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2018
10.19

魔法と時計と僕と叔父さん。『ルイスと不思議の時計』感想。

The_House_with_a_Clock_in_Its_Walls
The House with a Clock in Its Walls / 2018年 アメリカ / 監督:イーライ・ロス

あらすじ
おすわり!(椅子だけに)



両親を亡くした少年ルイスは叔父ジョナサンに引き取られることになり、叔父の古い屋敷で暮らし始める。しかしそこは不思議な時計が壁中に飾られ、怪しげな影が蠢く館。そしてルイスは、ジョナサンが二流ながら不思議な力を使える魔法使いであることを知る……。1973年発表のジョン・ベレアーズの小説『壁のなかの時計』を映画化したファンタジー。

魔法使いの叔父ジョナサンとお隣の婦人フローレンスと共に、ルイス少年が不思議な時計の謎に挑むファンタジー・アドベンチャー。時計だらけの屋敷のどこかに、実は世界を破滅に導く時計が隠されていることを聞かされたルイスは、ジョナサンと共にその謎を追うことになります。本作のポイントは何と言っても、監督が『グリーン・インフェルノ』『ホステル』といったエグいホラーやサスペンスばかり作ってきたイーライ・ロスであることでしょう。まさかの人選に、大丈夫なの?と不安になるんですが、これがしっかりと家族向けマジカル・アドベンチャーになっていて驚き。それでいてちょいちょい出てくる悪趣味が実にイーライ・ロスらしく、それがイイ感じにアクセントになっています。物語は、少年の成長、家族の絆、悪との戦いといった王道を行く展開。時計だらけで物が動き出す不思議な屋敷に、ズラリと並ぶ不気味な人形と、ファンタジックとオカルトとのバランスが意外といい塩梅です。

ポンコツ魔術師ジョナサン・バーナヴェルト役は『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』ジャック・ブラック。隣家に暮らす一流魔術師のフローレンス・ツィマーマン役は『オーシャンズ8』ケイト・ブランシェット。この二人が期待以上のキャラを見せてくれるのがスゴく良いんですよ。特に鬼ババだのゴリラ男だのと罵り合うのは最高。ルイス少年役のオーウェン・バカーロ君はほんのちょっとあざとい感じはありますが順当な感じ。ルイスの級友タービー役は見覚えあると思ったら『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のサニー・スリッチ君ですね。また魔術師アイザック役として『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』『砂の惑星』カイル・マクラクランが出てます。久々に見れて嬉しい。

スクールカーストに打ち勝つ子供の話でもあり、子を守ろうとする親の話でもあります。若干タルいところもありますが、笑いとちょいグロもありつつ、意外にもじんわり泣けましたよ。お子様でも安心です(たぶん)。

↓以下、ネタバレ含む。








絵的には『ハリー・ポッター』の1作目とか、魔法じゃないけど『ヒューゴの不思議な発明』みたいな、ちょっとノスタルジックな不思議さにワクワクするファンタジーなんですよ。壁一面が時計という屋敷の光景や、動き出すステンドグラスの絵、終盤の歯車だらけのフィールドなどはその最たるものだし、アームチェアが犬のようになついてきたり、プラネタリウムのように一面に星の映像を映し出したりというのも魔法の力のライトサイドという感じでほんわかします。

一方で細かいところにイーライ・ロス風味のホラーテイストやグチャドロ表現がブッ込まれてくるのがたまりません。カボチャ頭のゲロ(のような果肉放出)とか、植木スフィンクスの粗相(というレベルではない射出)とか、酷いですね(ホメ言葉)!通路を出たら不気味な人形がズラリと並んでお出迎えするシーンなどは相当な不気味さでホラー映画的な見せ場になっていますが、倒した人形の頭を蹴り割ったりするし、飼い椅子がバラバラにはらわた(実際に綿だけど)をブチまけられていたりして、これが人間だったらヤバいというのをしっかりやっています。あとジョナサンが赤ん坊に戻ってしまうシーン、顔だけジャック・ブラックのままというのが夢に出そうな気持ち悪さで最高です。あれを抱っこするのは相当勇気がいるんだが……。

