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2018
05.06

衝撃に備えろ。『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想(その1)。

Avengers_Infinity_War_01
Avengers: Infinity War / 2018年 アメリカ / 監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

あらすじ
サノス襲来。



6つ全てを集めれば世界を滅ぼす無限の力を手にすると言われる「インフィニティ・ストーン」。その力を狙う宇宙最強の敵サノスに対抗しようとするヒーローチーム、アベンジャーズだったが、サノスとの戦いは熾烈を極める……。『アベンジャーズ』シリーズの第3作となるヒーロー・アクション。

マーベルコミックのヒーローたちを描く「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」の通算19作目、「アベンジャーズ」を冠する作品としては3作目となる本作。それに相応しく多くのキャラが登場。アイマンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクら当初からのメンバーに、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ドクター・ストレンジ』『スパイダーマン ホームカミング』『ブラックパンサー』からもヒーローたちが参戦し、究極の力を持つ6つの石インフィニティ・ストーンを巡って、宇宙最強の敵サノスと渡り合います。『アイアンマン』公開から10年経つMCUの集大成とも言うべき大作であるため、『アベンジャーズ』1作目のようなお祭り感を期待するところですが、予告などには「全滅」という言葉が踊るという不穏さ。一体どうなるのかとおののきながら鑑賞したわけですが……。

率直な感想を述べれば「ちょっともう、どうしていいのかわかんない……」という感じで、とにかく衝撃の展開であることは間違いないでしょう。翻弄され、引きずり込まれ、喜怒哀楽あらゆる感情を刺激されます。内容についてはネタバレパートで言及するとして、スゴいのは「多すぎる」と言ってもいい大量のキャラにそれぞれ見せ場があって、雑に扱われる者が一人もいないということ、それでいて混乱することもないということです。話は複数の舞台で同時に進行しますが、その切り替えのタイミングも的確で置いてかれる感もありません。テンポの速さと情報量の凄まじさで若干気持ちの整理がつく前に進んでしまうというのはあるかもですが、理解に困るということはないです。速いのに何をやっているかがわかるアクション設計も素晴らしく、もちろん映像の迫力は言うに及ばず。この辺りはさすが『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』の監督でもあるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟、信頼に十二分以上に応えてくれます。

MCU未経験で本作から観てもわからなくはないだろうし、本作観てから他を遡って観てもいいですが、ただ各キャラの説明とか紹介みたいなエピソードは一切ないので、MCU過去シリーズを観ていることが前提ではあります。既知の説明は省き、キャラとアクションでとにかく物語をドライブさせていく。これはもうシリーズを10年も積み重ねてきたからこそできる作劇なんですよ。もはや本作単体で観てどうこうという次元じゃないのです。作品ごとに様々なテイストを打ち出しながら、統一した世界観を徹底してきた結果のクロスオーバー。だからこそヒーローたちの活躍に一喜一憂し、その結末が胸に響きます。

↓以下、ネタバレ含む。








■強大な敵サノス

『アベンジャーズ』のラストのチラ見せから6年、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でロナンの黒幕として登場したのを経て、ついに自ら動き出したラスボス、サノス。この最強の敵サノスがメインで登場するとは知っていたものの、まさか出てきていきなり絶望のドン底に叩き落とされることになるとは……。『マイティ・ソー バトルロイヤル』のラストから繋がる冒頭、MCU最強であるソーとハルクに圧勝する強さを見せ、MCU10年の積み重ねを冒頭5分でブチ壊しかねない意外性、そしてヘイムダルの最後のビフレストにより地球に送られたハルク=ブルースが「サノスがくる」とストレンジに告げてのタイトル。この時点でサノスはザンダー星を滅ぼしてパワーストーンを手に入れており、さらにロキの持っていたスペースストーンも手に入れ、サノスの鬼強さと共に無限の戦いが初っぱなから始まっていることをオープニングで示します。

本作は基本的にはサノスと手下が石を集めていく、それを食い止めるためにヒーローたちが立ち向かっていくものの、サノスが次々と石を手に入れていくという流れです。サノスを中心に話が進んでいくと言っていいでしょう。この「サノスを中心に回る」という点に加え、サノス自体がいたずらに破壊や滅亡を目的としているわけではないというのが特徴的。増えすぎた宇宙の生命を半分にすることで残り半分を生かそうとする、「滅ぼす」のではなく「救う」ことが目的なわけです。しかも救う命は全くの無作為であり、選民思想があるわけでもない、ある意味フェアでさえある。そのためにはいかなる犠牲も厭わないという強い意思があり、ソウルストーンを手に入れるために愛する娘をも犠牲にする。ガモーラに愛情をかけていたというのも意外性があり、絶対的な悪と断じることができない深みを持たせています。サノスはもう主人公だと言ってもいいほどの扱い、むしろそう見た方がわかりやすいほどです。


