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2018
08.16

ヒーロー家族、チームアップ!『インクレディブル・ファミリー』感想。

Incredibles_2
Incredibles 2 / 2018年 アメリカ / 監督:ブラッド・バード

あらすじ
赤子、覚醒。



かつてヒーローとして活躍していたが今はヒーロー活動禁止法により普通の日常を余儀なくされているボブたちヒーロー一家。しかしヒーロー復権を賭けて母ヘレンがイラスティガールとしてヒーロー活動をすることになり、代わりに家事と育児をすることになったボブは子供たちの世話に苦心する。そんななか新たな敵が現れ……。『Mr.インクレディブル』の14年ぶりの続編となるピクサー製作ヒーロー・アニメ。

第77回アカデミー長編アニメ映画賞を受賞した『Mr.インクレディブル』に14年経って続編登場。しかも前作の直後から話が始まります。地中から現れたアンダーマイナーを止めるべく奮闘するインクレディブル・ファミリーことパー家だったが、ヒーロー活動禁止法のために逆に警察に捕まることに。そんな彼らの前に巨大企業デブテックを率いる実業家ディヴァーが現れ、ヒーロー復権の手助けをしたいと申し出ます。彼の要望はまずイラスティガールこと一家の母ヘレンが活躍を見せること。そのためMr.インクレディブルことボブが家のことを任されることに。慣れない家事育児への悩みや、子が育つ驚き、仕事でのびのび(ダブルミーニング)な妻への嫉妬など、前作以上にヒーロー家族の苦悩や絆を掘り下げつつ、畳み掛けるスピードと迫力とアイデア豊富なアクションが実にエキサイティング。前作に劣らぬ面白さです。

監督・脚本は前作に引き続き『アイアン・ジャイアント』『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』のブラッド・バードなので、計算された画作りと盛り上げ方、そして物語の面白さは抜群。声優陣もMr.インクレディブルことボブ役のクレイグ・T・ネルソン、イラスティガールことヘレン役のホリー・ハンターなどが前作から続投。フロゾン役がサミュエル・L・ジャクソンというのが声ですぐわかって「フューリーだ!」ってなるんですが、よく考えたら前作は『アイアンマン』より前なんですよね。他にも新たなヒーローたちが登場したり、まだ赤ん坊の末っ子ジャックジャックがとんでもないパワーを見せたりと、多くのキャラが魅せてくれます。

物語は前作よりスケールアップし、ヒーローの必要性や功罪という点にまで踏み込んでいて意欲的です。さらに働く妻と家事をする夫という夫婦から見えてくる現代の男女の在り方や固執というもの。そして家族で戦うことがカッコいいんだ、というてらいのなさ。色々詰め込みながら見事なまとめ方はさすがのピクサー、そしてブラッド・バード。エンドロールは必聴!

ちなみに本編前の短編は『Bao』。命が宿った中華まんを育てるという話ですが、もしやと思ったら本当にやる終盤の展開が秀逸。ただ主人公をずっと青年(男)だと思って観てたので最初は混乱……よく考えたらあれ、おかんだ。ピアスしてた。

↓以下、ネタバレ含む。








■アイデア満載のアクション

アクションはヒーローの能力を最大限活かすように描かれており、特にイラスティガールは、伸びる手足で遠くのものを掴むのはもちろん、パラシュート代わりに体を広げたり、ウイングスーツのように滑空したりと、ゴムアクションのバラエティが練りに練っていて驚きの連続。『ファンタスティック・フォー』のMr.ファンタスティックとか某海賊王になる人とはまた違った工夫に富んだ見せ方です。何といっても専用バイクのイラスティサイクル、前後に分かれて自在に操り、後輪を振り子のように振って勢い付けて飛ぶなど、イラスティガールにしか扱えないビークルなのが最高です。ヴァイオレットについてはバリアで防御するだけでなく、バリアで穴を広げる、落下時のクッション代わりに使う、敵が攻撃した瞬間バリアに閉じ込めて自滅させるなど、これまたアイデア満載。フロゾンは氷を使ってのモノレール誘導や子供たちを逃がすための戦いなど要所要所でブッ込んできますが、一番見事なのはジャックジャックにおやつ代わりの氷の塊を作るところですよ。あれには感心。新参組ではヴォイドの時空穴開け能力、『X-MEN:フューチャー&パスト』にも見られた能力ですがさらに工夫があって愉快。

ただ、ダッシュは前作のような速さを活かした活躍は若干少なめ。水上も走れるんだから海でもっと何かやれたんじゃないかなとは思いますが、そのぶん実生活でのコミカルさに振ったというところでしょうか。またMr.インクレディブルは基本怪力だけなので、大体何か巨大なものを動かしたり壊したり、というのに終始。どうしてもトリッキーな能力の方が絵的に面白いというのもあってか、アクション的には今回ちょっと地味めです。まあボブは被害額が多いからなあ、しょうがないかなあ。でも観てる間はそんなに出番に差があるという感じもしなかったですよ。単独で動いているときのイラスティガールは別として、カメラの切替やキャラ間の連携、会話のやり取りなどをテンポよく回しバランスよく撮りわけることによって、十分なチーム感を得ているからでしょう。これが抜群に上手い。あ、ジャックジャックは大活躍ですね。対アライグマ戦でのこれでもかという才能の開花、でも赤ん坊なので本能の赴くまま、というのがヤバイです。いやホントにヤバイなこの子。

