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2018
11.02

失った悲しみに復讐の銃弾を。『デス・ウィッシュ』感想。

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Death Wish / 2018年 アメリカ / 監督:イーライ・ロス

あらすじ
オススメの銃はこちら!(楽しそう)



犯罪の絶えないシカゴで救急医院の外科医をしているポール・カージー。ある日ポールの家に何者かが侵入し、妻は殺され娘は昏睡状態になってしまう。警察は手がかりさえつかめず、一向に進まない捜査に業を煮やしたポールは、復讐のため自ら銃を取り、犯人を見つけて抹殺するため夜の街へと繰り出すが……。ブルース・ウィリス主演のクライム・アクション。

ブライアン・ガーフィールドの小説をチャールズ・ブロンソン主演で映画化した1974年『狼よさらば』、そのリメイクが本作。妻を殺され娘を昏睡状態にされた男が、怒りに燃え悪党どもをブチ殺す、という復讐&ビジランテ(自警団)もの。善良な市民で銃さえ持っていないポールは、妻と娘の復讐のため自警団めいた活動を始め、やがて「死神」と呼ばれ話題になっていくんですが、そこに至る経緯、運命的なタイミングの訪れ、エスカレートしそうでしないギリギリのリアリティなどがとても自然で観やすいです。また、リメイク元の『狼よさらば』の方は観れてないんですが、設定や展開は微妙に変わっているようで、大きな変更点の一つは主人公ポールが医者であるということでしょう。その医者ならではという対応や、手術と武器準備の分割表示なども面白いし、ミスリードや伏線が効いたラストも痛快。

主人公ポール・カージー役は『ダイ・ハード』を始め多くのアクションで主演してきたブルース・ウィリス、なんですが、そんなブルース・ウィリスが強さのオーラを消して一市民となり、「無双じゃない」というのが超新鮮。ポールの妻ルーシー役は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』エリザベス・シュー、娘のジョーダン役はモデルのカミラ・モローネという美女親子。またポールの弟フランク役である『マグニフィセント・セブン』『ジュラシック・ワールド』のビンセント・ドノフリオ、レインズ刑事役である『手紙は憶えている』ディーン・ノリスという強面親父たちが味があってスゴくイイです。監督は『グリーン・インフェルノ』のイーライ・ロス。ほぼ同時期に公開となったファンタジー『ルイスと不思議の時計』とは全く異なるジャンルなので、その反動で本作ではさぞかし残虐シーン満載だろう、と思ったら意外とエグくはなくて(一ヶ所凄いのがあるけど)、むしろ上手さが際立ちます。

事件が動画で拡散されたり、銃の分解組立などをYouTubeで学んだりというのが現代版リメイクという感じですね。ビジランテものと言えば『キック・アス』や『スーパー!』などがありますが、それらと比べると「死神(グリム・リーパー)」が現れたことで街全体がじんわり影響を受けていく、というのが何とも良いんですよ。あと銃器店のお姉さんがノリノリなのが愉快。そこまで派手さはないけど面白いです。

↓以下、ネタバレ含む。








■堅実な演出の妙技

ポールは幸せな家庭を持ち、忙しくも仕事は順調で、娘のサッカーの試合でたちの悪い輩に絡まれても受け流す常識人でもあります。一応「昔なら殴ってた」と暴力をこなす下地があったことは匂わせてはいますが、チンピラにボコられたり銃声にビクッとしたりするように、病院に運ばれてくるギャングたちとは別の世界に生きているわけです。不穏さもありつつ穏やかな日常シーンの積み重ね描写は、不意に襲った悲劇という突然の非日常、そして耐えられない喪失感を増幅させます。それでもポールは最初は自分で復讐しようとは思っておらず、怒りと悲しみで無力感に襲われているのもあって、進まない捜査に苛立ちながらも警察を信用しようとしているんですね。ポールが自分で行動しようとするきっかけとして、レインズ刑事の部屋の壁一面に貼られた未解決事件のカードが映されるというのは、警察の手が回らない現実という説得力と画的なインパクトがあります。義父が密猟者を追い払うため自ら発砲するというのも効いてますね。そしてたまたま銃が手に入ってしまうというタイミングと、自分の時計を着けた男を見つけて刑事に電話しても繋がらないというタイミング。心の準備、行動の準備、運命的なタイミングがそろったとき、ポールは街へと繰り出すのです。機会が与えられてしまうわけですね。諸々の演出が実に堅実で上手い。

