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2019
03.07

走って襲って食べる都市!『移動都市 モータル・エンジン』感想。

Mortal_Engines
Mortal Engines / 2018年 アメリカ / 監督:クリスチャン・リヴァーズ

あらすじ
捕食自走増殖都市です。



最終戦争から数百年、生き残った人類は移動型の都市で生活し、都市同士が捕食しあう世界となっていた。指導者のヴァレンタイン率いる巨大移動都市ロンドンは支配を拡大し続けていたが、そこに復讐心に燃える一人の少女ヘスターが潜入する……。フィリップ・リーヴの小説『移動都市』を実写映画化したSFアドベンチャー。

「60分戦争」と呼ばれる世界を滅ぼした戦争後から数百年が経ち、人々は機械仕掛けの巨大な移動機構を備えた都市に暮らしながら、各地を移り渡り物資を探すという世界。ここで都市が動くと聞いて「何か意味あるの?」ではなく「超カッケー!」と思う人にとって、本作は燃える要素しかありません。始まりはとある小さな移動都市、鳴り響く警報に何事かと思いきや、超巨大都市ロンドンが補食しようと襲い掛かる!都市を食う都市とか聞くだけだとわけがわかりませが、これはその都市を襲って資源や労働力を取り込むということなんですね。とか言いながら文字通り「食らう」という絵面になっているのが衝撃。そんな独特な文化のなかロンドンに潜り込んだ一人の女性ヘスター。とある復讐に燃える彼女が、ロンドンに住む青年トムと出会うことで物語は動き出します。世界が滅んだ後の未来、機械仕掛け、唸るエンジン、古代兵器、空の要塞、機械の体などなど、スチームパンク、もしくはカラクリSFの要素がてんこ盛り。粗さはありますが、ここまで詰め込んでくれれば文句なし。

製作・脚本は『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』シリーズのピーター・ジャクソン、監督はピージャクと多く組み『キング・コング』ではアカデミー視覚効果賞を受賞したというクリスチャン・リヴァーズということで、引きから都市に寄っていくカメラワークなどはまさに『ロード・オブ・ザ・リング』を彷彿とさせるし、絵的な強度に支えられた映像はスケール感抜群。ヘスター・ショウ役(字幕ではヘクター)の新鋭ヘラ・ヒルマーは目の力が凄くてとても存在感があってイイ。郷ひろみっぽい顔でヘスターと行動を共にするトム・ナッツワーシー役は『ムーン・ウォーカーズ』ロバート・シーハンで、巻き込まれ型主人公として冒険を繰り広げることになります。へスターの仇であるヴァレンタイン役は『マトリックス』『ロード・オブ・ザ・リング』のヒューゴ・ウィービングで、悪ヒゲ姿がシブくてカッコいい。他アナ・ファン役のジヘはクールな女性ソルジャーとしてアクションでも魅せてくれるし、『ドント・ブリーズ』のスティーヴン・ラングがシュライク役として異様な姿で登場、さすがにこれは気付けないぞ。

これは例えるなら『マッドマックス』の世紀末風味にメカニカル感をブチ込んだという感じで、しかも実写版『ハウルの動く城』にして実写版『天空の城ラピュタ』でもあるんですよ。描きたい話のわりに尺が短いのか若干駆け足なのが本当に残念で、もっと浸っていたいしもっと知りたい世界観です。楽しいし燃えるし大好き。

↓以下、ネタバレ含む。








■ロンドンが攻めてくる

冒頭、最初の街が襲撃を受けるやいなや、通りの店舗が次々畳まれて格納されていく機械仕掛け感は、もっと見たかったと思わせるほどに最高。コンパクトに畳まれた都市が爆走を始めるのには興奮、しかもその後ろには比べ物にならないほど巨大な都市、しかもそれがロンドンだというから驚きです。幾多の映画で破壊の標的になったロンドンがまさかの破壊する側ってだけでアガりますよ。ロンドンは「補食都市(プレデター・シティ)」と呼ばれ、本当に都市を食う都市というシーンがあるのもスゴい。バクバク食べます。大聖堂、ビッグベンなどのランドマークを配しながら、超巨大な多層的都市部を持つという威容で、これが移動するとか狂気の沙汰ですが、まあ実際走ってるので納得するしかないですよ。あとロンドンが走った跡の轍が超デカイ!この動く都市が『ハウル』っぽいわけですが、スケール感はどうかしてるくらい段違いです。あれだ、『ニンジャバットマン』の動く城が実写になった、という方が近いかも(変形はしませんが)。

ロンドンでは「60分戦争」前の技術をオールドテクと呼び、それらを見つけて移動都市などに使っているようです。ロンドンの博物館では壊れたテレビやスマホが失われた技術として展示され、なぜかアメリカの古き神としてミニオンズの像まで(ユニバーサルだからな)。そういやへスターが1000年前のトゥインキーを「イケる」と言って食べますが、パッサパサじゃないんだろうか……。移動都市は基本的には略奪で資源を得て、何かを生み出すというのはあまりないのかな?そこら辺のなぜ都市を襲うのか、そもそもなぜ移動するのかというのはもうちょっと深掘りしてほしかったところです(原作にはあるのかもしれませんが)。一応銃もあるようですが、使ってるのはヴァレンタインくらいなので貴重なのでしょう、そこがまた権力者という感じ。ロンドンの住人の一部は他の都市を狩るのを娯楽として楽しんでる節があり、倫理観はわりと捻れてるようです。あと最下層には恐怖心を煽るように不要物を捨てるデカい穴があって、へスターがいきなり転落するのには、主人公じゃないの?と驚きます。すぐにトムも落とされるので、ああ二人で行動するんだなとわかって一安心ですが、よく無傷だったな!


