FC2ブログ
2018
07.11

焼き尽くす業火、立ち向かう勇気。『オンリー・ザ・ブレイブ』感想。

only_the_brave
Only the Brave / 2017年 アメリカ / 監督:ジョセフ・コジンスキー

あらすじ
熱いです。



隊長のエリック・マーシュ率いる森林消防団に、元カノの妊娠を機に入隊したヤク中の青年ブレンダン。過酷な訓練に耐えながら徐々に仲間たちにも受け入れられていく。そんなある日、大規模な山火事が発生し、エリックら団員たちも駆り出されるが……。『オブリビオン』のジョセフ・コジンスキー監督による、消防士たちの実話を元にしたヒューマン・ドラマ。

アリゾナ州プレスコット市初の「ホットショット」と呼ばれる消防精鋭部隊(チャーリー・シーンのコメディ映画ではない)に認定されたグラニット・マウンテン消防隊を描く実話もの。山火事に立ち向かうため日々訓練に励む消防隊員たち、そこに新たに入隊したブレンダンや隊長のエリックを通して、命懸けの仕事に挑む男たち、それを支える妻や家族の姿が描かれます。崖上から見れば雄大な景色の森林もひとたび火事が起こればそれら全てが「燃料」となる、そんな大自然との戦いを繰り広げる森林消防団の勇姿、仲間との何気なくも楽しげなやり取り、そして彼らを送り出す家族との繋がり。それらを丁寧に描き、さらに積み重ねていくことで物語がどんどん深まっていきます。しかしそんな危険な仕事をやり遂げていく勇敢な姿に痛快さを感じると同時に、なぜか拭えない不穏さが続くという緊張感。実話をこういう風に撮るのか、と驚かされます。

エリック隊長役は『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』『デッドプール2』と出演作が続くジョシュ・ブローリン。その貫禄と渋さ、時折見せる危うさといった演技がさすがです。娘のためにダメ人生から脱出しようとするブレンダン役には『セッション』のマイルズ・テラー。序盤のダメっぷりが本当にダメだったり終盤の姿も見事。隊員のマックことマッケンジー役の『バトルシップ』『ローン・サバイバー』テイラー・キッチュ、最初はヒゲ面でわからなかったけどやはりキッチュはイイですねー。ほか、副隊長ジェシー役に『ワールド・ウォーZ』ジェームズ・バッジ・デール、エリックの上司スタインブリンク役に『キングスマン:ゴールデン・サークル』のジェフ・ブリッジス、エリックの妻アマンダ役に『ノア 約束の舟』ジェニファー・コネリーらが出演。

地面をどんどん拡がる火やあっという間に囲んでくる炎などはまるで生き物のようで、街なかの火災を描いた『バックドラフト』とはまた違ったスリル。そしてエリックが見せる消防士としての絶対的信頼感、ブレンダンの一念発起するクズの頑張り、マックとの思いがけないドラマチックな人間模様、エリックが子供を作らないという覚悟、そういった全てのシーンにも意味があります。だからラストには息を飲み、心を揺さぶられる。困難に立ち向かう男たちの勇気が凄まじいです。

↓以下、ネタバレ含む。








陽気でガサツな野郎共の車での出勤であるとか、プールから水を吸い上げるヘリコに向けるプール持ち主のサムズアップとか、序盤がロックでイイ。そこにはプロとしての余裕も感じさせつつ、二番隊としての苦渋を舐める隊員たちには口惜しさも滲みます。だから「ホットショット」になるために隊員たちが訓練する姿や、苦手な接待を市長に行うエリックの努力が際立ってきます。それでいていざ審査というときに自分の判断を信じて我を通してしまうエリック。それはこの仕事に対する矜持でもあるわけで、だから不評を買いながらも信頼を得るという結果が熱い。隊員たちが巨大な樹を守ったときの誇らしさも熱い。

そして燃え盛る炎も超熱い。もちろんCGも使っているものの、本物の木や仕掛けの着いた鋼鉄の木を使って撮影用の森を作り、実際にそれを燃やして撮影したという、ちょっと頭おかしいほど手間をかけてリアルさを追及したそうで、まあ熱い。森のなかとは言え屋外なんだし逃げようと思えば逃げられるのでは、という予断をブチ壊す火の手の恐ろしさがスリルです。あえて事前に回りの草を焼いたり溝を掘ったりして延焼を食い止めるという森林消防隊ならではの手法であるとか、飛行機から撒かれる水の威力がとんでもないということがわかったりするのも面白いです。

マックのどうでもいい女の話に盛り上がったり、崖下の海に燃えながら落ちていく木に歓声を上げたり、危険な仕事だけにちょっとした合間にリラックスしようとする消防隊の面々が好ましいです。特にマックとブレンダン、最初はブレンダンをいびっていたマックが、徐々に馴染んできたブレンダンに一緒に住むよう誘われてからはもうマブダチなわけですよ。赤ちゃんがやってきて大慌てのマイルズ・テラーとテイラー・キッチュが超かわいくて、あまりの微笑ましさに泣きそうになります。ブレンダン・マクドナウという名前をからかわれて呼ばれた「ドーナツ」という呼称がいつの間にか親しみを込めた愛称になっていたりするのもイイし、「本人をいじるのはいいが家族の話はするな」と言うのも道理をわかった奴らという印象を与えるし、ホットショットに昇格したときのガーデンパーティでの家族と戯れる姿も温かいんですね。

それでありながらどこか不穏な空気がまとわりつくのです。ヒヤリとするシーンは何度もあるし、その都度危機は打開されて胸を撫で下ろすわけですが、そのうち誰かが死ぬのでは、という予感が拭えません。この落ち着かなさは、彼らの帰りを待つ家族の気持ちそのものでもあるでしょう。そして不安は積み重なっていきます。炎に包まれた熊が走ってくるという美しくも不吉なイメージ。いつ命を落とすかわからない仕事ゆえに子供は作らないと言うエリックと、子供が欲しいと思うようになった妻アマンダとのやり取り。市街の消防に移りたいと言うブレンダンに始めは怒ったものの「全力で助けになる」と態度を変えるエリック。ブレンダンに付いてた看護師に夢中になるマック。今回で指揮官を辞めると言うエリック。小屋へ向かおうと言うエリックの言葉に微かに躊躇するジェシー。そして何度も登場する防火テント。いや、まさか、全てが死亡フラグだとは……。

トリガー3の「山を捨てる」というラインを越えているのに小屋に向かったのはエリックの判断ミスなのか、あるいは誰にも予測できないほど火の手が速かったのか。どちらにしろ彼らは森の先にある街を、そこに住む人々を救うことを常に考えていました。それだけにあまりに悲痛な現実に打ちのめされます。防火テントは訓練で執拗に映されていたので、これさえ被れば大丈夫なはずというイメージもあるわけですね。だから芋虫のように焼け跡に転がる無数のテントには、悲しみというよりただただ失意だけが残ります。体育館に集まった家族がたまたま生き残ってしまった彼を見る「自分の夫ではない」という絶望と、非難さえ滲む幾多の目。ツラい……。

これは大いなる喪失の記録であり、同時に命懸けで人々の生活を守る者たちの記憶でもあります。死んだから英雄なのではなく、生きているときに成した行為こそが尊いのだ、ということを示していると言えるでしょう。それは彼が述べた「生き残った罪悪感より、仲間を誇りに思う」という言葉に集約されているのです。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1402-f07853f2
トラックバック
back-to-top