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2019
04.23

海を駆け、陸を走り、世界を救え。『ハンターキラー 潜航せよ』感想。

Hunter_Killer
Hunter Killer / 2018年 イギリス / 監督:ドノバン・マーシュ

あらすじ
頼れるのは、音。



ロシア近海で消息を絶った米海軍の原子力潜水艦を捜索すべく出航した、ジョー・グラス艦長率いるハンターキラーと呼ばれる攻撃型原潜。一方でロシア国内で起こった陰謀により世界情勢には大きな危機が訪れる。グラスたちはロシア大統領を救うという前代未聞のミッションに挑むことになるが……。ジェラルド・バトラー主演の潜水艦アクション。

ドン・キースと元原潜艦長ジョージ・ウォレスによる小説『Firing Point』を映画化した潜水艦サスペンス・アクション。潜水艦ものって結構久し振りで、『レッド・オクトーバーを追え』『クリムゾン・タイド』『K-19』などが作られた90~00年代以来ですかね?ハンターキラーと呼ばれる原潜アーカンソーを駆り行方不明となった米原潜を探すグラス艦長らが救ったのは思いがけない生存者。さらにはロシアを揺るがすクーデター勃発により、地上部隊と連携するため不可侵のロシア海域へ潜航していきます。ソナー音が頼りな海中を行く緊張感や逃げ場のない閉塞感といったスリルは潜水艦ものならではの面白さ。しかしそれだけではなく、別行動を行うわずか4名の特殊部隊による空のスリルや陸のドラマまで描かれ、さらには予想外の一大海戦へ突き進むスペクタクルに至るまで、様々な要素で盛り上げまくり。そして世界が引っくり返る事態に立ち向かう海の男の矜持と、敵対や国境を越えた共闘、命懸けの救出劇も熱い!新鮮な画もあるし、キャラ立ちもイイ。これは面白いぞ。

ジョー・グラス役は『ジオストーム』『ザ・アウトロー』のジェラルド・バトラー。いつもなら拳で解決するところですが、本作はなんとバイオレンスなし、決断力と貫禄だけで魅せるのがイイ。グラスにミッションをくだす海軍少将ジョン・フィスク役は『ジョン・ウィック:チャプター2』コモン、こちらも本作ではアクションなしですが、上層部と現場の板挟みに睨み顔で耐えながら携わっていきます。そんなコモンに文句たらたらな統合参謀本部議長チャールズ・ドネガン役の『ロボコップ(2014)』ゲイリー・オールドマンのゲスさも面白い。またロシア潜水艦の艦長アンドロポフ役である『ジョン・ウィック』の敵ボスことミカエル・ニクヴィストが激シブくて最高なんですが、これが遺作の一本となってしまいました。他、情報官ジェーン役は『グリーンブック』の奥さん(全然印象違う!)を演じたリンダ・カーデリニ、鬼のビーマン隊長役は『007 ダイ・アナザー・デイ』トビー・スティーヴンス。

『ワイルド・スピード』シリーズの製作者が関わっているというのもあってか、命懸けのミッションとか無言で通じ合う男たちといった極限状態の攻防がとにかく熱い。ベテラン艦長と若い乗員たちとの関係が徐々に変わっていくとか、ロシアの大統領とSPの信頼関係などもスゴく良いです。潜水艦ものにハズレなしなんて言いますが、そんな通説をさらに補強してくれる一作です。

↓以下、ネタバレ含む。








潜水艦ものと言えばまずは音の使い方ですね。暗い深海で音だけを頼りに進む、基本は感知されないことが重要なので敵に位置を知られないように静寂を保つ、緊張のなかソナー音が艦体を打つ、などなど本作でも様々な音使いが描かれます。エンジン止めて柔らかい泥底に着地することで逃げ切るというのも手に汗だし、音を立てちゃいけないところでスパナを落としそうになるところなんてベタだけど「あっ」て声が漏れちゃいますよ。音さえ気付かれなければ、ロシア艦のすぐあとをアメリカ艦が追っているという斬新な画もあり得るわけですね。この意外と見たことないかも、という斬新さがちょいちょい出てくるのが燃えるんですよ。泥煙のなかから力強く現れるアーカンソーであるとか、海底を埋め尽くす機雷原であるとか、救助挺が敵艦にドッキングしようとして海流に流されそうになったりというのもイイ。終盤でアメリカ艦隊とロシア艦隊がそれぞれ映されるのは緊迫感に満ちているし、潜水艦と駆逐艦が海上で向かい合うという絵面などはインパクトがスゴい。あと潜航するときに立ったまま体を斜めにする、という若干マヌケな画も新鮮です(マヌケだから今まで誰もやらなかったんじゃなかろうか)。

