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2019
02.23

XYZは変わらない。『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』感想。

city_hunter_private_eyes
2019年 日本 / 総監督:こだま兼嗣

あらすじ
MOKKORI.



シティーハンター冴羽獠の元に、モデルの進藤亜衣がボディガードを依頼にやって来る。依頼を受けた獠が相棒の槇村香と共に亜衣の仕事先に行くと、そこには香の幼なじみというIT会社の社長・御国真司が。一方で海坊主と美樹が新宿に集まる傭兵の情報を入手するが……。アニメ『シティーハンター』20年ぶりの新作となる長編映画。

北条司のコミックを元に1980~90年代にテレビ放送され、スペシャル版放送や映画版公開もされたアニメ『シティーハンター』が20年の時を経て劇場用長編で復活。シティーハンターとは新宿の街のスイーパー(掃除屋)、冴羽獠が相棒の槇村香と共に美女の依頼による難事件をこなしていく、ギャグも取り込んだハードボイルド・アクション。アニメ版は主題歌に豪華ミュージシャンを起用したのも特徴ですね。僕は世代なのでテレビ版もよく観てましたが、20年も経つと街の様子もかなり変化してるし大丈夫かな?と若干不安でした。しかしこれが驚くほどシティーハンターそのもの。あの頃のままの獠に香、海坊主や美樹や冴子が登場し、劇場版らしい大掛かりな事態に立ち向かっていきます。何者かに襲われたという進藤亜衣のボディガードを引き受けた獠はモデルの職場で大はしゃぎ。一方香は幼なじみで今はIT会社の社長である御国真司に再会してデートに誘われることに。そんななかで亜衣を襲う謎の傭兵たちの騒動は、やがて新宿中を巻き込む危機へと発展します。

とにかく新宿の描写がリアルで、駅周りや歌舞伎町、ゴールデン街など、新宿によく行く人ならあああそこだ、みたいにすぐわかる見覚えあるロケーションばかり出てきて、それにより冴羽獠は本当にいるんじゃないかと思わずにいられなくなるんですよ。新宿駅東口の掲示板は姿を消したもののそこも現代ならではの方法でカバーするという、今の技術や街並みにも意外に馴染んでるのは面白い。アクションシーンも見ごたえありで、特にアバンタイトルは最高です。もっこりネタや10tハンマーはちょっとしつこいんだけど、そこはあえての再現なのでしょう。キャスト陣は冴羽獠役の神谷明、香役の伊倉一恵、海坊主役の玄田哲章、美樹役の小山茉美などオリジナルキャストが再集結していて、往年のファンなら瞬時にあの頃に戻れます。また楽曲に関してもTM NETWORKの「Get Wild」はもちろん、PSY・S!岡村靖幸!大沢誉志幸!小比類巻かほる!と歴代の主題歌が続々と流れるのには感涙。

中身は良くも悪くも変わってないんですが、それを通したのがむしろ良かったのかも。おっさん世代なので懐かしさもあって楽しめましたが、シティーハンターを知らない若い人が観てどう思うのかはいまいちわかりません。でも前時代的なお下劣さも無双なカッコよさも合わせてのシティーハンターなんですよ、とは言っておきたいところ。あの三姉妹も出てくるぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








■20年後のXYZ

冒頭で歌舞伎町をテロリストとカーチェイスしながら戦う冴羽獠、ここがもう最高にアガるんですよ。しかもバックに流れるのはPSY・Sの「Angel Night 〜天使のいる場所〜」!アルバムも持ってたくらい好き!そしてフィニッシュは、アニメ放送時にはまだなかったTOHOシネマズ新宿前で発射されたロケット弾を撃って爆発させ、屋上のゴジラが火を吐いたように見える、という演出にシビれまくり。クールなOP曲の最後にはシブい声で「もっこり」のボイス付きで笑います。このアバンで、現実の社会を背景に荒唐無稽なドンパチが展開するというのが本作の世界観だと宣言してるようなものですね。20年が経って時代も新宿の街も変わっているその落差はどうするのかというのが心配ではありましたが、意外と問題なし。そもそも掲示板なんてとっくになくなっているのに「XYZ」はどうするのか?と思ったら、VR掲示板を表示してメッセージを送信するというのがいかにもありそうでリアルだし、軍事的にドローンの占める役割が大きいというのも取り込んでるし、モンストとかプレモルとかやたらタイアップで強調されるのも今っぽい。

