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2018
07.23

復讐の暗殺者、亡国の殺戮者。『アメリカン・アサシン』感想。

American_Assassin
American Assassin / 2017年 アメリカ / 監督:マイケル・クエスタ

あらすじ
爪がーーー!



無差別テロで恋人を殺された青年ミッチ・ラップ。テロリストへの復讐に燃えるミッチは単独で敵の懐に潜り込もうとするが、そんな彼を監視していたCIAの対テロ組織がスカウト。元ネイビーシールズの鬼教官ハーリーの元で過酷な訓練を積んだミッチは、やがて核兵器テロを目論む謎のテロリスト「ゴースト」を止めるミッションへと参加することに……。ビンス・フリンの小説『ミッチ・ラップ』シリーズを実写化したサスペンス・アクション。

テロ犯に目の前で恋人を殺された青年ミッチが、CIAのスパイ機関で過酷な訓練を受けテロ組織に立ち向かうというスパイ・アクション。『007 スペクター』などの「007」シリーズのようなスタイリッシュさではなく『ジェイソン・ボーン』の「ボーン」シリーズのようなリアル系に寄せたスパイものです。若者の復讐譚であり、歴戦の鬼教官との師弟物語でもありますが、そこにゴーストと呼ばれる人物が絡んでくるため事態は複雑化していき、それをスピーディに描いていくので飽きさせません。しっかり動くアクション、無差別テロや拷問シーンのエグさ、驚愕のラストに至るまで、ちゃんと「見せる」ということを貫いている姿勢がイイ。

ミッチ役は『メイズ・ランナー』シリーズのディラン・オブライエン。最近の『メイズ・ランナー:最期の迷宮』以上に逞しく、さらに暴走気味で、それでいて冷静な佇まいがイカします。鬼教官ハーリー役は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『スパイダーマン ホームカミング』のマイケル・キートン。容赦ないしごきと狂気じみた笑顔の壮絶さがさすがの貫録。そして『オンリー・ザ・ブレイブ』『ローン・サバイバー』のテイラー・キッチュが珍しく悪役で、これが無双っぷりに過去の悲哀も滲ませていて最高です。ほかミッチを見出だすCIAのアイリーン役に『エイリアンVSプレデター』のサナ・レイサン(随分イメージ違うと思ったけどもう14年前でした)や、アニカ役にシヴァ・ネガー、スコット・アドキンスなどが出演。

組織に従うより自身の復讐を優先するミッチと、部隊を厳しく律しながらもどこか危うさを感じさせるハーリーという、似ていながらも異なる二人がもたらす緊張感、そこに絡むゴーストとの関係がさらにスリルとなります。イスタンブールやローマなどを飛び回るスケール感や、硬派な展開も面白い。シンプルなタイトルに込められた意味も後から響いてきます。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の海岸での無差別テロ、リゾートで楽しむ人々が容赦なく撃ち殺されていく様は結構衝撃。身を守りようがない水着姿というのが余計無力さを煽ってきます。そして殺された恋人が目を見開いて死んでいるエグさ。その凄惨さが、ミッチが復讐に燃えることへの説得力として映ります。この容赦ない描写は格闘シーンやガンファイトシーンでも同様で、血しぶき飛び散るリアルファイトが命懸けの現場への没入度を高めますね。車幅ギリギリの地下道を車で走りながら敵を撥ね飛ばしたり、通りかかった車を当たり屋まがいで止めて車を奪ったりといったアクションもしっかり描き、ハーリーの拷問の爪のシーンなどもじっくり映していて「ヒー!」ってなります。

ミッチはとにかく命令を聞かない問題児ですが、それは単に自分勝手に動くというのではなく、個人的な感情に我を忘れて突っ走るというものです。組織よりも個人的な基準を優先するあまり、個人の感情は捨てろと言うハーリーとの衝突も絶えません。でもバーチャル訓練で電撃食らいながらも仇を撃ち続けるというのがミッチの強さでもあり、ハーリーが拷問でうわ言のようにミッチの名を呼ぶところでも何だかんだで信頼を寄せているのがわかります。いきなり敵のスマホをスッたりアニカを逃したりと柔軟に対応するところも優秀で、でも反抗的という二面性が面白い。何度も寄宿舎を追い出されたという過去からも長いものに巻かれるタイプではなく、自分の考えで動くってことですね。ちょっと『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』などのイーサン・ハントに近いかも。

一方でゴーストは、父のように思っていた師であるハーリーに置き去りにされ、拷問されたという過去があります。アメリカのために働いていたのにアメリカに裏切られた、という国家とハーリーに対する復讐であり、その点でミッチ同様個人的な感情で動いているわけです。単にテロ組織へ核兵器を売ることが目的ではなく、復讐と同時に死に場所を探しているというのも独特。そこには恨みや怒り以上に悲しみと絶望があって、テイラー・キッチュの憂いの込もった表情がさらに深みを増しています。「海で死にたい」とか言うので『バトルシップ』を思い出しますよ。

そういった意外性が随所にあるので見応えがあります。てっきりミッチがアニカとイイ雰囲気になるかと思いきやいきなりスパイと見抜くのには驚くし、そのアニカが自ら死を選ぶという悲劇にも呆気にとられます。ミッチが最後ゴーストに勝つのはナイフの刃を掴むという、ハーリーから教わったものではない自分のやり方だからというロジックになるほどと思うし、それでいてハーリーに習った箇所を刺すというのが同じ師を持つ二人の男の決着として上手い。あと意外性という点ではラストの爆発には度肝を抜かれます。普通なら直前でカウント止めて終わるところであろうに、まさか本当に爆発させるとは……。投棄後それなりに時間もたってからの爆発なので放射線量も少ない、という理屈がどこまで正しいのかはちょっとわかりませんが、爆発後のとんでもない破壊の様子もしっかり映しているのでフィクション上の納得度はあります。あと最悪の事態を防いだということで歓声が上がりそうなものなのに、被害が甚大なために指令部も静かめ、というのも珍しい。

ゴーストは「アメリカン・アサシン」として戦地に送り込まれ、逆にアメリカを殺そうとするに至ります。ミッチは恋人の仇を殺そうとするために「アメリカン・アサシン」となり、結果的にアメリカを救います。そんなタイトルが示す表裏一体の二者の対峙が熱い。そして二人を育てたハーリーは、表立っては見せない後悔と、拷問されてでも笑わなければならないという虚勢、そんなアメリカそのものを象徴するかのようです。こうしてみるとなかなかヘヴィな話ですが、そんなミッチがエージェントとして成長していくという面白さもあるのが良いんですよね。ラストで敵大将と同じエレベータで幕、というのもクール。これはシリーズ化したらなかなか面白い気がします。

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