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2019
05.22

泣き声に込められた怨念とパワー!『ラ・ヨローナ 泣く女』感想。

The_Curse_of_La_Llorona
The Curse of La Llorona / 2019年 アメリカ / 監督:マイケル・チャベス

あらすじ
シクシク……



1970年代のロサンゼルス、ソーシャルワーカーのアンナは虐待の疑いがある女性から子供たちを引き離すが、何かがやって来ると恐れる子供たちにほどなく悲劇が訪れる。そこには泣き声を聞いた子供は連れ去られてしまうというラ・ヨローナの呪いが絡んでいた。呪いはやがてアンナの子供たちにも襲い掛かる……。『死霊館』シリーズのジェームズ・ワンが製作に関わるホラー。

夫の浮気で正気を失った女性ヨローナは嫉妬から我が子を溺死させ、後悔のあまり自らも川に身を投げた。ヨローナの嘆きは呪いとなって死後も子供たちをさらっていくという……という中南米に古くから伝わる怪談「ラ・ヨローナ」が題材とのこと。あるメキシコ系女性が子供たちを閉じ込めていたのを虐待と考えたソーシャルワーカーのアンナは子供たちを保護したものの、実は女性はヨローナから子供たちを守ろうとしていたのであり、その恐怖はアンナの二人の子供にまで及んできます。この70年代のアメリカに現れたラ・ヨローナ、新たなるホラーヒロイン爆誕!という感じじゃないでしょうか。ふと聞こえてくるすすり泣き、いないはずの姿が突如現れる怖さ。家ではなく人にとりつくという逃げられない感で、じわじわ追い詰めてきます。いまいち襲われるルールがわかりにくいけど、泣くわ叫ぶわ物理で迫るわのメンヘラぶりが超ヤバい!有名ホラーを思わせる画も色々ありつつ、様々な独自の恐怖表現はフレッシュで、しっかり怖いし面白いぞ。

アンナ役は『グリーンブック』『ハンターキラー 潜航せよ』『シンプル・フェイバー』と今年出まくりのリンダ・カーデリニ。今作ではあまり好ましい役柄ではないため自業自得感があるんだけど、それでも子供たちを守るため母の強さで怨霊に立ち向かいます。アンナの子供たちがとても良くて、クリス役のローマン・クリストウは少年だけに背が届かないスリルなんてのもあるし、エイプリル役のマデリーン・マックグロウは幼さゆえにピンチを招いたりとかなり大変な目に逢います。ちょっと変わってるのは、この怨霊に対抗するのが教会ではなく南米の呪術医であるということ。悪魔払いなどより『来る』みたいな霊能バトルの味わいに若干近いですかね。呪術医ラファエル役のレイモンド・クルツの信用していいんだか微妙な存在感も独特です。

ジェームズ・ワンが製作に名を連ねていますが、実はこれ『死霊館』とも繋がりがあるんですね。別にユニバースというほどではなくサラッと繋げてみせるだけですが、緩くリンクするのが楽しい。監督のマイケル・チャベスは『死霊館』シリーズ第3弾でも監督を務めるそうで、ひょっとしたらそちらでもヨローナ出たりして。それはともかく、びっくり脅かし系もあるもののちょっとした映像の不穏さが恐怖感を煽るし、窓やドアなどに隙間がある、つまり境界が開けていることの怖さが秀逸なのですよ。楽しませてくれます。