本作は多くの見所ポイントがありますが、まず一つめはジョー・グラス艦長とクルーたちの関係性ですね。艦長は過去に「酷かった」戦闘を経験したベテランですが、他のクルーは副艦長も含めわりと若いです。副艦長補佐は22年間乗ってると言うだけにグラスに「艦長は落ち着いているべき」みたいな進言もしますが、不意にやってきた新任艦長に誰もが不安を隠せないんですね。そんななか泰然と構え屹然と命令をくだすグラスの姿に徐々にクルーたちも信頼を寄せ始めます。大胆な行動に最も噛みついていた副艦長が機雷原を抜けたときについに艦長を認めるのも熱い。救助挺の二人もイイですね。あの救助挺の壁薄そうなのが地味に恐怖。二つめはロシア潜水艦の艦長アンドロポフとグラスとの関係。最初は英語を話せないふりをしていたアンドロポフを、グラスが同じ潜水艦乗りとして「未来のために」と説得し、これに応じて機雷原を抜ける手助けをするわけです。ロシアの駆逐艦に補足されるクライマックスでは、浸水にミサイル飛来と畳み掛けるような危機の連続が凄まじい緊張感で最高なんですが、駆逐艦クルーがアンドロポフの部下たちだと言うからまあ説得するんだろうとは思うものの、クルーの名前を一人ずつ呼ぶという予想以上の激熱展開にはグッときますよ。

三つめは特殊部隊の4人のドラマ。潜水艦よりこっちの方がヤバくて、少数精鋭とは言えたった4名でロシアに潜入し敵の目を掻い潜って大統領救出とかインポッシブルにもほどがあります。空からのダイブでもピンチがあるわ、水中を歩いて潜入するわ、夜の塔の上で追い詰められるわで『ローン・サバイバー』なみのサバイバル・ミッション。訓練時には「お前のせいで全滅だ」とか言われてたルーキーが、橋の上から集中砲火を浴びる万事休すのシーンでスナイピング、というのが熱すぎます。カメラがグッと寄ってのヘッドショット、からのランチャーで車を破壊の逆転には歓声ですよ。それだけに二人殺られちゃうのツラいんですが、いつも不機嫌で容赦なさそうな隊長が最後にルーキーを助けるために一人戦場に戻り、ルーキーの巨体をかつぎあげて撤退するのがこれまた熱い。地上部隊パートはそれだけで一本映画が作れそうな密度でたまらんです。

四つめはロシア大統領と彼を守ろうとするSPのドラマ。このSPがビーマン隊長らと組むことで大統領救出に光明が差すんですが、彼が飛び込んでの銃撃、からの「クリア!」にはシビれます。最後は大統領を逃がすため身を呈して散っていくのがせつないですよ。ロシア大統領が結構デカくてガタイもいいので何か戦えそうな気もするんですが、プーチンじゃないのでそれはなかったです。五つめはアメリカでの上層部ドラマ。他国のクーデターに対し切り捨てを主張するゲイリー・オールドマンのドネガンに対し、戦争を回避すべきだというコモンのフィスク少将、そこにNSAのジェーンがサラッと絡んでサラッと推進していくという、事件が起きるのは現場だけじゃないという熱量をちゃんと入れてくるんですね。特に作戦失敗かと思われたときにドネガンが「戦争を始めた上に敗北まで招いた」と皆の前でフィスクを責めるのが酷すぎて引くんですが、グラス艦長とは真逆の信頼できないリーダーとして描いてるんでしょうね。最後に一件落着したあとのものすごくばつが悪そうな顔が可笑しいです。

という具合に複数の見所がそれぞれ面白いのに、互いが絡み合いながらしっかり盛り上げてしっかり着地させるのが実に見事です。難を言えばロシア人同士の会話が英語なのは残念だとか(でもこれはまあよくあること)、クーデター一味らしきロシア駆逐艦の艦長をどうしたのかとか、主役の潜水艦であるアーカンソーが魚雷菅をやられて最後に活躍できないのがちょっと物足りないとかはあるんですが、敵対からの融和、共闘、そして互いを認め合う者たちの姿に熱く泣けます。何より暴力で国を奪おうとしたロシア軍部のヤツらに対し、ジェラルド・バトラー自体は暴力を振るわない、というのが象徴的(魚雷は撃つけど)。久々の潜水艦もの、堪能しました。

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