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2018
09.12

愛と復讐のリインカーネーション。『マガディーラ 勇者転生』感想。

Magadheera
Magadheera / 2009年 インド / 監督:S・S・ラージャマウリ

あらすじ
ディーラ!



インドのハイデラバードでバイクレーサーをしているハルシャは、町で偶然ある女性の手に触れた瞬間、不思議な記憶が頭に浮かぶ。それは400年前、愛するミトラ姫を失い自身も命を落とした戦士バイラヴァの記憶だった……。『バーフバリ』2部作のS・S・ラージャマウリ監督によるスペクタクル・ラブストーリー。

ハエが主人公という奇抜なアクション・コメディ『マッキー』や、2017~2018年に日本でも公開され大ヒットとなった『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』のS・S・ラージャマウリ監督が、それらの作品の前に撮ったのが本作。1609年、インドのウダイガル王国の近衛軍にして、伝説的な戦士バイラヴァ。彼は軍の司令官であるラナデーヴの陰謀によって愛するミトラ姫と共に非業の死を遂げます。それから400年後、ハイデラバードの青年ハルシャは、たまたま手が触れ合った女性に運命的なものを感じ、その女性インドゥを探し求めることに。冒頭からして「そこからそうくるの!?」という意外性で始まるんですが、それはまだ序の口。インド映画らしい陽気なダンスとコミカルなラブストーリーが、途中から怒涛のアクションと想像を越えた激愛の物語へと変貌する、というのに驚かされます。ライトなところもあればシリアスなところもある、そのどちらもひっくるめて面白い娯楽作。

ハルシャ役のラーム・チャランは現代的な若者と精悍な戦士の両面を体現しており、ダンスのキレは素晴らしくアクションも見事にこなしていて、スター感抜群。ヒロインとなるインドゥ役のカージャル・アグルワールもまたキュートな魅力と王族のような気品に満ち溢れ、要するに超可愛いです。インドゥの従兄弟であるラグヴィール役のデヴ・ギルはギラついた目に狂気を感じさせて、漲る危なさが実に悪役。あとスリハリの演じるソロモンという人物がイイですね。他にも謎の祈祷師のおっさんとか、おっぱいで男共を石に変える謎の女とかも登場します(謎ではない)。

他にも謎の海底水路とか謎の天体現象とか若干ショボいところはありますが、そんなのは些細なこと。輪廻を経て愛を取り戻し復讐を果たす愛憎の物語を、時を越えた一大歴史叙事詩のスケールに乗せる、というのがスゴいんですよ。本作がラージャマウリ監督の『マッキー』と『バーフバリ』に繋がっていくというのがよくわかります。この設定でしっかりまとまっていて、なおかつ面白いという結構奇跡的な出来。ちなみにこの日本公開版は監督自らが編集したディレクターズカット版で、本来より20分ほどカットされてるそうです。本来のバージョンも観てみたい!と思わされます。

↓以下、ネタバレ含む。








始まりは何かを数える謎の声。これは後に百人斬りのカウントだと知れるわけですが、この時点では何か壮絶なことが起こっている、としかわかりません。そして時代がかった男女が崖から落ちていき、手を触れようとするも叶わない。この悲劇的な幕開けからどう展開するのかと思いきや、時は一気に飛び400年後。400年!?と驚く間もなくバイクでドーン!ですよ。この呆気にとられる冒頭だけで面白い。本作は要するに「転生」を描く話なわけですが、過去と現在の落差が激しいのが一つの見所であり、それでいて過去と現在それぞれに通じるものを見せることでその落差を詰めていく作りにもなってるんですね。『マッキー』のテイストから突然『バーフバリ』に変わり、また現代に戻ってそれが融合していく。輪廻転生により悲恋と謀殺の双方にリベンジするという、『バーフバリ』のような空間や人数によるスケールとはまた違う、時を越えるというスケールが壮大です。

