FC2ブログ
2018
12.27

寂しさを超えて、いつだって見守って。『シュガー・ラッシュ オンライン』感想。

Ralph_Breaks_the_Internet
Ralph Breaks the Internet / 2018年 アメリカ / 監督:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン

あらすじ
壊してやる~!(決め台詞)



ゲームセンターに置かれたレースゲームのヒロイン・ヴァネロペと、心優しい悪役キャラクターのラルフ。大親友の二人だったが、ある日ヴァネロペのゲーム「シュガー・ラッシュ」が故障してしまう。そんな折、ゲームセンターにWi-Fiが繋がれ、二人はゲームを救うべくインターネットの世界へと飛び出していくが……。テレビゲームの中の世界を描いたディズニーCGアニメ『シュガー・ラッシュ』の続編。

前作が大好きだったので、あの二人が帰ってきた!という思いが溢れそうな続編。ゲーセンにあるレトロゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の悪役ラルフと、キュートなレースゲーム「シュガー・ラッシュ」のプリンセスであるヴァネロペ。親友となった二人はいつも一緒に遊びまくり。しかし調子に乗りすぎて「シュガー・ラッシュ」のコントローラが壊れ、筐体は廃棄寸前の大ダメージ。しかしeBayというところにそのコントローラがあるらしいと知った二人は、インターネットの世界へと飛び出していきます。広大で何でもありなネット世界のビジュアル化が最高に楽しい!しかしそれを無限の可能性と感じるか、求めてない変化と見るかですれ違う仲良し二人がせつないという、相反する感情のぶつかり合いに見舞われます。他にもネットの心地よさと薄気味悪さであったり、キュートさとワイルドさであったり、光と闇であったりと様々な対比がなされ、愉快なのに胸が締め付けられ、笑えるのに泣けるということになってます。

前作『シュガー・ラッシュ』『ズートピア』の監督リッチ・ムーアと、前作の脚本でもあるフィル・ジョンストンが共同監督、ということで世界観は踏襲、前作のキャラもこぞって登場。吹替版で観ましたが、ラルフ役で山寺宏一、ヴァネロペ役で諸星すみれが続投というのが安心感。ヴァネロペがもうね、身悶えするくらい可愛いんですよ。また新キャラであるクールビューティなレーサー、シャンク役に『銀魂』菜々緒です。なかなか悪くないです。ちなみに字幕版ではラルフ役が『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジョン・C・ライリー、ヴァネロペ役が『荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて』サラ・シルバーマンとこちらも続投、シャンク役には『ワンダーウーマン』のガル・ガドット!また検索おじさんノウズモア役のアラン・テュディック、名前に聞き覚えがあると思ったら『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のK-2SOの人ですね(前作のキャンディ大王でもある)。さらにイエス役は『ドリーム』のタラジ・P・ヘンソンだ!字幕版は観れてないですが……。

実在するインターネット・サービスも実名で登場したり、ゲームセンターとは関係ないキャラもわんさか出てきたりします。特にディズニーが自社の持つ資産を惜しみなくブッ込んでくるのは凄まじい。ディズニー・プリンセスも出てきますが、ネタとしてのちょっとしたサービスかと思ったら本気度が違うんですよ。エンドロールで見る吹替の面子にはのけぞります。これが権力というものか……。細かいネタの大量投下がありつつ、ラルフとヴァネロペの異なる夢という本筋はしっかりしていて、上手くまとまってます。インターネットを扱うにあたり少しばかり気になる点はありますが、それでも前作同様に大好き。

↓以下、ネタバレ含む。








■ゲームセンターからインターネットへ

前作でもゲーセン内ではゲーム間の行き来ができていた、ということもあり、舞台がインターネットになってもそこまでの違和感はなかったです。そもそもスタンドアロンな筐体なのにコンセント通して他のゲームに入り込めるという時点である程度のファンタジーなので、制限はわりと緩いです。今作でも電話線使って簡単にネット世界へダイブしますが、まあファイアウォールとか考えたら話が進まないですからね。でネット世界、一口にインターネットと言ってもそこはいまや全てがあると言っても過言ではない広大さなので、ある程度の要素をピックアップして構造化しないととっ散らかるのは目に見えてるわけです。というわけでウェブサービスやSNSなどは有名なものに絞り(許可が取れたかというのもあるかもしれませんが)、eBay、YouTube、Google、Amazon、Instagramなどロゴ一発でわかるオブジェクトで世界を彩って巨大な都市に見立てて構築することで、ある程度上手く処理してます。

