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2018
11.09

サーチする繋がり、ヒットする真実。『search サーチ』感想。

Searching
Searching / 2018年 アメリカ / 監督:アニーシュ・チャガンティ

あらすじ
足りない検索条件。



ある日突然姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が開始されるなか、父親のデイヴはマーゴットの足跡を見つけるため娘のPCにログインし、様々なSNSを探っていく。しかしそこには彼の知らない娘の姿があった……。物語が全てパソコンの画面上で進行するサスペンス・スリラー。

家出か誘拐かも判然としないまま行方不明となって37時間が経過した娘を探すため、娘のPCを探る父。その姿を全てPC画面上で展開させるという、一風変わったサスペンスです。全編PC画面というのは一見非常に奇抜ですがこれが初めてというわけではなく、2016年のホラー『アンフレンデッド』や2014年のサスペンス『ブラック・ハッカー』(こちらは未見なので全編かはわかりませんが)などがあるんですが、本作ではInstagram、Facebook、Twitterといった様々なSNSやWebサービスを駆使することで手掛かりを得て物語が進展するという、PC上で展開する必然性があるのが上手い。またPCに保存された画像や動画がドラマ的にも大きな意味を持つというのを演出で実現しているのも実に良いです。何よりストーリーがとても良くできていて、自分の知らなかった娘の実態を知って戸惑う父が、それでも消えた娘を追う思いに引き込まれます。見事なミステリーであり家族ドラマ、これは面白い。

父親デイヴ役は『スター・トレック』シリーズのスールー役で知られるジョン・チョウ。ごく普通の、むしろ娘とは仲のよい父親ですが、焦るあまりに暴走しがちだったりしつつも娘が消えた謎を解いていきます。マーゴット役のミシェル・ラー、デイヴの弟ピーター役にジョセフ・リーと、アメリカ映画でアジア系の役者がメインというのは意外な気も。またヴィック捜査官役のデブラ・メッシングの頼りがいある感じも良いです。監督のアニーシュ・チャガンティはGoogleグラスだけで撮影した動画で注目を集めた人だそうで親和性があったんでしょう。ちなみに製作のティムール・ベクマンベトフという人は、前述の『アンフレンデッド』や全編主観視点の『ハードコア』なども手掛けていて、ちょっと変わった映画が好きなのかも。

全編PC画面と言いつつ終始デスクトップ固定の『アンフレンデッド』とは違って、一部をズームしたりあるウィンドウにフォーカスしたりするし、他のPCの画面に切り替わったりFaceTime映像で移動したりもするので画面の前に張り付いてる感じがせず、これが閉塞感を防ぎ動きと拡がりをもたらしています。そして誰がその画面を見ているのか、というのも関わってくるんですね。PCやスマホになじみのない人には何をやってるかよくわからない場面もあるかもしれませんが、そこまでせわしなくはないので話は理解できるんじゃないでしょうか。発想の斬新さとストーリーテリングの上手さにやられます。

↓以下、ネタバレ含む。








■スクリーン上の画面

デイヴはあらゆるSNSやWebサービスを開いてマーゴットの足跡を探しますが、Gmail、Yahooメール、FaceBook、Twitter、Instagram、Tumbler、Youcast、Googleマップと次々とサービスを連携させていく流れには知的好奇心が刺激されるし、言葉では説明しにくいのでPC画面である有用性もあります。この連携自体が手がかりを見つけて新たな事実を知っていくというミステリー的な興奮でもあるんですね。なじみのないサービスには一瞬戸惑うこともありますが、同時に映るのは基本的にはFaceTime画面と別の何かの画面で、ウィンドウの数もそこまで多くないのであまり混乱もしないで済みます。またニュース記事やライブ映像を映すことで説明台詞を省くこともできます(これは普通にある演出ではありますが)。そして画面で見れるものでしか判断できないというのは一種のPOVとも言えます。デイヴのPC操作がスムーズなのはIT系の社員たからで、そのためPCやネットでのコミュニケーションにも慣れている、というのも設定としてはスムーズ。