■奪うのか守るのか

一方でヒーロー側はこのサノスの行動を止めるべく戦うわけですが、半分の命を犠牲にもう半分を救うという思想の是非については特に議論はされません。それは今までのMCUで築き上げてきた「人々を守るのがヒーロー」という思想が根付いているからであり、そのためには自己犠牲さえ厭わないことが描き続けられてきたからです。『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』では力の限りソコヴィアの民を救おうとするし、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』で起こる対立は人々を救う立ち位置によるものです。『ドクター・ストレンジ』でストレンジは死に続けてでも世界を救う道を進み、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でクイルたちは宇宙を救うために大きな犠牲を払い、『スパイダーマン ホームカミング』でピーターは良き隣人として平和を守ることを選び、『マイティ・ソー バトルロイヤル』でソーは多くを失いながらそれでも民を救い、『ブラックパンサー』でティ・チャラは世界を救うために知識の共有を決意します。遡ればトニーが軍事産業から手を引くのも、キャップがその身を賭して氷漬けとなるのも「命を守るため」です。

これは時には矛盾を孕むこともあるでしょう。戦いのなかで全てを救うことができないことは『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』でのジモによっても描かれているし、『スパイダーマン ホームカミング』では戦いの結果予想もしなかったヴィランが生まれます。本作でもまた、ワカンダの一大集団戦などはヴィジョンを、引いては世界を守るためにむしろ多くのワカンダ兵が犠牲になってさえいます。しかし「多数を救うため少数を犠牲にする」のと「多数を救おうとして少数が犠牲になる」のとでは意味が違ってきます。目的は同じでもそのために命を「差っ引く」のか「守る」のかで全く異なるんですね。またサノスの思想はあくまでサノスの主観で独善的なものですが、一方のヒーロー側はそれまで人々を守ってきたことが彼らをヒーローたらしめているわけです。それこそMCU10年の積み重ねであり、それに比肩させるためにサノスの描写が多くなるのは必然と言えます。

だから「命に大小はない」と言って救おうとするキャップは決してブレないし、ヴィジョンは自らの命を投げ出そうとするし、ストレンジは「見捨てる」と言いながらもトニーを救うことを選びます(これは他にも理由がありそうですが)。ただ、愛する者を自ら手にかけるという点では、サノスだけでなくクイルとワンダも同じ決断を下します。サノスは引き金を引いたクイルを認め、石を破壊したワンダを「気持ちはわかる」と慰める、こういったところがサノスの人物像をより際立たせつつヒーロー側の悲壮感も高めていて上手いです。


■登場、掛け合い、バトル

冒頭だけでも溢れる喪失感は、その後何度も襲い掛かってくるんですが、かといって本作は重いだけのシリアスドラマというわけではなく、それ以外にも十分以上に面白い要素が詰まっています。全てにおいてアクション、コミカルさ、ケレン味が施されていると言ってもいいでしょう。「登場」「掛け合い」「バトル」という観点だけ見てもそのクオリティには驚きます。各人の「登場」シーンは知ってるキャラが出てくるだけでアガるのは当然ではあるんですが、それがいちいちカッコよかったり衝撃的だったりしてたまりません。ロキの言葉で飛び出すハルク。逆立つ腕の毛と共に登場するピーター。画面にでっかい「SPACE」の文字(最高!)。電車の向こうに現れる影(最高!)。ヴィジョンの石を取り出すには、で流れてくるワカンダのテーマ。ワカンダ製の新たな腕を得て遂に復帰するバッキーと並び立つキャップ。そして復活したソーとロケット&グルートの降臨!「え、どうなるの?」からの「誰がきた?キター!!」という一連の流れは、ギリギリで助けがくるというお約束パターンではあるものの、そのお約束をこれでもかとブチ込んでいるので興奮必至ですよ。

さらにそこからおなじみのキャラ間での、あるいは新たなキャラ同士での掛け合いがあるのが楽しくてしょうがないです。トニーとストレンジは多分合わないだろうなと思ったら案の定合わないし、ガーディアンズ登場時の会話はお気楽呑気だし、クイルがソーと張り合うところはマヌケで最高。ピーターとストレンジの噛み合わなさとか、ピーターとクイルが『フットルース』で通じちゃったりとか、グルートの言葉を自己紹介だと思っちゃうキャップとか、久々に会ったソーとキャップの会話とか、もう挙げたらキリがないですよ。ドラックスの「透明」とか思い出しただけで笑えてくるし、陛下の「盾をお渡ししろ」には燃えるし(丸くないのがアレですが)、ロケットの義肢集めの趣味が色々と活きてるのも愉快。これらの登場と掛け合いは、やはり10年の積み重ねがあってこその面白さなんですよね。

