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2018
12.05

解き放たれる獣たちと分かたれる血縁。『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』感想。

Fantastic_Beasts_2
Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald / 2018年 アメリカ / 監督:デヴィッド・イェーツ

あらすじ
アクシオ(よいではないか近う寄れ)!



イギリスに戻ってきたニュート・スキャマンダーは、アメリカで捕らえた闇の魔法使いグリンデルバルドが逃げ出したことを知る。恩師であるダンブルドアから指令を受けたニュートは魔法生物たちを連れパリに向かい、鍵を握る青年クリーデンスを探すが……。『ファンタスティック・ビースト』シリーズ第2弾。

『ハリー・ポッター』シリーズと同じ世界観で魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の続編。今作もハリポタ原作者のJ・K・ローリングが自ら脚本を担当、監督デヴィッド・イェーツやもちろんメインキャストも続投です。前作はせつなさと愛しさ、魔法と魔獣がいいバランスで、新たな主人公たちも魅力的で楽しめたんですが、この続編はのっけから派手に飛ばします。知らないキャラが続々登場し、関係性がどんどん変化し、初めての設定がガンガン投入され、舞台も転々とするというスピーディーさ。キャラ紹介はすっ飛ばされるので前作の鑑賞は必須ですが、鑑賞済みであっても置いていかれそうになるほどやたら情報量が多いです。まあそれだけエキサイティングな展開だとは言えるでしょう。

ニュート役の『博士と彼女のセオリー』エディ・レッドメイン、ティナ役の『エイリアン:コヴェナント』キャサリン・ウォーターストン、ジェイコブ役のダン・フォグラー、クイニー役のアリソン・スドルらが再び登場しますが、前作でいい感じだった関係がいきなりトラブルだらけ。クリーデンス役の『ジャスティス・リーグ』エズラ・ミラー、グリンデルバルド役の『オリエント急行殺人事件』ジョニー・デップも再び登場し、物語の中核となっていきます。エズラの狂気に満ちた睨み上げ、ジョニデのふてぶてしさ、良いですよ。

また新登場キャラとして『キング・アーサー』ジュード・ロウが若き日のダンブルドア役に。そして前作では写真だけだったリタ・レストレンジに『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ゾーイ・クラヴィッツ、名前だけだったニュートの兄テセウスに『グリーンルーム』カラム・ターナー、クリーデンスの仲間ナギニに『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』クローディア・キムです。おお、ダンブルドアの旧友ニコラス・フラメル役がまさかの『リアリティのダンス』ブロンティス・ホドロフスキー!

ニフラーやボウトラックルなどに加え、新たなビーストたちも登場、なかなかの活躍を見せますが、今作はそれよりもグリンデルバルドやダンブルドアら人物たちのドラマがメイン。しかもハリポタ後期で頻出したドン底まで落とそうとするイヤ~な作劇が再発、前作から続くダークな映像がマッチしすぎて重さも倍増と、観る者をふるいに掛けてきた感が。しかしそこが味でもあるんですよね。正直せわしないと思うしちょっと鼻につくところも増えましたが、かなり3Dを意識した画作りは迫力あるし、ジェイコブさんにはやはり和むし、十分楽しみましたよ。

↓以下、ネタバレ含む。








■せわしないほどの情報量

とにかく展開は早いです。初っぱなから「舌を切った」でダークさを一気に強め、続くグリンデルバルド脱走シーケンスで派手かつ容赦ない戦いが描かれることを予感させます(ついでにアクションが見にくいというのもわかりますが……)。そしてキャラが多いので、登場シーンにもいちいち時間をかけません。ニュートは唐突に魔法省に現れ、リタとテセウスが一度に登場して、兄は口煩くもハグをし、幼なじみは過去を匂わせることで関係性をアピール。記憶をなくしたはずのジェイコブがいきなりニュートを訪ね、もう付き合っちゃえよーと思っていたティナは別の男と付き合っており、消滅したはずのクリーデンスはなぜ生きていたのかは語られず、前作ラストでオブスキュラスの一部がどこかへ消えるというショットだけでそれがまかなわれます。人物配置を変え、サクサク進み、背景はそのなかでチョイチョイ説明することで詰め込んできます。

