2018
06.05

クレイジーもふもふバトル!『ピーターラビット』感想。

Peter_Rabbit
Peter Rabbit / 2018年 アメリカ / 監督:ウィル・グラック

あらすじ
のどかな風景は戦場と化す!



イギリス湖水地方で仲間たちと暮らすウサギのピーター。仲の良い人間の画家ビアとも上手くやっていたが、ある日ビアの隣に引っ越してきたマグレガーがウサギたちを追い払おうとしたことで、ピーターとマグレガーとの争いはどんどんエスカレートしていく……。同名絵本の実写映画化。

イギリスのビアトリクス・ポターによる絵本『ピーターラビット』がまさかの実写化。原作の絵本は1作目くらいは読んだことありますが、あれをどうやって実写の長編映画にするのかが全く予測が付かない……と思いつつ鑑賞です。ピーターは今日も仲間たちとマグレガー邸の庭で育てている野菜奪取のミッションに奮闘中。しかしマグレガー老人の代わりにやってきた若きトーマス・マグレガーはウサギたちとの徹底抗戦の構えを見せる、という話。原作は牧歌的な雰囲気がありつつもちょっぴりシビアな感じではあったとは思いますが、それがまさかこんな容赦のないタマの取り合いバトルになるとは……。とにかく人間vsウサギの全力での戦いはもはや戦争映画。でもコメディとしての組立も上手くて、スラップスティックなドタバタ風味は『トムとジェリー』のようでもあるし、ウサギたちが喋る世界観の見せ方も不自然さを感じさせないバランスを取っています。そして思いがけない赦しと癒しの物語にもなっていて、斜め上の面白さです。

トーマス・マグレガー役は『エクス・マキナ』『バリー・シール アメリカをはめた男』のドーナル・グリーソン。『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』でも見せたコメディ演技の見事さが素晴らしい。トーマスのお隣さんでウサギたちの味方である画家ビア役、『ANNIE アニー』『X-MEN:アポカリプス』のローズ・バーンもキュートで良いです。あとマグレガー老人役は『ジュラシック・パーク』のサム・ニールなんですが、あれはわかんないぞ。ピーターの声は『イントゥ・ザ・ウッズ』ジェームズ・コーデンですが、吹替で観た千葉雄大も違和感ないし上手かったです。ただ字幕版だとピーターの3匹の妹たちを『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』マーゴット・ロビー、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』エリザベス・デビッキ、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』デイジー・リドリーが声当ててると後から知ってそっちを観たかった……。レイとハックス将軍が共演だったのか……。

監督は『ANNIE アニー』のウィル・グラッグということでそつなくファミリー向けに仕上げてるのかと思ってたので、ここまで生存を賭けたガチバトルになるとは予想外でした。でも皮を剥いでチチタプにされたりはしないのでお子様にも安心。イギリス湖水地方の風景も美しく、ウサギたちのもふもふ具合も可愛らしい(でも油断すると殺られる)。見た目可愛いけど生きることに真剣という意味では、意外と正当な実写化と言えるかもしれません。

↓以下、ネタバレ含む。








はなから「教育的ではないよー」というエクスキューズをブッ込んでくるので、ちょっと過激なアクションとかあるのかな、くらいに思ってましたが、よもや生死をさ迷う凄惨な話になるとは。トーマスは全力でクワを振り下ろし、ピーターは本気で亡き者にしようと襲ってくる。電気ショックを仕掛けまくり、電撃で吹っ飛びまくり、挙げ句ダイナマイト投げまくりの爆発しまくり。見た目の残虐性は薄いのでそこまで尖ってる感じでもないし、むしろ『ファンタスティックMr.フォックス』なんかの方がエグいですが、やってることは殺し合いというのが吹っ切ってて最高です。でもそれをコメディとして成り立たせるだけの描写がしっかりあるので、そこまで殺伐とはしてないですね……いやどうだろう、アレルギーであるベリーを食わされて必死で薬打って九死に一生を得るとか笑えないところまで行ってる気もするな。死亡確認も抜かりないというところにプロみを感じます。