そして「バトル」の激しさと、それでいて見やすいアクション、そのなかで語るキャラクター性や醸し出す熱さがスゴい。あのハルクが真正面から挑んでやられることで表すサノスの強さ。ナノテクを使った新たなアイアンマンのパワー、それに負けないアイアン・スパイダーとの師弟での活躍。強敵宇宙人にも負けないキャップの格闘スキルと、超人血清を打ってないのが信じられないナターシャの鬼強さ。共に空中を制しながら違う味を見せるサムとローディ。ストレンジの作る足場で空中を駆けるクイルと、ワープで調子に乗るスパイディ。バッキーとロケットという意外な組合せと、青春の鬱屈を敵にぶつけるグルート。ナターシャとワンダとオコエという女傑トリオの激熱共闘。ハルクの代わりにハルクバスターで戦うバナーと、雷神ソーの復活(そしてそれをむっちゃ喜ぶバナー)。アクションでもやはり10年の積み重ねがあってこそというのがあって脱帽。また、トニーはサノスに血を流させ、キャップはサノスの突進を止め、ソーはサノスに致命傷を与える、とビッグ3がその名に恥じない活躍を見せるのには感激です。


■失われた半分

しかしそんな熱さや愉快さを文字通り塵と化するラストの喪失感が凄まじい。誰かしら死ぬかもしれないという覚悟はしていたものの、半分以上があんなにあっけなく消えるとは……これもまたシリーズを追ってきた人ほどショックでしょう(←ショックだった人)。しかもサラサラと消えていき後に静寂が残るというところが余計こたえます。ストレンジ、スパイディ、ティ・チャラといったMCUフェーズ3で登場した主人公たちは全滅。ガーディアンズはロケット以外は消え、残ったのはアベンジャーズ初期の面々のみ。何となくヴィジョンは死ぬのだろうと思ってたけど、こちらは遺体は残っているという絵面もショッキング。地獄の指パッチンで宣言通り半数を消滅させて微笑みを浮かべるサノスで幕という、ヒーロー側にとってはこれ以上ない敗北です。と言うか、ギリギリのところで逆転し最後に平和になった世界を見て微笑むって、完全にヒーロー側のパターンじゃないですか。シンプルなエンドロールは葬送のようでもあり、衝撃には備えていたつもりが戸惑いと悲しみと寂寞感で打ちのめされます。

本作は続く『アベンジャーズ4(仮)』との二部作であることが明言されているので、次作で残った面々によるAvengeが成されるのだろうとは思いますが、にしても消えた人々が復活するのか、その前に殺られた者は本当に退場なのか、果たしてどうサノスに立ち向かうのか、全く予想がつきません。最後に示されるメッセージも「Thanos will return」とヴィラン名が出るという前代未聞のパターンなので、他に誰が戻ってくるのかもわからないし。いやまあストレンジが1400万605通りから見出したというたった一つの勝つための道というのが明らかに伏線ではあるんですが、それを予定調和というよりは「繋がれた希望」というふうに感じてしまうのがスゴいと思うんですよね。さらにエンドロール後のフューリーが送信した相手はどう絡むのか、姿を見せなかったバートンやスコットが何かしらの役割を担うのか、初期メンバーしか残っていないのは次世代メンバーへのバトンタッチの予兆なのか、など色々と想像も膨らみます。

とにもかくにも本作は、テイストの異なる作品群を見事にクロスオーバーさせながら違和感がなく、シビアな展開ながらお祭り感も損ねてないうえに、二部作の前編としても十分な引きとなっています。そして何度も言うようにMCU10年の積み重ねがこれ以上ないほど活かされているし、喪失感に打ちのめされながらもやはり「面白い」んですよ。コミックでやってきたユニバース化を映画という媒体で実現するという前例のない試みは、いま究極の到達点へ片手をかけていると言えるでしょう。次作で登りきった先がどうなっているのか、早くその高みを見てみたいです。全米公開予定は2019年5月、あと約1年!長い!むしろ短い?いや長いよ!でもその間にMCUはアレやコレやも公開されるので、今は待ちましょう。

 ※

細かい点を言及できなかったので、第2弾も書きました!
最高な点をひたすら上げていこう。『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想(その2)。

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