おかげで新キャラとは言えそこまで絡まないだろうと思われたユスフ・カーマ、ナギニちゃん、ニコラス・フラメルなどが意外と重要だったというのが後からわかります。あと人が多いので名前が覚えきれない……グリンデルバルドの身代わりになってた男は、前作でクイニーに近寄ってた魔法省の彼か?名前何だっけ?さらにここに魔法生物も出てくるのでもう大変。おまけにダンブルドア登場&ニュートとリタの関係を描くために、本筋とはまだそこまで関係ないホグワーツ魔法魔術学校も出すという、ハリポタファンへの抜かりないサービスも。ちょっとだけマクゴナガル先生も出演だ。またポートキー、ポリジュース、まね妖怪ボガート、望みが見える鏡などシリーズのアイテムまで出してきます。こうして見ると駆け足なのも納得、むしろよくまとめたなあと思いますよ。このシリーズは全5部作の予定らしいですが、2作目で早くもここまで詰め込むというのが驚き。何度でも観れるくらいの情報量を仕込んでいるとも言えますけどね。


■変化する者とブレない者

今作の特徴は(と言うよりはハリポタのときからそうなんだけど)、誰が信用できるのか、誰に頼ればいいのかというのが結構グレーで、それ故に話が二転三転するところでしょう。ニュートにとってはダンブルドアは恩師ですが、だからと言ってグリンデルバルドやクリーデンスを追えと言われても納得いかないわけで、だからクリーデンスを探すティナを追います。でもティナはニュートがリタと婚約したと思ってるからつれない態度。そのティナは同じくクリーデンスを追っていたユスフ・カーマを追跡したら逆に捕らえられてしまいます。一方クリーデンスは出自を求めてサーカスを脱出、自分を育ててくれた女性に行き着くも魔法省の偉い人に襲われ、その偉い人は実はグリンデルバルドと繋がっており、クリーデンスは力を欲するグリンデルバルドの言葉に乗ってしまう。肝心のダンブルドアは過去にグリンデルバルドと「血の誓い」を結んでいて手が出せない。テセウスはダンブルドアの言葉を聞きつつも魔法省の仕事で味方になれない。リタは何かを隠している。という具合に関係性はどんどん変わり、誰が味方で誰が敵かも移っていきます。

そんななかで一番ブレず、自分の考えで動き回れるのがグリンデルバルドでしょう。魔法族が世界を制覇するために人を集め、たぶらかし、ついには大演説をぶち、そして最後に勝利する。彼自身にはさほどサプライズはありませんが、着実に力をつけてラスボス感を大幅にグレードアップさせるのです。しかしもう一人、グリンデルバルドほどではないにしろブレない人物がいて、それがニュートです。信じた人たちを求め、信じる動物たちを使い、皆を救おうとする姿は一貫しています。ニュートが正義の味方的な立ち位置になってしまうのは、振り回されることはあっても人や動物たちを大事にする姿勢は変えず、それらを守ることを重要視するからです。だからニュートとグリンデルバルドの対立というのは、ブレない者同士という点で釣り合ってると言えるでしょうね。

もう一つ特徴的なのは(これもハリポタの頃からそうですが)、血縁や家族という関係性を示しておきながらそれを分かつ、という構成。リタはユスフと兄弟でクリーデンスは彼女の弟、かと思いきや取り換えられた子であることが判明しクリーデンスはまた一人に。共に逃げ出したナギニとも離れてしまいます。リタは婚約者のテセウスとかつての想い人ニュートを守るため犠牲になります。クイニーはノー・マジとの結婚を諦められないという理由で、その相手であるジェイコブの元を離れ、姉ティナとも別れてしまいます。ダンブルドアがグリンデルバルドと戦わないのは、兄弟同然、兄弟以上の関係であるから。しかし「血の誓い」の小瓶を手に入れたことでこの関係も崩れることになるでしょう。そして極め付きは本作最大のサプライズ、クリーデンスとダンブルドアの関係。でも血縁が判明したところで、二人には戦うことが運命づけられているのです。愛を口にした者の仲を引き裂き、ドン底まで落とそうとするJ・K・ローリング節がイヤになるくらい冴え渡ります。このヤダ味は次作への布石ではあるんでしょうが……ちょっと悲劇で引っ張りすぎな気はしなくもないです。


