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2018
10.15

揺るがぬ信念が誰かを救う。『イコライザー2』感想。

The_Equalizer2
The Equalizer 2 / 2018年 アメリカ / 監督:アントワン・フークア

あらすじ
時計ピッ!(無双タイム)



元CIAエージェントで、今はタクシー運転手として働くロバート・マッコール。そんなマッコールのCIA時代の仲間が何者かに殺されたという報が届く。独自の調査を開始したマッコールは、関係のありそうな別の事件の真相を追っていくが、やがて彼自身にも危険が迫ってくる……。サスペンス・アクション『イコライザー』の続編。

デンゼル・ワシントン主演、アントワン・フークア監督による『イコライザー』、待望の続編!ホームセンターに勤めるロバート・マッコールは実は元CIAエージェントであり、娼婦の少女を救うため一人悪の組織に立ち向かっていく、というのが前作のお話。今作では友人を殺した犯人を捜して裁きを下すことになります。前作が大好きだったので続編も期待はしていたんですが……いやもう、最高じゃないか!タクシー(正確にはUBER)の運転手へと転職したマッコールさんが、弱きを助け、若者を救い、悪党を切り刻む!自分なら救えるかもしれない、と前に進むことを選んだマッコールさんは、もはや躊躇などしないし決してブレません。絶対的ジャスティスとして怒涛の強さを発揮するマッコールさんにシビれまくり。震えるシーンが満載です。

マッコール役の『2ガンズ』『フライト』デンゼル・ワシントンは、これが初の続編出演だそうで、言われてみれば確かにそうですね。それだけ本人も納得のハマり役ということでしょう。マッコールの元同僚デイヴ・ヨーク役は『キングスマン:ゴールデン・サークル』『グレートウォール』のペドロ・パスカル。わりと真面目な家庭人という感じながら瞬間的な目付きの鋭さが印象的。マッコールのご近所の青年マイルズ役は『ムーンライト』のアシュトン・サンダースで、強がりと繊細さの同居が実に良いです。スーザン役の『エンド・オブ・キングダム』メリッサ・レオ、ブライアン役の『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』ビル・プルマンも前作から続投。そして監督は『マグニフィセント・セブン』『トレーニング デイ』でもデンゼルと組んだアントワン・フークア。フークア監督も続編を撮るのは初めてですが、ツボの押さえ方がさすがです。

第三者だった前作と異なり、今作はマッコールさん自身の物語でもあって、それが前作とはまた違うテイストを醸し出します。敵対する相手の論理を真っ向から否定し、無表情で殺しまくるマッコールさんはまさに修羅、ちょっぴり狂人。そんな彼が唯一激昂するシーンというのがまた熱い。たゆたうように心地よいカメラワーク、いちいち沁みるドラマ、超絶なアクション。見たいもの以上のものが見れて最高です!

↓以下、ネタバレ含む。








■人情と仕置きの運転手

冒頭はトルコの列車での仕置きから始まります。前作に続きワールドワイドも問題なしのマッコールさん、トルコっぽさを出そうとしたのか変装してますが、アメリカ人かと聞かれてイエスって言っちゃってるのであまり意味がないような……とは言えこのアバンタイトルだけで、ナプキンをきっちりそろえて置く几帳面さ、目に写る全てのものが殺戮凶器、とんでもない無双っぷり、そして「痛みには二種類ある、体の痛みか、改心の痛みか」と悪を後悔させるジャスティスが健在なことを示して、タイトルどーん!ですからね。この時点でもう最高。

話の軸としては、世直しタクシー運転手、スーザンの敵討ち、マイルズとの交流の3点ありますが、そこまでキッチリ分かれているわけでもなく最後は融合もするので、とっ散らかった印象はないです。むしろマッコールさんの日常をじっくり見ながらもそれが非日常と表裏一体なことが実感できます。タクシーでは会社の面接に向かう者、大学に受かった者など多くの人々の人生を垣間見ます。聖書の一節を読むときには帽子を脱ぎ、出征する者には「帰りは迎えに来る」と言い、長年姉を探しているサム老人の話し相手になるマッコールさん。何の仕事がいいかで揉める子供たちにげんなりしたりするのも可笑しい。むやみに話しかけるようなウザいタクシー運転手ではないのが良いですね。そんななか、襲われた女性の敵討ちでイコライザー始動!チタンカードで目を切るというプライスレスな一撃から、肩をはずし首を捻り頭を叩き付け、女性の名前を復唱させながら指を折るという見事な仕置き。車に戻ったときにちゃんと星5つ付くのが愉快。