あとはパケットに乗ってサービス間を移動したり、検索サービスでは検索候補を並べたり、ポップアップをタッチパネル風にしたり、Twitterでは鳥がさえずったりと細かい点をポップなビジュアルにしてるのが楽しさを増します。ニュース映像が流れるのも今なら普通だし、Googleはゴーグル屋にされてたり、eBoyのマスコット的な姿も可笑しい。ただ、ユーザーが発信する場や交流する場というのはそこまで描かれないし、動画のコメントはあるもののチャットなどは映らないし、オンラインゲームも「スローター・レース」しか出てこなかったりと、ちょっと欠落感はあります。「スローター・レース」のプレイヤーが少しカクカク動くところはちょっと古いような、でもグラフィックは抜群という新旧混ざったような雰囲気。どこか少し懐かしい感じのネット世界ではあるのかも。でもこの辺りは(意図的かはわかりませんが)前作にあったレトロゲームへのノスタルジーに代わる空気感としてありかなと思います。そもそもゲームキャラの話なのであまり人間が関わるとバランスが崩れるというのもあるでしょうね。でもラルフがブン投げた看板に潰されてフリーズした人がF5を押しまくるときのあの「ふざけんなよー」という顔には笑います。するよねああいう顔。

ネット世界中心となるのでゲーセン世界の描写は少し少なめな気がしますが、そこも絞った上で詰め込んではいますかね。パックマンはクイズにされるし、ソニックはネットに詳しいのがクールだし、ストⅡのリュウがタッパーの店でおごりだーって言われたとき思わず「しょーりゅーけん!」て言っちゃうの面白い。そう言えばザンギエフと春麗っていっつも一緒にいないか?なんなの、デキてるの?『トロン』のゲームで遊んでる画の映像や音が映画版そのまんまなのは懐かしいですねえ。あと新しいゲーム機が入ると「プラグ注意報」というのがあるのは面白いです。


■世界には色んな人がいる

それにしてもヴァネロペの可愛さは半端ないです。いたずらっぽい表情や茶化すときの思いっきりの笑顔、飛び跳ねながら歩く様子や横顔でのぷっくりしたほっぺなど、小憎らしい態度も含め子供らしい可愛らしさが溢れていて、あざといと思う間もなくやられる……。一方のラルフは「汗臭いおじさん」なわけですが、ヴァネロペに「自分は大人って言えるの?」とからかわれるように稚気が強いですね。むしろヴァネロペの方が考え方は大人びてるんですが、でも彼女がシュガー・ラッシュに「帰れない」と気付く直前には「明日の今頃は帰ってる」みたいなことを言ってるんですね。監督のインタビューによると、ヴァネロペが本心をハッキリ言わないのもこじれる原因だと述べていて、つまりは二人ともまだ精神的には子供というわけです。そんななかで浮き上がる価値観の違いを受け入れ、それでも友達でいられるか、というのがテーマになるんですね。

ヴァネロペが心惹かれる新たな世界、それがスローター・レース。オンラインのレースゲーム、ということですが『マッドマックス』を思わせる荒廃した世界は確かに何が起きるかわからないドキドキはありそうです(と言うかヤバいことしか起こらなそう)。レースゲームなのにサメが出てくるのは数々のサメ映画へのオマージュか?ここで出会ったシャンクが見た目も超絶ドラテクもカッコよすぎるので、ヴァネロペが惹かれるのもわかります。どうやって運転してるのかわからないぞ。シャンクが見せる、無理強いはしないが来る者は拒まない、そして広い世界を示唆してくれる、という姿勢はそのままインターネットの特性と言えるかもしれません。ラルフがシャンクを信用できないと言うのも、インターネットに興味を持てないからなのでしょう。