↓以下、ネタバレ含む。








アバンでラ・ヨローナが怨霊化する経緯が描かれますが、気付いたら母親がいない、探したら兄を水に沈めてるというのが子供視線だから余計に怖い。この子供の目線であるがゆえの防げる気がしない怖さというのはありますね。最初に犠牲になる兄弟もアンナの家の兄妹も、大人から引き離されたり一人のときに襲われるとどうしようもない。えげつないです。『死霊館』シリーズは子供が酷い目に逢う率が高いな!そんな『死霊館』シリーズを踏襲してか、序盤にワンカットで家の間取りを見せていくのがジェームズ・ワン的です。エイプリルのお風呂シーンはちょっと『エルム街の悪夢』を思い出すし、夜に外から家のドア目掛けてカメラが突っ込んでいくのは『死霊のはらわた』っぽかったりして、往年の名作ホラーへの目配せを感じます(何も言わずにドアを開け閉めするのは『イコライザー』みたいですが)。でも新鮮な恐怖シーンも色々あって良いんですよ。エイプリルの入る浴槽の後ろが白いカーテンかと思ったらヨローナの白いドレスだし、髪を洗うのには(洗ってくれるんかい、とは思うけど)ヨローナが自分の子を沈めたシーンを思い出します。透明なビニ傘を開いたらその傘の向こうにいる、というのにはヒャー!ってなりました。

クリスの背丈が天井裏のドアに引っ掛け棒がギリギリ届くか届かないか、というのもスリルだし、ドアが音を立てて開いたり家のどこかから音が聞こえてくるという音使いにもビビります。あと「隙間が開いている」というのが、こちらとあちらが繋がってしまうという恐怖をもたらします。子供たちの乗った車の窓が70年代ということでハンドル回して開けるタイプで、これが勝手に動いて徐々に窓が開いていくのは車内という逃げ場のなさもあってやたら怖いし、気付けば家のドアや窓が開いている、というのも焦ります。最初の子供たちが入っていた物置のドアに呪術的な模様が施されてたりしたので、入り口が開いてれば入ってきちゃうということなんですかね。ただヨローナが自分で窓などを開けられるのかがよくわからず、いまいち襲われるルールがわかりにくいです。そもそもなぜヨローナがパトリシアのところに来たのか謎だし、水の近くで襲われることが多いものの水の中から現れるとも限らないようだし、最初は泣き声が聞こえるので出現がわかりやすかったのに後半は泣く間もなく奪いにくるし、ちょっと一貫性には欠ける気も。

主人公であるアンナは「必ず守る」と言ってパトリシアから子供たちを引き離しながら、結果死なせてしまいます。児童相談所の立場としてはやむを得ないんですが、パトリシアが犯人だと思ってるからかあまり反省とか後悔というのは見せないんですね。同僚のドナ(だっけ?)を「ドナなんか」呼ばわりしたり、呪術医ラファエルにもちゃんと守れみたいな態度だったりで、追い詰められて焦ってるとはいえちょっと好ましさは低め。ただ、今度は虐待してる側だと疑われてドナに逆に調査されるという、自身の行為が与えた思いを自ら知ることになるし、パトリシアの意趣返しに理由も与える、という辺りが狙いなんでしょう。なぜ炎の木の種をまたげるんだ!というシーンには超びっくりしますが、その行為に及んだパトリシアに説得力が出ますね。また、少し怪しげな呪術医ラファエルは正統派の悪魔払いではないだけに、不意に姿を消したり子供を囮にしたりとなかなかトリッキーで面白い。ヨローナの流した涙を武器にできるというのには「??」となりますが……あとスゴくつまんなそうに「ジャジャ~ン」と言うのが印象的で、やる気あるのかないのか不思議なキャラで愉快です。

怨霊のわりには結構物理的にグイグイ押してくる辺り『死霊館のシスター』ばりのパワーがあるラ・ヨローナ。血の涙を流す顔もインパクトあるし、家の前で仁王立ちする姿もやたら強そう。それだけに子供のプレゼントであるペンダント(なぜ現実化してるのかは置いといて)を差し出されて人間の顔に戻るのがドラマチックで、でも鏡に写った己の醜さに絶叫するところにもはや元には戻れない悲しみがあります。最後は炎の木の効果プラス十字架という神聖な力を、物理的にブッ刺して倒すという、どちらが決め手かよくわからんけどまあそれなら倒せるだろうという納得の結末。ほどけていくような消え方も独特で良いです。終盤の畳み掛けるようなピンチの連続はスリリングだし、子供たちは健気に頑張るしで面白かったですよ。そしてエンドロールの最後に聞こえる泣き声はヨローナ復活の予兆なのか?もしアナベル人形を抱えて出て来たら勝てる気がしないぜ……!

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