2018
05.31

馬と銃と爆撃と。『ホース・ソルジャー』感想。

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12 Strong / 2018年 アメリカ / 監督:ニコライ・フルシー

あらすじ
人を殺した目(とガラスの腰)。



2001年9月11日に起こった米同時多発テロ。その翌日、タリバンの拠点を叩くため最前線に志願したミッチ・ネルソン大尉は、わずか12人でアフガニスタンへ乗り込む。反タリバン勢力のドスタム将軍の協力を得たものの、険しい山岳地帯のため、ミッチらは馬に乗っての戦いを強いられるが……。実話を元にした戦争ドラマ。

地元勢力と手を組んで拠点を空爆しテロ集団の拠点マザーリシャリーフを制圧する、という任務のためアフガニスタンへ来たアメリカ陸軍特殊部隊、通称グリーンベレーの12人を描いた実録戦争もの。ダグ・スタントンのノンフィクション小説『ホース・ソルジャー 米特殊騎馬隊、アフガンの死闘』を元にしているようですが、製作が『パイレーツ・オブ・カリビアン』を始めとする娯楽作のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーなので、映像面ではかなり派手にかましてます。銃弾が飛び交い爆撃が行われ戦車が疾走するなかを「馬で駆け回る」というのが、中世的な合戦と現代的な戦争が融合したようなファンタジックな趣もあり、予想以上にヒロイック。9・11後の悲壮感はありつつも娯楽作品として観れます。

部隊の指揮を執るミッチ・ネルソンが、冷静な判断と勇敢な行動で素直にカッコいいんですよ。演じるは『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』などソー役でお馴染みクリス・ヘムズワース。『ゴーストバスターズ』とは真逆の頭のいい役ですが、堂々とした態度が結構知的に見えます。またミッチの右腕であるスペンサー准尉役はマイケル・シャノン。『ノクターナル・アニマルズ』『シェイプ・オブ・ウォーター』と強面の役が続きましたが、今作ではシャノン史上最高に可愛いです。可愛い?もう一人の腹心の部下ディラー役が『アントマン』マイケル・ペ~ニャなんですが、お調子者のペ~ニャの方がむしろシャノンより逞しいぞ。この二人とクリヘムとの掛け合いにはそれぞれに信頼感の感じさせ方があって良いです。ちなみにミッチの妻役の『ワイルド・スピード ICE BREAK』エルザ・パタキーは実際にクリヘムと夫婦なんですね。

ミッチの部隊はわずか12人。タリバンを倒すにはまずドスタム将軍の信頼を得て部隊を整えねばならず、それでも味方は400人、対して敵勢力は5万人。空中から攻撃する爆撃機を上手く誘導するための座標を得るため敵陣深くに入り込まなければならず、しかも移動手段は隊員のほとんどが未経験の馬。そんな難易度の高いミッションに挑むスリル、ドスタム将軍との刺激的なやり取り、戦闘シーンのド迫力など見応えあり。そして彼らの戦う理由に熱くなります。

↓以下、ネタバレ含む。








ミッチは実践経験がないにも関わらずアフガニスタンへの出征を志願し、自分のチームが選ばれるだけの根拠を示し、自ら敵陣へ突っ込んでいく勇気も見せ、頭の回転は早く、交渉の腕も高く、実家が牧場だったからと馬の扱いも上手い。冷静に見るとかなり完璧超人なんですが、演じるのがクリヘムであること自体が結構説得力になってるのですんなり受け入れてしまいます。難を言えば、初めて実戦で人を殺したことにより手が震えるシーンがあまりビビってるように見えないということでしょうか。とは言えマルホランド大佐に納得させるところなどはプレゼン力に驚くし(大佐を演じる『エリジウム』のウィリアム・フィクトナーが見事なつるりん頭なのにも驚きますが)、見るからに手強そうな『アメリカン・スナイパー』のナビド・ネガーバン演じるドスタム将軍の態度にも冷静に食いついていく姿も頼もしい。この主人公が主人公然としているというのが上手く作用しています。

仲間たちも登場頻度の差はあるもののそれなりに12人それぞれ個性を出しており、特に「人を殺した目だ」とか言われちゃうマイケル・シャノンのスペンサーは、それとは裏腹に腰を痛めて皆に労られたり最後に倒れたりと、薄幸のサイドキック感。ペ~ニャの演じるディラーは最初は部隊を離れようとしていたミッチに不満たらたらだったのに信頼を寄せるようになったら仲睦まじげなのが微笑ましいです。また『ムーンライト』のトレバンテ・ローズが演じるマイロは現地の少年との交流という戦争ものによくある役割ですが、この少年が側にいるのが米兵を守るという意味があったり、徐々に親近感が増したところで少年が巻き込まれるという悲劇があったりします。他にも解放した街に思いを馳せるドスタム将軍など、わりとウェットなドラマもあるわけですが、山岳地帯の乾いた風景とでバランスが取れているとも言えるかも。だから逆に出撃に際しての家族とのやり取りは若干過剰にも思えます。

馬で銃や戦車と戦うというのが強大な勢力に立ち向かう悲壮感と英雄感を醸し出しているわけですが、アクション的にも馬で疾走する姿はアガるし、ミサイル飛ぶなか馬で走るという映像的にもスリルがあって良いです。乗馬初心者の兵士たちがなぜすぐ馬に乗れるんだと言われそうですが、まあ人に慣れた馬は利口ですから。一方で空爆による一掃攻撃という現代的な描写も迫力。何度か同じことを繰り返すので少しばかり単調ではあるものの、座標のズレによる失敗、投降と見せかけた自爆攻撃、別行動を取ったディラーとの連携などで上手く脚色しています。あくまでアメリカ側の視点が強く敵側のドラマというのはほぼないし、9・11の悲劇が背景にあるためどうしてもヒロイックにはなるでしょう。ただ、敵指導者を「少女たちに教育を受けさせた者を殺害する」という側面を見せて「悪」として描くことで、ミッチたちの戦いがタリバンに虐げられる現地の人々の解放にもなっている、つまりは「正義」である、という作りになっているんですね。だから戦争映画としては偏りがあります。むしろヒーローアクションに近いでしょう。あまり弾にも当たらないし。あるいは西部劇ですね。

とは言え母国の仇討ちにわずかな人数で挑み、しかも極秘任務のため今日までその活躍が明かされなかったODA595の兵士たちには、やはり熱くなるものがあります。縄張り争いをやめて同士を讃えるドスタム将軍と、ツインタワーの欠片をその地に埋めるミッチ、二人のリーダーには平和への祈りのようなものさえ感じられます。戦争を肯定するプロパガンダ映画と見る向きもあるようですが、僕は人知れず世界を守った者たちの語り継がれる物語として見たいと思いました。

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