■がんばれ魔法動物

それに後から判明する血縁というのは何の伏線もないし、特に終盤は次々と明かされていくので飲み込み辛いんですよね。ユスフとか誰?って感じだし、クリーデンスとダンブルドアに至ってはスネイプのときのような後出し感が顕著(驚いたけど)。そこがまた展開が性急に思える原因でもあります。また、部外者のはずがいつの間にか中心にいるという立場だったニュートを、グリンデルバルドに対抗させるため今作で明確に中心に据えようとする意図はわかりますが、そこもいきなり話広げすぎな気はします。ブレないニュートが魔法省入りを決意することで、前作にあった自由奔放さが失われるのではという危惧も。それよりはジェイコブのパン屋さんの話とかもっと見たかったなあと思うんですけどね。何ならダンブルドアだってまだ出てこなくてもよかったような。ただ話が大きくなったので最強の魔法使いを出さないわけにはいかないんだろうし、何より前作のコリン・ファレルに代わるセクシー要員がジュード・ロウってことなのであれば、まあしょうがない!

その点、魔法動物たちは頑張ってますよ!話が人間同士の関係にシフトしたせいで本筋からは少し外れた感はありますが、そのぶんアクションや細かい活躍、何より癒し成分が高いのでやはり和みます。重い話を緩和するアクセントとしての役割はしっかり担ってると思うのですよ。あのニフラーが役に立っている!呪文で手元に戻せるなら前作でも使えばよかったのに……あとボウトラックルも『アントマン』ばりにお役立ち!ケルピーはオリジナルではなく元々伝承にある幻獣ですが、それが映像化されたというのは地味に嬉しい。そしてズーウーですよ!尻尾が優雅で超カッコよく、それを振り回しての資料室での一大アクションは実に楽しい。それなのにズーウーじゃらしでピコピコやると大人しくなっちゃうの超カワイイ!あとまさかのジャパニーズ・モンスター、河童が、昨今の『ゲゲゲの鬼太郎』ブームに乗って登場(違う)!頭がでかいので皿の水も長持ち!つーかあれ魔法生物なのか!まあ癒し系という点ではジェイコブさんも魔法生物みたいなもんですけどね。

あと良かったシーンを挙げるなら、レストレンジ家の家系図が立体なのは面白い。女性は花で表現されるというエグい男女差別が時代性を写してもいます。ニュートがユスフの目から虫を抜くというのも地味にエグい。ティナの通った跡を探すニュートが前作の発情サイ捕獲に続きダンスを舞うように動き回るのは愉快。あとキメ台詞が「君の瞳はサラマンダー」ってどんだけ中二なんだ。でも最後の青い竜を防ぐ魔法で、兄弟で同時に地面に杖を立てるのがむっちゃカッコいいんですよ。『餓狼伝説』でテリー&アンディのボガード兄弟が二人でパワーウェイブを放ってるようです(どんだけ中二なんだ)。そして兄テセウスのことを「ハグが好き」と揶揄していたニュートが、リタを失った兄に自らハグをするシーンには思わず涙します。


■黒い魔法使い

最後にグリンデルバルドが袖からツッと出した杖を受けとるクリーデンス。黒い旋風オブスキュラスを操るクリーデンスがついに魔法の杖を手にし、まさに「黒い魔法使いの誕生」が描かれるわけです。物語としては今作は意外性を重視しながら次々に覆して転がすことに終始しているため、カタルシスにはどうしても欠けるんですが、世界を拡げるのが目的ではあるだろうし、ここからが本番ってことなんですかね。もっとゆっくりやってくれてもいいのよ?もっとニュートと愉快な魔法動物の諸国漫遊記をやってくれていいのよ?とも思うし、これじゃ本を書く時間が取れなくなっちゃう!いうのも気になりますけどね。

あと魔法生物たちがメインから外れた感があるので、今作以上に事態の重要な突破口を切り開くような活躍も見たいんですけどね。そろそろドラゴンとかも出てくるんだろうし。ただこれについてはニュートが「グリンデルバルドは動物を甘く見ている」という台詞がしっかりあるので、まさにファンタスティック・ビースト!となる展開も期待できるかもしれません。何だかんだ言ってもシリーズ全作観ると思うので、どうせなら楽しみに待ちますよ!

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