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2018
11.13

寄り添う二人は食べ盛り!『ヴェノム』感想。

Venom
Venom / 2018年 アメリカ / 監督:ルーベン・フライシャー

あらすじ
食べていい?



売れっ子ジャーナリストだったが今は落ちぶれたエディ・ブロック。彼を潰したライフ財団が人体実験を行っているという情報を得たエディはその真相を調査するが、そこで謎の地球外生命体「シンビオート」に寄生されてしまう。それは人間を食料とする恐ろしい生物で、やがてエディの体にも異変が起こり始めるが……。マーベルコミックのキャラクター「ヴェノム」を主人公としたアメコミ実写化映画。

ヴェノムはスパイダーマンのライバルとして登場する、ヴィランだったり共闘したりするキャラクターで、サム・ライミの『スパイダーマン3』(2007年)にも登場した寄生生物。これが(今後はわかりませんが)スパイダーマンとは全く絡まないまさかの単独映画化。製薬から宇宙探索まで手掛けるものの影では人体実験の疑惑があるライフ財団。自身の報道リポート番組を持つジャーナリストのエディ・ブロックは、財団の代表であるドレイクへのインタビューで突っ込んだ質問をぶつけたために職も恋人も失うはめに。そんなエディが財団の闇を調べるため再び調査に乗り込んだところ、意思を持つ謎の寄生生物「シンビオート」のヴェノムに寄生され、これにより超パワーを得ることになります。地球人類を食らおうとする悪しき存在に、人類は恐怖に陥れられる……はずが、なぜか悪を倒す側に回っていくという不思議な話。いやあこれ超楽しい!全てを失った負け犬が、乱暴だけど意外と親切な宇宙の寄生生物とレッツ融合。もりもり変身、もりもりお食事、俺があいつであいつが俺の一心同体バディものです。

前半は企業の陰謀と恐怖の宇宙生物へのサスペンスなんですが、後半はエディと寄生したヴェノムとによる怒濤のアクション・コメディに様変わり。『寄生獣』よりさらにライトにドタバタ暴れ回ります。エディ役は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ダンケルク』のトム・ハーディ。今作では若干ヘタレなのが新鮮。ヴェノムはCGなので二人のシーンは実際は『ブロンソン』でも見せたようなトムハの一人芝居なんですが、これが本当にもう一人いるようにしか見えなくて実に愉快。ちなみにヴェノムの声もトムハですね。エディの彼女として登場するアン役は『グレイテスト・ショーマン』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のミシェル・ウィリアムズ。パートナーに苦労する役が多いですが、今回は強いです。ファッションが独特で可愛い。ライフ財団のドレイク役は『ナイトクローラー』『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のリズ・アーメッドで、天才で金持ちで権力もあるサイコ(つまりヤバい)を怪演です。他、ドーラ博士役に『gifted ギフテッド』のジェニー・スレイトが出演。

監督は『ゾンビランド』『L.A. ギャングストーリー』のルーベン・フライシャーということで、ダークな面もありつつコミカルさも出してきます。ところどころ変な描写もありますが、そこはまあ元がコミックだしいいかなと。何よりそのヴィジュアルや予告からは想像もできないほど、エディとヴェノムがどんどん可愛らしく見えてくるのが楽しいのです。ヴェノムに思わずお礼言っちゃうエディかわいい。自分で弱点教えちゃうヴェノムかわいい。つまり二人ともかわいいので最強。しかもなぜかしっかりヒーローものにもなっています。少々の雑さはあるけど、結果オーライ!

↓以下、ネタバレ含む。








■シンクロによる共感

エディ・ブロックは自身の名を冠した番組を持ち、社会の暗部に切り込んでこれを明らかにしようとする新進気鋭のジャーナリスト。情熱を持った報道姿勢は、自分で「弱い者の味方をしたばかりに」と言うように義憤や正義感に基づくものでもあったのでしょう。画面分割で見せるリポート映像にこの頃のエディの勢いが見られます。しかしアンに「NYのデイリー・グローブ社のようなことはしないで」と釘を刺される(この過去はコミックにネタがあるのかな?)ことからも窺えるように、エディの行動はその報道魂ゆえに行き過ぎ、オファーに逆らったことでクビ、アンの守秘義務をブチ壊してクビに追い込んだためにアンも去ってしまいます。一線を越えたことで仕事も恋人も全てを失ったエディは、それから半年間、仕事も干され、酒に溺れ、隣の爆音野郎にキレそうになっても文句も言えず、いよいよ皿洗いでもするかというドン底生活に。ドーラ博士が人体実験は本当だと言っても最初は関わろうとしません。正義のヒーローを気取ったがためにこうなった、という負け犬根性が沁みついているわけですね。コンビニ強盗が出ても何もできず、店主の「ツラいけどこれが人生よ」という言葉を黙って聞くしかない。未練がましく元カノの家の前に行けば快活な今カレと鉢合わせして余計惨めな思いに。エディの現状を「誰のせいでもない、あなたのせい」とピシャリと言い切るアンに、エディは自分と向き合わざるを得なくなり、結果ドーラ博士と財団の施設に乗り込むことになります。落ちるだけ落ちた男は、再び弱者のため闇に切り込もうとするんですね。