本作で描かれるのは、ルイスが寂しさを乗り越えて強くなる姿です。両親を亡くして寂しいルイスは、そこを母親姿のアルフレッドの妻セリーナに付け込まれます。いないはずの母を怪しまずに会話してしまうのは、その死を受け入れきれてないということ。それが幻想だとわかったときには時計の鍵を奪われてしまっているわけですが、ジョナサンとフローレンスに接し、自ら事を解決しようとすることで強くなっていくんですね。最初は占いができるビリヤード球について「最後にもらったプレゼントだ」とベソベソしますが、最後はこれを砕くことで両親へ本当の別れを告げるのです。これに関連して、ジョナサンが「子供の守りかたがわからない。それが怖い」と心情を吐露し、フローレンスに「子育ては24時間怖いものだ」と諭されるくだりは良いですね。家族として接したいのにその方法がわからない叔父と、赤ん坊返りした叔父を抱いて守ろうとするルイス。守るためには怖がってなどいられないというのを甥っ子が身をもって示すわけです。ジョナサンの見せた、エネルギーをためて放つという魔法の練習がここで活かされるのもイイ感じ。

また、フローレンスに「あなたは友達が多そうね」と言われるものの実際は友達のいないルイス。バスケで松葉杖の奴にまで負けるのがツラいんですが、それだけに選挙で票が欲しいだけのタービーに「友達として言うけど」とか言われて舞い上がってしまい、「取ったほうが友達ができる」と言われて大好きなキャプテンのゴーグルも外してしまいます。挙句タービーの気を引こうとしてアイザックを復活させてしまう羽目に。しかし叔父と共に世界を救ったことで自信が持てたか、外していたゴーグルもまた着けているし、最後はタービーをボールでノックアウト、自分を認めてくれる昆虫好きの女の子の友達ができます。ジョナサンが車で迎えに来た際、タービーといたときは嫌がっていたのに最後はにこやかに乗り込む、というところにも自信と新たな家族への誇りが見られて良いです。

ジョナサンはアイザックとやったマジシャン興行、フローレンスは子供を亡くしたという過去が語られますが、二人の今に至る関係の経緯はそこまで描かれません。でも罵り合いながらもいざというときは互いを頼りにする二人の関係が窺えて、この辺りの表現力はさすがのジャック・ブラックとケイト・ブランシェット、掛け合いの上手さも抜群。いやもうね、「紫ババア」だの「死ね」だの言ってるの仲良くケンカしてる感じでスゴく可笑しい。フローレンスが魔力復活後に魔法銃撃でカボチャを粉砕するところとかもう頼もしさしかないです。あとアイザックが最後、時間戻し光線を浴びて一瞬だけ素顔に戻るのは、確かにカイル・マクラクランが演じていると確認できるサービスですかね?

基本的にジョナサンの屋敷を中心に出たり入ったりするだけなのでスケール的にはこじんまりしてるし、魔法描写は新鮮味としては薄いです。逆にイーライ・ロス風味を期待しすぎると物足りなさはあるでしょう(この作品でそれを求めるのはさすがに酷ですが)。もう少し深みを出すことも出来たんじゃないかとも思います。ただ原作が児童書であることを思えば子を思う大人の思いに踏み込んだのは良くやってくれたと思うし(原作準拠かもしれませんが)、魔法を覚えたルイスがちょっとした片付けを魔法でやったりする使い方が可笑しいし、悪の魔法使いにより見慣れた屋敷が豹変して襲ってくる怖さもあるし、色々と見るべきところはあると思うんですよね。直接血の繋がりがない三人が家族となって車で走り出す、その予想外の爽やかさこそ魔法のようだなあなどと思うのです。

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