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2018
08.03

恥とプライドの殺し屋稼業。『キリング・ガンサー』感想。

killing_gunther
Killing Gunther / 2017年 アメリカ / 監督:タラン・キラム

あらすじ
カメラは見ていた!



名を売ろうと意気込むヒットマンのブレイクは、世界最強の殺し屋と言われるガンサーを倒すことで業界トップの座を手に入れようと、各国から凄腕の殺し屋たちを集めたチームを結成。撮影班を雇ってその様子を記録させながら、ガンサーの居所を探り始める。しかしブレイクの思惑に気付いたらしきガンサーからの反撃を受けることに……。アーノルド・シュワルツェネッガー出演のアクション・コメディ。

世界で最高と言われる暗殺者のガンサーと、そのガンサーを殺そうとする殺し屋チームを、ドキュメンタリー風に撮ったコメディ。いわゆるモキュメンタリーです。殺し屋のブレイクは自分こそが最高だと証明するため、殺し屋仲間のなかでもNo.1と評されるガンサーを倒すことでその栄誉を手に入れようと、個性的な殺し屋たちを集めてガンサーをおびき寄せようとします。しかしさすがは最強の殺し屋、常に一歩先を行くガンサーに翻弄され、ブレイクたちは青息吐息。そうこうするうち様々な事情の変化で事態はどんどん複雑化して……というお話。オープニングからテンポのよさに乗せられ、ちょっとブラックな展開ながら爆笑に次ぐ爆笑。間の取り方が最高なんですよ。そして意外な展開にじんわりとさえさせられる。モキュメンタリーならではの長回しによる臨場感もあって、自分がチームに同行しているような気分になります。個性の強い独創的な殺し屋チームの面子を好きにならずにいられないですよ。

キャストのトップであるガンサー役は、『マギー』から『ターミネーター:新起動 ジェニシス』まで規模の大小問わず精力的に活動するアーノルド・シュワルツェネッガーですが、シュワは実際は主演というわけではなく、言ってしまうと出番も少ないです。でもその使われ方がメタ的でもあって絶妙。話の中心となるブレイク役はタラン・キラム。彼が監督であり、脚本と製作も兼ねているんですね。そういう意味ではタイカ・ワイティティの『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』的で、作品の作りやシニカルなコメディという点でも似ています。またブレイクの元妻リサ役として『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』マリア・ヒル役のコビー・スマルダースも登場。彼女はタラン・キラムの実の奥さんなんだそうで、何気に夫婦共演なんですね(設定は元夫婦だけど)。

スーツを着込んで気取った感じのブレイクの元に集うのは、爆発のプロであるドニー、最恐の殺し屋を父に持つ美女サナ、ハッカー青年のゲイブ、片腕がロボットアームのイザット、毒使いのパク、ロシアの双子ミアとバロルド姉弟といった個性派揃い。実態の掴めない敵を追い詰め戦うスリル、本来はライバル同士の彼らが協力し合うチームものとしての側面、殺し屋だけに命のやり取りが絡む悲劇、そして幸福とは何かというところまで撮影班のカメラは追っていきます。観る人を選ぶ作りではあるでしょうが、まさにアメリカン・コメディという感じで笑い転げてました。最初から最後まで面白かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








ブレイクの集めたメンバーはどいつもこいつも曲者揃い。と言うかかなりデフォルメされた感じで、言ってみればアメコミ的な雰囲気があります。爆弾使いのドニーはよく喋る陽気なムードメーカー。結構普通なので寂しがり屋のブレイクも頼りがち。サナは伝説の殺し屋と謳われる父親の血を引いた、素晴らしい狙撃の腕(とおっぱい)を持つ美女なわけですが、このパパが凄まじい親バカで、スタンドみたいにずっと娘のそばにいるのが超ウザくて愉快。ゲイブはコンピュータに強い若者ですが自由奔放、と言うか空気が読めない若造で、ブレイクの演説を散々中断させるのが笑えます。イザットは「破壊者」と呼ばれるのも納得の、アイアンマン張りのロボットアームが超カッコいい。毒使いパクは毒薬で人を殺す暗殺者なのでどう見ても襲撃には向かないんですが、ずっと小瓶を構えて移動したり、血を見ると吐いちゃう(しかもむっちゃ吐く)のが面白すぎ。ミアとバロルドは何かスゴい残虐な殺し方をするらしいですが、完全に観光気分でアメリカに来てます。はしゃぎすぎです。

