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2019
01.08

完全犯罪は死体次第。『死体が消えた夜』感想。

The_Vanished
The Vanished / 2018年 韓国 / 監督:イ・チャンヒ

あらすじ
なんとも長い夜です。



大学教授ジンハンの妻である大手製薬会社の会長が亡くなった。しかしその妻の死体が死体安置所から消えてしまう。ベテラン刑事のジュンシクは、怪しいと睨むジンハンに尋問を行うが……という韓国ミステリー。

年下の夫である大学教授のジンハンを自分の所有物のように扱っていた、財閥2世で大手製薬会社会長でもあるソリ。そんな妻が突然他界するものの、その死体が忽然と消えてしまいます。一体誰が何のために?という謎を巡るミステリー。スペイン映画『ロスト・ボディ』のリメイクらしいんですがそちらは未観。女性の遺体が消えるという不可解な事件は、怪しげな年下の夫とその謎を探る刑事たちのやり取りへと繋がっていきます。本当にミステリーなのか、あるいはホラーなのかも判然としないまま、たった一晩で二転三転していく展開が実に面白い。現在進行の話と時折挟まれる回想に様々な伏線を仕込み、やがて明らかになる意外な真相には背筋が震えますよ。こいつは極上のミステリーです。

事件を捜査するチーフ刑事ジュンシクを演じるキム・サンギョン、難事件を解決したという伝説を持ちながら酒を飲んでばかり、その能力を疑問視する部下もいながら、それを覆すようにスゴい推理を見せていくのには喝采。キム・サンギョン、いいですねえ。大学教授ジンハン役のキム・ガンウは姉さん女房に完全に手綱を握られた姿から怪しげな挙動までなかなかの演技で、その妻ソリ役のキム・ヒエは全てを見透かすような表情が怖いです。ジンハンがなぜソリと結婚したのかは描かれないんですが、権力と金に釣られたのだろうか?あとジンハンに関係する女性ヘジン役のハン・ジアンが超可愛いです。

妻は本当に死んでいたのか、夫はどこまで絡んでいるのか、日付の意味するものは何なのか、という数々の謎があるも単純には進まず、色々捻ってくるのが面白く、伏線の回収もケリの付け方もイイ。これ以上はネタバレになるので以下で!

↓以下、ネタバレ含む。








夜の病院で起こる不可解な現象、そして警備員が目にする廊下の女性、といったまるでホラー映画のような導入部からしてスリリングで、期待を高めてくれます。ジンハンが妻とうまくいってなかったというのを序盤で目薬をさすところからわからせるのも上手い。ほどなく妻はジンハンの証拠の残らない新薬で殺されたこともわかります。しかしカメラはどちらかというとジンハンに寄っており、彼が犯人ではなさそう。では一体誰が?あるいは本当に妻ソリは生きていて息を吹き返したのか?死亡確認は妻の主治医で、司法解剖がされる前に死体が消えたというのもあり、また序盤の死体が甦ったような演出もあって、ソリが実は生きていたのではないかというミスリードとなっています。

妻の所有物のように扱われ言いなりになることにうんざりしていたジンハンは、自分に近付いてきた女子学生ヘジンとの不倫に走り、彼女が妊娠したことで妻を殺すことを決意、これを実行します。しかし薬のことを聞いたヘジンが「完全犯罪ができる」と言うのも「妊娠した」と言うのも伏線なわけですね。チーフが登場時に車をぶつけたのも、女の足跡が見つかるのも、防犯カメラに自分達しか映ってないと言うのも伏線。全ては2007年7月20日に起こった事件に起因するリベンジだったわけです。ジンハンと妻しか知らないはずの日付というのがまた亡き妻が生きているのではという疑心暗鬼に繋がり、これでジンハンを追い詰めることで、別の死体の隠し場所へと辿り着くことになる、というのが上手い展開。特に「ヘジンのいた形跡がない」というシーンでは思わず「えっジンハンの妄想か?」と騙されました。

ただ、恐怖演出(と言っていいと思うんですが)に凝るあまりちょっと説明のつかないところや、さすがに都合よく進みすぎという点はあります。序盤の廊下で座ってた目を開く死体はソリではなくあの人?ソリが死んでないと強調するためだとしても少しやり過ぎ感があります(でも画的には強くて良いんだなあ)。死体袋のなかにスマホを仕込んでもそれをそのままジンハンが使うかどうかは危ない橋だし、遺留品のある扉が勝手に開いたのはなぜか(なんか仕掛けたの?)、トイレの窓辺に招待状が置かれていたのはなぜか(あれこそ妻以外誰も知らない気が)、ヘジンの家の窓が開いてて何かに襲われるというシーンは現実か妄想か?など、いまいちハッキリしないところも多いです。もう一度観ればもっとわかるかもしれませんが、ちょっと演出過多なところはあるかも。

なので全てがロジカルかといえばそんなこともないんですが、それでも事件の軸とトリックがしっかりしているので面白い。色んなものに守られた大富豪だからこそどう復讐するかというのが重要になるんですね。この金と権力が絡んでいる辺りが韓国映画っぽい。ジュンシクが酒飲みになった理由もわかるし、新薬は麻薬を打つことで無効になるという設定が、最後に法の裁きを受けさせるということにも活きてきます。水に沈んだジンハンに赤い光が差したり、ラストの二人を映したりといったショットも美しい。何より"彼女"が成した行動は、復讐のために自分を犠牲にするという多大な覚悟がいるもの。彼女の心のうちはほとんど描かれませんが、ジンハンが「実は」と事故の秘密を彼女に明かそうとするシーンで、もし話していたら結末は変わっていただろうか、と考えるとせつないものがあります。

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