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2018
07.25

倫理と淘汰のコンフリクト。『ジュラシック・ワールド 炎の王国』感想。

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Jurassic World: Fallen Kingdom / 2018年 アメリカ / 監督:J・A・バヨナ

あらすじ
イスーーーー!



放棄された「ジュラシック・ワールド」のあるイスラ・ヌブラル島で火山が活動を始める。噴火すれば島の恐竜たちは絶滅を免れない。パークの運営責任者だったクレアは恐竜たちを救うべく行動していたが、そこにある財団から恐竜保護の協力を求められる……。生きた恐竜のテーマパークを舞台にした『ジュラシック・ワールド』の続編。

『ジュラシック・パークⅢ』から14年を経てのシリーズ復活となった前作『ジュラシック・ワールド』、その続編が登場。パークは閉じられ恐竜の王国となっていたものの、島の火山が噴火間近。ある財団の恐竜移住計画に参画したかつてのパーク責任者クレアは、田舎に引っ込んでいたオーウェンも連れ出して島に向かいます。しかしそこには今までとは違う危険が迫っていた!というわけで前作のインドミナス・レックスの驚異に負けず劣らずのピンチの連続。まさかのテーマパークからお化け屋敷への変貌にはフレッシュなワクワク感があるし、CGだけでなくアニマトロニクスも使用した恐竜の実在感も秀逸。

ラプトルと心を通わすオーウェン役の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』クリス・プラット、パークの元責任者クレア役の『ゴールド 金塊の行方』ブライス・ダラス・ハワードは続投。怖がる少女が思わず抱きつくのがクレアではなくオーウェンであるという辺り、クリプラの安心感はますますアップしてます。メガネっ子獣医ジア役のダニエラ・ピエダや、IT関係ないITオタのフランクリン役ジャスティス・スミスも良かったし、『ベイブ』のジェームズ・クロムウェルが出てきたときは恐竜に混じってブタも出るのかと思いますね。思わないか。前作でやらかしたあの人や、なんと旧シリーズのあの人まで出てくるのが嬉しい。

前作の監督コリン・トレボロウはスピルバーグと共に製作総指揮に回り、監督は『怪物はささやく』のJ・A・バヨナにバトンタッチ。序盤は少々タルいながらも最低限で経緯シーンが描かれ、その直後の壮絶なディザスター、後半の怒濤の怪奇ゴシックホラーがどちらも凄い。どこかファンタジックでさえあるバヨナの映像は悪夢的快感をもたらすし、悪党の死に様や侵食される現実も最高。人類の愚かさの物語としては、続編と言うよりむしろ進化と言いたくなります。

↓以下、ネタバレ含む。








■炎の島

前作では本当に来園したかのようなパークの現実感にワクワクしましたが、大惨事を起こして閉鎖されてしまったため今は無人。そこに恐竜のDNAを求める輩がいて、恐竜を救おうとする者がいて、挙句恐竜を島から連れ帰ってしまいます。前作とはかなり趣が異なりますが、構造としては『ジュラシック・パーク』と『ロスト・ワールド ジュラシック・パーク』の関係に重なっていて、前シリーズを踏襲している感があります。新シリーズ2作目にマルコム博士役のジェフ・ゴールドブラムが再登場するのもそれを踏まえているかのようですね。とは言え『ロスト・ワールド』とはまた違った危機の描き方をしており、何となく火山の島でのサバイバル・アドベンチャーと思い込んでいたのもあって、前半と後半で分かれてそれが別の映画のようにテイストが異なっていたのには驚き。展開的には結構な唐突さや飛躍の仕方がありますが、そのわりには意外と雑さは感じないです。それは必要なショットでしっかり前振りしてるということでもあります。

前半のディザスター、火山が今にも噴火しそうという状況がもっと続くのかと思いきや、クレアたちが到着してせいぜい数時間でこの世の終わりのような事態になるのには度肝を抜かれます。ウィートリー率いる捕獲チームは大分前からいたのだろうとか、噴煙の量もかなりのものだとかで、既に臨界点であることは示されてたんですね。オーウェンがいきなりウィートリーに撃たれたり、ブルーが銃撃に倒れたりと、オーウェンとブルーの再会を堪能する間もない意表を突く展開、クレアとフランクリンのいる施設にいきなり溶岩が流れ込み、ついでに恐竜までご登場するいきなりの大ピンチと、実にスピーディー。オーウェンが動けない体を捻って必死で溶岩から逃げたり、フランクリンがTレックスを連呼してビビりまくったりと、コミカルながらスリリングなシーンも面白い。フランクリンの叫び方は音の高さも伸ばし方も抜群ですね。あとクレアの「椅子!」が最高です。椅子取ってと言ってるだけなのになんだあのキメ絵、超カッコいい。

降りそそぐ火山弾や逃げ惑う恐竜たちのド迫力に、逃げながら肉食恐竜に襲われたりそこにヤツが現れたり、トラックで船に飛び乗るなどのアクション的な見せ場もあって、実に密度が濃いです。特にボールが海に落ちてからの長回しがスゴい。それでいて壊れたジュラシック・ワールドの建物を横切るブラキオサウルスや、三人が海中を泳ぐ青とオレンジの幻想的なシーンなど、バヨナ的な一種ファンタジックな画が時折顔を見せたりもします。島を遠ざかる船からの、岸に立ち尽くすブラキオサウルスが煙で見えなくなっていく姿などはあまりにせつない。船のなかでは敵に見つからないようにスニーキング・アクションが繰り広げられるのかと思いきや、寝てるTレックスからの採血&ロデオという、シリーズでは見たことない絵面が見れるのも意外性があります。あのTレックスは傷跡を見るに前作ラストのアイツなのかな?それらのシーンもブルーが撃たれたということから繋がっており、ジアがそれに同行するのも含めて違和感がないのが上手い。技術力を活かす場面が少なく足手まといになりそうなフランクリンを、敵の何でも屋にしてしまうというのも笑えるうえに巧みです。


