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2019
01.24

絡め取られた過去、解き放つ現在。『蜘蛛の巣を払う女』感想。

The_Girl_in_the_Spiders_Web
The Girl in the Spider's Web / 2018年 イギリス、ドイツ、スウェーデン、カナダ、アメリカ / 監督:フェデ・アルバレス

あらすじ
物置の掃除するおかんのことじゃないです。



背中にドラゴンのタトゥーがあり映像記憶能力を持つ天才ハッカー・リスベットは、AIの世界的権威であるバルデル教授から、偶然開発してしまった核攻撃プログラムをNSA(アメリカ国家安全保障局)から取り戻すという依頼を受ける。しかしそこに謎の組織の暗躍が絡み、やがてリスベットの前に16年前に別れた双子の妹カミラの存在が浮かんでくる……。ミステリー小説『ミレニアム』シリーズ第4作を映画化したアクション・サスペンス。

デヴィッド・フィンチャー監督、ルーニー・マーラ主演で映画化したシリーズ第1作『ドラゴン・タトゥーの女』の続編です。元々の原作はスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』シリーズ三部作に当たりますが、今作は2004年に急逝したラーソンのあとを継いでダヴィド・ラーゲルクランツが書いた『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』が原作。2作目3作目はどうしたんだと思いますが、そちらはノオミ・ラパス主演のスウェーデン版三部作(観たいと思ってまだ観れてない……)があるのでなぞるのはやめたんですかね?それはともかく、天才ハッカー・リスベットを主人公に、三つ巴の核攻撃プログラム争奪戦というサスペンスと、ハッカーで何でも操れるのに意外と肉体を酷使するアクションになってるのが面白いです。前作のような背徳感のある不穏さは減ったものの、わりと容赦ない残虐性や絵になるショットも豊富。

前作のルーニー・マーラもダニエル・クレイグも出てないので最初は少し戸惑いますが、前作との連続性はそれほどないので大丈夫です。製作総指揮に回ったフィンチャーに代わる監督は『ドント・ブリーズ』フェデ・アルバレス。テイストはフィンチャーとは異なるものの、スリリングな展開と画のカッコよさで魅せてくれます。新たなリスベット役は次作に『ファースト・マン』が控えるクレア・フォイ。尖りまくった前作よりは若干柔らかさがありますかね。かなり体を張って頑張ってます。ミカエル役のスベリル・グドナソンはちょっと印象は弱いですが、クレイグのあとじゃしょうがない。リスベットの双子の妹カミラ役はシルビア・フークス、『ブレードランナー2049』のラヴ役とは異なり、色素薄い感じが不気味さとなっています。他、NSAのカザレス役で『ゲット・アウト』ラキース・スタンフィールドも出演。

絶体絶命のピンチが何度も訪れて、その度に起死回生で生き残るというギリギリ感がなんとも気持ちいいです。カミラが描写不足に感じるのは少々惜しい気もしますが、意表を突く展開と予想以上のアクションにはアガりますよ。国家規模の陰謀に巻き込まれながらリスベットの過去や生い立ちにまで迫る、まさにリスベットの物語です。

↓以下、ネタバレ含む。








■意外と体も酷使

妻を殴って血だらけにしながら「愛してる」と言うDVクズ野郎の会社CEOからその妻を救い出す冒頭のシーン、顔にシルバーのペイントをしたリスベットがスマートにキメるところにシビれます。リスベットは天才ハッカーというだけでなく抜群の記憶能力を誇るわけですが、今作では肉体を酷使する場面の方が多め。全身黒のライダースーツでバイクを疾走させ、いかにも暴力の世界で生きてるような男との格闘まで見せます。そこまで強いわけではないけど意外と肉体派であることを迫られる展開。原作は『ミレニアム1』しか読んでないんですが、巻によってジャンルが結構異なるようなので、アクション増しなのはこれはこれで面白いと思うんですよ。

アジトを襲われて爆破されるのを湯を張ったバスタブに潜ってやり過ごしつつも監視カメラで敵の手掛かりを入手したり、橋の上で追っ手から逃れるため橋を吊り上げたり、博士の隠れ家でスパイダーズの男に襲われて何か薬を打たれたときも咄嗟に錠剤(あれは何だろう?)を噛み砕いて何とか動けるようにしたりと、とにかくピンチが多いもののその都度機転を効かせたり事前の準備が活きてきたりするのが愉快。もちろん天才ハッカーなので何でもハッキングです。車のエアバッグ操作から留置場のドアの開閉、NSAのカザレスにはヤサがストックホルムと割られるものの、その後の隠れ家の追跡はガールフレンドの協力で騙したりと、この辺りは期待に応えてくれます。


