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2018
10.12

儚き世にも結ばるる縁。『劇場版 夏目友人帳 うつせみに結ぶ』感想。

natsume
2018年 日本 / 監督:大森貴弘

あらすじ
ニャンコ先生、増えるの巻。



幼い頃から他の人には見えない妖(あやかし)の姿が見えた高校生の夏目貴志。ある日夏目は亡くなった祖母・レイコを知る女性、津村容莉枝と、その息子、椋雄と知り合う。母子の住む街に妖を見かけた夏目は、ニャンコ先生と共に再びそこへ出向くが……。緑川ゆきの同名コミックをアニメ化した妖怪&ヒューマン・ドラマ、その劇場版長編。

テレビアニメが4期まで放送されている『夏目友人帳』が、初の長編オリジナル・エピソードで劇場版として登場。亡き祖母のレイコが妖たちとの勝負の末に勝ち取った契約書「友人帳」、それを継いだ孫の夏目貴志が様々な人々と接しながら、自称用心棒である妖のニャンコ先生と共に友人帳に書かれた名前を妖に返していく、というのが基本的なお話。本作ではたまたま出会ったレイコを知る人物と彼女にまつわる妖、かつての同級生・結城との偶然の再会などが描かれます。作者監修ということもあり、作品特有の暖かみのある雰囲気は健在。劇場版だからと言ってそこまで派手なスケールアップをするのではなく、長編ならではの少々込み入った話を、妖の持つ不穏さやコミカルさも交えながら描きます。夏目と親しいレギュラーキャラも総登場、妖がぶつかり合うアクションや荘厳なビジュアルなどもあって特別感はきっちり出しています。

夏目役の神谷浩史、ニャンコ先生役の井上和彦らレギュラー陣に加え、ゲストキャラの津村容莉枝役にナウシカこと島本須美、息子の津村椋雄役には『万引き家族』高良健吾というキャスティング。また、とある妖の声が本職の人じゃないだろうけどなんか味のある喋りだな、と思ったらバイきんぐ小峠でした(相方の西村も出てる)。原作もテレビアニメ版も観てましたが、テレビ版の監督でもある大森貴弘が総監督ということでテイストは全く問題なし。

人の優しさや妖との縁みたいなのをてらいなく描くのは相変わらず少しくすぐったい感覚ですが、作品のゆったりした空気に合ってて心地よいです。ちょっと長さは感じるもののそのぶん丁寧とも言え、シリーズ初見の人でも何となくわかるようになっている、かな?何といってもニャンコ先生、本当は「斑(まだら)」という超強い妖なんですが、今回は三匹のチビニャンコ先生に増加して余計キュートに。あざとい!でも可愛い!

↓以下、ネタバレ含む。








幼い頃に疎外感を抱えていた夏目が徐々に人との関わりを取り戻し、友人帳を通して妖との縁も描かれていくというこのシリーズ、今作では容莉枝や椋雄との出会いがメインとなります。ただ容莉枝は祖母が中学のときにその町にいたわずかな期間、友達どころかまともに話したこともない人で、そんな関係の薄い人がその孫の顔を見て祖母を思い出し、しかもわざわざ家まで招いて思い出話をする、というのはかなり強引な設定じゃないかとは思いますが、それだけレイコさんのインパクトが強かったということですかね。まあそこら辺が失われつつあるコミュニケーションという感じではあって、心地よかったりくすぐったかったりもするのでしょう。おかげでレイコさんの出番も結構多いです。彼女もまた妖が見えることで人との関わりを絶ってしまったという経緯があるのでは、という視点がクローズアップされ、でも容莉枝を通して語られることでそれもちょっとした行き違いだったのかもしれない、という側面が描かれます。それにしても容莉枝宅の、和室に斬新な模様の襖と洋テーブルというビジュアルがなかなか個性的。切り絵を作る芸術家の感性ってことですかね。

また夏目のかつての級友だった結城という青年も出てきます。こちらは夏目の妖に対して宇宙人が見えるとか言いながら夏目に話しかけてきていた人物ですが、実際は宇宙人など見えていなかったということがラストに明かされます。そこまでしてでも夏目に関わろうとしてくれる人がいたということで、孤独だった少年時代でも実は気にかけてくれる人はいたのだという、過去を遡っての癒しがもたらされるわけですね。夏目と結城の関係は、レイコと容莉枝の関係と対になるように入れられたものでしょう。ただ結城は本編にはほぼ関わらないため、ちょっと付け足し感が大きいです。

それより大挙登場する既知のキャラの絡め方が上手いです。ニャンコ先生を探すためにタキや田沼が駆り出され、タキが記憶を失うことで今まで築き上げてきた友人たちとの関係が強調されます。さらに妖の関係で夏目の保護者である塔子と滋も関わってきます。分裂したニャンコ先生を預かるためにヒノエや中級の妖怪仲間も登場するし、暴れる妖を祓うため祓い屋の名取まで出てくるというお祭り感。ニャンコ先生に関しては、ちょっとバカにしただけの小者を斑に戻って脅すという大人げなさが可笑しい。斑の姿は終盤にも出てきますが、初見の人向けにあえて一度顔見せしてる感じですかね。そう言えば夏目が名前を返すシーンが2回出てくるのもそうかも。あのシーンは何度見てもなぜか少しドキドキします。あとニャンコ先生、三匹に分裂するというのが可愛らしいですが、これで喋れなくなることで妖の存在を夏目に伝えられないというリスクにもなっていますね。アイスの「シロクマ」が「シロネコ」に、焼酎の「獺祭」が「猫祭」になってるというお遊びがあるのも愉快。

夏目には祓い屋みたいな能力はないため妖怪とのバトル要素は負わせず、ただ気になるからと首を突っ込むことで話が転がります。戦いは復活したニャンコ先生が担ってくれるし、椋雄ことホノカゲが悪さをする妖ではないため不穏さは抑えめで、そのぶん人と妖の奇妙な関係を通して相手を思うことのドラマにフォーカスしています。関わった者が思う姿を写す妖であるホノカゲ自体、山の神と人を繋ぐという存在であることもあり、いつも以上に「繋がり」を描く物語なんですね。ホノカゲが最後に見せる本当の姿が鳳凰のようで美しく、大空へ去り行くのは寂し気ながらも晴れやかさがあります。

しかしまさかレイコさんがホノカゲの名前まで奪っていたとは……それも含めた様々な関係性を用いて、時間をも超越した「繋がり」がある、ということが本作のテーマと言えるでしょう。それは原作が中核に持つテーマでもあるので、重要な点をしっかり継承した映画化になっていますね。切り絵の隙間から何かを見ようとする容莉枝さん。そこには頼りなく儚いこの世にて、それでも確かに結ばれた縁が見えるのかもしれません。

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