そんなヤバそうな奴ら(ヤバそう?)も付き合ってみれば殺し屋のくせに根はイイ奴みたいな描き方で、共通の敵に立ち向かううちにファミリー感まで出てくるし、みんなして「イエー!」って盛り上がったりブレイクがカラオケ歌いまくったりしてなんか楽しくなってくるんですが、しかしそこは動きの読めないガンサーとのタマの取り合いというシビアな世界。次々と返り討ちに会っていく仲間たち。その辺りも意外性があったり伏線が効いていたりします。ブレイクの元相棒マックスはブレイクより頼りがいありそうなのに頼らせないし、イザットはロボットアームの指が勝手に締まっちゃうという欠点が仇になるし、パクはまさかの得意分野で敗れます。悲しいと言うよりは「もう退場しちゃうのか……」と何だかもったいなさの方が強いんですが、ブレイクにとっては屈辱なわけです。さらにはブレイクの師匠アシュリーを襲う悲劇の数々!(爆笑。いやもうおじいちゃん寝てて……)ブレイクを泊めてくれたゲイブ(彼女優先)は墓石につぶされ、ドニーはサナパパに追われ(変装が酷い)、サナはそのパパを止めようと追い、いつの間にか孤独になっていくブレイク。しかも元妻のリサはガンサーと再婚していた時期もあるというさらなるショック。つーかなんだあの陶芸教室は。

仲間を失い、妻も取り戻せず、住処まで失い、アイデンティティ崩壊寸前のブレイク。手っ取り早くトップを倒して成り代わろうという軽率な思惑はガンサーに見透かされています。「主役」はガンサーのシュワかもしれませんが、本作の「主人公」はブレイクであり、全てを失った男がそれでも栄誉を取ろうとする話なわけですね。それにしても最高の殺し屋とそれを狙う殺し屋たちという構図が、トップスターのシュワに対して他が有名な役者じゃないのと重なるのは上手いキャスティング。さらにガンサーは、FBIにブレイクの身バレしたり、ロシア双子を死体でイチャつかせたり、リサはベッドで激しすぎるとかわざわざ言ったりと、ルール無用デリカシーなしで実はかなりのクソ野郎なんですね。楽しそうに種明かししながらスリップ姿まで見せるシュワのドヤ顔の、まあムカつくこと。ブレイクたちが映像で記録してることを知って同じことをやり返すというのも悪趣味極まりない。「皆が好きになってしまったよー」とか言いながら結局殺しますからね。これもシュワだから笑えるというのはあるでしょう。

そんな今までの経緯とガンサーの最低っぷりによって、ブレイクがんばれー!となるわけですよ。シュワに敵うわけがないと思いつつ、それでも戦おうとする男のプライド。カメラマンを失ったカメラが淡々と一部始終を映し続けるなか、案の定ボコボコにやられたブレイク。それでも諦めず、最後はついに……というところまで辿り着いた彼を見る気持ちは、撮影クルーと同じ「最後まで見届ける」ですよ。まあね、正直「子供が欲しいとも思う」と言っていたドニーがサナとめでたく結ばれて可愛い赤子にも恵まれ、殺し屋パパとも和解したところで充足しちゃってるんですけどね。それによりブラックなラストともバランスが取れているので、「ダメなものはダメ」というシニカルさもコメディの一環として受け入れやすいです。「身の丈を知れ」ってことですね。世知辛いですね。

それにしても、終盤ガンサーが余生を過ごすのがシュワの故郷であるオーストリアであるとか、色々とメタなネタもブチ込まれていてシュワもよくこの仕事受けたなとは思いますが、かつてアクション俳優でありながらコメディでもそれなりにイケた過去を持つシュワの、こんなんもイケるよ!という懐の深さを見せつけられた思いです。エンドロールではカントリーウェスタンまで歌いますからね。さらにはエンドロール中に「ガンサーは『私を愛したガンサー』で帰ってくる(この映画が売れたら)」とか書いてあって、最後までふざけ方が徹底しているのが見事です。

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