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2018
11.27

奪うか止めるか、瀬戸際の獣たち。『狂獣 欲望の海域』感想。

The_Brink
狂獣 The Brink / 2017年 中国、香港 / 監督:ジョナサン・リ

あらすじ
びしょ濡れ。



金塊の闇取引を追っていた刑事の西狗(サイガウ)は、密漁業者の貴成(グァイセン)がそれに関係していることを掴むが、相棒の刑事である阿徳(アダ)をグァイセンに捕らえられてしまう。アダを救うべく、取引現場である海上のカジノ船に向かうサイガウだったが……。マックス・チャン主演のクライム・アクション。「のむコレ2018」上映作品。

海に眠る金塊を巡って刑事と密輸業者が激突する、クライム海洋香港アクションです。かつて追跡中の犯人を死なせてしまった刑事サイガウはますます捜査にのめり込む日々。そんななか深海に沈む金の闇取引に繋がる現場に鉢合わせし、舞台はやがて海へと移っていきます。そこにサイガウとある少女との疑似親子な描写、捕まった相棒アダを救わんとするバディとの関係、悪党として出てくるグァイセンの生い立ちが垣間見える人生など、様々な要素が含まれてきます。要素詰め込みすぎて若干描ききれてないところはあるものの、壮絶な格闘アクション、迫力で斬新な嵐シーンの映像などが熱い!

暴走デカことサイガウ役は『ドラゴン×マッハ!』の所長であり『イップ・マン 継承』ではドニーさんと張り合ったマックス・チャン。初主演です!『パシフィック・リム アップライジング』ではアクション皆無で非情に不満でしたが、今回は華麗な足技を思いっきり駆使して魅せまくります。見た目も金髪で若くなり、とにかくカッコいい!サイガウの追うグァイセン役は『悟空伝』『インファナル・アフェア』のショーン・ユーで、クールな凶暴さを湛えた姿が激シブ。サイガウの相棒アダ役は『SPL 狼たちの処刑台』でも見事なアクションを見せたウー・ユエが、親しみやすさと強さを共存させていて良いです。また海上の大型カジノ船を仕切るボスの「鬼(グァイ)」役に日本が誇るアクション俳優・倉田保昭、なんですが残念ながら今回はアクションなし。

業を抱えた男たちが、船の上、海の底、雨の中とびしょ濡れになりながら、一方は正義のために、一方は金塊のために突っ走る!『パーフェクト・ストーム』や『ザ・ブリザード』ばりに荒れる海でのド迫力な船上シーンに、『イコライザー2』に劣らぬ嵐バトル。とにかく濡れます。それがセクシー。でも命懸け。ハードボイルドなテイストも大変良かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








■三者三様の見せ場

マックス・チャン演じる西狗(サイガウ)は名前にも表れるようにまさに狂犬、留置場を出たら金髪という警察とは思えない尖りっぷりで、話を聞こうとして逃げ出した奴は海の果てまで追いかけるし、とりあえず拳で情報収拾します。序盤にグァイセンがボスの息子をいたぶってるのに遭遇したときも、ナイフを見た瞬間駆け出す瞬発力。最強の足技もガンガン繰り出します。ちょっとカット割りが激しくて見にくいのが難点ですが、盛り沢山のアクションを見せてくれて嬉しい。格闘以外にも、船に飛び移るときにあん馬みたいに足を伸ばして飛ぶのがスマートだったりして、やはりアクションするときのシルエットがカッコいいんですよ。さらにはマックス・金髪・チャンだったりマックス・ヒゲ・チャンにもなったりして今までにないワイルドさ。そしてセクシ~。

そんなサイガウが頼りにしてるのがウー・ユエ演じる阿徳(アダ)。警察辞めると言ってるのにアダを引きずり回すサイガウの強引さも大概ですが、それだけ信頼してるということが窺えます。グァイセンを狙うのも半分はアダを救うためだし。しかしアダの方は、警察を辞めるのは実は借金がかさんで高飛びするためであって、結果的には金のためにサイガウを裏切ります。冒頭ギャンブルで勝ったように思わせたりこれ見よがしに新しい時計を磨いたりするのがミスリードだったわけです。サイガウを部屋に入れなかったのは壁に書かれた借金取りの言葉を見せないためで、もしサイガウに相談していれば別の道があったのでは……と思うとせつない。ウー・ユエは半分くらいは逆さ吊りにされてるのでアクションはちょい少なめですが、やるときはスピーディーで魅せてくれますよ。サイガウと魚市場を逃げる男を追跡するところは『SPL 狼たちの処刑台』を彷彿とさせます。