■闇の屋敷

後半のゴシックホラーはバヨナ監督お得意のフィールドという感じですね。まさかの屋敷地下への大集合、そこから始まる閉鎖空間スリラーという意外性。序盤で屋敷の風景は展開済みなので紛らわしさのスリルは予想できるものの、トリケラトプスの頭蓋骨があんな使われ方するとか、予想を上回ってくるのがたまりません。馬の人形の後ろにインドラプトルの影を映すという怪奇映画のようなショットや、メイジーを狙うインドラプトルが屋根から窓にやって来るときの天地逆転のシーン、屋根の上で吠えるインドラプトルのファンタジーに出てくるドラゴンのような悪夢的なヴィジョンなどキメまくってます。メイジーがエレベーターの扉をなかなか閉められないというのは『ジュラシック・パーク』1作目でのレックスちゃんの厨房シーンへのオマージュでしょうね。

前半の物量やスペクタクルで押すスリルと比べると、舞台は狭く出てくる恐竜の数も激減するわけですが、だからと言ってスケールダウンしたという感じはしなかったです。むしろ登場人物に肉薄するような臨場感があり、隠れ場所や逃げ道などが豊富なので追いかけっこも捗り、それでいて追いつめられると逃げ場がないというスリルもあります。恐竜の数が少ない分は、じっくり映したり個々の活躍の場があったりするので却って恐竜を近くに感じます。特にまさかの大活躍を見せる突撃頭突き野郎パキケファロサウルス最高。恐竜戦車アンキロサウルスとか、僅かワンショットで萌えさせるトリケラトプスの親子とか、もう恐竜はどれもイイ。そして兵器化された恐ろしいハイブリッド、インドラプトルに至っては、寝たフリしたり、尻尾でエレベータのスイッチ押したり、窓の鍵を開けたりとスゴすぎ。ニヤリと笑うなんて一歩間違えば途端に嘘くさくなりそうなもんですが、悪夢的な舞台設定もあって受け入れてしまいます。洋館で人に作られたモンスター、まさにフランケンシュタインの怪物。ただインドラプトル自体にはそこまで重いものは背負わせずターミネーター的な役割に終始するんですが、そこは後半唯一死亡する恐竜だからでしょうかね。

悪い奴らがキッチリ酷い最期を迎えるのも溜飲が下がります。ウィートリーは歯を抜くという非道な趣味のために自らインドラプトルの檻に入る、というのが上手い。目の前で自分の腕を一本食われるというのがえげつないです。トビー・ジョーンズ演じるエヴァーソルはエレベータの扉を閉めて一安心したらそれが開くという、まさにホラーテイストなやられ方。ミルズに至ってはTレックスが後ろにいるー!と思ったらまさかの横からもう一匹、からの真っ二つというエグさ。ただB・D・ウォン演じるウー博士は恐竜を売りまくるミルズらに怒りを表したりするせいか、薬を打たれて運ばれるところまでしか映らないため生きてそうです。


■共存する世界

全ては人間が遺伝子工学を振りかざし、神の如くに生命を作ろうとしたことが発端です。そしてミルズが口にする「責任」という言葉が軽んじられてできたのが「ジュラシック・パーク」であり「ジュラシック・ワールド」です。恐竜たちに関してクレアもオーウェンも共に自分の責任だと言い、責任を感じるからこそ恐竜たちを救おうと奔走するわけですが、それは結局「人間に対する責任」でしかないんですね。だから最後には見殺しにしようとするわけですが、それも所詮は人間のエゴだと言わんばかりにボタンを押すのがメイジーです。「彼らも生きている、私と同じく」と言うメイジーは、遺伝子工学が踏み込んだ禁断の領域の落とし子であり、一度生まれた生命を無下に駆逐することはできないという圧倒的な主張となります。飼いならそうとした恐竜とは違い「人間」であるという彼女の存在は、これまでのシリーズになかった緊張を孕む別方向からのアプローチとして、決定的な倫理観の揺さぶりとなるのです。

『ロスト・ワールド』で都会にやってきたTレックスはまだ非現実性を感じさせる異物でした。しかし売られて世界に散らばった恐竜たちや、波間に現れるモササウルス、ライオンと対峙するTレックス、エンドロール後にベガスに現れるプテラノ、街を見下ろすブルーと、世界はマルコム博士が言うように「共存」という現実へと突入するのです。それは人工的に蘇えらせた自然による逆襲、弱肉強食により弱き者は淘汰される食物連鎖の世界。マルコムの告げる「ジュラシック・ワールドへようこそ」、それはテーマパーク名を意味していたタイトルに、それまでと全く違う意味をもたらします。原題の「Fallen Kingdom」=落ちた王国は、恐竜ではなく人間の世界だったわけです。この切れ味のいい、シビれるような世紀末感!これがシリーズ最終章でもいいくらいのラストです。

とは言え三部作であることは決まっているので、これが次作でどうなるのかは見もの。監督は再びコリン・トレボロウに戻ることが決まっており、今作で生き残った主要キャラも出てくるでしょうが、ちょっとどうなるか予想付かないですね。まさか『猿の惑星』みたいになったりしないだろうな……楽しみに待ちたいと思います。

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