■リスベットを囲む人々

バルデル博士が作った核攻撃プログラムは意図しないものであるため、保持しているNSAから取り戻すようリスベットに依頼するわけですが、よく考えたら国家組織への侵入ということなのでなかりヤバい案件。さらにそこにスパイダーズという犯罪組織がプログラムを狙って割り込んできます。一人奮闘するリスベットが協力を求めるのが「ミレニアム紙」の記者であるミカエル。前作のダニエル・クレイグですが、登場がサラッとしてるので一瞬「誰?」となりますよ。リスベットと行動した記録を出版して名の売れたミカエルは、それが借りということなのかリスベットに協力することになり、スパイダーズの調査を始めます。ただ同僚の女性と不倫してるらしかったり、その同僚にリスベットへの依存を指摘されたりして何だか不安定。リスベットとは恋人ではないけど信頼関係はあるというなかなか微妙な関係性だったと思いますが、そこは今回はあまり掘り下げていません。ただそれは本作をリスベットの物語として描くためなのでしょう。

リスベットは女性を救う救世主、という扱いになってますが(そうだったっけ?)、今回は博士の幼い息子を守ることになります。この少年も天才だったりするわけですが、色々怖い目にあわされて可哀想。それでリスベットの母性愛的な何かが目覚めたりしたらそれはちょっとイメージ違うなあと思ってましたが、特に何もなかったので一安心。唯一、車を選ぶとき子供が見てたカッチョイイ車をチョイスする、というのは粋ですね。またミカエルが出会う、顔の真ん中を削がれた男は凄まじいインパクト。スパイダーズのヤバさを示すかなりエグいエピソードです。

他にもゴム袋に閉じ込められ吸引された挙げ句、呼吸する切れ目を蝋で閉じるとか、視力を失う注射だとか、精神的に追い込む残虐性がちょくちょくあって緊迫感に繋がります。リスベットが傷口を接着剤で止めたりホチキスで止めたり(ジョジョ好きなら「ミスタだ!」となります)という微エグさとかイイ。逆にクラブの丸い窓辺の座り姿、部屋で足を投げ出した構図、白い雪の中での対峙など、絵になるシーンも随所に見られますね。あとクライマックスの3Dモデルで写し出しての狙撃、「捕捉!」ダン!吹っ飛ぶ!ってのが最高!まさかカザレスがこういう協力のしかたをするとは思わなかったうえに、絶体絶命のピンチからの大逆転なので激アガります。


■絡めとられる女

カミラとは子供のときに逃げ出して以来の再会となるリスベット。その後16年間、カミラは父親に虐待を受けていたということなのでしょう。女を救う者と言われながら自分のことは助けに来なかった姉に恨みを告げるカミラ。しかしリスベットは、カミラが父を選んだから来なかったのだと言います。かつてカミラは、何が起こるかわかっていながらリスベットの伸ばした手を取らなかったのです。それは親への信頼を捨てられなかったからか、あるいはスパイダーズのトップに君臨する野心のためだったのか。謎めいた存在を強調するためかカミラはそこまで多く描写されずに終わってしまうので、彼女の心情は微妙にハッキリしませんが、リスベットの知らない16年で妹は全くの別人に変わってしまったのだ、というのがせつない。最後に冒頭のリスベットが落ちていったのをなぞるように落ちていくカミラ。そしてまたもリスベットはその手を掴めずに終わるのです。

国家組織と犯罪組織に追われながら己の過去とも向き合う、まさに蜘蛛の巣に絡めとられながらそれを払い除けるリスベット。谷底へと消えたカミラもまた、蜘蛛の巣にかかって助けを求める蝶だったのかもしれません。そして悲しき顛末を憂慮してか依存を断ち切るためか、書き上げたリスベットの記事を消すミカエル。彼はリスベットという名の蜘蛛の巣から逃れることを選んだのでしょう。といった感じで、前作が色んな意味でインパクトがあるので比較しがちですが、アクション寄りのサスペンスとして楽しめましたよ。果たして映画でのリスベットの物語は続くんですかねえ。どうせなら原作の2・3作目も映画化して、なんなら毎回キャストを変えてやるのも面白いかも。

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