他にもネット的なキャラクターは多く出てきます。バズチューブのイエスが動画のトレンドにシビアであるとか(イエスなのに登場時に「ノー」って言うし)、ノウズモアおじさんはお礼を言われなくて寂しいとか、JP・スパムリーという名前からしてヤバそうなヤツとか面白い。あとスパムリーの相棒の手がぐねぐね伸びるゴードがキモかわいいんですが、あの色んな経路を辿って無言で情報を差し出してくる、みたいな感じがネットのヤバイ面を表してるみたいで笑います。


■ディズニー・フェスティバル

またディズニーの底力とも言うべきクロスオーバーの数々。『スター・ウォーズ』からはストームトルーパーがセキュリティとして働いていて、ヴァネロペが追われるシーンでは曲もそのまま。C-3POはレイア姫のお付きだったのでプリンセスたちの手伝いというのはハマります。なぜかR2だけリアルタイプ。またMCUからはアイアンマン!ベビー・グルート!なんとスタン・リーまで出てきて感涙!さらにディズニーアニメから『ズートピア』のニックや『ベイマックス』、『トイ・ストーリー』のバズまで。他にも山ほど出てそうですが、これは繰り返し観ないとわかんないよー。

そしてプリンセスたちですよ。いやまさかラストでまであんな活躍するとかカメオの域を超えてます。さらに彼女たちはヴァネロペに「本当の願いを知る方法」を教えることになるので、実はかなり重要な役割なんですね(地獄のレース場でスポットライト代わりに投光器というのが笑いますが)。さすがディズニーの看板をしょって立つだけはあります。メンバーは?えっと、白雪姫、シンデレラ、オーロラ、ムーラン、アリエル、ベル、ジャスミン、ポカホンタス、ティアナ、ラプンツェル、メリダ、エルサ、アナ、モアナ、で14人?いやこれもう立派なアイドルグループじゃないですか!全作品観てるわけではないので知らない子もいるんですが、いつの間にか自然と「推しは誰?」みたいな話をしたくなってる自分が怖い。

ラフ姿なんてアイドルの日常を写すオフショットみたいだし、スポットが当たって歌うというのがそもそもアイドルっぽいし、グループのなかで個性を出してくるというのも似た感じを受けます。アリエルはかなりアピールが強いなーとか、メリダだけスタジオが違うから変わり者とか(『メリダとおそろしの森』はピクサーの作品)、白雪姫の特技が「毒」というのはなんか違うけどセンター取るためには個性が必要なんだな!とか。モアナが「ユア・ウェルカム」って言うの、『モアナと伝説の海』でマウイが歌うのと同じ台詞なのがシャレてます(吹替でもそのまま言ってくれたのはGJ)。あと吹替の声がオリジナルままに神田沙也加、松たか子、中川翔子、大島優子という豪華布陣なのには驚愕。吹替については他にもバズは所ジョージだし、グルートは(ベイビー・グルートだから声変わるのにわざわざ)遠藤憲一だし、いやスゴい。正直やりすぎですが、でもまあお祭り感あって楽しいのでいいでしょう。


■ちょっと気になる点

引っ掛かる点もあります。ゲームキャラはお客さんの知らないところで独自の生活があるはずなのに、そこが徹底されてないというのはちょっと緩いです。ゲームキャラであるラルフがシュガー・ラッシュのコースを書き換えちゃうとか、ヴァネロペが客のコントロールを奪っちゃうとか、あまつさえシュガー・ラッシュの画面に外を覗き込むラルフが映っちゃってるとか、そういうのが前作以上に気になるんですよね。『トイ・ストーリー』なんかと比べちゃうと特に。ドット絵のはずのラルフが動画では普通になめらかな顔で映っている、というのもちょっと違和感。まあスローター・レースにヴァネロペが出ちゃうのはコラボと銘打てばありかなあ、とは思います。また、現実で壊れたハンドルを手にしようとする以上しょうがないんだけど、どうしても目的が金儲けになってしまうんですね。面白動画は金儲けのためにやるもの、みたいに見えちゃうし、指先を擦り合わせるジェスチャーがあったりもして、ちょっとやらしいと言うか。気にしすぎですけどね。

