FC2ブログ
2018
10.31

求めて失うプロvsプロ。『ザ・アウトロー』感想。

den_of_thieves
Den of Thieves / 2018年 アメリカ / 監督:クリスチャン・グーデガスト

あらすじ
「ジ」では?とか言わない。



ロサンゼルス郡保安局のニック・オブライエンは、強盗のレイ・メリーメンが巨額の銀行強盗を企てていると睨み、一味のドニーを脅して情報を掴もうとする。しかし冷静なメリーメンはなかなか動じない。やがて強盗決行の日が近づき両者は対決姿勢を強めるが……。ジェラルド・バトラー主演のアクション・サスペンス。

48分に1回、銀行強盗が発生するといわれるロサンゼルスを舞台に、破天荒な捜査を行う郡保安局のビッグ・ニックと、綿密な計画で銀行強盗を企てるメリーメン一味の激しい攻防を描くクライム・サスペンス。ニックは刑事でありながら野卑な荒くれもので、自他ともに「ワルだ」と認める男。違法な手を使ってでも情報を集めて犯罪者を追い詰めていきます。一方の強盗たちは、ただのギャングとは違い仕事が終わってもウエーイとか言わないプロの強盗団で、強固なセキュリティを誇る銀行をターゲットに強盗計画を進めていきます。そんなプロ同士のぶつかり合いは、命と面子と家族との関係をも賭けた、シビアで熱い黙示録。冒頭から展開される激烈な銃撃戦に度肝を抜かれつつ、そこに大胆な手段で大金を狙うケイパーもののスリルが加わり、かつミステリーの驚きもあって秀逸。上映時間はちょい長めですが、男臭さ満点のドラマと壮絶なガンアクションが実に面白い。

ニック役は『ジオストーム』『エンド・オブ・ホワイトハウス』のジェラルド・バトラー。法を守る側なのに悪党にしか見えないというワイルドさ、実際粗野なんだけどでも有能というのがハマりまくり。強盗団のリーダーで危険だけどキレ者のメリーメン役、『スカイスクレイパー』のパヴロ・シュレイバーもイイ。その相棒ルヴォーを演じる『サウスポー』カーティス・"50セント"・ジャクソンと共にクレバーな強盗っぷりがクール。またメリーメンと仕事をすることになるバーテンのドニー役は『ストレイト・アウタ・コンプトン』のオシェア・ジャクソンJr.。なんかますます父アイス・キューブに似てきた気がしますが、実に良い存在感です。監督はバトラー主演作『エンド・オブ・キングダム』脚本のクリスチャン・グーデガスト。これが初長編監督作ですかね。ちなみにムエタイとブラジリアン柔術の黒帯保持者だそうです。強そう。

警察と強盗団、両者それぞれにドラマがあり、その対比が上手い。何をしてるんだと自問しながら、それでも死地へと赴く男たちの物語がシブいんですよ。重い銃撃音や荒い息使いなどの音の使い方も臨場感満点。ちなみに原題の『Den of Thieves』=「盗賊のねぐら」は強盗団の巣窟をブッ潰すぜ!みたいな意味合いかと思ってたんですが、最後まで観ると「そこで起こっていた事実」というニュアンスなのかも。これはもう一度観たら違う面白さがありますね。

↓以下、ネタバレ含む。








■バイオレンス刑事の憂鬱

序盤で描かれるニック、事件現場に落ちてるドーナツを食べたりゴミを捨てたりFBI捜査官をからかったりと傍若無人ですが、ドーナツ屋の店員は殺さなかったことから武器を持たない一般人は殺さない軍人だと見抜く明晰さを持ち、そこからメリーメンへ繋げる閃きを見せるなど、有能であることをしっかり示します。それでいてドニーに対する監禁しての自白強要などはかなりヤバい。ドニーに本当のことを言えば「ワルでないと認める。ワルは俺たちだ」と平然と言ってのける確信犯っぷりがキてます。強盗逮捕に燃えるのも正義感というよりは鬱憤晴らしやストレス解消なのでは、と勘ぐってしまうほど。

