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2019
02.06

坊主の恋と猿の決意。『西遊記 女人国の戦い』感想。

saiyuuki_nyoninkoku
西遊記女兒国 The Monkey King 3 / 2018年 中国、香港 / 監督:ソイ・チェン

あらすじ
ドキッ!女だらけの水泳大会(と言えなくもない)。



天竺へと旅を続ける三蔵法師の一行は、女性だけが住む女人国に迷い込む。男は害毒であるという言い伝えにより囚われ、処刑を言い渡される一行。そんななか三蔵に心を奪われた女人国女王は彼らを救おうとするのだが……。「西遊記」を元にしたアクション・アドベンチャーのシリーズ第3弾。

『モンキー・マジック 孫悟空誕生』『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』に続く「西遊記」を題材とした中華SFアドベンチャーの3作目。今回は女性しかいない国、女人国に迷い込んだ一行の冒険が描かれます。河を船で移動中に河の主に教われた三蔵たちは釈迦如来の助けにより難を逃れたものの、結果辿り着いた女人国で処刑されそうになるという危機に。女王の配慮で危機を脱したかと思いきや、男は害になるという言い伝えを守ろうとする国師が彼らの前に立ちはだかります。山登りしていた女王を巻き込んで崖から落ちながら恋にも落ちちゃった三蔵のラブストーリーをメインに、古文書探しや女性の国ならではのエピソード、女人国に伝わる過去の悲恋までを入れ込んで、笑いあり冒険あり迫力バトルありの痛快にしてせつない王道西遊記となっています。

キャストは続投で、孫悟空役の『風雲 ストームライダース』アーロン・クォックは猿っぷりにさらに磨きがかかり、甲高い声と相まってほぼ猿です。三蔵役のウィリアム・フォンは『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』とはまた違う真面目な坊主の役がこれはこれでしっくりきますよ。コメディリリーフっぷりが素晴らしい猪八戒役のシャオ・シェンヤン、青マッチョというのが新しい沙悟浄役のヒム・ローもしっかり見せ場あり。他にも可憐で少々おてんばな若き女王役にチャオ・リーイン、厳しさで国を守ろうとする国師役にジジ・リョン。あと驚いたのは河の神役がてっきり男だと思ってたら『レッドクリフ』のリン・チーリンでした。あの線の細さが普通の人間とは違う感じがあったので上手いキャスティング。

監督は『ドラゴン×マッハ!』『SPL 狼たちの処刑台』のソイ・チェンということで、アクションは若干控えめながらやる時は派手にやってくれます。笑いのシーンも意外と脱力せず面白い。人々を救うための旅は自分を捨てて世に奉仕するための旅でもあります。そんななかで一人の女性と運命的な出会いをしてしまう玄奘三蔵。この結末にはじんわりきます。前作でお師匠大好きになっちゃった悟空の三蔵への信頼感もイイ。面白いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








■笑いとスリルの大冒険

冒頭の河チェイスから楽しさ抜群。スローを織り混ぜながらサーフィンのようにチューブを潜ったり、落ちる仲間を悟空が助けたり、舟が空を飛んだりと一気に引き込まれます。ここで襲ってくるのが後々にも出てくる河の神であったり、女性に対する話が出てくるのもちょっとした伏線になってますね。河の中の神秘的なシーンや迸る水流の迫力など水を使った映像が上手くて、この水表現はラストでもまた魅せてくれます。万事休すというところで釈迦如来による空中ワープで一行は女人国へ行くことになりますが、崖から落ちる三蔵が女王を巻き込み一緒に落ちていくシーンはまさにフォーリンラブということを表していて上手いうえに絵になります。この絵になるシーンというのは随所にあって、捕まった一行が脱獄して皆で月に向かって飛ぶシーンは美しいし、女人国と苦海の境界にある門が不穏ながらも厳かだったり、丸みのある女人国の建物も上品なデザインで華麗だったりします。美術の良さと演出の上手さで、現実から少し逸れたファンタジー感が増しますよ。筋斗雲が目に見えないという設定なので、素のまま空を飛んでいるように見えるんですが、これが意外と良い効果を生んでますね。

