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2018
10.02

祈りの届かぬ聖域で、少女は抗う。『死霊館のシスター』感想。

the_nun
The Nun / 2018年 アメリカ / 監督:コリン・ハーディ

あらすじ
銃は十字架より強し。



1952年、ルーマニアの修道院で見つかったシスターの自殺体。バチカンはこの事件の真相を究明するため、バーク神父と見習いシスターのアイリーンを派遣する。二人は遺体発見者のフレンチーと共に修道院に赴くが、そこには恐ろしい秘密が隠されていた……。心霊現象を描くホラー『死霊館』シリーズの新たなスピンオフ。

原題『The Nun(修道女)』が示すように、『死霊館 エンフィールド事件』にも登場した「悪魔のシスター」を描く、『アナベル 死霊館の人形』『アナベル 死霊人形の誕生』とはまた違う方向での前日譚。シリーズの時系列では最も古いものになります。神に仕える身でありながら自ら命を断ったシスターの死に疑惑をもったバチカンが、不可思議な現象を調査する「ミラクル・ハンター」のバーク神父と、まだ見習いのシスターであるアイリーンの二人を現地のルーマニアに送るものの、地元民からも忌み嫌われている修道院では恐ろしい事態が起こっていた、というお話。森の中の古くてデカい修道院で人知れず起こった惨劇、そこに派遣されるバチカンの悪霊バスターズ!というお膳立てがまずたまらんですね。バチカンにそういう役職があるというのも面白い。そして舞台が不気味な修道院だけでほぼ展開するのが怖いんですよ。昼間に見ても薄気味悪いし、安心できる場所がない完全アウェーなので常に緊張感を強いられます。そんなところに襲い来る、人の領域を超えた存在に恐怖します。

シリーズでおなじみエド&ロレインのウォーレン夫妻はアーカイブ映像のみの登場ですが、妻のロレインを演じたヴェラ・ファーミガの実の妹であるタイッサ・ファーミガが主演アイリーン役、というのが繋がりがあってイイ。『記憶探偵と鍵のかかった少女』でもそうでしたが、どこか世俗から浮いたような独特の雰囲気があります。アイリーンを従えて調査を行うベテランのミラクル・ハンター、バーク神父役は『エイリアン:コヴェナント』デミアン・ビチル。頼もしそうに見えながら実は意外とそうでもないという感じなんですが、これはまあね、相手が悪いですね。また二人に付き合って修道院に行くことになる村人フレンチー役に『エル ELLE』ジョナ・ブロケ、ただの女好きの若者なのに巻き添え食って大変です。

闇を蠢く謎のシスターや墓場に現れる異形の影といった映像におののくのはもちろん、思った以上に実体化する悪魔との肉弾バトルもある(マジか)、というのが予想外で愉快。キリスト教で悪霊と言えば当然悪魔が関わってくるわけですが、そこにとんでもない聖遺物まで出てきたりと、これでもかの工夫が怖面白い。それにしても神の施設や神に仕える者が怖いというのは、よく考えたら絶望的です。

↓以下、ネタバレ含む。








今までのシリーズでは舞台が民家というのが多かったんですが、今作の修道院は俯瞰ショットからもわかるようにかなり大きくて、どこまで奥に続いているのかよくわからないというのが怖い。これは建物の構造を把握させたうえでないはずのものがあったりする、というのとは異なるアプローチですね。建物も周囲のエリアも悪魔の支配下なので、逃げ場のない心許なさが倍増。恐怖表現としては、シリーズに共通する闇の使い方が相変わらずイヤーな感じですが、なかでも影しか見えない修道院長が不気味。闇の中に何かがいる、ではなくて、闇そのものが喋っているというのが新しい。また、誰もいないと思った修道院内になぜ蝋燭が灯いてるのかと疑問に思いましたが、まだ人がいたからなのかーと一旦は思います。でもあのシスターは憑依させないために自殺した最後の一人だったはずで、誰かいるのはおかしいわけですよ。この違和感による落ちつかなさ。そして突如わらわらと現れるシスターの群れ。この幻惑も結構怖い。

しかし頼りのバーク神父は男だからということで中に入れてもらえないし、挙げ句棺に生き埋めにされて鈴チリンチリンで必死だったり、悪魔憑きのダニエル君の幻影に悩まされたりと微妙に役に立ちません。頼むよミラクル・ハンター。頑張るのはもっぱらアイリーンなので、ベテランと若手のバディという側面はちょっと薄いのが残念ですね。アイリーンに粉かけようとするフレンチーも、よせばいいのにシスターを追って墓場まで行っちゃって怖い目に。引っこ抜いた墓の十字架を持ち歩いて助かるというのが笑えます。しかし後半になると思いの外派手な立ち回りでガンガン進み出すのが愉快。棒でブン殴ったりショットガンぶっ放したり、意外と物理が効くのね、というのがちょっと希望をもたらすんですよ。祈ってもしょうがない、と言うのは聖職者としてどうなんだとは思いますが、なんかホラーゲームみたいになってきて楽しいです。

でもじわじわと恐怖を煽る描写も良いんですよ。何週間も経ってるのに首吊り跡の血が乾いてない、どころか翌日は血の量が増えてるとか、アイリーンの背後の壁で十字架がゆっくり逆向きになっていくところとか、壁を影が移動してだんだん近付いてくるという『エンフィールド事件』方式もうわーきてるーという感じでヤダ味が凄い。そしてついに姿を現すラスボス、ヴァラク!顔が怖い!狂った領主がかつて呼び出した悪魔らしいということが何となく明かされますね。ヴァラクがシスターの格好をしてるのは元いたシスターに憑依したからってことなんでしょう。悪魔パワーで圧倒するヴァラクさんに悪霊バスターズも大ピンチ。いや全然バスターズってほど凄くないし命からがらって感じなので絶体絶命です。そこで出てくる聖遺物がレア中のレア、ランクSSの最強レベル退魔アイテム、キリストの血。血って!すげーな!聖水とかもう少し現実的なものがありそうなものですが、しかしこれが血という液体だからこその大逆転と絵的なインパクトを見せるわけです。色々と紙一重ですが最高です。

あと地味に怖いのが、まだ生涯誓願を立てていなかったアイリーンが、悪魔と対峙するために誓いを立てるということです。神に身も心も捧げる、それは今まで犠牲になってきたシスターたちと同じ存在になるということ。序盤でアイリーンは神の言葉を疑問視するような少女であることが描かれており、そのためシスターになる決心がつかなかったのでしょう。バチカンがなぜ彼女を選んだのかは明かされませんが、そんな神の道に背く者を信心させ、同時にいざというときの生贄になることも見越していたのだとしたら……と考えるとなかなか怖いですね。

しかし本当に犠牲になったのはシスター・アイリーンではなかったわけです。キリストの血により封印できたように見えたものの、その前にフレンチーに既に乗り移っていたのでしょう。フランス系カナダ人だ!とヴァラクにも強気に言い返していたフレンチーことモーリスでしたが、悪魔の罠にはまって憑依を許してしまったのですね。これがヴァラクがアメリカへと渡る契機になり、最後は『死霊館』シリーズへとしっかり繋がっていくのです。転んでもただでは起きないヴァラクさんのせいで恐怖は世界へと拡散し、シスターのシルエットはピエロなみの恐怖の対象となってしまいます。教会大迷惑。

というわけで、もはやスピンオフと言うより「死霊館ユニバース」とも言うべき拡がりを見せてきたこのシリーズ、きっとまだまだ続いていくことでしょう。悪霊バスターズの続きも期待したいところです。憑依されてるけどな!

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