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2019
04.03

ヒーローは強く神々しく揺るがない。『キャプテン・マーベル』感想。

Captain_Marvel
Captain Marvel / 2019年 アメリカ / 監督:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック

あらすじ
猫ちゃんカワイイでちゅね~!



1995年のロサンゼルスに落ちてきた一人の女性、ヴァース。別の惑星で反乱分子を追っていた彼女は強力なパワーを持っていたが、過去の記憶がなかった。その記憶に隠された秘密を狙う者たちに襲われた彼女は、地球の特殊機関の男と共に行動することになるが……。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の女性ヒーロー、キャプテン・マーベルを描くヒーロー映画。

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』でとんでもない衝撃を与えてくれたMCU、そこに新たなヒーローが登場。MCUでは初の女性ヒーロー単独作となる本作の舞台は、アベンジャーズ結成以前の1990年代。ビデオショップの屋根を突き破って空から落ちてきた、過去の記憶を失った女性ヴァースが、自在に姿を変えるスクラル人の野望を阻止するため戦います。強力なエネルギーを腕から放射するフォトンブラストに加え格闘術もこなすヴァースを悩ます、覚えのない記憶のフラッシュバック。そこに隠された秘密が彼女の運命を大きく変えていきます。MCU空白の90年代を時代的小ネタも入れつつ語りながら、特異な運命に屈することなく立ち向かう一人の女性の神々しいまでの強さ。ロジックよりエモーションで魅せるヒーローは文字通りの眩しい輝きを放ちます。序盤は若干入り込みにくいけど、尻上がりにどんどん面白くなります。

やがてキャプテン・マーベルとなるヴァース役は『ルーム』『フリー・ファイヤー』ブリー・ラーソン。その美しくもガッシリした顔には強さが表れ、何より立ち姿が常にカッコいいというのが最高。ちなみに彼女の少女時代を演じるのは『gifted ギフテッド』でキャップことクリエヴァと共演したマッケナ・グレイスちゃんですね。そして彼女と行動を共にすることになるのがニック・フューリー。演じるはもちろん『ミスター・ガラス』サミュエル・L・ジャクソンなんですが、20年くらい前のフューリーということで、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のトニーのようなCGによる若返り処置を施され、全編『パルプ・フィクション』の頃のような若さ。他、ヴァースの上司であるヨン・ロッグ役は『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』ジュード・ロウ、スクラルの将軍タロス役に『レディ・プレイヤー1』ベン・メンデルソーンなどが出演。監督のアンナ・ボーデンはMCU初の女性監督なんですね(他作品でも組んできたライアン・フレックと共同だけど)。

どうしても『アベンジャーズ エンドゲーム』への繋ぎ感はあるし、少しもたつくバランスの悪さもあるけど、オリジン描いて最強を見せて次への希望まで持たせるという高いハードルを越え、移民問題や女性軽視問題まで込みなのを思えば、これは及第点でしょう。アベンジャーズ誕生のきっかけとなり、かつアベンジャーズを救うきっかけにもなりそうなキャプテン・マーベル、とにかく最強で痛快。冒頭のかつてないマーベル・ロゴも素晴らしかったです。あと猫ヤバい。

↓以下、ネタバレ含む。








■空白の90年代

始まりのマーベル・ロゴがスタン・リーだらけ!スタン・リーは電車シーンの中でも出てきて、亡くなっても愛されアイコンとして生き続けるんですね。泣けます。そんな冒頭、いきなり見知らぬ異星から始まるので若干着いていきにくいのは難点。でも待てよ?惑星クリーって……あっ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のロナンの星だ!というわけで、『ホビット 決戦のゆくえ』リー・ペイスの演じるロナンに『ターザン:REBORN』ジャイモン・フンスー演じるコラスまでが再登場。フューリーが出ることは知ってましたが、この二人はもうMCUで見ることはないと思ってたので嬉しいサプライズ。ロナンはまだペイントもなく宇宙船もねじれてないぞ。さらにクラーク・グレッグのコールソンが『アベンジャーズ』1作目以来の登場、ドラマの『エージェント・オブ・シールド』では大活躍してますが(シーズン1しか観れてないけど)、ようやく正史復帰です。スポットかもしれないけど……。ルーキーということでちょっとだけ若いですがあまり変わらないな。老け顔……いやなんでもないです。フューリーの危機を見逃したりと勘のいいところを見せる辺りさすがですが、その後フューリーに色々無茶振りされるとは思ってもいなかったことでしょう。

舞台は1995年。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の始まりが80年代、『アイアンマン』が2008年だからその中間くらいの時期ですね。ヴァースが落ちてくるのがレンタルビデオ屋であるとか、PCの読み込み速度がやたら遅いとか、携帯はまだなくポケベルが主流だとか、時代性を懐かしさと笑いに代えてます。ただ個人的にはそこまで昔という感じでもないので(おっさんだからか?)ノスタルジーは少なめ。楽曲はニルヴァーナの「Come As You Are」とかノー・ダウトの「Just A Girl」など時代を象徴する(そして超好きだった)曲が流れるのにはアガったんですが、正直使いどころはそれほどシーンと合ってる気がしないです。アクションもアングルと繋ぎ方が微妙だったりして見にくい場面が多いし、キャロルとマリアの再会時の会話シーンなどは切り返しが単純なのもあって少々タルい。スクラルは誰でも変身できるが練習が必要だ、とわざわざ説明を入れたり、急にコミカルな会話を入れようとしたりして、流れを断ち切るシーンが多いんですよ。なのでちょっとバランスは悪いです。


