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2019
01.28

歪んだ正義の味方と黒き蝶。『Fate/stay night [Heaven's Feel] II. lost butterfly』感想。

Fate_stay_night_HF_2
2019年 日本 / 監督:須藤友徳

あらすじ
バーサーカー怖すぎ。



魔術師(マスター)と英霊(サーヴァント)が「聖杯」をめぐって戦う「聖杯戦争」、衛宮士郎は御三家と言われる間桐家の当主・間桐臓硯により、セイバーを失ってしまう。それでも桜を守るため戦い続ける士郎だったが、桜もまた魔術師の家の宿命により巻き込まれていく……。『Fate/stay night Heaven's Feel』の劇場版、第二章。

TYPE-MOONの人気ゲーム『Fate/stay night』、その「Heaven's Feel」ルートを3部作でアニメ映画化した第二弾です。あらゆる願いを叶えるという願望機「聖杯」を手にするため過去の英霊を呼び出して戦う聖杯戦争、前作の『Fate/stay night[Heavens Feel] I. presage flower』では幾多のサーヴァントが消え去って早くも佳境という感じでしたが、今作ではさらに展開が加速。真アサシンと謎の力によりセイバーを失い聖杯戦争から脱落した士郎に対し、しつこく報復しようとする間桐慎二、そこで明らかになる間桐桜の関連。士郎は共闘関係にある遠坂凛と共に打開策を探るものの、事態は後戻りできないところまで進んでいきます。そして劇場版という形で映像化したのも納得の、凄惨で淫靡でえげつない展開。連鎖していく不幸は、映画館で観ることにより目を背けることを許さないのです。

作画も凄い。怒濤のサーヴァント対決は前作以上にド迫力で、前作では出番の少なかったアーチャーやライダー、バーサーカーといった面々の超絶バトルが繰り広げられます。特に本気を出したヘラクレス、こんなん絶対勝てないって思いますよ。サーヴァントすげーな。この凄まじい戦いの表現は『ドラゴンボール超 ブロリー』とはまた違ったアニメでの戦闘描写の進化と言えるでしょう。一方で、ときに美しくときに禍々しい背景の美術も素晴らしい。フード描写も非常に美味そうで、朝からあんな食欲そそる食事が出るなら僕も士郎の家に居候したいんですが。

甘ちゃんな士郎と心底クズ野郎な慎二にはざわつきますが、凛と桜の関係にはじんわりしたり。でもそれだけにへヴィ。一応言っておきますが前作の鑑賞は必須。しかも『Fate/Grand Order』で付いたライトなファンをふるいにかけるかのような重さがあります。非常にボリューミーで、ここで終わるかと思うとまだ続くのが繰り返され、最後にとんでもないものを出して終わる鬼畜仕様。そしてサナギは蝶になる。濃厚です。

↓以下、ネタバレ含む。








■怒濤の激戦

前作でセイバーを失いマスターとしては聖杯戦争から脱落という形になった士郎ですが、部外者かと思われた桜が間藤の後継者として関係していることを知り、桜を守るために関わり続けます。ライダーは桜のサーヴァントであり、それを慎二に貸与していたわけですね。ライダーにいたぶられる士郎、そのピンチに颯爽と窓を割って入ってくるアーチャー&凛、スローでの登場が超カッコいい。ここで最高なのはようやく士郎が慎二をぶん殴るということですね。慎二が桜にしていたことを思えば一発じゃ足りないんですが、ここで桜が事態の中心にいたというのがショッキングであり、自分を責める桜とそれを受け入れようとする士郎により物語は引き返せないルートへと入り込んでいきます。このシーンはちょっと長すぎると感じるほど丁寧に描かれますが、それにより後の悲劇がさらに際立ちます。

