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2018
10.17

支配と搾取のカモフラージュ。『ゼイリブ』感想。

They_Live
They Live / 1988年 アメリカ / 監督:ジョン・カーペンター

あらすじ
サングラスをかけ町へ出よう。



仕事を探して町にやってきたネイダは、そこで出会ったフランクに連れてこられたドヤ街で寝泊りするようになる。しかしある日、その向かいの教会で発見したサングラスをかけたとき、今まで見えなかったものが見えることに気付く。実は人間ではない侵略者によって人々は支配されていたのだった……。ジョン・カーペンターによるSFサスペンス。

『遊星からの物体X』『ニューヨーク1997』の鬼才ジョン・カーペンターによる1988年の作品『ゼイリブ』が、製作から30年ということで「30周年記念HDリマスター版」としてリバイバル上映!カルト的人気を誇る作品ですが実は観てなかったので、これを機に初鑑賞。サングラスをかけたら見える奇怪な侵略者の姿、あらゆるところに表示された人間を洗脳する言葉。そして侵略者と一部の人間たちによる搾取。主人公である労働者のネイダはこの恐るべき真実を知ったことで侵略者と戦うことになります。本作は資本社会への警鐘だ、みたいな言説は以前から目にしていたので一応頭の片隅に置いて観ましたが、思った以上に当時の現代社会を皮肉る社会派な作風。かと言ってお堅いわけではなく、シニカルな映像とバカ紙一重な展開(ホメてます)が実に面白い。HDリマスターということで、30年前の作品とは感じないほど画がキレイだし、音響の重低音も迫力です。

主人公のネイダはなぜか自ら窮地に飛び込む、なかなかの脳筋。演じるロディ・パイパー、やたらプロレス技を使うと思ったら、80年代に活躍した本物のプロレスラーだったんですね。ネイダと行動を共にするフランク役は『ナイスガイズ!』キース・デビッド。この労働者コンビがメインで大丈夫なのか?というのはあるんですが、貧富の格差というものを体現することに一役買っていると言えます。そして何と言っても映画史に残るであろう中盤のケンカシーン。アクション……イヤやはりケンカか。これが最高です。またメグ・フォスターの演じるホリーという女性がミステリアスで良いんですが、とんでもない行動に出たりもするので油断できません。

人間の姿をしているが一皮むけばこれほど不気味なのだ、と言わんばかりの侵略者たちのデザインは皮肉が効いていて、物語もわりとストレートな構造でわかりやすいのに独創的。原題は『They Live』なんですが、邦題が『ゼイリブ』と一単語のようになっているのが、得体の知れない何者かをそのまま表しているようで良い感じです。

↓以下、ネタバレ含む。








主人公のネイダは腕っぷしは強いですが別に良い奴でも悪い奴でもなく、仕事を求めて流れてきただけの労働者です。何かうまい話がないかと周囲に目を配る貧困層の男であり、世界を変えようとするヒーローでも何でもないんですね。ただ、大抵はフランクのように日々の労働に勤しんで厄介事には関わらないなかで、教会に胡散臭いものを感じ取って怪しむのは大した嗅覚。イヤせっかく就いた仕事に行かずに何をやってるんだ、というのはあるんですが。あと状況掴めないまま正面からケンカ売って捕まりそうになったりするので、なかなかヒヤヒヤさせてくれます。そんなネイダの見つけたサングラスが、かけると世界の本当の姿が見えるという代物。広告看板には全て何かを指示するような文字が表れ、さらには一部の人々は不気味な顔のエイリアンであることがわかります。普段は怪電波でカモフラージュされているわけですね。

エイリアンが看板に隠した文字は人類を洗脳するための言葉ですが、「従え」というただ服従させるものだけではなく、「結婚して産め」とか「寝ろ」、「テレビを見ろ」といったものもあります。つまり労働力は増やせ、でも余計なことを考えず働く以外は寝るかテレビでも見てろ、ということですね。思考力を奪われた人間の方が支配しやすいということであり、それをサブリミナルで植え付けようとしているわけです。これこそ本当の支配、そしてそれは目に見えないけども広がっているのだ、という社会への不安要素として描かれ、それを説くのが盲目の宣教師であるというのがさらに見えないものへの警鐘となります。そしてエイリアンたちは支配層として人間社会に溶け込み、一部の賛同する金持ちたちはそれに迎合して甘い汁を吸う、というわけですね。わかりやすい。

そんなエイリアン(=支配者層)たちに人間(=貧困層)はどう対抗するのかと言えば、まず「現実を見ろ」というところから始まります。無理やりにでもサングラスをかけさせようとするネイダと、それを断固拒否しようとするフランクがケンカし始めますが、ひたすら殴り合い、バックドロップなどプロレス技も駆使し、ケリがついたかと思いきやまた飛び掛かっていって、な、長い!あまりのしつこさに笑っちゃうくらいでそこが最高なんですが、それだけフランク(=多くの一般人)は現状から目を背けていたいということでもあります。そうして顔ボコボコでホテルにチェックインする二人が可笑しい。可笑しいと言えば、レジスタンスのアジトで「今日届いたばかり」と言いながらサングラスの代わりにコンタクトに付け変えるのが、どう考えても顔を見せるためなんだろうな、というのも笑います。あとエイリアンたちが使ってた探知機みたいな装置、どこかで見たぞ……と思ったらあれだ、『ゴーストバスターズ(1984)』のゴースト探知機だ!何か関連性があったんですかね?

ネイダが逃亡の際に出会ったテレビ局の人間であるホリーは、ネイダを二階から叩き落とす様に思わず「すげー!」と声が出そうになりますが、仲間に加わってきたと思ったらアジトが襲撃されたり、その後普通にテレビ局にいたり、「テレビ局はシロだ」とか言ってたのに結局そこに怪電波発生装置があったりしたので、彼女はそもそもエイリアン側の人間ということだったのでしょう。大体彼女は住居からして富裕層だったし、本作での「金持ちは腐っている」という思想は徹底してますね。フランクまでやられて多勢に無勢、しかしネイダの一撃がついに送信機を破壊し、世界は本当の姿をさらけ出すことになります。目の前の現実を知った人々、国家さえ既にないも同然、さてどうする?という気付きと問いかけで終わるわけです。

貧困層が命懸けで搾取する富裕層に戦いを挑む、という意外とストレートな話を寓話として描きつつ、ちゃんとSFスリラーとしても観れるように作っているのが良いです。それでいて皮肉もたっぷり。テレビのコメンテーターに「ロメロとかカーペンターなどの映画は暴力的でいかん」とか言わせるのは自虐ネタかと思わせますが、むしろ「この現実と俺の映画、どちらが暴力的だ?」との問いかけであろうし、ラストショットがセックスシーンというのにはそれで終わるのかー!と笑っちゃいますが、人は本能的な部分まで支配されてないか?という問題提起でもあるんじゃないでしょうかね。いや、カーペンター凄いです。

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