そのストレスは家庭にもあるようで、実際ニックの家庭は崩壊寸前、と言うかちょうど崩壊します(ちょうどと言うのもアレですが)。それも他の女へのメッセージを間違って妻に送るという痛恨のミスがきっかけで妻に出ていかれます。その後、妻のいる会食の席に乗り込んで離婚届にサインして新しい彼氏(?)に強制ハグをするという、暴力をチラつかせた嫌がらせがまたクズいです。ただ、娘に会いに行ったあと車で一人涙するように、ニックは単にマチズモというわけでもないのでしょう。やはり48分に一回銀行強盗が起こるロスでは日々の緊迫感やストレスが付きまとうだろうし、それを薄めるため慣れたような態度とガサツさで己をカモフラージュしてる、というのも多少はあるのかもしれません。そりゃあね、連日しょうもないクズの相手してりゃあ荒れますよ。そこはわかってあげてほしい、と言いたいところですがストリップも普通に行ってるっぽいので何とも……。強さとダメさの両方を持っている主人公なわけです。


■対峙する二人の男

一方のメリーメンはボスとしての圧があり、冷静で頭の回転も早い、それでいてしっかり悪党、というクールさがスマートでさえあります。冒頭の銃撃戦は壮絶で、パトカー3台を全滅させるというのには驚きと共にクレイジーさを感じますが、そこには徹底して叩き潰すという冷徹さと完璧主義のようものも窺えるし、ヤサに戻ったあと「警官殺しだな」と静かに言うところには覚悟を感じます。しかも強盗成功率ゼロという連邦準備銀行を襲おうとする大胆さ。実際にはこれはメリーメンが立てた計画ではないわけですが、観てる者には十分な大物感を与えます。冒頭で奪った空の輸送車は、連邦銀行に乗り込むときに使うためだったわけですね。ストリップの彼女を使ってニックをおびき寄せる情報を流すという、感情を殺して動くこともできる強者です。また相棒のルヴォーが黙って付き従うところに信頼に足る人物なのだろうというのも感じます。

クライマックスでニックとメリーメンは激突するわけですが、二人の対比や小競り合いレベルが何度も描かれるのが効いて、最後に対決する必然のようになっていくのが熱いです。悪党のような刑事とスマートな悪党というキャラクターの違いと、どちらも有能なリーダーでありプロであるという共通点。悪党の家族は幸せそうで、ニックの家庭は崩壊という皮肉な環境(娘の彼氏に脅しをかけるルヴォーが大人げなくて笑います)。日本料理屋での挑発。射撃場での張り合い。そしていよいよ決行という日の準備シーン、警察と強盗それぞれをカットバックで映すのが熱い。


■もう一人の男

それだけにドニーの立ち位置には最後まで翻弄されます。計画に巻き込まれた下っ端ドライバー、警察に目を付けられた哀れな犠牲者、そして結局逮捕されて終わる小者……にしてはどうも何か引っかかるんですね。なぜニックとメリーメンと共に名前がキャプション表示されるのか。なぜニックにバレた後も真剣に計画に参加しているのか。もちろんオシェア・ジャクソンJr.をキャスティングしてる時点で何かありそうな気がするんですが、それでも警察の犬かコウモリ野郎か、あるいは事件の生き証人というところかと思いきや、ラストの驚きの事実ですよ。連邦準備銀行での『オーシャンズ』シリーズ顔負けの盗みシーンは手に汗握る超スリルで最高なんですが、ニックとメリーメンの激突がメインのわりにはこのシーンってちょっと浮いてるんですよね。それはこの作戦こそがもう一人の主役であるドニーにとってのメインだったからなわけです。マッチョな争いの裏で狡猾に獲物を奪う。ある意味ドニーが最も冷徹です。

そして迎える凄まじいクライマックス。重い銃撃音が延々と続き、荒い息遣いが聞こえるというそれまでも顕著だった音使いの迫力に、ハイウェイで車を盾にしながら撃ちまくるのは『ボーダーライン』かはたまた『ヒート』かという臨場感(シチュエーションだけ見れば『ラ・ラ・ランド』の冒頭みたいですが)。最後はニックとメリーメンの対決。メリーメンは刑務所を出るときも「もう戻らねえ」と言っていたように、捕まるくらいなら突き進んで終わることを選びます。最後に流す涙は無念か後悔か。「捕まらねえ、そう言ってたな」と言うニックが、メリーメンの銃が空なのを見てそれを悟るのも熱いです。

ドニーがニックに捕まったのも計画だったのか?金はいつ紙玉に変わったのか?などちょっとハッキリしなかったところもありますが、それもあまり気にならないくらい熱量に酔い、余韻に浸りましたよ。何かを守ろうとして何かを失った男、何かを得ようとして何処かへ旅立った男、全てをつぎ込み賭けに勝った男。アクションとサスペンスとドラマとミステリーが融合した、見事な野郎映画です。



スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1452-41296b7f
トラックバック
back-to-top