ショーン・ユー演じる貴成(グァイセン)は、冷静沈着で凄みのある悪党として描かれますが、幼い頃から船上で暮らす船の民であり、要するに貧困層なんですね。それだけに仲間との結束は固く、搾取しておきながら自分を殺そうとしたボスが許せなかったのでしょう。「さばけ」という命令に見る非情さには震えます。アダをエサにサイガウを誘き寄せ亡き者にしようとしたり、鬼(グァイ)の船に単身乗り込んで交渉しようとしたりと結構な無茶をするのもパワフル。あとジャニス・マンが演じるグァイセンを慕う女性・阿雪の、市場で無造作に放り出されるペットボトル爆弾がスリリング。停まっている車を爆弾で吹き飛ばして道を塞ぐというのも実用的で面白いです。


■惜しい描写不足

ただ、至るところでドラマが描写不足ではあるんですよね。アダがサイガウをどう思っているのかがハッキリしないためこの二人のバディ関係が弱く、ラストの対決の悲壮感が物足りないです。グァイセンは色々無茶をする背景について深堀りされないのが残念。特に彼と阿雪との関係がよくわからなくて、彼女のいるそばの部屋で娼婦とヤってたりするので恋人ではないようだし、過去に救った経緯があるとかなんでしょうが、そこをもっと描いていれば最後に彼女のネックレスが海の底に沈むシーンももっとエモーショナルになったと思うんですけどね。あとグァイセンがアダを仲間に引き入れるのもリスクの方が大きいように思えます。鬼(グァイ)の倉田保昭があっさり御用になって終わるのもあっけない。

サイガウと彼が死なせた犯罪者の娘とが見せる疑似親子な関係もちょっと物足りないですかね。娘に「妊娠した」と言われたときは『SPL 狼たちの処刑台』ばりに相手をブチ込むのではと思ったんですが(それはなかった)、妊娠とか以前にもっとベタでもサイガウと娘の交流を増やした方が良かったんじゃないかなあ。娘がわざわざ船でサイガウの激励に来るというのもちょっと唐突。ああ、でも付かず離れずだけど互いを気にかけずにはいられないという距離感としては、これくらいでちょうどいいのかもしれません。あと、『ドラッグ・ウォー 毒戦』のラム・カートンが演じる上司は良かったですよ。無茶ばかりする部下に振り回され、役立たずと罵られるという中間管理職の悲哀……。男気見せて雨のなかサイガウに付き合い海中まで同行したのに、病院でおむつ変えられるはめに(そっとドアを閉じるサイガウ)。あそこは笑うところなのかもしれませんが、ちょっと気の毒すぎてなあ……。


■嵐の中の攻防

とは言え、テンポはよくアクションも豊富で停滞しないので、多少のドラマの物足りなさもそこまで気になりませんけどね。狭い路地でのチンピラたちとの戦い、八艘飛びしながらの追いかけっこ、車に閉じ込められたアダと逃げようとする容疑者のどちらも取ろうとするサイガウの意地、海中での金塊の奪い合い、などなど。特にクライマックスの嵐の船上は圧巻。叩きつける雨、襲い来る波、揺れる船。極限状態での三人のバトルは鬼気迫るものがあり、それでいてびしょ濡れでのバトルというのに独特のカッコよさがあるんですよねえ。CGによる波の表現もわりと自然で、特に船上で向こうから高波が迫ってくる、というシーンは意外と新鮮、かつ迫力で良いです。

グァイセンは最後まで金塊を諦めようとしません。落ちた金塊を海中まで追いかけ、それを手放すことができず息が尽きて沈んでいきます。彼の金塊への執着は、金塊そのものよりもそれを手に入れて人生を変えようという意思の強さだったのでしょう。しかしタイで待っている阿雪を迎えに行くという約束は、彼女の身に着けていた品と共に海底へと消えていきます。一方生き残ったサイガウは娘に付き添って病院へ。正義を貫いた結果、娘の父親を死なせ、今またグァイセンとアダも死なせてしまったサイガウは、今度は生まれてくる命を守ろうとするのでしょう。それでも悪党を見れば追っていく、そんなマックス・金髪ヒゲ濡れ・チャンをまた見たいものです。

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