トーマスは有名老舗デパートのハロッズで働く優秀な男なのに溢れる野心が変な方向に向かって出世を逃すという、デキるんだかデキないんだかよくわからないという実にコメディに相応しいキャラクター。潔癖症なだけに害獣への対応が大げさだったりとか、ピーターたちに酷い目にあわされても悲壮感を感じさせない程度の嫌味加減とか、都会から田舎に来た者という観点、そして自分本位なんだけどその奥底に善人らしさがあるというのも絶妙のバランスです。便器の水をストローで飲もうとするとかクレイジーで最高なんですが、子供のおもちゃを求める客に要望に合う品をお勧めできる嬉しさを求めたりもします。色々複雑な人間性を解離せず表現しつつあのコメディ演技、演じるドーナル・グリーソンの役作りは何気にスゴいです。と言うかCGであるウサギたち相手の奮闘は実際はほぼ一人芝居なんだよな、と考えると余計スゴい。

一方で動物たちの個性の付け方も良いですねえ。ピーターの調子こいた感じがいかにも若造という雰囲気だし、三つ子の妹たちも偉ぶる長女、破壊神の次女、真面目な三女とユニーク。あとベンジャミンはイイですね、和みます。それでいて言うべきことをビシッとピーターに言うところが素敵。紳士ぶってるのに食い方は汚いブタとか、車のライトで固まる鹿、超ハイテンションのニワトリなどもかましてくれます(ちなみにニワトリの吹替は千葉繁なのでさらにハイ)。動物たちが主人のいない家で好き勝手暴れる姿は『ペット』以上に派手で『ベイブ 都会へ行く』以上に突飛。ピーターの両親を描いた絵のかけ方でもめるシーンなど、ちょっとくどいなあと感じる点もありますけどね。でも実写にしては擬人化しすぎにも思えるのに、意外とすんなり見れてしまうのは不思議。これは序盤からファンタジーとしての動物たちをしっかり描けているということでもあるでしょう。終盤ピーターの声がトーマスに聞こえるというまさかの展開には驚きますが、第四の壁を破って観客に話しかけたりもするという積み重ねもあって(幻聴かもしれないと思わせるのも込みで)ピーターとトーマスが通じあったと見ることができます。

実際トーマスとピーターは通じるところもあるわけです。トーマスの満たされない思い、ピーターの母を失った寂しさ、そんな二者を癒してくれる女性ビアを何よりも大事にしようとする男とオス。最初は相手をぎゃふんと言わせるのが目的だったのに、いつしかビアを挟んでのライバルになっていくことで、単なる憎き敵ではなくなっていくんですね。ピーターはウサギたちには見せたことのない笑顔のビアにジェラシーを感じつつも、ビアを介することで自らの行いを反省したりもします。そんな経緯を踏まえているので、終盤ピーターがビアのためにトーマスを迎えにいくのも納得できるし、額を合わせての謝るポーズを繰り返すのも最後に自分の非を認めてビアに謝ることに繋がっています。

こうして見ると、前半が仁義なき戦いなだけにむしろ後半の和解と許し合う心は沁みますよ。最後まで笑いどころも豊富で、特にロンドンから戻るときのハイライトには爆笑だし、争っていたときの電撃トラップを不愉快夫婦を追い返すために使うという協力プレイも楽しい。そして夢を叶えたトーマス、本来の才能を開花させるビア、自由を得たウサギたちという大団円。捻りの効いたミュージカルパートや原作の絵を取り入れたアニメパートなどのサービス感もあって、意外にも満足度の高い一作になってました。しかもなんと続編も決まったらしいですよ、楽しみ。難を言うならば、もうウサギをただの可愛いペットとは思えない、ということですね。

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