そんなエディの記憶を読んだヴェノムは、宿主がドン底に落ちた負け犬であることを知り、自分のことを「お前と同じ負け犬だ」と言います。具体的にどう負け犬なのかは謎ですが、ライオットについて「勝つ可能性ほぼゼロ」と言うことからも仲間内のヒエラルキーが低かったのだと考えられます。エディに会うまでは何人も適合できない相手が続いたので、ようやく見つけた心地いい場所だったというのもあるでしょうね。ともかく似た者同士のエディをなんか気に入っちゃったヴェノム。気に入ったからこそシンクロ率は上がり、ドン底からまた弱者のために立とうとする男であることを知って、自身もライオットに立ち向かうのです。「お前がそうさせた」と言うのはそういうことであり、つまりヴェノムが地球を救おうとするのはエディの正義感に依っているということです。一見ヴェノムがエディと通じ合う描写が足りないようにも思えますが、シンクロの強い度合いによる記憶や感情の共有が、ヴェノムに予想以上の変化をもたらしたのでしょう。ヴェノムがこの星に残ろうとする理由としては、最高の相棒を得たこと、仲間内での優劣がないこと、ビルのてっぺんから見回す景色を気に入ったことなどが絡んで、なんかここが気に入ったから、ってことじゃないですかね。「なんかイイ」と言ってしまうと雑にも思えますが、要するにロジカルではなくフィーリングということであり、これはヴェノムには似つかわしいと思うんです。

ただヴェノムの行動がエディの正義感に依ると言いながら、最後に悪党を食らってしまうのはいいのか?というのはありますが、エディは報道だけでは裁けない悪がいるということを身をもって知ったわけだし、ヴェノムの空腹感も常に感じるというのもあり、悪党だけは食っていいというのが共生関係の落としどころではあったのでしょう。逆にエディがヴェノムの影響を受けていたりもするのかも。だからヴェノム&エディは決してヒーローではなく、世間からもてはやされることもないですが、それだけにさりげない「地球を救うぞ」の台詞が熱い。ダークヒーローというところですね。ちなみにライオットはどうかと言えば、最初のマレーシアの救急隊員のときは動きがぎこちなかったので上手く適合できなかったのだろうし、二人目の老婆は繋ぎで、三人目の少女はカリフォルニアに向かうための擬態、で最後にドレイクに寄生して宇宙に行くぜ!という思いが一致し、その野望と狂気も性に合ったのでしょう。こちらはシンクロしたというよりはwin-winの関係という感じがします。


■過去を乗り越える共生

前半はライフ財団を巡るサスペンスですが、ヴェノムが寄生して以降は急速にコメディ寄りに。ただのギャグに感じないのはアクションを伴うからですね。財団の手の者に囲まれた際に手を上げたり下げたり、寄生虫と言ったら壁に張り付けにされたり(ここスパイダーマンっぽい)、レストランで暴れて水槽に飛び込んじゃったり(&ロブスター丸かじり)、腐った肉食ってゲロ吐いたりと、まあ愉快。ちなみにヴェノムに会う前は、序盤でアンがエディを枕で叩くときのパワーがかなり強いとか、アンにネクタイ巻き付けられて首輪みたいにされるエディが犬っぽいとか、アンとの関係にもちょっとヴェノムに似たものが感じられて、エヂィは振り回されるのが性に合っているのか?それにしてもアンはタフです。「病気なんだ」と言うエディに一言「Hospital!」って言うのも強い。極め付けはヴェノム化ですよ。「私も行く」と言うアニーにヴェノムが「今日じゃない」と言うのは、続編があったらまたよろしく!っていう伏線ですかね。最後にヴェノムが「彼女に復縁するつもりはない」と言うのは、このとき寄生して心を読んだからかも。彼女の元カレにも優しいあんな新恋人がいてはしょうがない……。

