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2019
05.09

取り戻せ、国と夢と情熱を。『キングダム』感想。

kingdom
2019年 日本 / 監督:佐藤信介

あらすじ
王国はここから始まる。



紀元前245年、春秋戦国時代の中華では多数の国が覇権を争っていた。西方の秦の国では孤児の少年・信と漂が天下の大将軍を夢見て剣術の鍛錬に励んでいたが、ある日漂が王宮に召し抱えられて信は一人で稽古に励むことに。しかししばらくして漂が血だらけで信の元へと戻ってくる……。原泰久の同名コミックを実写化した歴史アクション。

中国の春秋戦国時代を舞台に、大将軍を目指す少年・信と、国を取り戻そうとする若き王・嬴政を描いた原泰久のコミックが実写映画化。原作は5巻まで読んだんですが(すんごい面白い)、ちょうどその辺りまでを映画化しています。しかし舞台が中国で歴史もの、しかも合戦やら宮殿やらスケールも壮大な話なのに、本当に日本で実写化なんてできるの?だ、大丈夫なの……?とかなりの不安があったんですが、これが観てみたらスゴく良いんですけど!引きの画で見せる広大な背景に、村や山や都市などのバラエティ豊かな舞台立てと、空間の使い方によりスケール感は抜群。登場人物には無理なコスプレ感もなく、それでいてキャラの原作再現度もかなりの高次元。何よりスピーディかつパワフルなアクションが個人戦も集団戦も山盛りでエキサイティング、実写ならではの迫力で魅せてくれます。台詞もいちいち熱い。ちょっとウェットすぎる部分もあるものの、それすら熱量へと変えていく構成が見事なんですよ。

信を演じるは『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』『斉木楠雄のΨ難』の山﨑賢人。コミック実写化やりすぎ問題は置いといて、粗暴ながら勢いのある信として思いの外なじんでいます。嬴政と漂の二役は『銀魂』『リバーズ・エッジ』の吉沢亮。異なる役の演じ分けも良いですが、その美形っぷりと目力を改めて認識できます。このアクションもできる二人が本作をしっかり引っ張っている感じが上手く出ているのがイイ。『十二人の死にたい子どもたち』橋本環奈はちんまりした姿が可愛らしいし、『散歩する侵略者』長澤まさみはしたたかさと威厳を兼ね備えた感がなかなか。ほか、本郷奏多、石橋蓮司、満島真之介、高嶋政宏、宇梶剛士、加藤雅也、要潤といった面々もハマっていて、特にアクション面で別次元の圧力をかける坂口拓にはシビれる!そして一番の不安要素だった大沢たかおの王騎が、思った以上に王騎じゃないですか!?そこ最高じゃないですか!?

『GANTZ』『アイアムアヒーロー』『いぬやしき』『BLEACH』などコミック実写化のアクション監督作の多い佐藤信介が、今回もハイクオリティなアクションとテンションとエモーションでやってくれました。エピソードの選択も実に自然な流れだし「そこの戦う順序を変えるか!」というのには唸りましたよ。コミック実写化としても剣劇スペクタクルとしても最高レベルです。

↓以下、ネタバレ含む。








原作ファンもこのキャスティングには納得なんじゃないでしょうか。『GANTZ』でもひねくれた役だった本郷奏多の成蟜はねじまがった王そのものだし、魏興の宇梶剛士はパワーファイターっぽさがあるし、要潤の騰は胡散臭いし、竭氏の石橋蓮司も体格は違うけど顔がまさに竭氏でちょっと笑っちゃうほど合ってます。長澤まさみの楊端和はいまいち強そうには見えないものの十分な貫禄を感じさせるのが良くて、特大ジャンプで打ち込む姿で魅せてくれるので文句なしです。貂の被り物は実写で見るとなかなかシュールですが、橋本環奈ちゃんが可愛いので許す!あと序盤に出てきた六平直政がすんごく香港悪役俳優っぽくて、早くも良し!となるし、昌文君の高嶋政宏がいつ変態的なことを言い出すのかとヒヤヒヤで、環奈ちゃんに神妙な顔で「お前……」と話しかけたときには「何ゲスいことを言う気だ?ちょっと待て?」って思いました(大丈夫でした)。

