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2018
09.21

進化した絶望とはぐれ者たちの生き様。『ザ・プレデター』感想。

The_Predator
The Predator / 2018年 アメリカ / 監督:シェーン・ブラック

あらすじ
ステルス装置は腹痛の元。



メキシコのジャングルで、墜落した宇宙船とそれに乗っていた異星人・プレデターに遭遇した特殊部隊員クイン・マッケナ。彼は事実を隠蔽しようとする政府に拘束されるが、秘密裏にプレデターの装具を自宅に送り届けていた。しかしマッケナの息子ローリーがその装置を起動させてしまったことで、プレデターに狙われることに……。『プレデター』シリーズの続編となるSFアクション。

1987年の1作目『プレデター』公開以来、『プレデター2』『エイリアンVSプレデター』『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』『プレデターズ』と続き、その戦闘能力と残虐性で地球人を恐怖のドン底に落とし続けてきた戦闘種族プレデター。そんな形を変えながら描かれてきた『プレデター』シリーズの正統な続編が本作です。宇宙船が墜落した現場に偶然居合わせた軍人のマッケナは、その宇宙船にあった装具を入手した際に姿の見えない謎の敵・プレデターに遭遇、やがてプレデターを研究する政府機関も絡み、入手した装具をたまたま手にしてしまったマッケナの息子・ローリーも巻き込まれて、激しい戦いへと突入していきます。いやもう、こいつはヤバい!アクションやエグさや奇妙なこだわりといった『プレデター』シリーズに期待するものはしっかり入っていますがそれだけではなく、最強プレデター相手に地球の半端者たちが見せる極上のチーム感であったり、あざとさ皆無な親子の絆であったり、野郎共と対等に渡り合う女性たちの強さといったさらなる多くの要素がガンガンぶち込まれているのです。これがとにかく面白い!

キャストには「あれ、この人はあの人では?」という人がいっぱいいて個人的に楽しいです。マッケナ役は『ラン・オールナイト』『誘拐の掟』、あと『LOGAN ローガン』の悪党役などで印象深いボイド・ホルブルック。ちょっとアウトローだけど頼れる感じがイカします。その息子ローリー役である『ルーム』『ワンダー 君は太陽』のジェイコブ・トレンブレイ君は相変わらず上手いしカワイイ。ネブラスカ役の『ムーンライト』トレバンテ・ローズは、クレイジーのウラにあるデキる男感に重みも加えていて良いですねえ。ケイシー役は『X-MEN:アポカリプス』のサイロックことオリビア・マンで、生物学者とは思えない活躍を見せます。ほか、リンチ役に『ジョン・ウィック』のドラ息子ことアルフィー・アレン、バクスリー役は似てると思ったら本人だった『パニッシャー』『ミスト』のトーマス・ジェーン、コイル役に『トゥモローランド』キーガン=マイケル・キー、ネトルズ役にアウグスト・アギレラ、トレーガー役に『ブラックパンサー』のウンジョブことスターリング・K・ブラウンらが出演。

監督は『アイアンマン3』『ナイスガイズ!』のシェーン・ブラック、脚本は『ロボコップ3』のフレッド・デッカーということで、オリジナルを踏襲しつつコミカルさやケレン味といった味付けが濃厚で、どこか80年代のアクション映画やSF映画を思わせる「細かい点はいいから面白くしよう」みたいな良い意味での大ざっぱさ(でも雑ではない)が痛快です。シェーン・ブラックは『プレデター』1作目に兵士役として出演もしてるので、そのイズムを身をもって引き継いでる感じがしますねえ。わりと躊躇なく殺すし、なかなか容赦なくグロい。それでいて笑えて泣けて熱くなるのが最高。随所で流れるプレデターのテーマにもアガります。シリーズ観てなくても楽しめることでしょう。最初から最後まで面白い!

↓以下、ネタバレ含む。








■プレデターらしさとその進化

追われる宇宙船が異次元ワープ、人工衛星を破壊しながら地球に近付き、タイトルどーん!という冒頭からイイんですよ。舞台はここ!地球!と言わんばかり。序盤はまさに『プレデター』1作目を彷彿とさせるジャングル、刻まれて吊られた死体、ステルス迷彩、というのがどんどん出てきて一気に引き込まれます。ジャングルというか森の中での攻防は終盤にも出てきますね。劇中トレーガーが「87年、97年にも地球にきた」と言うようにしっかりシリーズ続編というのも示しており、ラボには過去のプレデターの装具が飾られているし、研究の成果か「裏切者を追跡者が追ってきたのだ」という推理まで見せます。また以前の襲来以降プレデターの言語を解析し翻訳機まで作っていたり、プレデターの武器を使用したりと、人間も進化してるんですね。まあ結局敵わないんだけど……。ちなみにマッケナが手にするマスクは、それがマスクだとわかるように裏から光を当てて目の部分を強調するように撮られてるのが何気に親切。

