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2018
11.01

未来へ繋げる愛情ハーモニー。『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』感想。

pitch_perfect3
Pitch Perfect 3 / 2017年 アメリカ / 監督:トリッシュ・シー

あらすじ
がんばれ!ベラーズ。



世界大会で優勝し、バーデン大学を卒業したアカペラグループ「バーデン・ベラーズ」のメンバーたち。それぞれの道へ歩き出した彼女たちだったが、現実は色々と上手くいかないことも。そんなとき久しぶりに集まった彼女たちは、ベラーズ再結成の機会を得ることに……。女性アカペラグループを描く『ピッチ・パーフェクト』のシリーズ第3弾。

主人公ベッカがベラーズに加入し全国大会制覇を目指す『ピッチ・パーフェクト』、新たなメンバーも加え世界大会に挑む『ピッチ・パーフェクト2』に続く、ガールズアカペラムービーの完結編です。仲間たちと歌い輝いていた学生時代から一転、社会に出た彼女たちは恋も仕事も苦戦する日々。後輩のエミリーに招かれたパーティーに久々に歌う気満々で集まったものの、OGの出番はなし。しかしUSO(米軍慰問団)の海外ツアーに参加し、ツアー中に著名なDJキャレドに認められれば、彼のツアーの前座としてパフォーマンスできると知り、ベラーズを再結成することに。前作で有終の美を飾っているのでこれ以上描くこともなさそうな気がしますが、現実に疲弊した彼女たちが過去の栄光を取り戻す、というのが本筋になるわけですね。正直お話はなんとも散漫でどうでもいい感が強く、コメディ部分も個人的には微妙に笑えなくて、前作以上に観ててなかなかツラい部分もありますが、それでも歌って踊る新時代アカペラのステージシーンはやはりアガります。根底の陽気な雰囲気は相変わらずだし、そこで良しとできれば楽しめるでしょう。

ベラーズのメンバーは、ベッカ役の『ザ・コンサルタント』アナ・ケンドリック、ファット・エイミー役の『ナイト ミュージアム エジプト王の秘密』レベル・ウィルソン、クロエ役の『ブッシュウィック 武装都市』ブリタニー・スノウ、オーブリー役のアンナ・キャンプ、エミリー役のヘイリー・スタインフェルドなどおなじみの面々が前作から続投しています。今作ではハナ・メイ・リーの演じるベラーズ一の変人リリーに意外なスポットが!またベラーズと前座を競うバンドの一員として『トリプルX:再起動』『MEG ザ・モンスター』のルビー・ローズが登場、常に微笑を湛えたロック姉ちゃんで超カッコいいです。惚れます。あとエイミーの父親役として『女神の見えざる手』ジョン・リスゴーが出演、歌まで歌います。

冒頭のユニバーサル・ロゴをアカペラでというお馴染みの始まり、しつこく出てくる実況コンビのジョン・マイケル・ヒギンズとエリザベス・バンクスなどシリーズ踏襲の部分に加え、映画ジャンルを変えたのか?という意表を突くオープニングや、エイミーの親子関係という今まであまりなかった家族に関する話などを取り入れています。スペイン、イタリア、フランスとヨーロッパを渡り歩く舞台設定も豪華。過去の栄光を追い求めた彼女たちが手にするものは何か、という最終章にふさわしいお話……あ、邦題は「ラストステージ」ですが原題は単に「3」なので本当に最後かどうかはわかんないですけどね。

↓以下、ネタバレ含む。








本来ならチームでの一体感を描くのが一番盛り上がると思うんですが、それは1作目2作目でやってしまったからということなのか、ベラーズとしての描写はあまり多くはない印象。いや、あるんですけどね。皆で部屋でダベってるシーンとか、あとステイシーに子供が生まれて皆できゃあきゃあ言ったりとか。ただそれらは歌は関係なくて、もはや練習シーンは皆無だし、特に打合せしなくてもサラッと歌えてしまうので、皆で歌に打ち込もうとかもっと高みを目指そうみたいな目的意識が薄いです。ツアーにしても、どうせ大会出るなら勝たなきゃ!みたいな動機なので、どうも目標に向かって進んでいく感じがしないんですね。まあ前作までもわりとそういうライトなところはありましたが、でもチームものとしてはちょっと寂しい。そう言えば今までの男性陣が一人も出て来ないですね。アダム・ディバイン演じるあの憎たらしいアイツも出ない。超憎たらしい!とか思ってたのに出ないと少し寂しい。なんなのこれ……(恋、ではない)。

