2018
07.09

優しさと共にあらんことを。『ワンダー 君は太陽』感想。

wonder
Wonder / 2017年 アメリカ / 監督:スティーヴン・チョボウスキー

あらすじ
顔は人の過去を示す地図だ。



生まれつきの障害で人とは違う顔をもつ10歳の少年オギー。それまで母と自宅学習をしてきた彼が、小学5年生になって初めて普通の学校へ通うことに。はじめは奇異の目で見られていたオギーだったが、やがてオギーの行動によって同級生たちにも少しずつ変化が表れる……。R・J・パラシオの小説『ワンダー』を、『ウォールフラワー』スティーヴン・チョボウスキー監督により映画化したヒューマン・ドラマ。

トリーチャー・コリンズ症候群という先天性の障害で、顔の形が変形した10歳の少年オギー。ずっと自宅で学習をしてきたオギーが、小学5年生となるのを契機に一般の学校へ通うことになります。ごく普通の少年なのに見た目が他の子と違うというだけで予測される差別、それを自分でもわかっていて宇宙飛行士のヘルメットを被っているオギー。それでも両親は息子を外の世界へと送り出します。これは差別と偏見を超えようとする物語。序盤のシーンで息子を学校へと送る両親にシンクロしてしまった時点でもう泣きそうなんですが、だからと言ってあからさまに涙を誘おうとするようなベタな感じではありません。さりげない台詞やシーンによる見せ方はあざとさを感じさせず、むしろとても爽やか。もっとエグい展開も覚悟していたので、そういう点ではちょっとキレイすぎる気もしますが、でも世界に優しさはあると思わせてくれるのがとてもイイ。爆涙です。

オギー役は『ルーム』の子役ジェイコブ・トレンブレイ君。特殊メイクをしながらも目で見せる感情が上手い。母イザベル役の『マネーモンスター』ジュリア・ロバーツが見せる常に子供たちのことを思いながら毅然とした姿、父ネート役の『ナイトミュージアム エジプト王の秘密』オーウェン・ウィルソンが与えるユーモアと勇気、『バトルフロント』でステイサムの娘役だった姉ヴィア役のイザベラ・ヴィドヴィッチの健気さも抜群。またオギーのクラスメイトであるジャック・ウィル役のノア・ジュプ君がもう、なんてイイ子!ジュリアン役の『15時17分、パリ行き』ブライス・ガイザー君も上手いし、ヴィアの友人ミランダ役の『誘拐の掟』ダニエル・ローズ・ラッセルもなかなか。

主人公のオギーだけでなくその周囲の人物にも焦点を移していくというのが、オギーを中心としながらも物語に拡がりを与えていて構造的にも実に面白いです。宇宙飛行士への憧れや太陽系の例えなど宇宙関連の要素もイイ雰囲気を与えているし、まさか『スター・ウォーズ』がそういう形で絡んでくるとは。オギーはもちろん、一見まともな人たちだって悲しみは抱えているということを描き、それを乗り越えることを嫌味なく映し出す。素晴らしかったです。

↓以下、ネタバレ含む。








最初は案の定奇異の目に晒されいじめにあうオギー。戻ってきてすぐヘルメットを被ってしまうオギーには心が痛み、それを見る母イザベルの姿にやりきれなさを感じます。子供が残酷であるのは言うまでもないし、父ネートも最初は反対してたくらいなので、親としては相当な覚悟をもっての決断でしょう。それでも「いま外に出ていかなくては」という強い意思を持って送り出す姿にもう泣けちゃいます。ネートの「手を上げるのは一回だけ、でも理科はガンガンいけ」というアドバイスとか、イザベルが「あなたは醜くない」と断言する姿も良いし、ヴィアがとても優しいお姉ちゃんなのも好ましくて、この家族に幸あれと思わずにいられないですね。だからジャックが自らオギーと話し、オギーもそれを受け入れるのが観てる方もスゴく嬉しい。ジャックと一緒に学校から出てきたオギーがヘルメットに見向きもしないのを見たイザベルの、予想外の展開に泣きそうになってるのがまたたまりません。オギーを特別扱いせず普通の子として社会に出すという親の覚悟が実を結んでいきます。

オギーだけではなくその周囲の人々にもフォーカスしていくというのは、作品としてもオギーだけを特別扱いしないことに注意を払っているというか、それぞれに事情があるということを、ロッカーの扉やドアなどの開け閉めで章を切り替えることで新たな視点で語られていくんですね。ヴィアの章では、彼女はとても優しいお姉ちゃんであるし、オギーが生まれてすぐ好きになったとも言っていて本当にイイ子なんですが、それだけに両親がオギーにかかりっきりなことを自分が我慢することで過ごしているところがあります。オギーという太陽を中心とした太陽系という例えは、不満ではないけど寂しさはあるということでしょう。それだけにヴィアと祖母のシーンは「オギーにはたくさん天使がいるから」と言ってヴィアと過ごす祖母の優しさに泣けます。祖母が他界し、親友だったミランダとも疎遠になってしまったヴィアはジャスティンという彼氏ができたことで救われますが、これがミランダから見るとまた別の事情が出てくるわけですね。

