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2018
11.26

復讐は血みどろの狂気と共に。『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』感想。

Mandy
Mandy / 2017年 ベルギー / 監督:パノス・コスマトス

あらすじ
ニコラス・ケイジが「マンディ」ではないです。



人里離れた場所で妻のマンディと暮らすレッドだったが、カルト的な集団により目の前でマンディを惨殺されてしまう。怒りと悲しみに嘆くレッドは自ら武器を作り、カルト集団や彼らに雇われた謎のバイク軍団に対し復讐を始める……。ニコラス・ケイジ主演のバイオレンス・スリラー。

木の伐採で生計を立てる男レッドは妻のマンディと山奥で慎ましやかに暮らしていたところ、マンディに固執するヤバすぎなカルト集団が現れて彼女をレッドの目の前で惨殺、レッドがカルト集団に復讐していく、というお話。妻を殺された男のリベンジ劇、という説明に偽りはないんですが、これが思ってたのとは違ってかなり前衛的。妻殺しへのリベンジ・アクションと言えば最近では『デス・ウィッシュ』などがありますが、相当テイストは異なります。舞台は1983年のシャドウマウンテンと出ますが、これもあまり意味を感じないほど時代も場所もハッキリしません。赤と黒が覆うかのような画面、幻想的とも言える謎めいた世界、そのなかで狂気が静かに蔓延し、一気に爆発。延々と続く血みどろの戦いにトリップしそうになります。

レッド役は近年スゴい勢いで出演作が続くニコラス・ケイジ。個人的には『ゴーストライダー2』以来でかなりご無沙汰なんですが、とにかくニコラス・ケイジが色々と凄いです。けど周りも凄いので浮いてないぞ。マンディ役は『ノクターナル・アニマルズ』アンドレア・ライズボローで、独特な存在感。カルト集団のリーダー、ジェレマイア役の『フライト・ゲーム』ライナス・ローチは唯我独尊でクレイジーなゲス野郎がハマってます。監督のパノス・コスマトスは『ランボー 怒りの脱出』の故ジョルジ・パン・コスマトス監督の息子だそうで、作風が違いすぎるのが面白い。音楽が『ボーダーライン』などの故ヨハン・ヨハンソンだったのというのはちょっと意外。プロデュースにはイライジャ・ウッドの名も。

どこだか全くわからなくなる世界、人間かどうかも怪しい謎のバイカー軍団、丸出しのカルトリーダーなど、色々と狂っていて度肝を抜かれます。何よりニコラス・ケイジの、インパクト絶大な恰好で泣き叫び、『モンハン』のような武器を自ら作ってリベンジへと繰り出し、返り血を浴びすぎて真っ赤に染まる姿は鬼気迫るものがあり、その凄さを再認識。見方によってはちょっと笑え……いやこれは笑うやつじゃないから!ニコラス・ケイジの本気だから!後味としては『オンリー・ゴッド』に近いものがあるかも。とんだカルト作です。

↓以下、ネタバレ含む。








始まりこそ木を伐るレッドことニコラス・ケイジの映像が出てごく普通の感じなんですが、章タイトル的な文字がバンと出てきてからはどんどん異世界感が増していきます。レッドとマンディがベッドで会話するシーンでは、山の中のはずなのにネオンのような青や赤のライティングが当てられます。そのためにカメラは固定でありながらシーンが切り替わってるような錯覚を抱き、語る会話の内容もあって過去に遡ったりもしてるかのようで、何かワケありながら一緒に暮らす二人の絆のようなものが窺えます。一方で夜空には本当に赤い色の銀河のようなものが映し出されたり、別のシーンでは月が三つくらい出ていたりして実に非現実的ですが、これはマンディが描くファンタジーっぽいイラストと通じるものがあり、イマジネーションの世界が現実と融合しているというように受け取れます。彼らが住むこの一帯が二人のホームである、ということを強く表してるんですかね。