不満を挙げるなら、イヴリンの催眠術はメガネを外せばすぐ解けてしまうというのが手軽すぎるがために、この計画がリスキーで杜撰に思えてしまうところです。外せば勝ち、というのはテンポ重視の結果だろうとは思うし、助けが来ることが想定外だったというのもあるんでしょうけどね。あと冒頭のモグラマシンとラストの水中翼船、最後に止めるのがどちらもフロゾンというのはもうちょっと捻ってほしかったところ。そう言えば暴走列車にヘリに飛行機と、大きな見せ場は大体乗り物を止めてばかりですが、これは『スーパーマン リターンズ』から『スパイダーマン2』『アイアンマン3』『スパイダーマン ホームカミング』に至るまで、まさにヒーローものの王道ですね。陸海空を制覇するのも豪気で、クラシカルな味があってむしろ良いです。ヒーローの造形からして古き良きヒーローコスチュームのフォルムですが、ノスタルジーがありつつもアクションなどやってることは新しい、というのは実写では出せない味だと思います(ヘリのプロペラでもう一機のヘリの操縦席を削るとか!)。エンドロールで流れる昔のテレビドラマ風な三人のテーマソングも超カッコいい!あと潜入や追跡など、随所にスパイ映画っぽさもあるのが楽しいです。インクレディビールなんてほぼボンドカーですね。


■女性の活躍

今作は明らかに女性キャラの比重が大きいです。最初から最後までヒーローとして活躍するイラスティガールは、社会に出て働く女性の象徴として描かれます。イヴリンとの会話でも男社会で女性が働くことについて「お兄さんは社長よね?」とか、テレビのインタビューで「男たちに任せてていいの?」など、わりとハッキリ示しますね。イラスティサイクルで走っていて「イラスティガールだ!」と騒がれたときの、若干戸惑いながらも「帰って来た感」のあるシーンには「ヒーロー活動は夢の夢」と言うヘレンの言葉がヒーロー活動禁止法によるものだけでないことを思わせます。逆にボブは暴走列車を止めたヘレンを口では祝いながらも自分が働けないことに無力さと嫉妬を感じてしまい、「家事育児など簡単」と言いながら娘のデートに息子の算数、末っ子の17種類のパワーにてんやわんや。笑いどころではあるんですが、家庭に入った女性の不満を男性を使って表現すると共に、家庭は男が守るものという男性性に囚われていることを如実に示しており、現代の男女間にある意識の差をこうも自然に入れるか、というのに唸ります。

ヴァイオレットは今回ティーンらしい恋する乙女の側面が強いです。デート相手の記憶を消されたことにキレてスーツをディスポーザーで刻もうとしたり、泣くときは姿を消していたり。ボブが彼氏の働くレストランに連れていくサプライズは、気を利かせたつもりが逆効果という男親のデリカシーのなさが露呈してますね。それにしてもヴァイオレットの鼻噴射、見事です。また、子供が嫌いなエドナがジャックジャックにはベタ惚れというのは、その才能に惚れ込んだというのはあるにしろ、ついでに母性まで目覚めてるように見えて面白いです。新ヒーローたちを代表するのが女性のヴォイドというのも女性を軸にした構造を考えれば納得できるところ。

もう一人の重要な役割を担う女性イヴリンは、開発部門の責任者という立場で上に立つ成功者であり、ヘレンと女性の権利向上について語ったりするのもあって、同じように女性としての立ち位置を示すのかと思わせるんですが、これが兄の方が何か企んでいるのではと思わせるミスリードになっています。ヴィランが女性というのは『マイティ・ソー バトルロイヤル』『スーサイド・スクワッド』『パワーレンジャー』など色々ありますが、自ら戦うヴィランではなく黒幕が女性というのはヒーロー映画では意外と珍しい、かな?この辺りもむしろスパイ映画っぽいです。それでいて兄のことを子供なのだと断じるところに、男は夢見勝ちで女は現実的みたいな、ここでも男女間の意識の差異が見られます。


■ヒーローと家族

イヴリンは信念を持つ天才であるがゆえにマッドな行動に走るわけですが、父が殺されたのはヒーローに頼りすぎたせいであり、ヒーローは人を弱くする、という思想には思わず一理あるかもと思わせられます。このヒーローの存在が孕む「功罪」については明快な回答は出さないまま終わってしまいますが、人が気付かずにいる悪事をヒーローが解決するというクライマックスがその回答の一つではあると言えるでしょう。ただ、ヒーローがいなければスクリーンスレイヴァーもいなかったかもしれず、序盤で警官が「ヒーロー活動したから被害が広がった」と言うのもあって、ミステリーで「探偵がいなければ起きない事件がある」と言うのと似たようなジレンマがあります。まあここは深掘りしすぎるととても収まらないし、別の作品で描かれるべきでもあるでしょう。

働く女性の喜び、家事育児をする男性の気付き、ヒーローの在り方、パワーを持つ者の疎外感、赤ん坊の可愛さなど様々な要素を描きつつ、ちゃんと家族の物語に帰結させているのがさすがです。冒頭の戦いではそれぞれが何とかしようと動いていたのが、ラストは互いを信頼して任せるという形に変わっているんですね。前作では成り行きで一緒に戦っていた子供たちも、今作では自分たちだけで両親を助けに行くという成長も見せます。そして家族で戦うのがカッコいい、ということの実践がカッコいいわけです。ヒーロー活動禁止法も解かれたし、アンダーマイナーもまだ逃げたままだし、ということでさらなる続編はあるかもしれないですね。

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