サーヴァント戦の迫力はスゴいことになってます。ライダーvsアーチャーでは、さすがのアーチャーの強さに対し、ライダーことメドゥーサのマスクを外しての石化の魔眼攻撃にはアガります。アーチャーvs真アサシンでは罠にかかったアーチャーが、真のサーヴァントじゃないから逃れるというのが意味深。そして何と言ってもバーサーカーvsセイバーオルタですよ。スピード、パワー、エフェクト、どれもとんでもないスケール。しかもあのバーサーカーことヘラクレスの手足をぶった斬りまくるセイバーオルタ。ヘラクレスは12個の命を持っていますがそれが尽きてしまうほどの猛攻には恐怖さえ覚えます。さすがのアーチャーもこれには敵わず闇に飲み込まれることに。あとはギルガメッシュvs桜というのもありますが、調子ブッこいてたギルガメッシュがまさかの瞬殺。切り株描写まであってグロ表現も容赦ないです。


■淫靡な闇

桜は間藤の虫によって心も体も蝕まれており、もはや自分では制御しきれないところまで来ている、というのが必要以上のエロ描写で示されます。『Fate/stay night』が元々エロゲーであることを最も隠しだてしない、というかできないエピソードということでしょうか、指の血を舐める、自ら慰める、夜這いに現れるなど桜の描写はレーティングなしなのが不思議なくらい性的です。でもそこには士郎に対する愛情が色濃くあるわけで、深い仲になるからこそ士郎は「俺は桜だけの正義の味方になる」となってしまいます。特定対象のためだけに成される行動はもはや正義とは言えず、アーチャーの「自分の信念を裏切るな」という言葉も士郎には届かず「裏切るよ」となってしまいます。なぜアーチャーがそういうことを言うのか、というのは『Unlimited Blade Works』で明かされるアーチャーの正体からわかるんですが(片腕を士郎に与えるのもその関係?)、それはアーチャーにとっては確かに「裏切り」です。

桜は遠坂の家から間藤に養子に出されたので凛とは実の姉妹であり、それを知りながら接点を持とうとしていなかった二人ですが、桜が凛を「姉さん」と呼ぶことで一気に距離が縮まります。逃れられない運命に流されていたところを士郎に寄り添うことで正気を保っていた桜にとって、新たに増えた絆はとても喜ばしいこと(そう言えば士郎から家の鍵をもらうとき「大切な人から大事なものをもらうのはこれが二度め」と言いますが、一度めは何なんだろう?)。しかし運命は桜に幸せな日々を享受することを許しません。メルヘンなのになぜか不穏さが漂う桜の夢、それは人々を食らうという現実から目を背けるためのカモフラージュです。イリヤに確実に死ぬと言われた桜はもはや手の施しようがないほど闇に飲まれてしまいます。


■堕ちた蝶

桜のために自らの信念を曲げようとした士郎は、しかし臓硯の言葉に揺らぎ、桜を殺そうとします。士郎の見た夢が意味ありげで、桜の首をはねようとする者(ギルガメッシュ?)、その場を去る者(アーチャーとランサー?)など、皆が桜から離れていくように見えるのは士郎の潜在意識が見せる現実なのか、この先の拭えない予感なのか。結局士郎はナイフを振り下ろすことはできなかったものの、そのために士郎の家を出る桜。そして謎の影の正体が明らかとなり、異形の変身を遂げた黒き桜が登場して幕となります。Aimerの主題歌「I beg you」を聴きながら茫然自失ですよ。

捻れ、爛れて、闇に堕ちた美しき黒い蝶。果たして士郎に打つ手はあるのか?臓硯の思惑は何なのか?残るサーヴァントの真アサシンとライダー、そして黒セイバーの今後は?桜に死を告げたイリヤや、妹を救えなかった凛の動向は?などなど先が気になる点が山盛りでの引き。そして高いクオリティで桜の変容を描く、その壮絶な完成度にはやられました。不満を挙げるなら、クソ野郎の慎二はもっと苦しんでから死んでほしかった、というくらいですかね。歪んでしまった聖杯戦争にどう決着が付くのか、完結編となる第3弾にも期待です。

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