■空に都市、地にも都市

他には地中を掘り進むムカデみたいな移動家屋?が登場したり、小さめの移動都市が集まって人身売買が行われたりと乱れた世界も描かれます。小さめと言ってもそれなりのビルくらいあるので、それが走り出すなか逃げようとするへスターとトムがスリル。二人を救うのが反移動主義のアナ・ファンで、荒くれ者のなか一人で助け出すのが激強くてシビれます。さらに危機を煽る存在として登場するシュライクには『ターミネーター』や『バイオハザード2』の追跡者のような追い付かれたら死ぬ感があってたまりません。トムが飛行士を目指してたというのでもしやと思ったら、ちゃんと飛行機も登場、雲の上を飛ぶシーンが気持ちいい、とか思ってたらまさかの空中都市!スゴいぞ、ラピュタは本当にあったんだ!と激アガり(ラピュタではない)。シュライクに襲われてあっという間に落ちてしまうのが実にもったいなく、空中都市の様子ももっと描いてほしかったところですけど。ここで戦うと壁代わりの布切れを突き破ってすぐに転落死、というのがシビアです。

そして楯の壁のロンドンとは異なる威容がこれまた壮大。絶壁にへばりつくようにして超巨大な都市が拡がる様子は迫力であり、同時に移動都市と静止都市という対立があることがわかります。狩猟民族と農耕民族みたいなものでしょうかね。しかも大量の戦闘機を擁して防衛ラインも完璧。というように、惜しげもなく世界を拡げていくのが楽しくてしょうがないです。でもこれまた登場間もなくヴァレンタインの作り上げたオールドテクの最終兵器メデューサによって破壊されてしまう。テンポがいいと言うよりは展開が早すぎるんですね。これは苦言というよりはもっとじっくり観たかったという口惜しさなんですが、さすがに『ホビット』のように最初から二部作構想で始めるのは苦しかったか(『ホビット』は結果三部作になったけど)。それでも129分にここまで盛り込んでるのは大したものです。


■過去の遺物を止めろ

へスターは顔を赤いマフラーで覆った姿がイカしてるんですが、それは顔の傷を隠すためでもあります。母を殺したヴァレンタインを討つためロンドンに乗り込むも返り討ちに逢い、一緒に始末されそうになったトムと共に不本意ながら旅をすることに。でもトムの危機を救ってしまう辺りにへスターの優しさが見え隠れするし、トムはへスターを見捨てず一緒にいようとするし、ヘスターもまたトムを見捨てず連れていこうとする、というように旬巡しながらも助け合う二人の関係は良いですね。またへスターが語る過去も面白く、親代わりとなるシュライクに救われサイボーグ化することを一度は受け入れようとする辺りはなかなかへヴィですが、復讐に駆られることで人間性を保てたというのは皮肉でもありますね。人間味を失ったシュライクが、死にゆく際に思い出すのがへスターが見せてきた笑顔だというのが泣けます。一方のトムはロンドンに疑問は持ちつつもオールドテクに一喜一憂していたナード的な青年だったわけですが、そんな彼が外の世界を回ることで見聞を広げ正しき方向に進もうとするのが王道アドベンチャーだし、初めて見る景色に圧倒されていくという観客目線を担う役割も持ってるんですね。

クライマックスは再びロンドンに乗り込んだトムとへスターがヴァレンタインを止めようとする最終決戦。メデューサを止めるための強制停止ドライブは額にある目の形というのが味のある小物ですが。USAとあるのでアメリカ製なのかと思ったら差し込み口にはMEDと書いてあって、差すとMEDUSAになる、というのには思わず快哉を叫びそうになりますよ。ヴァレンタインがへスターの父親であることを明かすのには『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』かい!と思いますが、苦しみながらも戦うへスターに見入ってしまいます。最後は墜落し我が町に潰されるヴァレンタイン。へスターは二人の父親を失うわけです。ただギリギリで止まったようにも見えるので生きてる可能性もなくはないですね。

なぜシュライクやアナにヘスターの居場所がわかったのかは謎だし、他にもツッコまれそうな点はそりゃあ多々あります。何より駆け足すぎて描ききれてない箇所が多く、それが物語を薄く感じさせる要因にもなっているのはかえすがえすも残念。へスターとは異母姉妹だったキャサリンとの絡みも見られないし、アナが風花と呼ばれた過去についても匂わすだけだし、他にももっと掘り下げてほしかった人物や街が多すぎます。移動都市ももう一つくらいあってもよかったし、そもそも移動都市という存在には何らかの象徴性がありそうなのにそれが伝わってこないのももったいない。それでも好きな要素が濁流のように襲い掛かってくるので、結果的には楽しさしかないんですけどね。もう偏愛です。飛空挺で世界中を旅しよう、という爽やかなラストも似つかわしい。願わくばソフト化の際は未公開シーンを1時間くらい足したスペシャル・エクステンデッド・エディションが欲しいです。頼むよピーター・ジャクソン!

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