一方で獠は相変わらずもっこりもっこり言ってるし、香は相変わらずハンマー振り回すし、まあ変わってないです。もっこり撃退トラップで部屋がめちゃくちゃになるとか昭和感スゴいですよ。もっこり押しは正直ちとしつこいし今見るとセクハラと言われかねないですが、香が「時代の空気読まんかい」とセルフツッコミしてるからあえてやってるのでしょう。シティーハンターってこうだったよなーという懐かしさと、それを通すことで変わらないことの意義を描く、という意思を感じます。依頼してくるのは美女ばかり、あるいは美女絡みばかりという一種のファンタジーなシリーズではあるので、ある意味もっこりは様式美ではあるし、依頼者とエロい関係にならせない予防線でもあるのかなと思うんですよね。まあ現代との融合が「エローン」という形に象徴されるとは思わなかったですが……。


■新宿は戦場だ

物語としては亜衣が狙われる理由、その背後で蠢く御国の目論見、御国と香の関係と繋がっていき、御苑を戦場とした一大バトルが展開していきます。アクションは歌舞伎町での銃撃戦、ドローンとのチェイスなどわりと周囲を巻き込みつつ大事になっていく迫力があったり、トンネル出口で大型ドローンを迎え撃つ獠などキメ絵もあったり悪くないです。海坊主が隠しておいたバズーカを場所移動しながら次々撃つのは『ジョン・ウィック チャプター2』を思い出しますよ。海坊主のいじられかた方は愉快。御国の目的がwar(戦争)ではなくwarfear(戦闘)だ、というのが現代的軍事ビジネスという感じなのに、それが新宿で行われるという非現実的にも思える展開が危機感を煽っていて良いですね。

世界的企業のCEOである御国が若干26歳で、しかも声が山寺宏一というのがちょっと合わない気もしますが、まあ許容範囲。香への一人称が最初は「私」、次に会ったときは「僕」と距離を詰めてくるのがやり手ですね。しかしそれで香と獠の関係にハラハラさせようとするのは目新しいパターンではないので、そこまでスリルには繋がらず。終盤に危険しかない御国の元に香を一人で行かせるというのはどうなんだと思うし。他にも、実弾で亜衣を襲うような奴らの素性をなぜ探らず放っておくのかが疑問だし、海坊主まで「亜衣ちゃん」呼びするのはそんなキャラだったっけ?と思うし、ロボットの海小坊主が御国の会社のものだからてっきりスパイかと思ったら全然関係ないのが肩透かしだったり、引っ掛かりはあるんですよ。今の時代だからこその何かしらのアップデートがあるかと思ったけど、それも感じられなかったし。『キャッツ・アイ』の来生三姉妹が登場するのは嬉しいけど、絡み方としてはファンサービスを超えるほどではないし、どうせならあれは宣伝に使わずサプライズにしてほしかったなあ。あの三姉妹は当時はエロいなーと思ったけど、今観るともっとエロかったです。


■変わらないことの意義

でも先に述べたように、変わらないことの意義、ということなんですよ。もちろん久し振りだからこそのノスタルジーというのはあります。特に楽曲の数々、「City Hunter 〜愛よ消えないで〜」なんてKohhyだ!って泣きそうになったし(好きだったんです)、大沢誉志幸「ゴーゴーヘブン」、岡村靖幸「Super Girl」、TM NETWORK「STILL LOVE HER (失われた風景)」(TMも大好きだった……)、小室哲哉「RUNNING TO HORIZON」などおっさん世代はそれらが次々かかるだけで泣けます。「CAT'S EYE」は杏里ではなかったけどちゃんとかかるし、そしてラストシーンに被せて流れ始める「Get Wild」のイントロでは爆涙ですよ。なんとテレビ版と同じように歌詞まで表示するという念の入りよう!ともかく、このエンディングで変わらないことの意義というのが、獠の香に対する想いでしっかり語られるわけです。「俺にとっちゃ変わらないよ、美しいものも、大事なものも」って何なの!カッコよすぎ!抱いて!

そしてエンドロールでは、シリーズ過去作の名場面が次々に映し出されたあと、実際の新宿の風景の中に獠と香がいる、というのが映されるのです。変わらない獠と香の関係、それが現実と融合しているということから、なぜ今シティーハンターなのか?というのも見えてきます。それは不安の多い現在の世の中、それでも変わらずに完全無欠(女癖以外)のヒーローが新宿にはいるのだ、という希望を思い出せということですよ。フィクションであっても希望は持てるし、それを勇気に変えられる、そう思えることの大切さを感じました。まあエンドロールの最後、曲の終わりをまたもや「もっこり」で締めるので、もっこりしか残らないんですけど……もっこりって、何だろう……(哲学的思索)。

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