PC画面で押し通すというのは演出の幅を狭めそうですが、そこは様々な工夫が施され、逆にPC画面だからこその演出が上手く効果を上げていたりもします。マウスを動かすスピードが速ければ焦燥を、動きがぎこちなければ疑心暗鬼を表し、チャットに打った文字を送信せずに消すことで躊躇を示します。この辺りは『アンフレンデッド』でも見た手法ですが、より洗練されている印象。デイヴが勝手にピアノを辞めていたマーゴットにキレて長文の文句を書きながら、これを送信せずに消すのなどは可笑しい。FaceTimeでしょっちゅう自分の顔が映り、通信が切れたあとも映し続けて表情を見せるというのはちょっとズルい気はしますが、まあ許容範囲か。娘のことを誰に聞けばいいのかわからずに手が止まるのにはデイヴの途方に暮れる姿が浮かぶし、母のフォルダから娘の友達の連絡先を探すという機転、そしてようやく繋がり始める関係、いつの間にかとっ散らかったデスクトップのアイコンなども面白いです。しかし話を聞く人が増えるたび、他のSNSを開くたびに、父は知らなかった娘の秘密を知っていくことになります。


■知らなかった真実

失踪した家族を探す過程でその人の知らなかった一面を知っていく、というのはよくありますが、デイヴもまた明るく人懐こいと思っていたマーゴットの違う面を目の当たりにしていきます。母が生きている頃から続けていたピアノを半年前に辞めていたというショック、その月謝をどうしたのかという疑問。昼食はいつも一人、キャンプに誘われたのは同情から、勉強ができるという理由だけで仲良くない子の家で勉強会というぼっちな実態。母の誕生日にそれを話題に出さない父が立ち去った後の悲しげな表情。そこには父親の前では見せなかった、娘の孤独と悲哀と虚無が浮かび上がります。こんなん見せられたら冷静には行動できないですよ。そりゃあ怪しいヤツの骨くらい折りますよ(ダメです)。親としては自分の知らないやつと親交があるというだけで落ち着かない気分にはなりますね。娘の場合は特に相手が男だとなおさら。この辺りジョン・チョウがイイ味出してます。

そして後半のクライマックスに向けてどんでん返しの嵐が凄い!弟が娘と関係を持ち、その結果殺したという最悪の結末。と思いきや犯人を捕まえたという連絡と湖から引き上げられる車、そして犯人の自白映像。葬儀準備で見つけた、Youcastで頻繁にコメントを残していたf_a_cの写真。そして「指名ではなく名乗り出た」という事実。崖上の救出劇などは、予想もしてなかっただけに興奮が収まりません。まさに畳み掛けるような展開で久々に極上ミステリーを観てる!という心地よさに浸れました。思い返せば随所に伏線が張られているんですね。弟がハッパをやっていたこと、ニュース画像に写っていた自白の犯人、2500ドルの行方。デイヴがヴィック捜査官とだけやり取りする理由。息子が寄付を募った逸話に見る、息子のためなら嘘も突き通すという態度。そして二日前に来た嵐。「担当があなたでよかった」と言うのさえミスリードだし、f_a_cのアイコンなどはPC上でのやり取りだからこそ騙される要素になっています。


■人生の記録

本作が全編PC画面で綴られる意味、それはこのPCという箱のなかに記録された人生を見るということです。序盤でデスクトップに家族それぞれのアイコンが作られ、娘が生まれてからの写真や動画が次々と整理され、母の病気の回復と再発、その死、そしてその後の父と娘が過ごした時間に至るまで、そこには全てとは言わずともその経緯が保存されています。文章には感情が滲み、映像にはその時の心情が垣間見える。多くのテクノロジーを使ったコミュニケーションが描かれますが、それをどうこういう話ではなく、むしろそれが当たり前になった時代だからこそそこから浮かび上がる関係が見えてくるし、生きた証にまで発展していきます。

ネット上には真実以外のこともごまんとありますが、本作はそんな世界に携わりながらも真実を見つけていく話であり、人生を描く話なのです。デジタルに記録された過去を懐かしみ、時には忘れるために削除しながら、リアルタイムの現在もそこには存在します。デイヴは「誇りに思う」という言葉に「母さんもきっとそうだ」と以前は打てなかった現在の言葉を打ちこみ、マーゴットは母とのツーショットだった壁紙を現在の父との写真に変えます。人生はいつだって更新されていくのです。そして音楽学校への合否を待つ画面に、新たな未来さえも映し出されるのです。

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