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2019
02.09

プラス一人の波紋。『十二人の死にたい子どもたち』感想。

12nin_no_shinitai
2019年 日本 / 監督:堤幸彦

あらすじ
死にたい×12。



集団での安楽死を望み、ネットを通して廃病院に集まった12人の少年少女。しかしそこにはいるはずのない13人目の少年の死体があった。一体誰がその死体を運び込んだのか、あるいは誰かが殺したのか。死ぬ前に真相を追い始める12人だったが……。冲方丁の同名小説を映画化したミステリー。

それぞれが死にたい理由を持つ12人が閉鎖された病院で集団自殺を図ろうとするものの、謎の死体を見つけたことから図らずも犯人捜しが始まる、というミステリー。その過程で初対面の少年少女たちの人間模様が描かれ、死にたい理由が明らかになっていきます。最後はこうなるんじゃないかな?と辿る展開は察しがつくんですが、この状況をどう転がしてそこまで持っていくのか、というのが面白いんですよ。死を望んで集まったのだから本来は死んで終わり、しかしこの集まりには「全員一致で実行に同意しない場合は話し合う」というルールがあるため、予想外の展開を見ることになります。限定空間なだけにどうしても会話劇になってしまうので舞台を見てる気分になりますが、記号的ながら個性を出した役者陣のアンサンブルがよく、ミステリーとしても悪くないです。

キャストには人気若手俳優がズラリ。キャラが独特すぎるアンリ役の『BLEACH』杉咲花、探偵役となるシンジロウ役の『ちはやふる 結び』 新田真剣佑、柔らかいのにどこか不敵なノブオ役の『勝手にふるえてろ』北村匠海、冷静な主催者サトシ役の『散歩する侵略者』高杉真宙、顔を隠し謎めいたリョウコ役の『銀魂2 掟は破るためにこそある』橋本環奈、若干狂気めいたメイコ役の『サクラダリセット』黒島結菜、バカだが憎めないマイ役の『虹色デイズ』吉川愛、乞音に苦しむタカヒロ役の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』萩原利久、大人しめなユキ役の『犬猿』竹内愛紗、ウザがられて気の毒なケンイチ役の渕野右登、ヤンキーだけど良い味を出してくるセイゴ役の坂東龍汰、ゴスロリなミツエ役の古川琴音。もうね、全員の名前を挙げてしまうほどみんな良いです。

監督は『トリック』『イニシエーション・ラブ』など何気にミステリー作品が多い堤幸彦。笑いを誘おうとする間とか意味ありげなカットなどは引っ掛かったけど、堤幸彦的な演出はわりと抑えめでは。スローの使い方や手を挙げるショットなどは良かったです。かなり都合のいい展開もあるし、12人の死を望む理由は共感できるものばかりではないけど、薄暗い廃病院は雰囲気あるし、彼らが互いの死にたい理由や人格について否定するようなことが基本ないのは好ましかったです。結構楽しんで観ましたよ。

↓以下、ネタバレ含む。








シチュエーションが「嵐の山荘」のような密室的空間であるという実にミステリー的なのが燃えるんですよ。厳密には廃病院は鍵が掛かってるわけではないし外からも自由に出入りはできるから密室ではなくあくまで閉鎖的空間なんですが、集団自殺するために集まっている以上外に出て助けを求めたら計画を実行できなくなるので、外の世界と隔絶された状態と変わらない論理的密室なわけです。また話し合いのルールがあるためにすぐには自殺が実行されないのもポイント。全員が賛成したら意味ないように思えますが、12人も集まれば誰かしらが何かしらの提言をするだろうし、特に謎の13人目がいればなおさらです。