だからと言ってポールがすぐさまガンガン悪党を裁いていく、というわけでもありません。結構慎重だし入念で、一度は銃を買おうとするも監視カメラでの身バレを警戒して止めるし、銃の分解組立やハードディスクの無効化などは動画で事前に押さえるし、銃の練習も最初は跳弾で危ない目にもあいつつしっかり行います。でもその地味になりそうな辺りも、医者の手術シーンと死神の準備シーンを画面分割で同時に映して盛り上げていったりしてこれまた上手い。またポールが医者であるという設定は随所で活きていて、銃を手に入れる場面もあり得そうなシチュエーションだし、自分で傷の処置もできるし、メスでどの神経を切り裂けば一番痛いかというのも知っています。外科医なので切ったり血が出たりというのは慣れっこなわけですね。整備場で娘にゲスいことをしようとしたヤツが車でブチュッと潰されるところは、イーライ・ロスらしいエグさ発揮で最高。一方で、冒頭に同僚を殺された警官が「警官を撃ち殺した男を救うのか」と悲痛な叫びを上げても「できるなら」と答えるように医者としての矜持を持っていたポールが、人の命を奪う側に回るという皮肉もあります。


■ビジランテかリベンジか

しかしフード被っただけで制裁に及ぶ姿は危なっかしいし、銃のスライドで怪我をする(こんな描写初めて観た)という素人ならではの失敗で証拠を残すことにも。それでいてアップされた最初の仕置き動画に微かに満足げな顔をするのには、殺しに新たな喜びを見出したかのような危うさがあります。そして正義感から、子供にヤクを捌かせる悪党をも始末するポール。カウンセリングでも調子いいと言っちゃうくらい達成感と開放感を得ています。でもここからどんどん自警団がエスカレートするのかと思いきや、そういうわけではないんですね。ケガをして動きにくいのか医者の仕事があるからなのか、どちらにしろ物足りない感じがしなくもないですが、そもそもの目的は敵討ちであり、ウォーミングアップ終了、でもそのターゲットが見つかっていないという状況だというのが大きいでしょう。その辺りはビジランテかリベンジかに振り切れないもどかしさは若干あります。あと娘のジョーダンが目を覚ましたというのもあって、ビジランテからは少し距離を置くことになります。

ちなみにヴィンセント・ドノフリオ演じる弟フランクが事件に絡んでいるのかと最初思いましたが、全然違いましたね。かつてはメジャーリーグを目指したが、今は兄に金を借りる日々、しかし就職が決まって食事に誘いにきたら焦っていたポールの心無い言葉に傷付きつつ、左手の傷に気付いて兄を止めようとする。なんだこの深み、そしてイイ人じゃないか!またディーン・ノリス演じるレインズ刑事がひょっとして黒幕とかでは、とも思いましたが、これまた全然違いました(そりゃそうなんだけど)。それどころかラストではポールの正体に感づきながらの粋な計らい。疑ってすまん、イイ人だったね!二人ともその風貌やちょっとした行動がミスリードになっているというのがイカしてます。


■死神が変えた街

本当の犯人はポールが死神だと気付き、娘の退院のときにエレベーターに乗り込んできたりします。ここでポールや娘がピンチに陥るのではという緊張感を醸しますが、「カージー先生」と呼び掛けることから犯人だと気付き、襲撃を予想して銃を購入し迎え撃つわけですね。今度は正当防衛が成り立つから堂々と購入です。自宅での攻防はギリギリ感によるスリルがありつつ、CMで見たサービスのテーブル仕込み銃というまさかの伏線で逆転、というのが実に痛快。

ポールは復讐のため銃を手にしましたが、これが結果として街そのものにも影響を与え、街は変化していきます。「死神」の登場を支持する声、自警団気取りと危険視する声、模倣する者が出て逆に殺られるという事件。銃社会のアメリカで自衛のための発砲はどこまで許されるのかという、ラジオに寄せられる声やテレビでの議論など、死神は図らずも社会への問題提起をすることになります。映画内では結果的にシカゴの犯罪数が減った、という理想的な結末ですが、現実はそうはいかないかもしれません。でも指を銃の形に構えたブルース・ウィリスのラストショットには「いつでも死神が狙っているぞ」という警句が込められているようで、そんな締め方も最高です。

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