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2019
05.14

未来をその手に、正義をその魂に。『アベンジャーズ エンドゲーム』感想(その1)。

Avengers_Endgame_01.
Avengers: Endgame / 2019年 アメリカ / 監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

あらすじ
アベンジのときがきた。



宇宙最強の敵サノスが手にしたインフィニティ・ストーンにより、全人類の半分を消されてしまったアベンジャーズ。残されたメンバーたちはサノスを倒すべく再び立ち上がろうとするが……。マーベルコミックのヒーローたちが集結する『アベンジャーズ』シリーズの第4弾。

『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』から始まった「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」フェーズ3もいよいよ大詰め。前作『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』でサノスを止められなかったヒーローたちが、失った仲間たちのために、そして世界を取り戻すためにアベンジします。MCU新作は常に期待を持って臨んでいましたが、今作ばかりは楽しみとか不安とかそういうシンプルな感情を越えていました。続きを観たいという欲望と、終わってほしくないという切望と、有終の美への渇望とが複雑に絡み合っていて、公開2、3日前くらいはちょっと気分が悪くなりそうなほどでした。リアルタイムで11年間募らせてきた愛ゆえなんだけど、ちょっと観るの怖いなあ、と。しかしそんな恐れなど杞憂でしたよ。凄まじい。そして素晴らしい。

『インフィニティ・ウォー』で壊滅的な痛手を負ったアベンジャーズの面々。キャプテン・アメリカことスティーブらはサノスの行方を探るも居場所をつかめず、一方でベネター号で地球への帰還を試みたアイアンマンことトニーらは燃料切れで宇宙を漂流することに。怒りと悲しみと絶望が彼らを覆い、苦悩と恐怖と無気力が皆を苦しめるなか、一人の男が舞台に戻ってきたことで事態は再び動き出します。今後のMCUラインナップを見れば消えた者がどうなるかは予測できるものの、果たして納得のいく形で仲間を取り戻せるのかという疑問はあったし、シリーズからの「卒業」を明言しているキャストもいたので何かしらの別れも覚悟してましたが、次々と繰り広げられる思わぬ展開に一喜一憂、いや多喜多憂の驚き。各作品のメインキャラはほぼ全て登場しながら皆に見せ場があり、加えてあんな人やこんな人まで登場するサービスっぷりで、それでいて話がわからなくなることもない構成の見事さ。そして怒涛の熱さ。いやもうスゴいです。

MCUとして21本の作品、何十人もの登場人物、11年の歳月を、この一本に集約させたというのはまさに奇跡と言ってもいいでしょう。上映時間3時間2分はむしろ短いほどの密度と熱量、興奮と感動。過去作の全てを取り込む繋がり、深みと余韻、そして(信じがたいことに)爆笑と(信じられないほどの)涙。なんというか、歴史の生き証人になった感覚すらあります。ありがとうルッソ兄弟、ケヴィン・ファイギ。ありがとうアベンジャーズ。全てのキャストと全てのスタッフに、心からの感謝を。

↓以下、ネタバレ含む。








■完全なる敗北

多くのヒーローたちが総結集する作品であり、誰にフォーカスを当てても語れることがあるんですが、それでも今作は『アイアンマン』から始まって『アベンジャーズ』1作目で地球を救った、アベンジャーズのオリジナル6人の物語でしょう。トニー、スティーブ、ソー、ブルース、ナターシャ、クリントがそろって生き残っていたのはこの6人の花道を用意するためではないか、という予感は前作ラストでも感じましたが、まさにという感じです。他に生き残った者も配置的によく考えられていて、ネビュラはサノスとの絡みのキーとなるし、ロケットは宇宙の事情に通じているのとソーと他の者を繋ぐ役割、ローズはアベンジャーズの施設を利用するための権限を持つ者、そしてトニーを連れ戻し絶対的なパワーでサノスを圧倒する形でキャロルが関わってきます。しかしそんな彼らがいくら復讐に燃えようが、キャロルが『キャプテン・マーベル』で段違いの強さを見せていようが、事態は既に終わっているのです。サノスは地獄の指パッチンをしてしまった、半数の生命は失われた、という事実は揺るがない。しかもサノスはインフィニティ・ストーンを破壊してしまったので、そのあとでいくらサノスの首を取ろうが元には戻らないし、仇を討ったという勝利感さえない。人々を救うべきヒーローが人々を救えなかった時点で取り返しのつかない敗北を喫しているのです。