ミランダの章、彼女がヴィアを避けてた理由は、サマーキャンプでミランダになりきって「こんな家族が欲しい」と思った気まずさからなんでしょうか。最初は夏休みデビューか?と心証の悪いミランダですが、あまりよろしくない家庭環境のせいもあって追い詰められていたわけです。思わずオギーに電話してしまい本音をもらしてしまうミランダには、別視点から見るとこうも違うかという構成の妙を感じると同時に、ミランダの複雑な思いも知ることができます。ヴィアを避ける心情がちょっとぼんやりしてたり、ヴィアとの仲直り描写がないのは少々物足りない気もしますが、ヴィアの家族が芝居を見にきているのを知りヴィアに主役を譲り渡すのとか、ほんともうイイ子。ヴィアたちを「地球のような家族」と、ここでも宇宙に見立てた例えをするのが統一感あります。

そしてジャック・ウィルですよ。ジャックの章で語られるように「アイスクリーム屋で見かけた子」で案内を引き受けた時点では同情の念が大きかったんでしょうが、オギーと付き合ううちに見た目ではなくその中身に惹かれて、オギーをのことを「親友だ」と述べるのが泣けます。ジャックがあんなことを言った理由としては、友達の前で思ってもいない強がりを言ってしまうのは子供ならよくあること。オギーがハロウィンでボバ・フェットをやると言っていたからゴーストフェイスのオギーに気付かなかったんですね。サマーから聞いた「ゴーストフェイス」だけで通じるということはその日の自分の言動が心に引っ掛かっていたということなのでしょう。お互い好きなのにすれ違ってしまうというのが非常にせつなく、ジュリアンに食って掛かりブラウン先生にすがり付いて泣くのも痛々しい。それだけにマインクラフトで仲直りするシーンは泣けます。理科大会で二人で優勝するのもね、もう二人とも愛しくてね、泣きますね。あと自らオギーのところにくるサマーもイイ子だ……。

オギー、ヴィア、ジャック・ウィル、ミランダとそれぞれの章があるように基本的には子供たちが中心に描かれます。大人は基本庇護者として子供を見守る存在であり、解決するのは子供たち自身なんですね。母イザベルがオギーのために自分の仕事を中断していたり、父ネートはオギーのヘルメットを隠したりしますが、その経緯はそこまで詳しくは描かれません。でもその匙加減が逆に大人たちにもドラマがあることを垣間見せていてイイ感じ(ところでネートからイザベルへのプレゼントも結局中身はなんだったのか?)。担任のブラウン先生のさりげないフェアさもとても好感が持てます。あとはチューバッカがそのまんま出てきたのには驚き。監督のスティーヴン・チョボウスキーはディズニーの『美女と野獣』で脚本を担当してたのでその関係でオッケー出たんですかね。チューイはオギーの思う自己の投影であり、イマジナリーフレンドでもあり、守護者でもあります。オギーの心の支えになり、ジャックと打ち解けるのにも役立ち、映画全体の宇宙要素にも一役買っていて、こうして見ると『スター・ウォーズ』というのはもはや共通言語でもあるなあ、なんて思います。

遠足で7年生とケンカ後に、それまでいじめッ子だった子供たちに「カッコよかったよ」と言われて思わず泣いちゃうオギーにも爆泣き。なんか泣かされてばかりなんですけどしょうがない。ひとつ気になるのは結果的に悪者役がジュリアン一人に押し付けられてしまうことでしょうか。ジュリアンのオギーへのいじめは許されることではないので報いとして仕方ないかもですが、明らかに親の指導も悪いので、チャンスがあってもよかったのかなとも思います。ただ僕は気付けなかったんですが、ラストにはジュリアンも映ってるようですね。なんて優しい……。ちょっときれいすぎる気がしなくもないですが「正しさと優しさなら優しさを選ぼう」という話であるし、「オギーは顔を変えられない、我々の見方を変えなければ」という校長の言葉こそ重要なので、そこは多少の都合のよさはあっていいし、むしろあえての優しさだと思うのです。

どうせなら最後にもうひとつ章を立てた方がバランスは良かったかなという気もしますが、それはかえって野暮ですかね。それはともかく、不安と悲しみで癇癪を起こしていたオギーが、心配する親を見もしないでバスに乗り込むまでになり、オギーだけでなくそれぞれが人との関係という壁を乗り越えていき、皆が渾然一体となっていく感じを醸し出しながら、最後に表彰というフィナーレ。大事なのは美醜ではなく心のありようであるというのを爽やかに描ききってくれます。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1401-ccc12d97
トラックバック
back-to-top