今作に出てくるプレデターは2体ですが、どちらも以前地球に来たものとは異なっています。最初に来た「1号」には人間のDNAが組み込まれていることがわかり、ケイシーが「人間とヤったかどうかね」と言いますが(おかげでケイシーが除染室で裸のとき襲われるのではとヒヤヒヤした)、要するに奴らが他の遺伝子を組み込んで進化していることがここで示唆されます。1号の進化は、切った片腕でサムズアップして事なきを得る、という機転にも表れてますね(そうか?)。しかしこれも序の口、2号もとい「アルティメット・プレデター」に至っては、ケイシーいわく「各種遺伝子を取り揃えたって感じ」の進化体。1号を越えるデカさとパワーで、3.3メートルの巨体がのし歩くのはかなりの威圧感です。進化した個体だというのは、マスクを着用せずとも視界が真っ赤に染まらず、情報が視界に表示されることからもわかります。おかげでマスク姿がないというのは少々物足りない気もしますが……。また地球の翻訳機を即座に使いこなしたりと、ただの脳筋ではないのがまた厄介。

あとはプレデター犬も登場。デカい&銃が効かない、そしてドレッド(重要)という厄介な生き物で、でも頭を撃たれたせいか妙に人懐っこくなるという、ヤバいのかバカなのかよくわからないワンコです。ものを投げれば追いかけていくし、ケイシーがピンチのときに手榴弾を持ってきてくれるしと、本作のマスコット的存在(そうか?)。最後はトラックに閉じ込められるので生きてるのでは、と思いましたが、宇宙船の爆発に巻き込まれたようにも見えるので生死不明ですね。ローリーが校庭にいるとき普通の犬がやってきて、と思ったらプレデター犬に囲まれ、撃退したと思ったら1号登場、追い詰められたところで2号登場と、この学校でのシーケンスだけでどんどんスケールアップしていくのがたまりません。


■アウトロー感とコミカルさ

序盤、麻薬組織が人質を殺すかで賭ける、というところからして、マッケナが正義のヒーローではない言わばならず者であることを示します。マッケナと行動を共にする5人も、さっきまで護送されてた要カウンセリングのPTSDを抱える者たちであり、まともじゃないというレッテルを貼られています。マッケナ自身もこのユニットを「ルーニーズ」と呼ぶほど(「Loony=狂人」ってことかな?)。「気に入らない上司」である自分の頭を撃ったネブラスカ、味方の車を誤射したコイル、精神を病んだ吃音のバクスリー、聖書オタクのネトルズ、爆弾魔のリンチ。この心に傷を負ったはみ出し者たちが、ときに軽口を叩き合い、ときにビビりながらも最凶宇宙人に立ち向かう、という図式が熱いわけですよ。加えて、生物学者でありながら銃撃ちまくり、死地に飛び込みまくりという、もはやヒロインと言うより女戦士なケイシーも凄い。プレデターに飛び降りて頭を撃つとか普通しないよ?でもこの6人の軍人+博士が醸し出す濃いキャラのチーム感が最高なんですよ。「7人」という人数もイイ。実戦ではしっかりした戦力だし、「ヘリを手に入れろ」で本当に手に入れてくるルーニーズ、優秀です。

彼らの置かれた状況や心情を思えばもっと悲壮感や焦燥感が出そうなものですが、そこをコミカルに描くことで親近感が増し、キャラ立ちにも繋がっていきます。コミカルと言うかもう声出して笑うレベル。受け止めようとするのを中止されてバスから落ちるケイシーとか、ケイシーを撃とうとする兵士をバイクで吹っ飛ばすとか(しかも二回)、寝ているケイシーのまわりにコーヒー置いたりユニコーン置いたりとウロチョロするルーニーズとか。「ユニコーンか?」「ユニコーンだな」ってなぜユニコーンを置くんだ。ケイシーがショットガンを取るかどうかで賭けてたり、マッケナ妻の「演説」に対するそれぞれの反応が愉快だったり、ネトルズが音楽の趣味でケイシーを口説こうとするも完全スルーされたり、笑えるシーンは挙げればキリがないです。ラボでケイシーが「プレデター(捕食者)という名前はおかしい」と言うのに対し「でもイイだろ」と返すトレーガーと頷く所員たちも可笑しいし、ネブラスカたちも同じ指摘をするという重ねも面白い。この色々と重ねてくる場面が結構あって笑えます。でもコミカルなだけでなく、ルーニーズが過去の傷を見せる僅かなシーン、ネブラスカの撃った相手が帽子を取ることでわかるとか、コイルの誤射した車の生き残りがバクスリーであるといったシーンが、彼らにさらなる深みを与えてもいます。