前半の現代パートは、バイクレーサーのハルシャが見せる凄い体勢でバーを飛び越すバイク妙技といったアクションもありますが、むしろダンスシーンが印象的。ラーム・チャランがまたダンスが上手いんですよ。序盤の掛け金パクったメンドリさんを追うダンスシーンなんて結構長いんですが、群舞やペアの陽気なダンスに工夫が多くて飽きさせません。このメンドリさんが見事なおっぱいで(中略)またハルシャを追ってきたインドゥが試験をほっぽって踊る遺跡でのダンスシーンはせめぎあう男女の感じが良いですね。そしてコミカルなシーンが多いのも前半の特徴で、インドゥが素性を隠してハルシャを振り回すところとかくどいけど微笑ましいし、ハルシャの指がなかなかインドゥに触れないというのもやきもきさせるし、ハルシャのTシャツがいちいちインパクトスゴいし(拳銃柄のまさかの利用法!)、あと関係ないけどインドゥの友達のメガネっ娘も可愛いです。でもそのなかでハルシャがセクハラのチンピラたちをとっちめたり、馬は乗れないと言う伏線を馬でバスを追うというロマンティックな形で回収したりと、インドゥが「好きー」って歌っちゃうのも納得のカッコよさですよ。

一方でインドゥの従兄弟であるラグヴィールの悪党っぷりも並行して描かれます。「欲しいものは必ず手に入れる」というのを有言実行、邪魔なやつはヤリ投げてズバッと殺すし、自分の父親までをサクッと殺すのには驚くし、インドゥの父親を殺してハルシャに罪を被せようとするのも非道。イヤひどいなコイツ。ゴーラという祈祷師的な謎のおっさん(ホント謎)から転生のことを聞き、インドゥを手に入れハルシャを亡き者にしようと画策する姿が、そのまま過去のラナデーヴの姿に重なっていきます。徹底して悪役に描くのでわかりやすいですね。ハルシャとの対峙では「鳥が飛び立ち、空が黒く覆われる」という予言がまんま再現される仰々しさがちょっと可笑しいですが、それでも運命の対決!みたいな雰囲気で盛り上がりますよ。惑星集合という凄い設定で本当に星が動くというのはさすがにスゲーな!となりましたが。

後半の過去パートでは一転してシリアスな展開が続きます。無敵の英雄ヴァイラバと密かに(でもないけど)惹かれあうミトラ姫、そしてそんな二人を睨み付けるラナデーヴ。このじっとりした目が陰惨でイイ。ラナデーヴが「死への扉を開いてやる」と凄んだら、逆にヴァイラバが扉を開いて追い出す、という二人の対立の描き方もスリリングです。馬車競争でのラナデーヴの策略も卑劣ですが、そこで見事に逆転するヴァイラバがヒーロー然としていてイカすんですよねえ。しかしミトラの父王がハルシャの家系は皆30歳で死ぬから娘が寡婦になるの嫌だーとか超ネガティブなことをぬかしたり、追放されたラナデーヴが侵略者シェール・カーンと組んで攻め入ってきたりしていきなり絶体絶命。そこで最大の見せ場となる百人斬りですよ。左右が崖の細い道という特異なフィールドで、次々襲いくる兵士をなぎ倒すヴァイラバの勇姿、それをカメラの寄りによる迫力と引きによる高低差を組み合わせ、冒頭にもあったキルカウントで緊張感と高揚感を高める、というアクションは見事です。シェール・カーンがヴァイラバの強さを讃えてその死を悼むという男気を見せるのもイイ。まさかソロモンとして現代パートにも出てくるとは思わなかったですが。

気になる点を挙げるなら、ヴァイラバの無敵っぷりを描くエピソードが少ないのでちょっとばかり無双感に欠けるというのはありますかね。十分強いんだけどもう少し見たかったと言うか。またハルシャがヘリから落ちた後どれだけ流されたのかわかりにくく、途中なにか海底トンネルみたいなのを通るところの移動が雑だったりもします。あと一部ピントがボケボケのシーンがあったと思うんですが、あれは何なんだろう?とは言えそれらは許容範囲ではあります。

インドゥの記憶回復は最後まで引っ張りますが、かつてミトラが描いた魂の絵により記憶が蘇る、という予想を越えてドラマティックな演出にはシビれます。こうして転生した者が揃ってのクライマックスは、400年前と同じピンチに陥った末に、ヘリを落とすという現代ならではのスペクタクル、そして過去とは逆に落ちていくラグヴィールと超熱い。ラストは崖の上でいちゃつくという、それまでの死闘は何だったのかというライトなテイストに戻って終わるのもね、さっぱりしてて良いですよ。キャスト・スタッフが総出で踊りまくるエンドロールも楽しい。気軽さと重厚さを兼ね備え、運命に打ち勝つという大逆転劇を描き出す、実に痛快な一本です。

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