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2018
11.15

「だけ」じゃ済まない現代の恐怖。『スマホを落としただけなのに』感想。

sumaho_wo_otoshita
2018年 日本 / 監督:中田秀夫

あらすじ
セキュリティ意識は大事。



稲葉麻美が恋人の富田誠に電話をかけると、知らない男の声が聞こえてきた。声の主は落ちていたスマホをたまたま拾ったのだと言う。喫茶店に預けてもらったそのスマホを無事回収して富田に渡した麻美だったが、その日以来、架空請求や成りすましなどの被害に会うことに。やがて事態はエスカレートしていき……。志駕晃の同名ミステリー小説を『リング』の中田秀夫監督で映画化。

いまやスマホがないと生活できない、スマホはもはや自分の分身。そんな現代社会を皮肉りながら、やがて恐るべき事件に巻き込まれていく女性のお話です。原作は未読ですが「このミス大賞」最終選考作とのこと。スマホというワードをてらいなく付けたタイトルが示すように、スマホに関するあるあるを満載した、今の時代だからこそ描ける話じゃないでしょうか。スマホという小さな板に詰まった様々な思い出、そして秘密。種々のアプリを使って探し、求め、貶める展開。一方で、ある山中で若い女性の遺体が次々と発見されるという事件の謎。それらが徐々に繋がっていき、未曾有の恐怖と驚きのクライマックスへと突き進んでいきます。これには驚愕!……と言いたいところなんですが、正直かなり不満点は多いです。まあ本筋とは違うところである意味驚愕ではあるんですけど。

主人公の麻美役は『響 HIBIKI』の北川景子、麻美の彼氏である富田役は『図書館戦争』の田中圭。このキャスティングにそこはかとなく感じるテレビドラマっぽさが逆に親しみやすくて、現実に起こりうるリアルさとして受け入れやすい、というのはあるかも。連続殺人事件を追う加賀谷刑事役には『帝一の國』千葉雄大。刑事っぽくないのでミスキャスト感ありますが、ある場面ではそのベビーフェイスならではの味があります。ほか成田凌、原田泰造、バカリズム、要潤、高橋メアリージュンなどが出演。監督は『クロユリ団地』『MONSTERZ モンスターズ』の中田秀夫ですが、今作には出世作の『リング』っぽさが一部あったりもします。

地雷臭を感じつつも覚悟して臨んだところ予想を遥かに越えるほどアレで、始まって5分で後悔したし、お話は案の定予告編の断片が連なったような展開で、むしろ予告の方がテンポよくていいくらい。しかし!そんな苦痛を乗り超えて、終わる30分前からの15分間くらい、これが超絶狂ってて最高!最後まで観ないとわからんもんですよ。ミステリーなのでネタバレには注意です。

↓以下、ネタバレ含む。








予告編から想像した流れ通りに話が進むので、ホントに予告は見せりゃいいってもんじゃないなと思うんですが、それはさておき。とにかく無駄なシーンが多くてテンポが悪いです。序盤からして「富田君から連絡返ってこないの」「電話してみたら?」「そうする、ありがと」(うろ覚え)というやり取り、いる?さっさと電話すればよくない?また、富田が上司とスマホ忘れた話で盛り上がって営業上手くいったな!というシーン、いる?麻美が同僚の加奈子とランチとるシーンでは変な間が空くしダラダラしてるし、そもそも加奈子自体が別にいなくてもよい気が。アバンタイトルが20分くらいあってようやくタイトルが出るのは、不穏さを増したところで殺人事件現場に切り替わるという意外性に繋げたかったんでしょうが、そこに至るまでにイライラがたまるのであんまり響かないです。あとSNSのメッセージをその人の声で読み上げちゃったり、あろうことかアイコンの代わりに喋ってる顔を出しちゃうという、ダサいにもほどがある演出には目を疑いました。『search サーチ』でスマートなSNS演出を見た後だけに余計際立ちます。

最初に「彼」が出るところで、カメラが意味ありげにその顔に寄っちゃうので、こいつ何かあるなってわかっちゃうんですよ。バカリズムは案の定ミスリードだし(お偉いさんの娘と結婚するからシロって理由もスゴい)、終盤に麻美が「自分で話す」と言って犯人の前で延々と語り始めるのも驚きです。あれだけ広い遊園地であっさり犯人に見つかるというのも、監視カメラのある部屋にいなかったのに不思議。ポヨポヨ~ンみたいな全く場面にそぐわない音楽も気になるし、犯人が映るシーンではなぜかハワイアンな曲なのも謎。あとこれは作品とは直接関係ないんですが、パスワードが名前と誕生日とか車のナンバーとかいう人ばかりなのが、そんなバカなって思ってげんなりしちゃいます。でも実際そういう人は多いらしいんですよ。だからスマホの扱いやパスワード設定には気を付けようという警鐘にはなってる、かも。

というわけでずっとイライラしながら観てたんですけど、犯人が正体を表すシーンからが秀逸。ここも意味ありげに飲み物持ってきたりするので予感はあるんですが、目をひんむいてこちらを見るあの人の豹変ぶりが凄まじくて震えます。目ん玉ひんむく恐怖というのはぶっちゃけ『リング』の貞子なんですが、それを生きながら継承したかのように、ここからは「彼」の気持ち悪さ爆発。母親のワンピを着て黒髪ロングのウィッグを着けて、木馬にまたがって狂ったように笑い叫ぶ姿は完全に常軌を逸してて、その暴れっぷりは思わず笑っちゃうほど凄い。そういや回想シーンで風俗嬢呼んで髪つまみながら「お母さん」て言うのも気持ち悪さの極致だし、落ちた髪を拾おうとする姿がまた貞子っぽいです。いやヤバい。「彼」の他にも、いつの間にか風俗嬢の髪に顔すり寄せたり犯人にシンクロしちゃってる千葉雄大もヤバいし、撮りまくった情事の写真を「セックスフレンズ」ってフォルダ名付けて保存してる要潤のクズっぷりもヤバい。こうして見ると、ヤバい人とウザい人ばかり出てくるのは面白いところです。

武井に対する麻美の態度と裏腹な武井の台詞に「あれ、元カノじゃないの?」とはぐらかされたり、Siri的なもので富田に電話を掛けるというスマホならではの逆転劇が非常に現代的な発想でかえって盲点だったり、廃遊園地という楽しげな場所が寂れていてそこに狂気の男が巣食っているというのが(なぜそこにいるのかはともかく)雰囲気あったりと、良かったところもありました。犯人が被害者の切った髪をどうしたのかよくわからないとか(カツラにしてたのか?)、麻美と美奈代の話にそこまで意外性を感じないとか、なぜ『君の膵臓をたべたい』の北村匠海が最後にカメオ出演してるのかなど気になるところを挙げるとキリがないんですが、「彼」の怪演で全て報われた気がします。「スマホって宝箱にもなるんだよ」という台詞に虫唾が走って劇場出ようかと思ったけど、我慢してよかったです。

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