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2018
08.21

受け継ぐのは平和の象徴。『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE 2人の英雄』感想。

hero_academy
2018年 日本 / 監督:長崎健司

あらすじ
私が来た!



オールマイトと共に巨大な人工都市I・アイランドにやってきたデクこと緑谷出久。そこではヒーローのアイテムや個性の研究成果を展示するI・エキスポが開催されようとしていた。かつての自分と同じく「無個性」な少女メリッサと出会い一緒にエキスポを楽しんでいたデクだったが、警備システムがヴィランにハッキングされ、島内の人々が人質になってしまう……。堀越耕平による同名コミックのアニメ劇場版。

総人口の約8割が超常能力「個性」を持つようになった超人世界で「個性」を活かしたヒーローという職業が存在する社会を舞台とした「週刊少年ジャンプ」連載のコミック『僕のヒーローアカデミア』、通称『ヒロアカ』の初の劇場版。原作は、誰よりもヒーローに憧れながら特殊能力「個性」を持たない「無個性」の少年デクこと緑谷出久が、ナンバーワンヒーローのオールマイトに見出されヒーロー輩出の名門校・雄英高校に入学してヒーローを目指していくという話です。この劇場版は原作の期末試験後から夏休みの林間合宿前の間、テレビアニメ版だと第2期と第3期の間に当たる期間の物語とのこと。巨大な人口島に遊びに来ていたデクたちが、ヴィランによるある計画に出くわしてしまい、頼みのオールマイトも拘束されて大ピンチ。デクは島に来ていた雄英のクラスメイトたちとこの危機に立ち向かいます。初の劇場版ということもあってか原作の概要も冒頭で語られ、個性と無個性、受け継いだ力、守るというヒーロー性など原作の要素をふんだんに、かつわかりやすく取り込んでおり、原作ファン満足、原作知らなくても楽しめるという配慮に感心。それぞれのキャラの見せ場もちゃんとあり、製作ボンズということでアクションの迫力も言うことなし、という作りになっています。

作者の堀越耕平自らが総監修とキャラクターデザインを担当、監督もキャストもアニメ版と同じということで地続き感は非常に高いです。ゲストキャラとして、オールマイトのかつてのバディであるデヴィット、その娘メリッサが登場、それぞれの声を生瀬勝久、志田未来が当てています。ヴィランであるウォルフラムの声は小山力也だ!主題歌は菅田将暉、なぜかお笑いの千鳥が登場、キャラたちがドレスアップしていつもと違う衣装で戦う、ついでに入場者には0巻プレゼントなど、ジャンプアニメの劇場版らしいサービス的なものが色々入ってます。クラスメイトたちも結局みんな出てくるというサービス精神だし、そして何気に(たぶん)初めてなあの2人の共闘も熱い。

あえて文句を言うなら、金髪爆乳メガネっ子美少女であるメリッサが、後半はメガネ取っちゃうところですかね!……まあそれもクラーク・ケント的だと思えばヒーローものっぽいと言えなくもないですが……。新たな舞台で新キャラや新ヴィランを出しつつ、レギュラーキャラもそれぞれの活躍を描き、それを96分にまとめるというのはなかなか鮮やかじゃないでしょうか。これ一本で『ヒロアカ』の概要もつかめて入門編としても最適なので、そもそもの設定さえ気にならなければ劇場版としては及第点では。ヒーローとは何か、みたいなのが好きな人にはたまらんと思います。

↓以下、ネタバレ含む。








というわけでまあ面白かったんですけど、正直そつなくまとめたなという印象。I・アイランドという舞台に限定したことでキャラも動かしやすいし、セキュリティルームまで辿り着くという道筋を決めることで途中様々なバトルを盛り込めるし、ナンバーワンヒーローであるオールマイトは拘束&人質で脅すことで動けなくしておき、生徒たちが自分で何とかする方向に持っていく。I・アイランドの世界中の科学者を一ヶ所に集めるというのはリスクでしかないと思うし、ハッキングされて身動きが取れなくなるというのもよくあるやつですが、とは言えわかりやすさという点で非常に効果的。オールマイトが招待されたからデクも一緒に来たのに結局クラスメイトたちが全員やってきてるというのがよくわかりませんが、ちゃんとみんな登場してるのが公平ですね(実際は台詞がなくてホントに顔見せだけの人もいますが)。

劇場版ならではという点で特筆すべきは、オールマイトの過去に触れているところでしょう。学生時代をアメリカで過ごしていた、デイヴというサポート役の相棒がいた、若いときは目があった(劇画顔じゃなかった)、などスペシャル感が強いです。そこにかつての傷が元で力が衰えてきたことも示したり、その元凶であるオール・フォー・ワンまで登場させたりと、原作の内容もしっかり入れ込んでいます。さらにはヒーローを支える者が平和の象徴を守るために犯した過ち、というものが話の根幹として浮かび上がってきます。というようにかなりオールマイトを中心とした話なんですが、そのオールマイトが中盤全く動けないことでデクが後継者としての気概を見せて活躍し、最後は皆でデクとオールマイトの共闘を応援するのに泣かされ、ダブルアタックという熱さに持っていきます。

ヴィランの能力は金属を操る、空間を削る、ハルク的怪力といった適度に強く映像的にも派手なのを揃えて見せます。あとは爆豪と轟といったあまり見ない組合せで暴れたり、峰田のくっつく能力が超役に立ったり、上鳴がウェーイになったり飯田君がウザかったり八百万がエロかったりといったキャラ描写で魅せます。個人的には耳郎の出番が多いのが嬉しく、梅雨ちゃんの出番が少ないのは残念。UNOやってるし。爆豪なんかは普段絶対見せないちょいデレまで出しちゃってお祭り感をアップ。タイトルの「2人の英雄」とはかつてのオールマイトとデイヴのことであり、現在のオールマイトとデクのこと、そしてデイヴが二人を重ねて見るところまで描くという、まさに受け継がれたワン・フォー・オールという話に結び付ける。いやもう未読の人まで原作を読みたくなるような導入としてはこれ以上ない作りでしょう。僕は原作14巻で読むの止まってましたが再開したくなりましたからね。そもそも原作の泣きポイントをまとめた序盤で泣けます。

ということで非常にテクニカルな作りですが、そこがそつなくまとめているなあと思うところでもあるんですよ。原作でやっていることを繰り返しているだけではあるので物語的には目新しさは薄く、あくまでスポットという印象は残ります。あと元々デクたちは「ヒーローになりたい」から雄英高校に入っているわけで、行動の結果ヒーローになるのではなくヒーローだから行動する、というのはあって、そこが本来のヒーロー映画とは微妙に異なる点でもあります。これは『ヒロアカ』に限らず『TIGER & BUNNY』などにも見られる特徴ですが、『タイバニ』は仕事としてヒーローをやると割りきっているからいいものの、『ヒロアカ』はまだ学生であり、正義とは何か?みたいな問い掛けもあったりと、行動原理がちょっと不安定という気がしなくもないかなあ……ってちょっと話がそれました。

ただ『ヒロアカ』はむしろ若者の成長譚という側面の方が強いと思うので、本作では力があるのに何もしないのか、できることをやるんだ、と校則より行動を選ぶヒーロー候補生たちと、無個性でも正義に貢献できるんだ、というメリッサらの思いがクライマックスに結び付くので、これはこれで一つの形としてはありでしょう。まあ人気作なのでまた映画化はされるだろうし、そのときはもっと尖った話もありうるので、今後どういったプルス・ウルトラが描かれるのか楽しみにしたいところです。

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