それから5年の歳月が流れるのには度肝を抜かれます。5年が経っても人々の傷は癒えず、資源の消費が半分になったところで幸福感などないわけですよ。その時点でサノスの理想はエゴでしかなかったと言えます。スティーブは人々のセラピーを行い、ナターシャは他のメンバーと連絡を取りつつ世界の安定を目指す、しかしどうしようもない閉塞感だけがヒーローたちを包みます。そんななかスコット・ラングが帰ってきてタイム泥棒ミッションが始まることで、一気に陽の展開へと変わっていきます。1400万605分の1の逆転劇は、一匹のネズミが偶然押したスイッチによって始まるわけですね。それにしてもここまでで既に驚きの連続。冒頭でクリントが家族を失うシーンで再認識する前作のショックや、あっけなく首を取られるサノス、5年経過のやるせなさなどの陰鬱な展開から、トニーに娘がいるという意外性、完全にマーク・ラファロになっているハルク(撮影も気軽にOK!)、引きこもりで超ファットなソー(何気に長髪に戻ってる!)、ローニンとして悪党を粛清しまくるクリントなど、あまりの変化に驚愕。でも皆が過去の傷を拭えないまま生きているのは共通しています。そんなドン底だからこそ、ここから未来を取り戻すという展開が熱いです。


■未来を取り戻すために

あくまで取り戻すのは過去ではなく未来なんですね。タイムスリップ展開はなんとなく予想してましたが、過去を変えても別の世界線が生まれて現在は変わらない、過去をなかったことにはできないというのがタイムスリップものとしてシビアに詰めた設定だなと思います。だから赤ん坊のサノスを殺しても何にもならない。それでも過去に飛んでの諸々のシーンは熱く、それ以上に爆笑をもたらすのが驚きです。『アベンジャーズ』1作目のチタウリとの戦いでは当時の熱量を思い出しつつ、ストーンを巡るドタバタ奪取コントに、キャップvs.キャップの激熱いバトルや『ウィンター・ソルジャー』と全く同じエレベーターシーンの再現というセルフパロディ、さらにはトニーが若き日の父ハワードに会うという、トニーやローズが言及した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まんまのコミカルさを実現するのにはやられます。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の舞台ではクイルが曲を聴きながら踊り歩くのが端から見るとアホだということがバレちゃったり、『マイティ・ソー ダーク・ワールド』の世界ではソーとロケットがドタバタを繰り広げたりとまあ愉快。

でも愉快なだけではなく、それぞれが過去との対峙、そして未来への覚悟を強いられることにもなります。トニーは自分が生まれる前の父ハワードと会い、厳しいだけではなかった父親の愛情を知ることになります。ソーは母に再会し、なるべきと思っていた自分とあるがままの自分を認識します。スティーブは70年前に別れたペギーを見かけ、失った時間と変わらぬ思いを噛み締めます。それぞれの背負った物語にここで再び向き合い、それがエンディングへの布石となっているんですね。ブルースだけはエンシェント・ワンに出会い時間の流れについて話す役割ですが、ハルクと一体化した彼は既に過去を乗り越え達観してるってことなんですかね。そしてそんななかでツラいのが、自分がソウルストーンの犠牲となるべきだと争うナターシャとクリント。それぞれが己の過去を鑑みた結果なわけですが、メンバーたちを家族と言ったナターシャがその家族を救うために命を投げ出すというのが悲しく、友人を本当の家族のために生かそうとする優しさがせつないです。しかも最後まで生き返らない。トニーが「全ては救えない」と言うのがここで現実になってしまいます。復活できないのは他のサラサラで消えた以外の者たち、ヴィジョンや(この世界の)ガモーラ、ロキ、ヘイムダルなどにも当てはまるというのがツラい。そしてそこにはトニーも含まれることになります。


■最終決戦

ついにストーンを揃え、ハルクが命懸けの指パッチンを敢行したのも束の間、過去のサノスが現れて始まる最後の戦い。このときサノスが「半分ではなく銀河を全殺しして作り直す」と言った時点で一見高潔ささえ感じさせた信念は崩れ、「この地球を破壊することは楽しませてもらう」と言うことで明確に倒されるべき悪へと成り下がります。『インフィニティ・ウォー』で娘を失ったときの境地に至っていない、別物のサノスなんですよね。それだけガモーラへの思いは強かったということでもあるわけですが、そこに至る未来はもはやこのサノスにはありません。もう気にすることなく倒してよし!ということで、ここからは見せ場に継ぐ見せ場、物量と連携と伏線回収が嵐のように迫り来る、まさに怒涛の一大バトル。本当にどこをとってもクライマックスというシーンが目白押しでとても冷静ではいられないですよ。

最初にサノスと対峙するのがトニー、スティーブ、ソーのビッグ3というのからして熱い。そして恐怖を乗り越え怒りの斧を叩き付けながら、太りすぎのせいか(間違いない)一転ピンチを迎えるソー。しかしそんなソーを救ったムジョルニアが、あああ!まさかの!キャップの手へ!号泣!『エイジ・オブ・ウルトロン』でちょっとしたジョークだと思っていたシーンがここにきてまさかの本採用、雷撃までまとってサノスを追い詰めるキャップに宿る、サノスとは違う真の高潔さに震えます。それでもサノスは倒れず、ヴィヴラニウムのシールドがガンガン削られていく危機。そこに聞こえるサムの声「on your left」!左から失礼!そして陛下が!魔術師が!サムにバッキーにガーディアンズにピーターが!次々に現れる復活した者たちにさらに号泣。そして!ついに!『アベンジャーズ』以来7年間待ちわびたあのセリフが、ついにキャップの口から!アッ、アッセ、アッセン(嗚咽)