■キャロル・ダンヴァース

しかしそんな引っ掛かりを補って余りある主人公の魅力ですよ。ヴァースことキャロル・ダンヴァース、最初はやけに自信過剰だし、ところ構わずフォトンブラストぶちかますしで、なんか大丈夫かなという気がするんですが、それらは彼女の負けん気の強さ。ヨン・ロッグ相手の格闘にも全く怯まず、女性であるという偏見は片っ端から砕いていく。そもそも女性がパイロットであることで様々な差別を受けてきたキャロルは、それでもめげず男社会に立ち向かってきたわけで、友人マリアが彼女をヒーローだと評するのもそういう経緯があるからでしょう。キャロル自らも「戦士でありヒーローだ」と名乗るのはそれだけの気概を持っているということでもあります。はなから自分をヒーローだと名乗るのは意外と珍しい。つまり彼女の立ち位置は最初から正義の味方なんですよ。そしてヒーローは挫けない。子供時代や軍隊時代の無茶したり貶されたりといった過去、それら全てで立ち上がってきたキャロルの姿を覚醒の瞬間に重ねる演出は実に熱く、ここだけでもうキャロルが世界を救う存在である説得力になってます。

だから覚醒して降り立つときの金色に輝く姿は神々しさが凄まじい。そしてその強さも驚異的。最初は、まあ強いけどこれでサノス倒せるの~?とか思ってて本当ゴメン。覚醒後のパワーは段違いで、赤い光線は金色にグレードアップし、輝くモヒカンで飛び回り、戦闘機を体の真正面でぶつかって破壊、ロナンの連れた宇宙船を木っ端微塵に。最後には宇宙空間でマスクをしなくても平気という、まさに人智を越えた強さを見せてくれます。クリーのAIにパワーを授けられたというところは微妙だなあと思ってたけど、それも真実はローソン博士ことマー・ベルのコア、四次元キューブの力が宿っての超人化だったわけで、インフィニティ・ストーン由来というならそりゃあ強さも納得。金色に変身するというのはスーパーサイヤ人のようだし、それでいて出自は地球人ということで、まさにクリリンにして孫悟空ですよ。そしてヨン・ロッグが「素手でやろうぜ」「力を証明しろ」というのに対しパワー全開でフォトンブラストぶちかまして言い放つ「証明する必要はない」。女性を力や論理で抑圧しようとする男に、従う必要などないと叩き付ける女性主人公にはシビれます。「いつか手に入れる、彼女をな」とキャロルをモノ扱いして抑圧的な態度を見せたロナンなどは、もう既にブッ倒されているわけです。


■本当の姿

キャロルには本当の姿が明らかになることでの驚きがあるわけですが、これはスクラルも同様です。彼らが変身するのは陰謀のためではなくむしろ身を守るため。国を追われ住みかを探すという点で難民問題へのクローズアップでもあるわけです。タロスを演じるベン・メンデルソーンは『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』でも『レディ・プレイヤー1』でも悪党役だったので、完全に裏をかかれるというニクいキャスティング。また猫のグースが散々要注意生物扱いされるのは宇宙人ギャグかと思っていたら、本当に危険生物フラーケンだったというのも驚き、というか敵をバクバク食べちゃうのには爆笑です。猫コワイ。インフィニティ・ストーンまで飲み込んでエンドロール後まで吐き出さないという毛玉扱いなのスゴい。グースをむっちゃ可愛がるフューリーの本当の姿も驚きだし、左目を失ったのが猫のせいというのには愕然とします。さすがに、え、それでいいの?『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』辺りで何かもったいぶった説明してなかったっけ?とは思うんですが。フューリーは「宇宙にも乱気流あるのか?」とか実はバカなんじゃないか疑惑まで浮上して、この先の威厳は保てるんでしょうか。キャロルの友人マリアがパイロットとしての本当の姿を娘のモニカに示すのも良いし「こんなクールな仕事やらなかったら後悔するよ」と言うモニカもイイ。キャプテン・マーベルのスーツデザインは、母を勇気付けキャロルを力付ける一人の少女が選んだものだったわけです。

というように、本当の姿が明らかになるという物語でもあるんですね。『インフィニティ・ウォー』のラストでキャプテン・マーベルを呼び出す機器が、実は元ポケベルだったというのも驚き。どう改造すれば銀河二つぶんも届くようになるんだ……。それはともかく、キャロル・ダンヴァースが一人のヒーローとして立つまでの経緯がこれで明かされたわけです。なぜ『インフィニティ・ウォー』での銀河の危機にいなかったかと言えば、スクラルの居住地を探していたからなんですね。そしてここまでフューリーが彼女を呼ばなかったのは、逆に言えばアベンジャーズのメンバーたちを信用していたということでもあるのでしょう。とにかく強い、女性だからとナメるヤツにはさらに強い、でもバイカーを新聞の端から目だけでチラッと見るイタズラっぽさのようなキュートな面もある。そして何より、いくら倒れても起き上がる精神力。不屈の闘志で立ち上がり続ける彼女は、サノスの仕打ちにうなだれたアベンジャーズに精神的にも力になることを予感させます。

アベンジャーズという名前も元を辿ればキャロルの通り名「アベンジャー」から取られたものだということもわかります(プロテクターズにならなくてよかった)。そしてエンドクレジット後さっそく、フューリーのポケベルの通信が切れたと思ったらいきなりそこにいるキャロル。ここで劇中言葉にされなかった「キャプテン・マーベル」を名乗っていれば熱かったんですけどねー!キャプテンとキャプテンの邂逅だし!ともかく『アベンジャーズ エンドゲーム』への布石は整ったということで、今度はそちらを全力で待ちましょう。

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