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2018
08.02

イーサン・ハントは砕けない。『ミッション:インポッシブル』シリーズ感想。

Mission_Impossible_Rogue_Nation_2
稀代の映画スター、トム・クルーズ。スクリーン・デビューから早37年、いまだ第一線で活躍し続ける、というか、常に「今」が一番スゴいという進化し続ける男、それがトム・クルーズです。その代表作は山ほどありますが、その中でもやはり外せないのが『ミッション:インポッシブル』シリーズでしょう。ドラマ『スパイ大作戦』の映画化として始まり、現在5作目まで続いている人気シリーズです。

このシリーズの特徴を挙げるなら、まず「トム・クルーズがスゴい」、これです。とんでもないアクションのつるべ打ちでありながら、スタントはほぼ全て自分でこなし、乗り物はほぼ全て自分で動かすという恐ろしいプロ根性。体を張りすぎるスターとしてはもはやジャッキー・チェンに並ぶでしょう。毎回撮影時での頭のおかしい逸話が出てきますが、最近では「トム・クルーズだからしょうがない」と思ってしまうようになりましたね。

そしてもう一つの特徴として「毎回作風が違う」というのがあります。これは一作ごとに監督が違い、その作家性が反映されるからですね。IMFに所属する諜報員イーサン・ハントの話、という大前提はあるにせよ、前作の登場人物が次作に必ず引き継がれるとも限らず、そこまで作品のトーンを合わせようともしていないので、どうなるのかは毎回のお楽しみ。これが息の長いシリーズとして上手く機能しているというのはあるでしょう。

そしてこの度、最新作『フォールアウト』がついに公開!今回は、しかし今述べた特徴の一つに反し、前作『ローグ・ネイション』のクリストファー・マッカリーが監督という、初めて過去作の監督が再登板となるんですよね。果たしてこれがシリーズにどう影響するのか?また、トムが撮影中ムチャしすぎて足首骨折したというニュースが報じられ、回復には半年以上かかると報じられて世界中が心配していたら、僅か6週間で治して現場復帰したという、公開前から頭のおかしい逸話が披露されたりもしました。

まあとにかく完成した新作が楽しみすぎて漏らしそうなので、それを抑えるためにもこのタイミングで過去作を一気に見返す「総復習」をしてみたんですよ。どれもそれぞれの面白さがあるなあ、というのがよくわかります。ということでショートレビューにまとめてみました。基本的にはネタバレなし(たぶん)なので、観た人は内容を思い出す一助に、観てない人は興味を持つきっかけにしてもらえればと思います。

 ※

■ミッション:インポッシブル
Mission:Impossible / 1996年 アメリカ / 監督:ブライアン・デ・パルマ
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記念すべきシリーズ第一作。このときからトムが製作で入っていますが、これが初のプロデュース作品なんですね。ドラマ『スパイ大作戦』の映画化ということで、冒頭のスパイドラマっぽい騙しから始まり、ドラマの主人公ジム・フェルプスが例の指令を受けることで物語は始動します。指令は飛行機内の映画ソフト。舞台はプラハ、ラングレー、フランスなど。監督は『アンタッチャブル』ブライアン・デ・パルマで、スロー使いや独特のアングルが特徴的。そしてアクションもありつつもサスペンス色がより強い印象です。共演は『チャンプ』ジョン・ヴォイト、『美しき諍い女』エマニュエル・ベアール、『レオン』ジャン・レノ、なぜかノンクレジットで『ヤングガン』エミリオ・エステベスなど。ルーサー役のヴィング・レイムスはこのときから登場、現在トム以外で唯一のシリーズ皆勤賞です。

22年前ということで、まずトムが若い!当時34歳ながらその10年前の『トップ・ガン』の面影がまだあります。ミーティング中ガム食ってるし(これは伏線ではありますが)。技術も今見るとちょいレトロで、最初に一通りガジェットの説明をするのがスパイ映画っぽいです。しかしそんなお約束に沿って進むのかと思いきや、いきなりチーム全滅というとんでもない事態に。イーサンがこの事態を招いたIMF内の裏切者だと見なされ、追われることになります。本当の裏切者を炙り出すエサとなる工作員リストを盗み出すため、イーサンは生き残った仲間のクレアや元諜報員のメンバーと共に、セキュリティ厳重なCIA本部に潜入するというインポッシブルなミッションに挑みます。

