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2018
07.24

明かりが点いたら憑いている。『ルームロンダリング』感想。

roomrondering
2018年 日本 / 監督:片桐健滋

あらすじ
点けるよー(by アヒル)



ワケありの物件に住んで部屋の履歴をクリーンにする「ルームロンダリング」というバイトをしている18歳の八雲御子。しかし御子は幽霊が見える体質であるため、新しく入った部屋に憑いている幽霊と奇妙な共同生活を送ることに……。池田エライザ主演のオカルティック・コメディ。

「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM2015」という映像クリエイター発掘を目的としたコンペティションで準グランプリを獲ったオリジナルストーリーの映画化だそうです。父が事故死、母が失踪、育ててくれた祖母も中学の頃に亡くし、胡散臭い不動産屋である叔父の雷土悟郎に引き取られた八雲御子が主人公。悟郎が御子に与えた仕事は、自殺や事件で入居者が途絶えたいわゆる事故物件に住んで直近の履歴を更新するという、マネーロンダリングならぬルームロンダリング。しかし御子にはその部屋の霊が見えてしまうのだった!というお話。霊の見える女性がその霊と関わってドラマが転がるという題材にはそこまで目新しさはないものの、事故物件を渡り歩くから霊に出会うというところが特徴。仕事上そこに住まなければならず、かといって別に徐霊の能力があるわけでもないため、結果的に霊と共存することに。オカルト風味ながらどこかポップな雰囲気で怖さはなく、コミカルな人情話として御子の日常が描かれます。

八雲御子役である池田エライザはよく知らなかったんですが(『犬ヶ島』で声をやってたらしいですが)、ぼんやりした独特の雰囲気が役に合っていて良いです。御子の叔父である悟郎役は『オーバー・フェンス』オダギリジョー、適当っぽさと胡散臭さに時おり見せる優しさで、さすがの安定感。そして特に良かったのが公比古役の『テラフォーマーズ』『ソレダケ that's it』渋川清彦。飄々とした津軽のパンクスっぷりがお茶目ながら悲しみもあって、かつ津軽弁の発音がかなり正確なのもポイント高い。またウザいコスプレOL悠希役の光宗薫もイイ味出してます。ほか御子のお隣さん虹川役に『チア☆ダン』伊藤健太郎、田口トモロヲ、渡辺えりらが出演。

若干のテンポの悪さやシリアス場面が少々コントっぽいのが気になりますが、コミュ障娘が死者の無念をどう晴らすかが面白い。死者を扱いながらもどこかコミカルで、それでいて死者の無念というものも描いています。ちょっとミステリっぽい仕掛けも。ちなみに公開と同時にドラマ化も発表されたようで、確かに連続ドラマに向いてそうな設定かも。

↓以下、ネタバレ含む。








基本的には人情喜劇ですが、主人公の御子が絡む相手がほぼ霊であるため、既に死んでしまった者の未練とか後悔とか恨みといったものがクローズアップされます。御子は徐霊ができるわけではないので、適当に受け流したり無視したりするくらい。御子が全く霊を怖がらないので(めんどくさいとは言うけど)、全体的にポップな雰囲気もあって怖さはないですね。パンクの公比古はやたら陽気だし切った手首をネタにするし田酒に喜んだりするし(飲めないけど)、やたら決めポーズ取ったりと悲壮感がありません(ちなみにこのメロイックサインはパンクよりはメタルだと思うんだが……)。コスプレOL悠希は登場シーンが貞子っぽかったりむっちゃ叫んだりするのがイヤですが、次の登場では背中に刺さった包丁だけ床から出してジョーズみたいだったりするのが可笑しい。公比古が悠希に「和包丁だね、俺、出刃」とか言うのが呑気すぎて笑います。小学校の元同級生の霊は学芸会のカニ役の衣装がふざけているし、おっぱいおっぱいうるさいな少年。まあ確かに池田エライザの下着姿のおっぱいとか尻とか、走ったときのおっぱいとかはおっぱいおっぱい言いたくなるのもわかる(うるさい)。

霊が現れると点灯するアヒルのランプは本作をポップにする小道具として機能し、出てくるタイミングがそこなのか、みたいな使い方もできて便利。ラストカットでも効果的に使われていますね。そのアヒルを抱えた御子のヘンな人感というのも本作の雰囲気作りに貢献しており、御子の描く絵がかわいらしい中に霊の悲愴さがあったりするのも味があります。あのスケッチブックの絵を使ったエンドロールは良い感じ。また「悟郎さんは人使いが荒いんだから」の重ねとか、バイト先のコンビニで中国女性に翻弄される虹川とかの適度に放り込まれる笑い、住居が移って出番終わりかーと思った公比古の再登場や、最後に御子が悟郎の手下にお礼を言うとか、ちょっとしたサプライズがイイですね。悠希を殺した犯人がTKO木下の警官であるのは何となく予想できるものの、あの警官が虹川を脅すときのバイオレントさには意表を突かれます。ただピザの配達が来た時は逃げ出さないようもっと脅すとかしないと。そこがちょっと不自然。

見た目が人間と変わらないとはいえ霊はあくまで霊であり、自分たちでは何もできません。引きこもりで積極的に人と関わろうとしない御子が霊とは話すのは「生きてる人間の方がよっぽど怖い」からですが、なぜ私ばかり霊が見えるのかと嘆く御子に公比古が「お前にしか見えないってことは、お前にしかできないってことだ」と言うように、霊に対して何かができるのは御子だけです。だから虹川や悟郎も巻き込んで、できる範囲で望みを叶えようとする。意外にも、力を持つ者が負う責任、という話でもあるわけです。

悟郎は御子を母親に会わせる決意をしますが(母役がつみきみほ!)、でもそこで死者が見えるという事実は大きくのしかかってきます。無念を晴らしても悠希は元の生活には戻れない。テープを送っていれば公比古は死なずに済んだかもしれない。子供のまま年月を重ねた元級友はカニのままだし、ずっと下を向いててミニカーを見つけられなかった男は子供に手渡しすることはできない。そして御子はもう母親と抱き合うことはできない。それでも御子は自分にしかできないことがあると知り、それを実践することで成長するに至ります。部屋の名義だけでなく、さ迷える魂も浄化するルームロンダリング、じんわりしました。

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