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2018
09.06

小さな体と優しい世界。『アントマン&ワスプ』感想。

Ant-Man_and_the_Wasp
Ant-Man and the Wasp / 2018年 アメリカ / 監督:ペイトン・リード

あらすじ
おっきくなっちゃった!



シビル・ウォーから2年、FBI監視下で自宅軟禁のアントマンことスコットだったが、そこにハンク・ピム博士と娘のホープが現れてある計画に協力するよう言われる。そんななか彼らの前に博士の研究成果を奪おうとする、壁をすり抜ける謎の敵ゴーストが現れ……。ヒーロー・アクション『アントマン』のシリーズ第2弾。監督は前作に続きペイトン・リード。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)も本作で20作目!前作『アントマン』では、元泥棒のバツイチ男スコット・ラングが体長1.5センチに小さくなれるヒーロー、アントマンとなるまでが描かれました。その後アントマンは『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』でキャップ側に付いて文字通り「大」活躍、しかし結果的に取っ捕まり、今はFBIの監視下で自宅軟禁状態、というところから物語は始まります。本作はどういうタイミングを描くのかと思っていたら、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の間の出来事なんですね。なので『インフィニティ・ウォー』以降の話ではないのですが、そこに関係してきそうな要素も含まれてはいます。

でもその辺りは一旦脇に置いてOK!とにかく楽しい!アントマン独自のちっちゃくなったりでっかくなったりというサイズチェンジ・アクションが工夫満点で、もうそれだけで愉快。小さくなるだけじゃない、というのが前作からさらに幅のある動きと意外性を生み出しています。また今作ではタイトルからもわかるように、アントマンだけでなく同じく伸縮自在なスズメバチ型のヒーロー・ワスプも登場、コンビによる連携技というバリエーションもあるのがまた楽しい。そして何でもすり抜けちゃう謎の敵ゴースト、ピム博士の研究成果を狙う闇商人ソニーなどが絡み、三つ巴の対立が描かれていきます。

アントマンことスコット・ラング役は『ウォールフラワー』ポール・ラッド。飄々とした雰囲気が馴染みやすいんですが、MCUの中でも最もコメディ寄りな資質を活かした素晴らしい演技は見所。脱いだら意外とバッキバキなボディなのは驚きです。前作のヒロインで今回はスーツを着てワスプとなるホープ・ヴァン・ダイン役は『リアル・スティール』エヴァンジェリン・リリー。強く賢く美しいホープが、アントマンを食うほどのヒーローとして遂に本気を見せます。前作同様ハンク・ピム博士役を演じるマイケル・ダグラスも予想以上に見せ場があるんですが、今作はその妻でホープの母、ジャネット・ヴァン・ダインも登場。演じるはなんと『バットマン リターンズ』のキャットウーマン以来のヒーロー映画出演となるミシェル・ファイファーですよ!他にも『レディ・プレイヤー1』のハナ・ジョン=カーメン、『メイズ・ランナー 最期の迷宮』のウォルトン・ゴギンズ、そしてローレンス・フィッシュバーンが『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』などDC映画に続きMCUにまで出てしまうという快挙。もちろんみんな大好きルイスこと『ホース・ソルジャー』マイケル・ペ~ニャも大活躍だぞ。

そんな面子がひたすらドタバタするという、サノスを巡る戦いに比べればかなり小規模な話ではあるんですが、『インフィニティ・ウォー』直後にはそこがイイのです。何と言うか、スゴくちょうどいい。世界を守るための話でもヴィランと戦う話でもなくて、ただ「救う」ための物語。愉快で爽快で心地よい。『CW』と『IW』の間としてこういう匙加減の話を入れてくるMCUのバランスの良さですよ。満足です!

