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2018
11.21

届かぬ世界に手を差しのべて。『ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』感想。

anemone
2018年 日本 / 監督:京田知己

あらすじ
カンよ!



人類に襲い来る敵、「7番目のエウレカ(エウレカセブン)」と戦う地球の実働部隊「アシッド」。エウレカセブンの意識世界へダイブする要員として選ばれた少女アネモネは、7年前に父が消えた戦場である東京で人類の希望を背負って戦うが、その世界で青緑色の髪をもつ謎の少女の姿を何度も目にする……。『交響詩篇エウレカセブン』の新たなる劇場版3部作、その第2弾。

2005年放送のテレビアニメ『交響詩篇エウレカセブン』を新機軸で描く劇場版シリーズ、その第2弾が、前作『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』から一年ぶりに登場。テレビシリーズでもメインキャラの一人だったアネモネを中心に、新たな物語が綴られます。第1部に引き続きオリジナルスタッフが集結。前作からさらに発展した話になっていく……のかと思いきや、ちょっと待って前作と全然違うんですけど!テレビ版再構築のはずがほとんど新規映像に見受けられるし、前作で印象的だった字幕過多や「Play Back」「Play Forward」もほぼないし、舞台はわりと現代に近いような東京で、世界の設定から「ニルヴァーシュ」の存在までもが異なります。テイストが違う、どころか本当に続編なのかも怪しいほど。そもそもタイトルに「2」が付いてない。キャラの性格まで変わっており、一体これは何だ、おれは何を観にきたんだっけ?と混乱。展開は全然読めない。翻弄される。ワケがわからない。でもこれが、すこぶる面白いのです。

なぜ面白いのかと言えば、これが一本のSF映画として成立しているからです。幼い頃に世界を救うための戦いに赴き帰ってこなかった父、そのあとを継ぎ「アシッド」に所属して「エウレカセブン」に対抗しようとするアネモネとチームメンバーたち。彼らのミッションはエウレカセブンの意識に電子的に接続してそのなかに入ることで現実を変えようとすること。そしてアネモネはそこであの少女に出会います。アネモネはテレビ版のような狂気はなく、性格は明るくポジティブに変わってますが、そのぶん共感しやすさがアップ。新米司令官だったドミニクに至っては今回は人ですらないですが、頼もしさアップ。

アネモネは本作においてまごうことなき主人公であり、名前まで石井・風花・アネモネと変わっています。演じるはテレビ版と同じ小清水亜美。もちろんエウレカ役の名塚佳織、レントン役の三瓶由布子、ドミニク役の山崎樹範ら他のキャストも続投。今回は新キャラも登場しています。仮想世界でのぶつかり合いという意外な展開に、父と娘の物語を堂々と入れ込む、骨太にして軽やかなSF作品となっています。そして前作で描かれたボーイ・ミーツ・ガールとはまた異なり、なんとも素敵なガール・ミーツ・ガールとなっているのがとてもイイ。テレビ版と全然違うだけに、シリーズ未見でも楽しめると思います。

↓以下、ネタバレ含む。








■アナザー・ワールド・アゲイン

冒頭の画面の切り取り方がどう見てもスマホの形だし、アプリとか風花チャンネルとかブラック企業などのワードにも違和感バリバリなんですが、これは現代(でもないけど)の東京の話だからということなんですね。トラパーもスカブコーラルも最初は出てこないし、そもそも話的に前作から続く始まりでもないのでまったくの別物にさえ思いますが、徐々にエウレカらしさもチラホラ出てきます。空中戦の激しさとか、あと音楽やその使いどころなど。エウレカセブン内に入ると見覚えのあるテレビ版の画角での光景が出てきますが、ここだけアネモネの表情が超攻撃的になるというギャップはあるものの、異世界内がテレビ版の画面サイズというのは何となくマッチしてる感はあります。

ただしキャラ設定はかなり改変されており、アネモネは若干ユーチューバーの入った、いたって当たり前な明るい女の子となっていて、コーラリアンでもない普通の人間のようです。ドミニクも『ポケットが虹でいっぱい』では年齢が変わってましたが今度はついにAIにされてしまい、扱いが雑で気の毒だな……などと思ってましたが、仮想空間では実体化して活躍、むしろ頼もしい。AI爆弾の方のドミニクは父のアプリなせいか、アネモネを守ろうとする父性が心なしか感じられます。他、月光号ドクターだったミーシャを始め、Dr.ベア、ソニア、デューイ・ノヴァクらが設定を変えて登場します。つまりテレビ版とは別の世界線なんですね。


■トライ・アンド・エラー

この世界では「7番目のエウレカ」と呼ばれる脅威が存在し、そこから現れるテレビ版とは異なるニルヴァーシュはとんでもない攻撃力を持って地上を焦土と化します。このLFOかどうかも定かではない「ニルヴァーシュX」は何かに吊られていて手足が長く、無双のビーム兵器で軍隊を塵とする恐るべき破壊の化身。1246秒経つと姿を消すものの、それまでは戦闘機も戦車も軍艦も全く歯が立ちません。これに対抗する手段が、エウレカセブンの精神世界にダイブしてスカブを倒すと現実に反映されるというもの。この仮想空間と現実との関係性に意味がある、というのがキモです。アネモネがエウレカセブン内で目にする少女エウレカは、真の力が覚醒した状態であるアクペリエンスの際にレントンを死なせてしまい、レントンを生き返らせるために新しい世界を作っては壊して、その破棄された世界がスカブとしてアネモネの世界に悪影響を与えているんですね。デューイ・ノヴァクが「偽りの神が創っては破棄した無数の不要な世界」と語るのもそれを指しています(ちなみにデューイ・ノヴァクの声は亡くなった辻谷耕史からホランド役の藤原啓治に代わってます)。