ブツを入手するためあらゆるセンサーの付いた部屋で天井からぶら下がるシーンは、音楽ゼロによる緊迫感が凄まじい。また高速鉄道TGVでは、屋根の上での戦いやヘリコとの攻防などスリル満載。でも一番驚いたのは、観客がひょっとしてと予想するより前にイーサンが真相に気付いていくシーン。これがシビれる!ドラマ版のファンにしてみれば納得いかない結末ではあるんでしょうが、追い込まれてのデ・パルマ的サスペンスは満載、スパイの悲哀も盛り込み、トムの身体性を活かしたアクションも随所にあり、何よりイーサン・ハントという新たな主人公による新シリーズの幕開けとして実に見応えありです。


■ミッション:インポッシブル2
Mission: Impossible 2, M:I-2 / 2000年 アメリカ / 監督:ジョン・ウー
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シリーズ第2作。初っぱなからインポッシブルなロッククライミングをこなすイーサンにビビりますが、これがミッションではなくバカンス、つまり好きでやってるというのが狂ってて最高。指令は(わざわざヘリで届けられる)グラサン。舞台はスペイン、シドニーなど。監督が『男たちの挽歌』『フェイス/オフ』ジョン・ウーということからわかるように、今作はサスペンスより思い切りアクション主体になってます。ヒロインとなるナイア役のタンディ・ニュートンは今であればゾーイ・サルダナを思わせるキュートさと逞しさが共存してて魅力的。後から気付いたけど『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』のヴァル役の人です!また敵となるアンブローズ役に『96時間 レクイエム』ダグレイ・スコット、なぜかノンクレジットで『羊たちの沈黙』アンソニー・ホプキンスも登場。

20時間で死に至るウィルス「キメラ」とその治療薬「ベレロフォン」。それを売りさばこうとするアンブローズからウィルスを奪うことがミッション。そこでアンブローズの元カノで腕のいい盗賊であるナイアをスカウトし、潜入捜査をしてもらうことに。民間(という言い方もアレだが)の泥棒を雇うというのはどうなんだとも思いますが、前作でもルーサーたちは組織の人間ではなかったしそこはまあいいでしょう。ただ問題は、そのナイアの役割がいわゆるハニートラップだということです。これが観ててあまりいい気分じゃないんですよね。もちろんイーサンとしては不本意だし、徹底したバックアップは行うんですが。またそれをカバーするかのようにイーサンとナイアがイイ仲になっちゃうんですよ。そのためシリーズ中最もロマンスが強く、トムは髪もかなり長いのもあってシリーズで一番色気がありますね。ムンムンです。

まあ髪が長いのはアクションで映えるからというのもあるのでしょう、それくらいアクションシーンは多いです。崖上で並びながら走る車のダンスを見せたり、転がる車をバイクでジャックナイフターンをキメながらかわしたりといった乗り物系アクション、かがみつつ回転しながら銃を抜いたりサマーソルトキックをかましたりという銃撃・格闘系アクションと目白押し。ジョン・ウーらしいスロー、ズーム、リピートの多用、そして2丁拳銃という様式美の嵐!そしてジョン・ウーと言えば「鳩」ですが、もう自虐ネタかってくらい鳩が出てきます。鳩がたまってるというだけのカットをわざわざ入れたりしてます。様式美ですね(あるいはヤケ)。

国際的陰謀というより悪党の金儲けなのでスケール感に欠けるとか、ロマンスに時間が割かれる分チーム感が薄いとか(ルーサーもビリーも頑張ってるんですが)、スパイ映画的なサスペンスが少なめとか不満はあるんですが、アクション映画としては十分以上のクオリティだし、ナイアの決死の行動が熱いし、イーサンとアンブローズとの一騎打ちはしつこいしで、熱量としてはかなりのものです。