↓以下、ネタバレ含む。








■小さく大きく

ホープことワスプが良いんですよ。基本能力はアントマンと同様ながら、羽があることによる空中戦や、何でもサイズチェンジさせるブラスターで自分以外のものを利用するといったバリエーションが加わり、アクションに幅が出ています。それを使いこなすホープというキャラの有能さも素敵。エヴァンジェリン・リリーは前作でもスコットを鍛える際にキレのある動きを披露していましたが、今作は出番も倍僧して実に頼もしい。それに引き換えアントマンは、サイズ変化できなかったり変な大きさになったりと、スコットの性質を反映したかのようにスーツがポンコツ化。でもこれが笑いに繋がっていて、なかなか小さくならないことによる間の取り方とか、半端にデカくなって部屋にぎゅうぎゅうとか、愉快です。子供サイズになって学校を走り回ったりするのには、エヴァンジェリン・リリーが一緒なだけに『ホビット』シリーズを思い出しますよ。また、ワスプにないアントマンならではの見せ場が巨大化。トラックをキックボードみたいに使ったり、『シビル・ウォー』を越える20メートルの大きさで怪獣映画にしちゃったりと楽しいです。

塩の瓶やらペッツやら様々なものがサイズチェンジしますが、特に車を使った見せ場が面白い。小さくなって他の車の下を走ったり、そのまま大きくなって吹っ飛ばしたり。サンフランシスコの坂道を活用しまくったカーチェイスは、サイズの他に高低差まで加わってスリリングです。また、前作のトーマス・プラレールに続き今作はまるでトミカという様々な車種が丸い容器にズラッと並べられて、これが全部乗れる、というのにワクワクするんですよ。ちなみに今回のスタン・リーは車をちっちゃくされちゃって思わず昔のヤンチャぶりを明かすご老体。お元気そうでなにより。あとはラボですね。あんなでかいビルをそのまま小さくしたら超精密なジオラマができるな!とこれまたワクワク。奪い合ったりブン投げられたりと乱雑に扱われすぎてて中は大丈夫なのかというのが気になりますが、なぜか大丈夫!なぜだ!内装はしっかり固定されてるのだなたぶん!ラボを小さくしたら警官に囲まれてた、という演出も愉快。

そこにエイヴァことゴーストのフェージングによるすり抜けアクションが加わるのも面白いです。フェージングは原子の結び付きが不安定になって起こるらしいですが、この設定が上手く量子世界とも結びつくわけですね。画像が乱れるような映像表現も良いです。映像表現という点で言うなら、若きマイケル・ダグラスとミシェル・ファイファーが共演してる、という絵面がなんとも豪勢で、若返り描写のCG技術スゴいな!となるんですが、ローレンス・フィッシュバーンの若い頃はCGではなく息子のラングストン・フィッシュバーンをメイクで似せてるんだそうで、それも驚き。また前作で出てきた量子世界を今回はさらに奥深いところまで進んでいき、不気味ながら美しい、そして息苦しく感じる情景を見せてくれます。


■普通の人々

スコット・ラングは娘のために家に秘宝探索アドベンチャーを作ってしまうという高すぎる娘ラブ度、そしてうっかり敷地外に足出して通報というスットコドッコイ度が相変わらず愉快です。こうして見ると、スコットは体技や泥棒の腕などの技術はあるものの、MCU主人公の中では最も普通の男なんですね。ポール・ラッドの親しみやすさも効いているわけですが、今回はそのコメディ演技の良さもさらに炸裂。序盤の気絶するときにスプーン持ったままの倒れ方とか絶品だし、何と言ってもジャネットがスコットに乗り移っちゃうシーンでは本当に妻であり母に見えてくるんですよ。笑えるけど感動的、でも笑えるという、『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』でJKにしか見えなかったジャック・ブラックや『君の名は。』で中身女子にしか思えなかった神木君に匹敵する素晴らしさ。