どうせならスッキリしてから死にたい、ということで真相解明が始まります。車椅子、靴の消息、タバコの吸殻、捨てられた帽子とマスクなど、自分たち以外いないはずの現場で次々見つかる怪しげな証拠品。椅子をかまされたエレベーター、最初から入っていた電源など不可解な状況。そして「ゼロバン」の正体と彼を運び込んだ人物の謎。やがて語られ始める各人の死にたい理由と、言葉の端々から明かになっていく思い。自殺の理由についてはいじめであるとかやりたくない仕事から解放されるためといったものから、好きなミュージシャンの後追いといったものまで様々。どれも高校生にとっては真剣な悩みであり、心が痛むものです(ヘルペスはどうかと思うけど……)。あと親へ保険金を渡さないため、親に自分のことを忘れさせないため、大人たちへの訴えのためといった、親からの愛情の欠如が原因のものも。互いにその理由については否定しないのが、同じ目的で集まった者たちの最低限の気遣いであるかのようです。

だからタカヒロの吃音をバカにする者もいないし、セイゴがメイコと言い争ったときに「死んだって親なんかすぐ忘れる」と言いますが、それも腹に据えかねての言葉という感じ。それぞれ属性の異なるキャラも個性的で、マイはアホだけど実は良い子だし、セイゴがケンイチにいじめる奴を何とかしてやると言うのも熱い。また何を考えているのかわからないアンリの怪しさや、微笑を湛えたサトシの何かを隠していそうな雰囲気、ノブオの落ち着き払った態度などが訝しく思えてきたり、一方でシンジロウが探偵役として推理を進めていくというミステリーとしての構造も愉快。あとアイドルであるリョウコの「自分は大人たちに作られた」という台詞、これを現役アイドルの橋本環奈に言わせるというのがメタすぎて、色々勘繰りそうになりますよ。12人をこれだけ同列に描き分けて、かつ印象に残させるのは上手い。

たまにギャグかどうか微妙な間の取り方(音楽を一瞬止めたり)をするのはちょっと本作にはそぐわなくて気になるし、意味のありそうなカット(カマキリとか)はあまり活かされてる感じがしないのは残念。病院にある母と子を型どったオブジェを映されても親子問題が解決したわけじゃないしなあ。一番引っかかったのは、メイコがノブオを突き落としたところ。メイコとしてはノブオが「殺したよ」と言ったことでまた話し合いが長引くのを嫌がったんでしょうが、タイミング的にはまだみんながいる屋上からすぐのところで突き落としたように見えるんですよ。そのわりにノブオの姿がすぐに消えてるので「?」となります。編集がおかしいですね。またエンドロールでシーンを時系列に並べるのは親切のつもりなんでしょうが、『イニシエーション・ラブ』ほどではないにしろ余韻を壊す悪手だと思います。

ゼロバンの正体と彼のいる真相が明らかになったとき、死へと突き進んでいた子どもたちには変化が訪れます。誰が悪いわけでもなかったという安心感と同時に、それほど生と死には隔たりがあるということを実感させられたということなのでしょう。シンジロウの「みんな生きたいと思ったはず」という言葉は彼自身の生きたいという思いであると同時に、みんなにも生きていてほしい、という願いが込められたようにも聞こえます。他の者は、ノブオ以外は死ぬのをやめる理由をハッキリとは口にしません。だから最後の多数決シーンはスリリング。それぞれの手を挙げるカットが切り替わり、特に女性はアップで顔の横にスペースが開いていて、そこに手が現れるのか、というのにドキドキします。そして当初の想定とは真逆の方向で満場一致という結末に至るのにはじんわりします。

一同がとても晴れやかな顔で廃病院を出ていくシーンをスローで見せるというのがとてもイイ。集団自殺を取り止めるという帰結は予想がつくんですが、絶望のなかに生きる意思を見出だすことができた、という描き方にしているのが爽やかで、青春ものの趣があります。死に取り付かれながらもう3度も生に舞い戻る者たちの姿を見せられた男、生への希望を目の当たりにしながらそれでも死への道を探る女、というラストの二人の対峙も面白い。リアリティはそこまで強くないし細かい点で難はあるかと思いますが、デリケートなテーマながら娯楽作として楽しめる作りになっているのは良かったです。

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