■ミッション:インポッシブル3
Mission: Impossible III, M:i:III / 2006年 アメリカ / 監督:J・J・エイブラムス
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シリーズ第3作。前作の反省を活かしたのか、今作ではよりスパイものっぽいスタンスに立ち返ってます。指令はコンビニのインスタントカメラ。舞台はベルリン、バチカン、上海など。監督は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』J・J・エイブラムスということで、少々込み入った話もすんなり見せてくれ、それでいて意表を突く構成で驚かせてもくれるという、ストーリーテリングの上手さが特徴。『LOST』などドラマは撮ってたものの、J・Jにとってはこれが初の劇場映画監督作です。今作は何と言っても悪役デイヴィアン役の『ザ・マスター』フィリップ・シーモア・ホフマンの素晴らしい存在感。柔和な顔つきからは想像もできない非情さが冒頭から滲み出ていて引き込まれます。また、以降のシリーズでレギュラーとなるベンジー役のサイモン・ペッグもここで初登場。ほか『ダイ・ハード4.0』のマギーQ、『君が生きた証』ビリー・クラダップ、『マトリックス』ローレンス・フィッシュバーンらが出演。『ルイの9番目の人生』アーロン・ポールがチョイ役で出てたりもします。

序盤、イーサンは既に現場を退いており、しかもミッションの一環などではなくマジで結婚しようとしているらしい、という意表を突く展開。そんななか敵に捕まった元教え子リンジーを救出するため現場復帰するイーサンですが、救出自体は成功したものの、ある非道な仕掛けによって目の前で彼女を死なせてしまいます。怒りに燃えるイーサンは黒幕である武器商人のデイヴィアンをなんとか捕らえるものの、予想もしなかった報復を受けることに。シリーズの主人公がポッと出の相手といきなり結婚というのは珍しいですが、余計なロマンスを省いてテンポをよくし、妻を救うというだけで動機としても十分というメリットがありますね。妻ジュリア役のミシェル・モナハンは美人ですが、ちょっとね、少しマイケル・ジャクソンに似てるな……と思ったらもうそうとしか見えない……いや何でもないです。

チーム感もかなり増加し、ルーサー、ゼーン、デクランという仲間たちがそれぞれ活躍しながら連携するシーンはスリリングで楽しいです。特にバチカンという不可侵な場所への侵入は面白い。イーサンが入れ替わってるデイヴィアンを演じるホフマンが、中の人がトム・クルーズだと自然に思えるほど上手いんですよ。マギーQのゼーンもセクシーで良いです。また、ビルから振り子で……という、どうかしてる侵入方法も愉快だし、トムが上海の雑踏を全力疾走するというのも結構迫力。ベンジーはチームではなく追い詰められたイーサンが頼るサポート役ですが、「これで俺たち一緒に刑務所かな」などとこの頃からイーサンと運命を共にする予感がしてたようです。

「スパイが家庭を持ってもうまくいかない」とルーサーが言うように、本作はスパイが人並みの幸せを求めることはできるのか、ということを描いています。家族を人質に取られると手出しできないという弱点になるリスクがあるということですね。実際そうなるわけですが、それでもイーサンは妻を救うためこの試練に真っ向から向かっていき、ジュリアもまた今までと全く違う世界で夫を守ろうとすることで、幸せになろうとする思いに制約は必要ないと示してみせる、というのがポイントでしょう。そんな愛のドラマとアクションの緊迫感とのバランスが良いですね。結局「ラビットフット」って何だったっけ?というのがいつも残らないんですが、それもそのはず、実は最後まで明かされてないんですね。これがマクガフィンです。


■ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル
Mission: Impossible – Ghost Protocol / 2011年 アメリカ / 監督:ブラッド・バード
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シリーズ第4作。本作からタイトルの数字は削られサブタイトルが付くようになります。指令はちょっと調子の悪い公衆電話。舞台はブダペスト、モスクワ、ドバイ、ムンバイ。監督は『アイアン・ジャイアント』『Mr.インクレディブル』のブラッド・バードで、なんとこれが初の実写映画監督作。本作の特徴としては、とにかく畳み掛けるスリルと、予測のつかない怒濤の展開。次々起こる予想外の事態に何度驚いたことか。ヒゲを剃ってちょっと若返ったベンジー役のサイモン・ペッグに加え、本作ではブラント役の『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』ジェレミー・レナーが初登場。またジェーン役の『ディス/コネクト』ポーラ・パットンが美しくも強い女スパイとして仲間に加わります。ルーサーは最後に辛うじてチョイ役で登場。敵役ヘンドリクスには『ジョン・ウィック』でマフィアのボスを演じるミカエル・ニクヴィスト。そして殺し屋モロー役でレア・セドゥが、スパイ映画としては『007 スペクター』より前に出演しています。

ミッションは核起動装置を奪うというありがちなものですが、そんな杞憂はものともせず、テンポよく進み、意外性に惹き付けられ、ピンチの連続で手に汗です。イーサンが刑務所にいるという冒頭から驚き、その脱出時に付けた火がオープニングの導火線に繋がるというクールな演出に早くもニヤニヤしちゃいます。モスクワではクレムリンに潜入、ターゲットの視線に合わせた壁映像ギミックのスリルに、思わぬ方向から迎えるピンチ。ドバイでは世界一の超高層ビル、ブルジュ・ハリファの壁面を登るという頭のおかしい所業に始まり、くっつきグローブ、ノーマスク・チャレンジ、ポーラ・パットンとレア・セドゥのおっぱい対決もといヒロイン対決、急襲する砂嵐と見えないカーチェイスなど、凄まじい見せ場の連続。ムンバイではインド富豪へのドS対応、超頑張って飛び降りるブラントなどを経て、立体駐車場の工夫と驚きに満ちたアクション。どこをとっても緊張と興奮が素晴らしいです。

本作の特徴はもうひとつ、今までのシリーズにはほとんどなかった「コミカルさ」を取り入れたという点です。ベンジーをチームに入れることでそのキャラクターやうっかりによる笑いが生まれ、同時に友人のような気安さも付与されてイーサンが一人じゃない感が増します。ムードメーカーが一人いるだけでこうも違うんですね。その気安さのせいか、結構余裕のないイーサンが思わず悪態付いちゃうという場面とか、ブラントが飛び降りるときのやる気ありそうに見せながらの躊躇なども見られて可笑しい。こういうちょっとした笑いが緩急になって、よりバランスを保っています。

さらにもうひとつ、本作で顕著なのは「喪失」を描いているという点。ジェーンは自分を愛してくれる人を目の前で失い、ブラントは過去の罪悪感で自信を失い、大きな喪失を抱えたイーサンをベンジーは何とか慰めようとし、イーサンは自分を友人と呼んだIMF長官も失います。そもそも「ゴースト・プロトコル」自体が切り捨てのことであり、残った仲間と資材以外は所属も助けも失われるということなんですね。発射コードに詳しいレオニドがあっさり退場するのも残された家族の喪失を思わせ、ヘンドリクスが核を爆発させればさらに多くの人命が失われる。そんな喪失を抱えた者たちが、残された互いを信じて助け合い、最後は皆が傷だらけになりながらも不可能なミッションに挑むことで「チームを越えた仲間」を「得る」のです。まさかこんなにあったかくて泣ける結末とは、意外性に満ちた驚きにもほどがありますよ!最初から最後まで超面白いです。そしてラストに次作で登場する「シンジケート」の名が!


■ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション
Mission: Impossible – Rogue Nation / 2015年 アメリカ / 監督:クリストファー・マッカリー

こちらへどうぞ!
悲哀は行動でねじ伏せろ。『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』感想。


 ※

実にバラエティに富んだ5作。ここに新たに加わる新作『フォールアウト』が果たしてどうなるのか。イーサンはどれだけインポッシブルに挑むのか、そしてあの人とかあの人とかはどう絡むのか。期待して待ちます!

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(2018/08/12 追記)
そしてついに公開された『フォールアウト』!感想はこちら。
限界突破で世界を守れ。『ミッション:インポッシブル フォールアウト』感想。

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