そう考えると、謎のバイク軍団のまるで異界の門から現れたような登場シーンは、レッドとマンディの世界にとってはこの世ならざる者と同質ということを表しているようだし、ジェレマイア率いるカルト集団がたむろしてるトリップしたような空間もヤクでラリった状態を映像として見せているし、夢がアニメーションで描かれたりするのは別の位相であることを示しているように思えます。つまりは精神世界が映像に染み出してきたかのような画作り、ということなのでしょう。なのでレッドに「死神」という名のクロスボウを渡す男(『プレデター』のマックことビル・デューク!)とのシーンがわりと普通の現実的な映像なのは、この人はちゃんと背景を説明してくれるしまともだからですかね。地獄のバイカー集団「ブラック・スカルズ」も特殊な薬でずっと正気を失っている者らしいです。ただのっぺりぬちゃぬちゃした人外みたいなのもいるので、本当に魔界の住人だという可能性もあって、そこはあえてボカしてるんでしょう。

「チルドレン・オブ・ザ・ニュー・ドーン」を冠するカルト集団は、リーダーのジェレマイアがLSDキメまくって作ったような歪んだユートピア。勝手にマンディを気に入ってさらい、フルチン姿でふんぞり返り、自分のことを歌った自作の曲をマンディに爆笑されてブチ切れるというイタい男。鏡に向かって泣きながら「どうすればいい?」と自問するようなちっちゃいヤツですが、しかしその自尊心の高さからマンディを生きながら燃やすという凶行に出ます。取り巻きも笑いながらこれを実行。縛られたまま一部始終を見たレッドは、腹を刺された傷も気にせず嘆きます。虎のシャツにブリーフ姿で便器に座って酒飲みながら泣き叫ぶ、この異様な凄惨さはニコラス・ケイジじゃなきゃ出せないですよ。すげーな。ちょっと位置関係がわかりにくくて、マンディが燃やされるのがレッドの位置から見えたのか疑問だし、あと捕らえられたレッドのすぐそばに吹き抜けがあるとか敵が落ちていくまでわからない、などは気になりましたが。

ともかくここからはニコラス・ケイジのターン!なぜかやたらスタイリッシュなオリジナリティ溢れる斧を自作(木こりだから)!気合い入れてリベンジ始めたらクラッシュに巻き込まれてまたもや捕まる!でも繋がれたパイプごと引きちぎって逆襲!ブッ刺した返り血は残らず飲む!お気に入りのシャツを切られてブチ切れ、ブルース・リーばりのアクションで首を捻る!白緑色の謎の物体を舐めてパワーアップ(なぜそれを口にしようと思った?)!チェーンソー vs チェーンソーの対決(木こりだから)!敵のチェーンソーの方が長いというまさかのハンデも気合で勝利!切り落とした燃える頭で煙草の火をつける!戦うたびに血に染まっていくニコラス・ケイジの顔はまさに狂気の具現化です。ジェレマイアの取り巻きどもも一人また一人とブチ殺す!ただしロシアン・ルーレットをやらされた女性、ルーシーだけは殺しません。彼女だけはマンディが焼かれているときもほかの連中と違い笑っていなかったからでしょう。おそらくルーシーもジェレマイアに人生狂わされた、とレッドは察したのかも。

化学者(?)の男は何だったんだろう。何か意味はありそうな気はしますが、ひとまずここまでの展開とビジュアルで脳がやられているのでよくわかりません。ともかく命乞いしたり勢いづいたり支離滅裂なジェレマイアを、最後は斧じゃなくて素手で頭を潰す、というのが凄い。最後まで己の憤怒の姿をその目に焼き付かせてそのまま目ん玉びよーんさせ、ジェレマイアの脳を精神世界ごと破壊したわけです。車に乗り、隣にいるマンディの幻に狂気の笑みを浮かべるレッド。狂ってしまった世界は赤いままなのか。エンドロールでは音楽なしで風の音のみが聞こえてくる、というのも荒涼感を煽ります。しかし最後の方で徐々に鳥の声が聞こえてきて、ラストには自然を描いた絵が映されます。あれはマンディの描いた絵なのか。レッドは狂気から戻ってこれたのか、あるいはその絵も幻なのか。そんな余韻が後を引きます。

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