スコットの周囲の人々もヒーロー映画とは思えない普通の人たち、でもちょっとヘンというのが揃っていて、それがこのシリーズの味になっています。その筆頭がマイケル・ペ~ニャのルイス、前作でも見せた「そこから話すんかい」の話術を、とっ捕まって命ヤバいというときにかますのが最高。仲間二人も交えた三バカの自白剤ネタには爆笑です。スコットの娘のキャシーちゃんはちょっと成長してさらにキュートになりましたが、ジャイアントマンの映像を見て一人ニヤニヤしてるのが可愛い。ボビー・カナベイルの演じる元妻の新夫がいちいちハグしてくるのも笑えるし、ジミー・ウーの演じるバーク捜査官が食事の誘いを真に受けるのも笑えるし、ウォルトン・ゴギンズの演じるソニーは髪型からして面白すぎて笑えます。あと人じゃないけど忘れちゃいけないアリさんたち、ピム博士のラボで黙々と働くまさに働きアリな勤勉さですが、あれに囲まれるとさすがに怖い。スコットによるアリの命名も愉快すぎます。特にアントニオ・バンデラスね!そのまさかの末路には涙を禁じ得ません。頑張れバンデラス!


■優しい世界

今作ではピム博士の妻でありホープの母であるジャネットを量子世界から救おうとするスコットたち、父の実験の結果被ったフェージング体質を治そうとするゴーストたち、ピム博士の研究成果で一儲けしたいソニーたちの三つ巴の争いとなります。はたから見れば小型化ラボの奪い合いなのでこじんまりとしたものですが、ピムやホープ、ゴーストにとっては非常に重要な目的です。ソニーにとってもデカい商売なので必死なんでしょう。そんななかでスコットだけは自分以外のために動いています。彼にしてみれば家に帰って無事に監視期間を終えたいし、娘のキャシーちゃんと遊びたいわけですが、シビル・ウォーの負い目があるとはいえホープたちのためにいつの間にか一肌脱いでいる、という優しさがスコットらしいところです(ホープに惹かれてるというのもあるけど)。他人のことを気にかけ、いつの間にか包んでしまうスコット。アントマンの小さくなり大きくもなる特徴は、細かい機微と大らかさを持つスコットにも重なります。

敵となるビル・フォスターも最初はピム博士と対立するするものの、エイヴァがスコットの娘をさらうことだけはやめさせます。それは彼女に人としての一線を越えさせないための優しさ。最後に一緒に逃げると言い張るときの力強くも優しい目には、エイヴァはもう大丈夫だという確信をも抱かせます。そして量子世界に30年閉じ込められながら、戻ってすぐさまエイヴァを治すジャネット。体が引きちぎられるようだと言っていたエイヴァを救うのは、ジャネットの無償の優しさです。思えばソニーのような悪党は出てくるものの、世界を破壊するだとか大量虐殺するだとかのいかにもなヴィランはいないんですね。戦うのは救うためであり、救う者を守るためであり、さらに戦った者をも救い出す。そして怪我人はいたかもですが、結局は誰も死んでない、という優しさある世界。これがアントマンたちには実に似つかわしいのです。それでいて前作に負けない見事な冒険活劇。エンドクレジットのフィギュアとミニチュアも世界観にピッタリで最高!大きさの変わるヒーローの物語は、ジャストサイズの面白さでした。

しかしエンドタイトルの直後、楽しかった時間は無情にも一気に覆されることに……。『インフィニティ・ウォー』で味わった悲劇がまさかこのタイミングで再現されるとは、うわー!って声出ちゃうところでしたよ。面白要素だったドラムを叩くアリも最後は何だかせつなく映るし。「アントマンとワスプは帰ってくる?」と疑問形だし……。しかしこれは『アベンジャーズ4』への重要な布石となるシーンであるのは間違いありません。スコットが消えずに残っているのが量子世界であるということ、ジャネットの言った「時間の渦」という言葉。時間軸が『インフィニティ・ウォー』の最後と重なったというタイミングもあり、ドクター・ストレンジが言った「一つだけの勝利の道」に何か関係してくるものと思われます。つまりこのラストは悲しむべき悲劇というより、新たに示された希望と取るべき!アントマンの帰りを待ちましょう!

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