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2019
02.07

この学園は何かがおかしい。『がっこうぐらし!』感想。

gakkou_gurashi
2019年 日本 / 監督:柴田一成

あらすじ
シャベルは宝具。



私立巡ヶ丘学院高等学校の学園生活部に所属する胡桃ら4人の女子生徒。その活動は学校で寝泊まりして24時間の共同生活を送るというもの。楽しい部活を満喫する彼女たちだったが、大量発生している問題に立ち向かわざるを得なくなる……。海法紀光、千葉サドルによる同名コミックを実写化した学園もの。

2015年にテレビアニメ化もされたコミックの実写映画化です。屋上の菜園で野菜をつくったり食事を皆で一緒にとったり、後はお茶しながらおしゃべり、夜は部室に布団を敷いて皆で就寝。そんな文字通り学校で生活する学園生活部のお話です。メンバーはいつもシャベルを持ち歩く胡桃、ムードメーカーの由紀、真面目なリーダーの悠里、強気な後輩の美紀、そして顧問のめぐねえこと佐倉先生。しかしなぜ彼女たちは「がっこうぐらし」をしているのか?というのがポイント。これ、どこまで言っていいんだろう……予告を観れば察しが付くんですが一応伏せると、実は某ジャンル映画なんですね。それでいて学校で暮らす部活というゆるふわと、学校であることを活かしての展開というギャップが秀逸。これは面白い!

胡桃役の阿部菜々実、由紀役の長月翠、悠里役の間島和奏、美紀役の清原梨央の4人はオーディション番組から誕生したアイドル「ラストアイドルファミリー」のメンバーだそうで、さすがに演技は微妙なところもなくはないですが、でもそこまで悪くない。等身大の女子高生が体を張って頑張ってる感があって、それが徐々に味になってくるのでそれほどは気にならなくなってきます。顧問のめぐねえ役はおのののかで、彼女が部員4人の精神的支柱として存在感を見せます。他、胡桃が想いを寄せる先輩役に金子大地という顔ぶれ。

原作やアニメは見てないので比較はできませんが、少なくとも一本の映画としてはちゃんとまとまっているし、色々と上手い。不意に時間が飛び世界が一転するアバンにおののき、希望をもって進もうとする女子高生たちには揺さぶられます。このシチュエーションならではの青春物語というのが良くて、特に決して叶わない未来の夢想がせつなく、最後は思わず涙。気になる点もあるけど、ラストの怒濤の展開に全て持っていかれますよ。アイドル映画だからといってヤワな作りにはなっていない全力感がイイ。シャベルはもはや宝具です。

↓以下、ネタバレ含む。







■我ら学園生活部

アバンタイトルがとても良いんですよ。最初は普通の学園生活で部活だの恋だのにうつつを抜かしてるのに、何かが起こったらしいある時点から不意に時間が飛び、陸上部だったはずの胡桃があまり親しいようでもなかった悠里と一緒に学園生活部員として活動している、という不自然さ。楽しげなのにどこか不穏さを感じるうちに、急に音楽がトーンダウンして廃墟の教室で笑う由紀の姿、そしてタイトル。この世界が瞬時に瓦解する見せ方が素晴らしい。そして明らかになる現実により、本作がゾンビ映画であることがようやくわかります。ゾンビものによく見られる、いわゆるショッピングモールに立てこもる者たちのドラマなわけですが、これを学校を舞台にして女子高生に限定したというのがフレッシュで、かつ部活という名のサバイバルだったというギャップが面白い。

正直ゾンビがはびこるなかでそんな悠長なことしてる場合かと最初は思うんですよ。後から合流することになるみーくんこと美紀が「ここで仲良しごっこしてても先はない」というのはまさにそうだ!となるし、由紀が病んでいるというなら切り捨てるべきという意見もごもっとも。しかし胡桃たちが心が折れそうになるなか由紀の明るさに救われているから一緒にいる、というその理由が、美紀を通して観てる方にも徐々に理解できてくるんですね。由紀を足手まとい扱いしていた美紀がすっかり仲良しになって由紀にまとわりつくのには心洗われます。またそれだけでは生き残れないだろうという点も、災害用の大量の備蓄があるのがわかっているから、他へ移るというリスクより学校で行動範囲を拡げてそこへ辿り着くことを目的としている、とわかった時点で納得です。倉庫いっぱいの食料や備品はまさに宝の山で、観てる方も嬉しくなりますよ。