そこからはもう次々に描かれるヒーローたちのアッセンブルにシビれまくりの度肝抜かれまくり。ペガサスを駆るヴァルキリー!最強ぶりを発揮するワンダ!クリントからグローブ・リレーするスパイディ!ガモーラと再会(実際は初対面)するクイル!スコットと並び立つホープ!アイアンマンっぽい人誰かと思ったらペッパー・ポッツ!母船を破壊するキャロル(間に合った)!そして女性キャラ総動員(激熱)!ここにナターシャもいれば(また号泣)!できること全部やると言わんばかりの過剰サービスが濁流となって襲い掛かり、MCUとして積み重ねてきたヒーローたちの魂が一気に放出されるのには語る言葉が見つかりません。スゴい。段々語彙力がなくなっていきますよ。スゴい。


■オリジナル6の物語

ストーンを付けたグローブがサノスに奪われたときも、グローブはトニーが作ったんだから発動しない仕掛けとか施してるんじゃないかなと思ったら、ストーンをアイアンマンに移し取る仕組みになっていたわけですね。さすがトニー。え、でもそれどうするの……と思った次の瞬間、決着は付きます。ストレンジと目を合わせたとき、トニーは全てを悟ったのでしょう。1400万605通りのなかで唯一の勝利、それが犠牲なしにはなし得ないものだということを。「私が絶対だ」と言うサノスに対して「私がアイアンマンだ」と『アイアンマン』1作目のラストでヒーローとなったときと同じセリフで指を弾くトニー。そのセリフは彼が揺るぎなき本物のヒーローであることの証です。サノス軍は全て消え去り、ローズが、ピーターが、ペッパーが見守るなか、常に我を通し己を貫いた男は最期もヒーローであることを曲げず、キャップに負けない高潔さを持って静かに息を引き取るのです。ただただ涙。

葬儀に集まった人々は、それはトニーの葬儀ではあるけれど、それ以外の犠牲者のことも思っていたことでしょう。クリントがナターシャのことを、ワンダがヴィジョンのことを口にするように。そしてヒーローとの別れがもう一人。単身ストーンを元の場所へ返しに行きそのまま戻らず年を経たスティーブです。愛する人と離れ70年間氷付けとなり、目覚めた後も正義のために身を削ってきたスティーブは、「最後に自分の人生を歩くのもいいかもしれない」と、元の時代に戻らないことを選択します。過去から現在に至るまで一人の普通の男として過ごすことは、その背景にある様々な戦いを知っているだけに落ち着かなさもあったろうと思うんですよ。己に無責任さも感じたかもしれない。でも今までの自分と仲間たちがそれを乗り越えてきたことを知っているから、見守る者に徹することができたんじゃないか、と思えるのです。誰よりも高潔に、個を捨ててヒーローとして生きてきたスティーブに、誰が文句を言えるでしょうか。ペギーと添い遂げたかどうかは明かされませんが、少なくともダンスの約束を実現してペギーと踊るスティーブに、十分戦ったよもういいよと涙。キャプテン・アメリカは一人のアメリカ人に戻り、その活動の歴史に幕を降ろすのです。

家族を救うため犠牲になったナターシャ、己を貫き世界を救ったトニー、人生を取り戻したスティーブ、あるがままの自分に立ち返ったソー、家族の元へ帰ったクリント。ブルースも実質引退ということになるのかはわかりませんが、アベンジャーズとして最初に世界の危機を救った6人は(また出ることはあるかもしれないけど)今後はメインから退き、次の世代のヒーローたちへその役割を引き継ぐのでしょう。これが彼ら中心の物語であったことは、エンドクレジットにサイン入りでキャスト表示される別格扱いからも明らかです。そしてエンドロール後に「帰ってくる」という言葉がないことが、彼らの終焉であることも示します。11年追ってきた壮大なサーガの幕引きには当然寂しさもありますが、いつかくるべき終わりをキッチリ描ききってくれたことにはひたすら感謝ですよ。これは明確な区切りではあるけれど単なる終わりではなく、MCUは次作の『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』でフェイズ3が終わり新たな局面へ突入するとのこと。これからもヒーローたちのドラマは続いていくし、もちろん今まで以上に期待も膨らみます。ただ今は、戦いを終えたヒーローたちに心から「3000回愛してる」と言いたいのです。

 ※

細かい点が言及できなかったので、感想2回目に続きます!
最高な点をひたすら上げていこう。『アベンジャーズ エンドゲーム』感想(その2)。

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