他にも、行き付けの本屋で店を閉めるという貼り紙がなくなっていた件、店を出たとき手すりを掴んでクルッと回るマッコールさんが動きだけでご機嫌だとわかって微笑ましいんですが、その前に本屋の娘ちゃんと「シーっ(内緒)」みたいにやってるのを考えると、前作で同僚の母親が店を荒らされたとき同様にマッコールさんが地上げ屋とか闇金とかに対して秘密裏に動いて、それをたまたま現場を見た娘ちゃんだけが知っている、とかじゃないですかね。また、悪い仲間に誘われるマイルズを取り戻しに行くときは速攻で見張りを倒し、そいつが持っていた銃を奪い二丁拳銃をクロスに構えての登場にシビれます。


■無双だから出来ること

基本的にマッコールさんはその場にあるものを武器として使うというのが良いんですよ。あと銃もほとんど使わないですね。護身用に持っていたりはするけど使うのはタクシーのなかで刺客を倒す時くらいで、それも相手の銃を使っての攻撃です。そして瞬時に周囲を把握する能力が凄まじい。演出的にも瞳に周囲の状況が一気に映るというのがありますが、その後は目に光がないというのが完全キルモードで、鮮やかな手つきもあってちょっと狂人めいて見えるのが怖いです。ことを始めるときのストップウォッチに意味があるのかよくわかりませんが、時間を計るという行為自体が、キチンとするのが好きなマッコールさん的。ドライビングテクもピカ一。後部座席に刺客がいるのに、運転席にいるままブレーキや遠心力で渡り合うというのがエキサイティング。最後の回転する車、逆に回るカメラ、2発の銃弾でケリ、の流れがカッコよすぎて最高。ただそのあと車を燃やしちゃうのが、マッコールさんの日常が燃えていくかのようで悲しい……。

また本作では見事な推理力も発揮して、スーザンの死の真相にグイグイ迫っていく頭脳的なところも披露。刺客がタクシーに乗ってきたときはわざと空港を逸れて、目的が空港に行くことではないと確信を得るという手も見せます。さらにハッキングなどの技術力にも長けていることがわかります。デイヴに始末屋の「高度に暗号化されている」スマホを渡してスーザンにかけた番号を追えと言いながら、スマホを見ようともせずにしまうデイヴに電話をかけてみせる。つまり既に番号を調べ終えていたということですよね。何というチート……!隠し部屋に勲章がずらりと付いた制服が飾ってあるのが、マッコールさんが凄い活躍をしてきたのだと実感させるのも細かい。ちなみに買った服を奥さんが捨てていたという事実から、ファッションセンスはあまりよろしくないことが判明。何となくそんな気はした……。

マッコールさんが運転手に転職したのはより多くの人と触れ合う機会を求めたからでしょう。前作でアリーナを救ったことで自分には出来ることがあるという思いと、スーザンに前へ進むことを認められたことで、マッコールさんにはもはや全く迷いがありません。壁の落書きを自ら掃除する理由に「誰かがやるべきなのに誰もやろうとしない」と述べるのが彼の哲学でもあるでしょう。だからやるべきことを放って悪の道に入ろうとする者は許せない。マイルズに対して本気で説教するのは単に知り合いだからではなく、才能を活かそうとせずに自ら堕ちようとするからです。マイルズの「どうして俺なんだ」の問いに「これから探そう」と言うマッコールさん。原語では最後に「together」とも言ってることから、まずは救う、救われるべき理由は後から一緒に探せばいい、ということなんですね。


■積み重ねて深まる物語

結構細かいところに伏線を張っていて、諸々説明が付くようになっているのが上手いです。スーザンがエレベーターに乗ったときチラリと壁の方も見るの、あれは目的階のボタンが既に押されてるのを確認したのでしょう。マッコールさんが「スーザンはボタンを押していない」というのを裏付けているわけです。マイルズを連れ去った悪い仲間の行き先は、彼が乗り込む車のナンバーが映されるのでそこから辿ったのだとわかります。マイルズは隠し部屋を出るのが早すぎてデイヴに見つかりますが、その前に「狭いところが苦手だ」と言っていたので、焦ったと言うよりは閉所恐怖症の息苦しさに耐えかねてでしょうね。サム爺さんのお姉さんの件についてはラストでいきなり出てくるわけではなく、ブライアンも一緒の外食後にスーザンに調べものを依頼しており、ベルギーでスーザンが情報が入ったと電話しながら「絵に興味があったとは」と言うのが伏線になっているんですね。また「嵐が来る」というのはわりと前段から何度かニュースで言ってたりします。という具合に、キッチリ積み重ねているのが深みに繋がります。