素晴らしいのは左慈の坂口拓ですよ。元々アクションの第一人者であるというイメージもプラスに働き、肩を怒らせての威圧感に容赦ない危険度、おまけにルックも原作に激似で、登場しただけで絶望感を与えるほど。あえてランカイと左慈の戦う順序を原作と変えることで、ランカイのマンガっぽさを軽減し左慈のラスボス感を増強してるのが上手い。山﨑賢人が勝っちゃうのがちょっとばかりウソくさく思えるというマイナス面もありますが……。

戦乱の世で己を高めていく男たちの大河ドラマなわけですが、そんなスケール感を随所で感じさせる広大な大地の風景、基本は中華的ながらどこか無国籍っぽさを感じさせる都の作り込みや衣装デザイン、山の民が住む崖に築かれた都の壮麗さなどにはアガります。一方で奇抜なキャラや対決の行方などには、実写にしたことで若干のファンタジックさもあるわけですが、それを展開の熱さでねじ伏せます。王宮に行った漂が血だらけで戻ってきたり、道中襲ってきた盗賊を圧倒することで信の強さを見せたり、いきなり朱凶の男との一騎討ちというピンチがあったり、要するにケレン味の連続でグイグイ引っ張っていくんですね。もちろん原作5巻分を一本の映画にするために見せ場は多くなるんですが、熱さの緩急というのはあるので一本調子にはなってないし、政と信が洞窟のなかで目指すところを見上げるかのように並ぶとか、成蟜の目の前に広がる7万の軍勢の物量など、画のカッコよさもあるのがイイ。場面転換がスター・ウォーズ方式の横スライドなのには、ある種の神話を描くんだという気概があるように勝手に思ってしまってニヤリとしちゃいましたよ。最初と最後のタイトルの出方もイカします。

ちょっとウェットに過ぎるところもあるんですけどね。漂の死を嘆く信の泣き叫び方はちょっと仰々しいし、左慈に「夢を見て何が悪い」と言う台詞とかさすがにアレなんですが、でもしつこいほど大将軍になると言い続ける信に一貫性があるので不自然ではないです。漂の回想映像が何度も出てくるのも少しくどいんだけど、それが積み重ねとなったせいか意外にもだんだん熱さを感じるようになってきたんですよ。最後の方は信みたいに「ひょう~!」ってなりますよ。あと台詞がいちいち良くて、「あいつは誰よりも高く飛ぶ」とか「託したぞ」とかこれまたケレンの効いた台詞が映像と相まって、要は「カッコいい」のです。アクション監督は佐藤監督作常連で『RE:BORN リボーン』(まだ観れてないですが……)の監督でもある下村勇二ということで、絵になる動きも多く見応え十分。出番は少ないけどバジオウとかも魅せるし、信のドロップキック多用は剣技で足りない力を補ってる感があります。政の動きに見る典雅さなど、アクションでキャラを語るところが良いですね。クライマックスの集団戦なんて「頑張ってるなあ」ではなく、個々の見せ場も織り込んでの堂々たる合戦シーンとなっていて凄い。

最後に立ちはだかる王騎に対し、中華統一をぶち上げる政。彼こそが後の秦の始皇帝なわけですが、今後の五十年の争乱をなくすために戦乱の世をも覚悟する気概を、目に宿して見せる吉沢亮がイイ。そしてちゃんとデカく見えるような工夫まで凝らした大沢たかおの王騎、喋り方とか超然とした振る舞いとかまさに王騎でたまりません。ラストに静けさを取り戻した玉座の前で、並んだ信、政、貂の三人の顔に浮かぶ、単なる勝利ではない「勝ち取った希望」を思わせる表情がまた良いです。邦画の娯楽大作として文句なしのスケールと熱量、これは続編もやっちゃうかな?原作はここから先はさらに面白いらしいので、まずは原作を読みたいと思います!ああ時間がほしい!

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