、ノルマンディー上陸作戦の鍵を握るナチスの通信塔爆破というミッションに挑む兵士たちが、思いがけない障害に立ち向かいます。とにかくスリリングな展開と、息をも尽かせぬアクションの連続がスゴい。冒頭の空から敵陣へ向かう飛行機のシーンからしてド迫力の臨場感で、僅かな人数で敵陣地のど真ん中に潜入する緊張感に、さらに難解なミッションの遂行と、戦争映画としてしっかり面白い。しかもその上でとんでもない仕掛けを施す某ジャンル映画としての見応えも抜群なのです。登場人物たちもキャラが立っているし、こいつはノンストップの面白さ。

部隊の生き残りとして作戦に挑む新兵エド・ボイス役はジョバン・アデポ。ボイスはひたすら真面目なので取っつきやすく、そんな彼が思いがけない活躍を見せていくのに引き込まれます。ベテランながら一癖ありそうなフォード伍長役はワイアット・ラッセル、ジェイソン・クラークっぽいなーなんて思ったらなんとカート・ラッセルの息子だそうです。言われてみれば似てるな。皮肉屋チベット役の『キャロル』ジョン・マガロもありがちながら良い感じ。ボイスたちに協力するドイツ女性クロエ役のマティルド・オリビエが大変美人さんな上に銃もガンガン撃つので素敵すぎ。ナチス将校ワフナー役のピルウ・アスベックのふてぶてしさが悪役!という感じで良いです。

現実離れした設定のスリルもありながらそれに逃げず、真っ向からリアルなサバイバル・アクションにも挑む志の高さがとても良いんですよ。じゃあその設定はオマケかというとそんなことはなく、ちゃんとそこも込みでのひねりがある。どんどん追い詰められる展開に緊迫、フレッシュなショットの数々に興奮。最初から最後まで面白い。前情報は入れずに観るとさらに楽しめます。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭から予想外にスリルの連続なのが度肝を抜かれるんですよ。夜に兵士を乗せた軍の飛行機が編隊を組んで飛びながら、不意に始まる敵襲に次々落とされていく恐怖。まさに第二次大戦というスケール感のなか、ついに被弾し大破していく自機からの決死のダイブ。飛び降りてから着水までをボイスに寄ったカメラでワンカットで撮り、パラシュートを開いたと思ったら着水というギリギリ感、下が海で一安心かと思いきや水底まで沈んで息ができず、なんとか這い上がるもメットも荷物もなくす心許なさ。そこから森の中での緊張感、村への侵入、クロエの家でのワフナーとの攻防と、よくもまあここまでというほどのピンチの畳み掛け。さらにボイスが犬から逃げるため乗ったトラックが敵本拠地の真っ只中へ入っていくのにはぶっ飛びます。それでもここまではまともな戦時下サバイバルというだけで進めて、怪しげな描写もありながらゾンビものということは伏せたまま、それでいてしっかり面白いというのがエラいんですよ。あとドイツ兵同士ではドイツ語で話す、というのがちゃんとしてます。

ナチスの人体実験とか謎の血清が出てくる辺りからジャンル映画の要素が入ってきますが、それでも任務遂行を目指す米兵たちのギリギリの攻防、という点は揺るがないのが一貫性があってイイ。血清のくだりは理屈はよくわかりませんが、不気味さ不穏さ非道さが十分出ているのでまあいいんですよ。ナチス人体実験ホラーと言えば『武器人間』などを思い出すんですが、あそこまで胸糞悪くはないものの、首だけフランス女性とか、仲間がゴキゴキ変形とか、顔面ぱっくりとか、なかなかエグい。なんか袋の液体に人が入ってるとか、腹に繋がる管を抜いたら思いの外長い針が刺さってたとかイヤですねえ。でも単なる残虐シーンというだけではなく、捕まったらヤバいという恐怖と逃げ場のなさが強調されるようになってるんですね。あと敵将校のワフナーがしっかりラスボス的な存在としてインパクトあるのが良いですよ。捕らえられても不敵に笑うふてぶてしさと、吊られて死んでるのかな?と思ったら罠だという油断のならなさ。血清投入後にもはじけた顔を隠そうともしないのが化け物感を強調してます。

米兵チームはキャラの描きわけができてるので把握しやすいです。ボイスがネズミも殺せなかったというのは弱いのではなく優しいからなのでしょう。フォード伍長の命令を頑として聞かずに救出を主張するとか普通なら軍法会議ものですが、正しいことを成そうとするところが好ましい。仲間のチェイスがゾンビ化したときに徹底的に頭を潰す姿は意外ですが、それも他の仲間を救うためなのでしょう。ボイスが明確に人を殺すのはナチスの医者に襲われたときくらい?クロエがワフナーになぶられそうになるときも制止を振り切って助けるし、戦争という舞台でありながら高潔さを見せます。一方フォード伍長は状況を冷静に見るベテランらしさがありながら暴力が止まらない一面もあるのが危険ですが、結果的にボイスの言い分を聞いてしまう人の良さも。憎まれ口ばかりきいていたチベットがポール少年と通じちゃうのもベタだけどイイ。本を書いていると言っていた仲間のことを覚えていて「今のはあいつの本に書かれるな」みたいに言うのも良いですよ。クロエは超イイ女な上に、弟ポールを探すため普通の兵士を躊躇なく撃つのが最高。ゾンビ兵を顎下からブチ抜いたり、火炎放射器で焼き払ったりというのもたまりません。クロエは侵略者に蹂躙される人々の怒りの象徴でもあって、兵士以外があの場に出向くスリルと相まって魅せてくれます。

なぜそこでそんなことを、というのもちょいちょいありますけどね。ボイスがクロエの叔母の部屋を見ようとしたり、研究所でドアの向こうを覗こうとしたりというのはギャーとなるための寄り道なのがわかっちゃうし、フォードが部下たちに周囲を見てこいという命令はこの状況にしては雑すぎます。でもそういうのも気にならなくなるほど展開が面白い。死体が動き出すので一応ゾンビものですが、生きてる者が使えばキャプテン・アメリカなみの超人血清になるというのを活かし、フォードが自ら血清を打ち込んでここまで積み重ねたワフナーとの因縁のパワーバトルに挑み、そしてあれだけ生き延びることに執心していたフォードが己と共にこれを滅ぼすのが熱い。ラストの研究所から逃げようとするボイスの背後で爆発しまくるのも景気がよいです。変に続編を示唆するような未練がましさもなく、生き残ったボイスに一皮向けたような精悍さも感じさせ、その向こうに青空が広がるラストシーンに至るまで、存分に楽しませてくれます。

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