デイヴが殺し屋稼業をしているのも、使い捨てられた過去により歪み、正義も悪もないんだと悟ってしまったからだとわかります。そして「お前が死んだからだ」という一言に運命の悲劇めいたものさえ感じそうになります。が、マッコールさんは全く動じません。「死ぬのは不運だからだ」と言うデイヴに即座に「お前が殺した」と言い返し、かつての仲間たちに「普通ならチャンスを与えるが友人を殺した相手には容赦しない」と迷うことなく宣戦布告。それでいてデイヴの家族とはにこやかに会話、娘とハイタッチしたときにはピョンとジャンプまでしますからね。なんだあの可愛さ。デイヴの前で娘を抱っこして一緒に車に乗るのなんてほぼ脅迫だし、妻子とは和みながらデイヴのことは容赦なく殺すわけで、サイコパスで怖すぎ。でも経緯とか理由とか関係なく、能動的に犯した罪には罰を与えるという、これこそがマッコールさんの揺るぎなき信念です。震えます。ところでマッコールさんはマックと呼ばれてたのか、というのはちょっと意外。


■誰かのヒーロー

終盤のハリケーンは凄まじい迫力で、表に出さないマッコールさんの怒りのよう。デイヴたちは嵐が過ぎてから行った方がよかったのではとも思うんですが、嵐のどさくさで殺す方がいいという判断か、一刻も早い対処が必要だったからか。相手も元CIAエージェントですが、マッコールさんに次々と屠られていきます。銛みたいなのでブッ刺して死亡。ナイフでサクサクサックリ切り刻んで死亡。小麦粉を扇風機で巻き上げるのは煙幕ではなく、可燃性の粉塵に引火して起こる粉塵爆発という現象を起こすためのもので、結果はらわたぶちまけて死亡。即死でなく自分が死んでいくのを意識させられる、というのがエグいです。しかしスーザンの顔写真を貼りまくるとか怖すぎですよ。塔の屋上でデイヴが鉄線みたいなのに打たれて倒れるのは、その前にマッコールさんが撃っておいた電線なのかな?スーザンと同じくナイフを突き立てられ、マッコールさんの光のない目に映る自分の顔を見て、岸壁の下へと落ちていくデイヴ。決して彼らが弱かったわけではなく、マッコールさんが地の利を知り尽くしていたことと、彼の揺るぎない信念に敗れたのだと言えます。デイヴが波にさらわれ直後に消えるところまで凄まじい。

マッコールさんはある意味サイコかもしれません。デイヴたちを見れば、長く殺しの道具として働いてきた彼がまともな精神状態だったかどうかは実際はわからないのです。しかし妻の存在と彼女の勧める100冊を読むことで、マッコールさんは変わっていったのかもしれません。未読なのでタイトルからの印象でしかないですが、『世界と僕のあいだに』で世の中との関係を考え、『シッダールタ』で釈迦のような慈悲の心を得て(例外あり)、『失われた時を求めて』で自分の生涯を追想する、という時間を過ごしたのかも。そうした時間を持つことが亡き妻の望みでもあったんでしょうね。マッコールさんは指輪を右手にしていますが、本を読み終わって左手に戻すことから、妻との約束の100冊を読み終えたいという願掛けのようなものと思われます。本作はマッコールさん自身のよりパーソナルな物語でもあったわけです。

救い出されたマイルズは思わず「あんたは何者だ」とマッコールさんに問い掛けます。それは前作では悪党たちが彼に言っていた言葉。でも死にゆく者の恐怖と後悔からではなく、助けてくれた感謝と畏怖からの問いなわけです。セダンに乗って予言する力を持つ男を描き「ヒーローだ」と言うマイルズにとって、マッコールさんの行動は決して独りよがりではなかったわけです。それはマッコールさんが誰も信じなかった話を信じたからこそ再会できた老姉弟にも同様。「マイ・サミー」で爆泣き。そしてマイルズが描いた壁の絵には花が溢れ、道行く人の中には花壇の夫人もおり、笑顔があふれています。幼い頃のマイルズが手を繋ぐのは恐らく死んだ兄なのでしょう。「最良の思い出をここに残す」のメッセージと、誇りだった兄の絵を使った自分のサインに泣けます。自宅の窓辺から海を臨むマッコールさん、というとても穏やかなラストシーンが印象的。

続編としてのスケールアップだけではなく、マッコールという男をさらに深く描き、より一層のイコライジングを見せてくれて、やはりデンゼル&フークアは最高です。大好き。ぜひさらなる続編も作って欲しい!マッコールをアンコールしたいです。

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