また女王の乗るのが凄まじい脚力を持つ超鹿であるとか、古文書の番をする赤青二匹の巨大サソリなどのスーパー生物も楽しい。サソリとのバトルは前半の見せ場にもなってますね。古文書の切れ端が走り回るというワケのわからん追いかけっこにはちょっとクラッとしますが、なんかカワイイしユーモアも感じるところ。香港映画のコメディシーンはユルくて失笑というのも多いですが(それも味ですが)、本作はちゃんと笑えるのが良いです。女王たちが開こうとしたドアに吹っ飛ばされるというベタなものから、悟空たちが受ける尋問が悟空は張り合い、八戒はキモがられ、悟浄はモテると三者三様なのも愉快。処刑されるシーンでは、矢で射たれたふりをする悟空の猿芝居(猿だけに)には思わず笑うし、代わりに八戒がむっちゃ射たれるのには爆笑です。あと馬!舟が空中に放り出されても一行が気にかけなくても、いつの間にかさりげなく付いてきてるのがポイント高い。この馬は元々は竜ですからね、さすがに丈夫です。


■女人国で知る女性の気持ち

女性だけの国、と聞くとハーレム的なパラダイスを思い浮かべがちな男共、実際に八戒が最初に出くわす小川で行水する女性たちのシーンはあまりに神々しく、八戒が泣きながら拝むのもわかろうというもの。わかる、わかるぞ。しかし、我々は女性だけの国と聞いたときには『ワンダーウーマン』のアマゾネスの国を思い出すべきだったのです。つまり、甘くない。マッチョな悟浄が腕相撲で負けるほどだし(でもなぜかモテる)、男は害だと思ってるので捕まったら死罪です。怖いです。でも女王の側近たちも話せばわかってくれるので一安心。

女性だけでどうやって子供を作るのかという疑問が湧きますが、これは河の水を飲めば妊娠するという仕組みになっているんですね。しかもこの水は女だけでなく男にも作用するという、人体の仕組みを無視した恐るべきもので、悟空以外は『ジュニア』で妊娠したシュワみたいになります。このくだりは原作にもあるようで、男が妊娠することで女性の気持ちがわかる、という意外な展開には驚き。悟浄などは妊娠してヒゲが抜け、すっかり母性に目覚めることに。悟浄は結構その場の空気に流されるのが笑えます。結果的には悟空が堕胎薬を飲ませるわけですが、三蔵を信じ悪者になるのを覚悟で実行する悟空には泣けますよ。妊娠した三蔵たちが産もうと決意するのは命の重さを身をもって知ったということであるし、堕胎という行為の後ろめたさまであって予想外の深さ。ちょっと重い展開ですが、堕胎薬を持つ仙人が涙を流すくだりがキモくて笑えて、それなのに思わずちょっと泣ける、というのが緩和してくれます。


■愛を知るのも仏の道

仏道にありながら女人国の女王と惹かれあってしまう三蔵。心を静めるため写経を始めますが、女王もこれに付き合って写経するため、二人で延々と写経をしていきます。仏道の身半ばのために添うことはできない三蔵が「来世にしましょう」というのが苦い。そしてもどかしい。もう付き合っちゃえよー、連れてっちゃえよーと思うんですが、無理なんですね。さすがの悟空も三蔵の想いを察し、でもお師匠は旅を続けるべきという葛藤を感じるほど。それでも国を追放される三蔵の小舟に飛び乗る女王が健気で、苦海をさ迷う二人がそっと互いの袖をつかむのがせつない。しかも女王は結界により国を出ることができないのです。必死で自分の心を抑える三蔵も、彼女が石になり失われるという事態に、ついに愛を悟ります。それは一人を愛するも皆を愛するも同じということ。三蔵は自身の信念を曲げることなく女王の愛をも受け入れるのです。それは女王が望んだ形ではないですが、ラストにまた「来世にしましょう」という言葉で三蔵が本心を匂わせるのには思わず泣けます。

そして愛の物語はもうひとつ描かれます。それは伝説として残る、河の神に恋した人間の女性の物語。それこそが国師とあの河の神とのことだったのです。種族も物理空間も越えた恋は幻想的で美しく、それだけに国に仕えるため想いを封印した国師が悲しく、失望に狂う河の神がやるせない。河の神とのバトルはクライマックスに相応しい迫力ですが、同時にお堅い国師があの頃の想いを振り返る姿も描かれてエモーショナル。しかし最後は釈迦如来が河の神に罰を与えて終わります。ホントに西遊記の釈迦如来って不粋だな!そもそも本来入れないはずの女人国に来たのも釈迦如来がワープさせたからだし、全部ヤツのせいなんですよ。それも修行のために与えた試練だ、ということなんでしょうが、どうもラスボスは釈迦如来な気がしてならないぞ?

というわけでバトルはちょっと抑えめですが、そのぶんドラマが思った以上に引っ張ってくれるので全く飽きません。実に面白いです。あと弥勒菩薩さまにももっと活躍してほしい……。最後に「紅孩児」の名を出していたので続編も期待できそうですね。ぜひ天竺に着くまで続けて欲しいシリーズです。

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