ネット世界であるせいか、展開が簡略化されるところもあります。ポップアップだからウィルス作ってるヤツも知ってるとか、ラルフ・ウィルスをどうすればいいかという問題にも検索エンジンがあっさり答えちゃう。それがインターネットだ、と言われればそうなのでいいんですけどね。ただラルフが成長したことでウィルスが消えるというのには、マカフィーの立場って一体……という気がしなくもない。あと職場でバズチューブ見てるヤツらはちゃんと仕事してください。


■二人の道が離れても

ラルフとヴァネロペはそれぞれが異なるものを求めていることに気付いてしまいます。二人の夢が異なるというのを示すかのように、作中には様々な対比がなされているように見受けられます。検索したら即パケットで移動みたいなネットの心地よさと、ウィルスにより全てが不安定になる居心地悪さ。ヴァネロペが水に映った自分の顔に見る高揚感と、ラルフがウィルスに見る自分への嫌悪感。お菓子のレース場とマッドなレース場などなど。変わりたくないラルフと変わりたいヴァネロペという正反対の価値観を映しているかのようです。二つに割れてしまう「私のヒーロー」のペンダントは、価値観の違いが断絶を生んでしまう悲劇の象徴でしょう。この悲劇は先に述べたように二人の精神的な未熟さによるもの。ちなみにラルフとフェリックスも対照的で、ヴァネロペに親友として接するラルフと、レーサーたちを子供として扱うフェリックスとは根本から対応が違います。フェリックスが「子育てなんて簡単だ」などと言いますが、15人の子供たちをしつけるには友達感覚では無理だったんじゃないですかね(肝心のしつけの内容は聞こえませんが)。そういう点でもラルフの精神年齢が低いことが窺えます。フェリックスはね、悔しいけどやっぱりデキるヤツなんですよね。まあカルホーン軍曹とは仲よさそうでなにより。

ただラルフは前作でヴァネロペに出会うまではずっと孤独だったので、人との距離感を掴むというのに慣れてないというのもあったでしょう。そして6年もの間ずっと一緒だったので、二人が向いてる方向も同じだと思ってしまったラルフ。でもヴァネロペが求めていたのは何が起きるかわからないドキドキです。今のままがいいというラルフが悪いということではなく、進む方向が違っても、たとえ離れることになっても、それでも親友の夢を応援できるかというのが試されるわけです。それは『ズートピア』で描かれた多様性を受け入れるということとは少し異なり、認めながらも寂しさや心許なさに耐えられるかということ。しかしラルフ・ウィルスを見たラルフは、自分の身勝手さと束縛しようとする醜さにようやく気付きます。このラルフ・ウィルスは実にキモい。合体して巨大化するのは最近でも『くるみ割り人形と秘密の王国』などにもありましたが、個々の偽ラルフがウネウネ動く描写がちょっと引くくらい病的に細かくて、どうかしてます。傲慢の気持ち悪さという点はよく表れてますが、これトラウマになる人いそう。

そうしてラルフは、友を笑って見送る道を選びます。それは前作同様、あるべき姿に納得したからに他なりません。ラルフはまた一つ成長し、ヴァネロペもまた自分を偽らないという点で成長するのです。価値観による断絶を象徴した「私のヒーロー」ペンダントは、最後に抱き合ったとき偶然くっつくことで二人が信頼し合う仲に戻れたことを示します。もうね、泣きますよこんなの。最後の最後まで手を振り合う二人の姿には涙が滝です。

ちょいちょい引っかかるところもあるものの、ネット世界のビジュアル化がポップで楽しく、サービス満点なメタネタに笑い、たとえ離れてももう一人じゃないということをしっかり描いていて、やはり前作同様に好きです。偏愛枠です。それにしてもエンドロール中の「パンケーキとミルクシェイク」は何なんでしょうか?二人の別離の寂しさを和らげるためか?ちょっと蛇足な気もするんですが、あれだ、いつも冒頭にある短編アニメがなかった代わりだ、ということにしておきます。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1480-338bc5a1
トラックバック
back-to-top