マッケナの息子ローリーについても、複数のチェスの配置を全部覚えていることで端的にその天才っぷりを示したりします。大きい音が苦手であるとか発達障害であるとかありますが、演じるジェイコブ君がとにかく可愛いのでネブラスカもぞっこんですよ。それだけにローリーをいじめる二人組の少年が本当に憎たらしいんですが、ハロウィンでマスクが勝手に攻撃してド派手にブッ飛んだ後に二人を威嚇することで溜飲が下がりますね(このときのジェイコブ君もカワイイ)。久しぶりに会って「元気か」って言い合うのがプレデター犬とのバトル中であるとか、グータッチする姿とか、この親子のベタつかないけど大好き同士っていうのが微笑ましくて良いです。「無駄に殺したくない」と言うマッケナがついさっき殺した死体をローリーに指摘されるのも愉快。「期待通りに成長しなくてごめんなさい」と言うローリーが健気で泣きそうになりますが、それに対するマッケナの「俺も自分の期待通りに育ってない」という返しがまたグッときます。

他にも結構気の利いた台詞が多いんですよね。プレデターを追いかけるというマッケナへのネブラスカの「これはバスだ」とか、ヘリで追うときのマッケナの「俺たちは軍人だ、頭に銃弾が入ってても歩ける」という演説とか、マッケナ妻の「夫としてはダメだが優秀な軍人」というその場に適した評し方とか(この妻も強気でイイです)。ケイシーが髄液を調べたときに「プレデター界で何が起きてるかわかった」と言うのもね、プレデター界という響きが斬新です。


■戦いのスリルと熱さ

プレデター犬との戦い、学校内で迫りくる1号の重い足音、1号の顔面をパンチでカチ割り脊髄ごと頭を引っこ抜く2号、1号の船でのトレーガーたちとの銃撃戦、ジャングルでの2号との最終決戦と、バトルはどれもスリリング。ただアクションはちょっとカット割が激しくて、トレーガーがいつ脱落したのかハッキリしない(自分の装備で自分を撃った?)などわかりにくいところがあるのは気になります。気になると言えば他にも、人間に武器を託そうとした1号はなぜラボでその人間たちを皆殺しにしたのか、というのは謎。でもそれでこそプレデター!とアガってしまうところでもあるので、これは戦闘種族の本能だということで納得しましょう。またステルスボールをちょうどよくトイレで回収というのには都合よすぎて笑います。下から出すには結構デカいと思いますがよく出せたな。あと学校から逃げるとき犬(地球産の方)が追いかけてくるカットが入るけど、その後が描かれないのであの犬どうなったのか気になる……。

しかしそんな点も、エモーショナルが畳み掛けるクライマックスの前では些細なことですよ。2号の出現で、それまで争っていたマッケナたちとトレーガー陣営が生き延びるため即座に休戦、共に脱出を図ったり、「あとで決着を付けよう」みたいなのが熱い。そしてここまでにすっかり好感度が上がってしまっただけに、次々と散っていくルーニーズの喪失には打ちのめされます。致命傷を負いながらも信号弾を打ち上げて知らせるリンチ。囮になったコイルと、彼を守るため火だるまの2号に飛び付くバクスリー。瀕死の二人が互いが苦しまないよう同時にとどめを差すという、まさかのせつないブロマンスにはやられます。そして必死に付いてきたものの落ちていくネトルズ。マッケナとフォースフィールド越しに手を合わせ、笑いながらエンジンに飛び込んでいくネブラスカ。彼らが命を懸けるのは地球を守るためでも栄誉のためでもなく、ただバスに同乗した男の息子を救うためなのです。まさかプレデターで泣かされるとは思わなかったですよ。

それだけに、ケイシーが不意打ちをし、ローリーがフォースフィールドで片腕を切断して、その片腕の武器でマッケナが攻撃と、何の打合せもなく見事な連携を決める3人が激熱。たとえイカレ軍人とバトル学者と子供だけであっても、3人寄ればシュワルツェネッガーですよ。マッケナが「何者だ」と聞いときながら、2号がウガウガ言ったら即座に「うるせえ」つってトドメを刺すのも最高。そして「皆の遺品を埋めてやろう」と、仲間たちが死にっぱなしではなくちゃんと悼まれるというのがまた泣けます。


■定番と新機軸

マッケナたちは逃亡者と追跡者、そして彼らを捕らえようとする機関に巻き込まれたようなものですが、それでも息子を守るためや生き延びるために死力を尽くします。そのなかでの笑いあり、涙あり、ドラマありというのが実に大判振る舞いという感じなんですよ。微妙に編集でカットされてるのか、細かい点での描写不足や不自然な箇所はありますが、ゴア描写も躊躇しなかったり人が死にまくる頭の悪さもあったりしつつ、あらゆる娯楽を存分に注ぎ込んでテンポよく描ききっています。このおおらかさとサービス過多な感じが80年代エンターテインメントを思わせるんですよ。それでいて女性の描き方に性差を感じさせないといった現代的なところもあります。お約束がありつつ新しさもあると言えるでしょう。

ラストは昔のSFスリラーならさらなる絶望的な何かが出て終わる、あるいは何かが出てきたと思ったら気のせいだった、というパターンになりそうなところですが、これを「プレデター・キラー」という新たな展開を期待させるものまで出してくるところに「まだやってくれるか!」と嬉しくなっちゃんですよ。「サイズがあえばいいが」という粋な台詞で締めるのもクール。これはもう過去と現代のハイブリッドと言っていいでしょう。最高でした。

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