エウレカこそが破壊の中心であり、「レントンを失ってから何度も夢を見た」と語るその夢の数だけ世界が作られます。アネモネがダイブするたびに世界が異なるのは、文字通り異なる世界だったからです。驚いたのは、エウレカが語っているときに映されるそれらの「世界」というのが、テレビ版の世界だったり『ポケットが虹でいっぱい』の世界だったり『エウレカセブンAO』、はたまたコミックの世界だったりすること。つまり複数メディアで展開されてきたエウレカセブン世界が「エウレカの夢」という形でこの「ハイエボリューション」にメタフィクション的に集約されている、ということです。これは再編集よりもさらに高度なレベルでシリーズを一元化するということであり、「ハイエボリューション」がまさに集大成であることがわかります。

またこの語られる世界の中で前作の「Play Back」「Play Forward」も一度出てきますが、ということは前作のせわしない語られ方もエウレカが再生したり巻き戻したりした世界だからということになり、エウレカ自体がほとんど登場しないのもその「夢」を見ている主体だからという説明が成り立ちます。そう考えると今作は確かに続編。ただし遡ってみればそうなんですが、前作単体で見ればレントン自体には一貫性があるように見えるし、彼の心情こそがあの構成を形作っているとも取れますけどね。


■ガール・ミーツ・ガール

アネモネは父を失った少女としてメディアにも登場させられ、プロパガンダにされる14歳。過去にはスーパー6と呼ばれる6人の少女が戻ってこれなかった任務「ダイブ」に挑みますが、それで大人たちを憎むということもありません(父のことを悪く言われてブン殴りはしますが)。そこには勝てないとわかっていても少しでも時間を稼ぐため攻撃する、だから無駄死にではない、という大人たちの行動もあるでしょう。しかし未来のために希望を託した大人たちの責任がその命だというのはあまりにむごいし、希望を託された側のアネモネにはプレッシャーや孤独としてのしかかってきます。一方でアネモネは、レントンを求めて破壊を繰り返すエウレカと出会い、事態の元凶であるにも関わらずエウレカを救い出そうとします。なぜかと言えば、それは「死なせないため」です。父を失い、自分を守る人たちも現在進行で失われていき、話す相手といえばAIのドミニクしかいないアネモネが、同じくらいの年頃で同じように大事な人を失い同じように孤独なエウレカに同調するのに、大した理由なんていらないのです。だから死なせたくない。父と同様「カンよ!」なわけですね。

だからこそ手を取って走る二人の姿には清々しさを感じ、大量のガリバー(モキュ!ってヤツ)が追いかけてくるシュールな世界にもひたすらワクワクします。しかも宙まで飛ぶ、というこのシーンは本当に楽しい。SFにファンタジーとジュヴナイル要素まで加わる意外性には、これまでのシリーズにはなかった爽快感があります。英雄視されつつ問題視もされる父親と幼い頃に別れているという点でアネモネはレントンとも重なるため、エウレカが手を放さないアネモネにレントンの姿を重ねるのも必然でしょう。そして父が死の瞬間自分の写真を見ていたことを知って、純粋な愛情の存在を知ったこともエウレカを救う動機になったかもしれません。何より失った過去より守るべき未来を選択したことが、アネモネの強さとなるのです。

また石井・風花・アネモネという名前の説明からも彼女がハーフであることがわかりますが、父が言った「人種を超えて繋がってほしい」という言葉にあるように、アネモネは二つの世界を繋ぐ役割を担うのです。そして二人が駆けるのは、冒頭アネモネが一人で逃げ出そうとしたあの通路。二人で力を合わせて扉を開けることで、彼女たちが捕らわれていた孤独な世界は崩壊し、明るい光に満たされるのです。


■ゼアイズ・ノー・エンディング

LFOのバトルがないなあと思ったところへガリバー ジ・エンドが投入されたり、アネモネがメンバーたちと拳を合わせるちょっとグッと来るシーンがあったり、手がバネっぽい「ニルヴァーシュZ」がなんかキュートだったりして、クライマックスにも清々しさがあります。「もう夢は見なくていい」と言ったアネモネが現実にも救いをもたらしたかのよう。そしてどこかの世界でレントンは生きているという希望。最後にはエウレカセブンから解放されたホランドやタルホ、そして消えたスーパー6の少女たちまで!デューイが不穏さを残しますがこれが次作に影響するのでしょうか。

とにかく「エウレカセブン」という作品群を束ね、SFの殻の中でよりシンプルな友情物語にまで昇華された新たな「ハイエボリューション」、すんごく面白かったです。次回の完結編がどう転がるのか全く予想ができませんが、監督の「次代へ繋げたい」という言葉に期待して待ちたいと思います。

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