あとベラーズ活動の他に、エイミーの父親の話とベッカのソロの話が軸としてあるわけですが、これが上手く本筋と絡まない、と言うより本筋を停滞させたり破壊したりする(ように見える)ので、ますます散漫さが増します。特にエイミーの方、悪党の父親が娘との絆を取り戻す、だとありきたりすぎるということなのか、最初は悪事を後悔するふりして近付いてきた父は、金のために娘を殺しかねないとんでもないクズだった、というアクロバティックな展開に。コメディゆえの奇抜さではあるんですが、冷静に見れば父にも娘にも救いがなくて笑えないですよ。まあ二人ともその辺りは気にしてないからいいのか。あとアクション映画のような爆発とかエイミーが男どもをガンガン倒しまくるというのをやってて、本来こういう展開は大好物のはずなんですが、なんかこう、面白いでしょ?みたいなドヤ顔が透けて見えてノレなかったです。別にアクションを見たいわけじゃないんですよ、歌を見たいんですよ。囚われたクルーザーで歌うシーンもあるけど、その曲さっきもやったよね?という……。

だから歌うシーンやステージシーンはその反動で一層楽しく感じます。なぜあんな場所でいきなりリフ・オフを始めるのか、なぜ大会で優勝したほどのアカペラグループがバンドと張り合うのか、なぜバンドのメンバーたちもハーモニーで張り合うのか(しかも上手い)、など意味不明な点は多々ありますがまあいいじゃないですか。特にバンドやDJらのベラーズ以外の三組がセッションを始めるのが音楽映画らしいパッションがあってスゴくイイ。しかしそのためにリフ・オフのルールにこだわるベラーズがマヌケに見えるというのが残念。彼女たちも共にセッションするシーンが一度でもあれば良かったんですけどね。でもまあ単独のステージでは魅せてくれます。軍隊の制服っぽい衣装で歌うのが好き。ルビー・ローズも歌う姿が超カッコいいのがたまりません。惚れます(二度目)。

コメディとしての笑いは今作はいまひとつ。特にレベル・ウィルソン回りにギャグの不発が多いです。ベッカが一瞬カップを取り出すのは1作目のカップソングのネタですがコントの仕込みみたいだし、蜂で大騒ぎのシーンも予定調和すぎるし、リリーがDJの男と運命的に出会って涙を流す、というのは笑っていいのかちょっと悩みます。リリーって今まで一度も喋ったことなかったんだっけ?クロエが牛の直腸検査というのはちょっと面白いですが、軍のイケメンに色目使いまくるのはがっつきすぎてて引くし、実況コンビのメル・ギブソン似の男による差別発言は相変わらず引くし、イヤしかし前作までもこんな感じだったかもしれない……。どうせならオーブリーには最後に盛大にゲロってほしかったですが、そこは彼女も鍛えられたってことでしょう。そういう意味ではベラーズの面々もみな学生時代とは違い成長してるんだな、という感じは出てますね。最も変わったのは妊娠出産のステイシーでしょうが、子供の父親が不明でも皆そこは詮索せず心から祝う、というのが大人です。

ベッカのソロ話が持ち上がってもみんなあっさりそれを認めるし(大活劇の直後だからか?)、いつの間にかみんな次の進路が決まってるし、くっつく奴はそのままくっつくし、エイミーは1億8千万ドル手に入れてるし、まあ取って付けたようなハッピーエンドです。そもそも勝負の行方がそんな結果でいいのか、その場のノリで作った曲で選ばれるならあのツアーに慰問以外の意味があったのか、という疑問は残ります。ルビー姐さんの横でバンドのメンバーがステージを見ながらずっと不満そうな顔してたけど、そりゃそうだよ。ただ、それぞれ大人になり別の道を歩き始めた面々だからこそ、ベッカを祝福と愛で包むことができたとも言えるでしょう。彼らの最後のステージがベラーズとしてではなく、音楽業界を渇望していたベッカのソロステージへと集約されるのは、過去の栄光ではなく未来を誇るという結末として、ある意味必然なのかもしれません。

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