■スクール・オブ・ザ・デッド

でもその倉庫でまさかいないよなと思ったら本当にいるゾンビにビビりますよ。索敵もせずに物資を運び出してたというのは雑すぎないか?せめて見落としてた原因を示してほしかった、とは思いますが、とは言え基本的にはゾンビ描写もしっかりしています。音に反応する歩く系ゾンビですが、馴染み深い校舎のドア一枚向こうにたむろしてるというのはどこか異世界のようでちょっと新鮮。机でのバリケードなど学校の備品を使った対応がリアルです。流血もグロもないのでさほど怖くはないけどスリルは十二分にあって、ファイヤーゾンビなどはなかなかヤバいし、一気にドアをブチ破ってわらわら出てくるのはヒーッとなるし、屋上から落ちてきた女子生徒がゾンビ化して襲ってくるのはかなり怖いです。これに対し胡桃のシャベルの振り回し方が本当に全力なので、これはゾンビも倒せるなという説得力があって良いんですよ。殴ったり刺したり長さもあるから押しやったりとシャベル超便利。だから終盤シャベルを手放してしまうのにはヒヤヒヤします。

また胡桃が、両思いとわかった直後にゾンビになった先輩を自ら倒したというトラウマにより戦えなくなる、というのもスリルに拍車をかけます。美紀に「先輩は強い」と言われてから殴れなくなるというのが、生き残るのに必死だっただけで決して強いわけではなかったというのを表すんですね。せつなさや悲しさもちゃんと描いているのがエラい。あと攻防にしっかり学校行事を取り入れてるのが面白いんですよ。体育祭と称してのゾンビ障害物競争とか、避難訓練とか、学園祭で占い喫茶を本当にやっちゃうとか、一見茶番であってもそれらは由紀のためであったりストレス解消であったりもするので、全く茶番ではないとわかってくるわけです。「学校」という舞台を活かした上手さにやられます。占い喫茶の最中に火事になり、いきなりバリケードやぶられて修羅場になるというクライマックスには、分断され一人追い詰められる胡桃がトラウマを乗り越える姿や、悠里と美紀が焼け死んだのかと思わせるスリルなど、これでもかの見せ場が続くのもイイ。


■仰げば尊し

めぐねえに関してはなんかおかしいとは思うんですよ。部屋で語りかける悠里とのカットバックは不自然だし、しかもなぜか保健室じゃない。寝るときはいないし、彼女の胸のうちは語られないし、一人で映るシーンもない。普通に皆と一緒に映ってるので騙されますが、それは由紀の幻想を壊さないための共通認識だから映像になっててもおかしくないということなんですね。悠里が一人で話すシーンは、自分がしっかりしなければと思う真面目な悠里が、せめて心の均衡を保つための己への方便だったのでしょう(なぜ聖書なのかがわからなかったんですが……)。卒業して四人でめぐねえに会いに来るという未来の姿の夢想は、普通の生活がもうできないゾンビ化した世界ではありえないからこそジワリとするんですが、それが終盤に実は会いに来るべきめぐねえ自体がもういないのだ、とわかってさらに泣けます。しかも生徒を襲わないように腰紐で縛っておくとか、眠らせてあげるとか、もう爆涙ですよ。

それでも絶望を希望に変えようとする学園生活部が最後に行う学校行事が卒業式って、もうどんだけ泣かすの……。由紀が全部わかってた、というのはさすがに無理がある気がしますが、皆を明るくするためにやってたということなんでしょうかね。ともかく「卒業」して学校を後にする胡桃たち。もっと大きい車もあるだろうに、わざわざ手狭なめぐねえの車で出発する4人には、幸あれと思わずにいられません。と言うか、そう思わされるほどに引き込まれていたというのに我ながら驚きです。救いのない世界で彼女たちがやっていた「部活」は傍から見れば茶番じみてますが、それをそう感じさせない主観の取り込み方、どんでん返し、ホラーアクションっぷりと、実に良くできた観るべきところの多い作品。やはりゾンビものは侮れないなあと思うのです。

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