アクションシーンもなかなか面白い。バイクチェイスは、車のドア引っぺがして盾にしたり、幅寄せを食い止めたり、バットモービルみたいにカドの消火栓掴んでコーナリングしたりと、ヴェノムがビョンビョン伸びながら迎撃するのがトリッキーで面白いです。ヴェノムの「かがめ!」の声に直撃を避けたエディが「ありがとう!」「どういたしまして!」というのも可笑しい。サンフランシスコの坂道を活かしたチェイスは『アントマン&ワスプ』が記憶に新しいですが、昼夜の違いとギミックの違いでそこまで被ってる感じでもなかったです。ラストのシンビオート同士の戦いはカット割が激しすぎるのと暗闇とでちょっと見にくいですが、二者がびろーんと伸び広がった絵は前衛的なアートのようでイイ。あとヴェノムが別れを告げるとき、エディが(たぶん)初めてヴェノムの名前を呼ぶのが泣けます。

あと対になるシーンや台詞が多いのが特徴的です。テレビ局のお偉いさんの部屋で「高いところは苦手で」と脇に両手を挟んじゃうエディが、高い木の上でビビりながらつかまってる(どうやって降りたんだ?)。隣の爆音野郎に文句が言えなかったのが、ヴェノムちょい出しで黙らせる。ビルのロビーで囲んだ警察が煙を防ぐために「マスク」と号令するのに対し、エディも「マスク!」でヴェノムを呼び出す(というか被る)。そしてドレイクに言われた「よい人生を!」を最後にドレイクへの捨て台詞にする。エディの記憶を読んでヴェノムが選んだ言葉がこれだというのが痛快。これらの対比は、ヴェノムと共生することでエディが過去を更新していく姿であるとも言えます。


■二人の共存

まあちょっと適当だなあというところもありますけどね。序盤、帰還しようとする宇宙船の交信が「あ、フタ開いちゃった」みたいなノリだったり(実際はそこまで軽くはないけど)、ドローンが一般道でところ構わず突撃爆発するのはさすがに財団やりすぎだし、宇宙ロケットの発着場があんな都会の近くにあるとか、あんなに気軽に発射できたりとかは、まあコミック的です。ちなみにシンビオートは3体いたはずなのに残りの2体はどうした?と思ったんですが、1体はエディが忍び込んだとき個室で朽ち果てていて、もう1体はドーラ博士を襲ったあと放置されてたせいか死んでいて、ここはちゃんと描かれてました。ただドーラ博士の最期があっさりと言うか、その後特に触れられないのはさすがに不憫です。子供もいたと言うしフォローしてほしかった。そういやドレイクは「子供は元気か」とサラッと聞くのが鬼畜ですね。

ヴェノムが凶悪な外観と人を襲うという性を持ちながら憎めないキャラになっているのは、言葉は乱暴だけど「素直」だからなんでしょうね。エディに共感しちゃうのからしてそうだし、気に入った人には意外と優しいし正直。アリーに謝るなら今しかないとエディに提言したり、4~6000ヘルツの音と火に弱いと弱点バラしちゃったり(それ聞いて「クリプトナイトみたいな?」とまさかのDC方面に行っちゃうアニーもなんですが)。人は食うなと言うエディに従うし、なんかチョコやポテトも気に入ったらしいし、そういう素直さが可愛い。そして共生して通じあっちゃったことにより、負け犬で独り身のエディとはぐれシンビオートのヴェノムはもう孤独ではないのです。ライオットにはがされた瀕死のヴェノムに自ら手を伸ばすエディ、胸を貫かれ死にかけたエディに手を差しのべるヴェノム。死の淵を乗り越えた二人は、それこそ死が二人を分かつまで離れられない関係になったと言えるでしょう。「何がしたい?」で「俺たちなら何でもできる」という締めは、もはやバディなのかラヴァーなのか……。とにかくスパイディも苦戦しそうなパワーとスピードに、二人三脚なコミカルさが加わった新たなダークヒーローの誕生は、予想以上の「なんかイイ」感じをもたらしてくれるのです。

ちなみにエンドタイトル後のおまけ映像では、レッドと呼ばれる連続殺人鬼が登場。なんと『スリー・ビルボード』『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』のウディ・ハレルソンじゃないか!「大殺戮(カーネイジ)が起こるぞ」という台詞は、この殺人鬼キャサディにシンビオートの一部が寄生したヴィラン「カーネイジ」の誕生を示唆しているのでしょう。大ヒットしてるし続編は期待できそう。またエンドロール途中、いきなりアニメのスパイダーマンが始まって驚きましたが、これは『スパイダーマン:スパイダーバース』の予告ってことなんですかね。なぜここで!おかげでエンドロールが長い!とは思いましたが、やがてスパイダーマンとも繋げるよ(希望)っていう意思表示なのかも。

また、マーベル映画にこの人のカメオあり、でおなじみスタン・リー御大も登場、エディに宿る二つの人格を見抜くというさすがの神業を披露。お元気そうで何より、と思ってたんですが……まさにこの記事を書いた今日、2018年11月12日、95歳で逝去されました。様々なヒーローを生み出した偉業に敬意を。そして多くの勇気ある物語に感謝を。どうか安らかに。

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